今まで愛読してくださった皆様ありがとうございました!
「僕達は、何度でもこのくだらない世界を繰り返して罪を贖い続けるよ。…全ては君というたった一人の人間のためにね。…【超高校級の幸運】狛研叶さん。」
「ッーーーーーーーーーー。」
「そんな…うそ…」
「そんなものが真実だったなんて…」
ボク達は、呆然と立ち尽くしていた。
HOPEの口から語られる真相を、受け入れられずただ思考を停止するしかなかった。
ボクは、かつて本で読んだ言葉を思い出した。
時に、たったひとつの事実が真実を簡単に覆す事がある。
真実というものは、時にどんな虚構より非現実的で残酷だ。
ボクは、今まで何人も大切な仲間を失った。
どんなに打ちのめされても生き残って立ち向かい続けた事に意味があると思っていた。
だけど、HOPEの口から語られた現実は、ボク達が追い求めていた真相とは真逆のものだった。
裁判で勝ち続けた事に大した意味なんて無かった。
今まで信じてきた希望は、友情は、未来は、全部紛い物だった。
終わりのない地獄の中である者は犬死にし、ある者は無駄に生き地獄を味わい続けただけだった。
散々足掻いてやっと掴み取った真実は、あまりにも空虚で、幼稚で、残酷だった。
こんなものを真実だなんて認めたくなかった。
ボク達は、ただただ永い永い茶番を繰り返していただけだったんだ。
「…なあ、どういう事だよ…このコロシアイは全部、お前の自己満足のためだけに行われた茶番だったってのかよ…!」
「自己満足?茶番?…はははっ、ひどい言いようだなぁ。僕は別に自分がどうなろうと構わないんだよ。全ては、目の前にいる叶さんという僕にとっての神様のための神聖な儀式だったんだからさぁ。」
「…え。」
「だってそうでしょ?元はと言えば叶さんが何の才能も持っていなければ君達を狂わせるような大惨事は起こらなかったし、僕が生み出される事もなかったんだ。それに、叶さんの死にたくないというわがままのせいでみんなこの世界のコロシアイに巻きこまれたんだよ。…極め付けは彼女の最期さ。僕は今まで何億人もの叶さんの死を見届けてきたけど、全員がこの最終裁判で僕に敗れて次の周の自分に罪を押し付けてきたんだよ。みんな、割と裁判の中盤までは今の叶さんみたく未来への希望に目をキラキラと輝かせてたんだけどねぇ。いざ真実を知ったら、みんな面白いくらい絶望に浸ってくれたよ。」
HOPEは、嬉々として前の周の記憶を語り始めた。
「前の周で最後まで生き残ったのは、叶さんと…それから財原君とラッセ様と朱さんと羽澄さんだったっけ。あの時のみんなの絶望に染まった顔といったらもう…思い出しただけで笑いが止まらないよ。」
「テメェ…頭おかしいだろ!!」
「かもね。」
「なっ…!」
「そもそも、叶さんに魅入られる事自体が異常だって自覚はあるよ。…でも、しょうがないじゃないか。好きになっちゃったんだから。」
HOPEは、顔を紅潮させて目を見開きながら天井を仰いだ。
裁判場全体に響き渡るくらいの声量で高笑いしながら語り始めた。
「叶さんはどこまでも狂気的で、神々しいまでに残酷で、愛おしいくらいに絶望的なんだよ。そんな彼女だからこそ僕は彼女に恋し、彼女を愛し、彼女のためだけの世界を繰り返す事を誓ったんだ。だってそうだろう!?叶さんは、自分の理想のためならなんだって利用して奪って親友でさえも躊躇なく殺すような、救いようのないほど穢れて歪んだ異常者なんだ!!…でもね、叶さん。安心して。僕は、君の魅力をちゃんとわかってるつもりだから。君は、その狂った本性も含めて誰よりも美しいよ。」
「…ねえ、叶さん。」
HOPEは、そっと微笑んで言った。
「君は、僕にとっての希望で、神様で、そして絶望なんだ。…さぁ、もっと僕を魅せてくれないか。」
「…!」
思い出した。
…というより、そうだったような気がした。
このコロシアイの元凶は、凶夜クンでも目の前で不敵な笑みを浮かべているHOPEでもなかった。
…ボクだったんだ。
みんなに希望を与えようと頑張ってきたけど、結果的にボクはみんなに絶望を振り撒いていた。
ボクは、凶夜クンがかつて自分を疫病神だと言っていたのを思い出した。
今思えば皮肉な話だ。
疫病神は、ボクの方だったのだから。
ボクは『希望』なんかじゃない。
本物の絶望は、ゐをりちゃんでも凶夜クンでもなかった。
紛れもなく、今ここにいるこのボクだ。
「ごめん、みんな。今まで嘘ついてて…でも、もう疲れた。ボクはもういい子のフリはやめるよ。」
「そんな…嘘だ嘘だ嘘だ!!狛研ちゃんが絶望だと…!?ふざけんな!!この子はオレ達のリーダーだったんだぞ!!じゃあ、オレ達は今まで一体何のためにこの子を信じて足掻いてきたんだ!!」
「ひどいよ…こんなの、あんまりだよ!!狛研君!!オイラ達は、君が約束してくれたからここまで生き残ってこられたんだぞ!!今更、その約束も全部嘘でしたとでも言う気かい!!?」
「そんな…叶!!お願い、嘘だと言って!!…違うわよね!?コイツにある事ない事言われたせいで錯乱してるだけよね!!?だってそうでしょ!!?あなたは、私達と一緒に未来を勝ち取るんだって約束してくれたじゃない!!あなたがそんなひどい事言うわけないわ!!」
「あれれ?みんな、さっきまで散々叶さんに助けられてたくせに、やけにあっさり手のひら返しするんだね。そういえば、前回生き残った4人も、その前の回の生存者も、みんな最後の最後は叶さんを寄ってたかって罵倒してたっけ。どいつもこいつも本当に救いようのない屑ばっかりだよ。こんな奴ら、裁かれて当然なんだ。やっぱり、叶さんの理解者でいてあげられるのは僕だけだったみたいだね。」
「うるせぇ!!テメェは黙ってろクソサイコ変態カマ野郎が!!なあ、狛研ちゃん!!!なんとか言えよ!!!」
「うるさい!!!」
「ッ…!!?(ビクッ」
「…全部、HOPEの言う通りだよ。ボクは、ここにいる誰よりも最低なんだ。ボクは今まで、仲間を殺したクロのみんなを軽蔑したり、方神を罵倒したり、HOPEを追い詰めたりしてきた。ソイツらの事が許せなかったから…許せないものを裁く事が正義だって思い込んでたから。…でも、違ってた。本当に一番許されないのは、ボクの方だったんだよ。だからもういい。終わりにしよう。」
「叶、それは違うわ!あなたはあの時正しい事をしたのよ!もしあなたが真実を解き明かさなければ、私達は全員殺されてた!!誰がなんと言おうと、あなたは間違ってないのよ!!」
「…間違ってない?そんなわけないよ。…だったら。」
感情が昂っているのか、目から涙が溢れ出てきた。
ボクは、頬に涙をつたらせながら声を振り絞った。
「どうしてボクはこんなにも満たされているんだ?」
ボクは、口角を上げながら震え声で言った。
「…わかってる。こんな時にこんな気持ちになるなんて絶対おかしいって、わかってはいるんだ。でも、みんなが次々と殺されていくうちに、どこかで『自分じゃなくてよかった』って思っていた自分がいたんだ。ボクの周りでボクの大切な人が死んでいくたびに、ボクは悲しみと絶望に苛まれた。だけど、心のどこかでは自分だけが助かった事に幸福感を抱いていたんだ。積極的に捜査や裁判に参加したのも、純粋に生き残りたいからじゃなかった。殺された子の仇を討つとか綺麗事を言っておいて、本当は誰かがボクと引き換えに殺されるのを見て満たされたかっただけなんだよ。だってそうでしょ!?ボク以外がみーんな死んで、ボクだけが生き残ったらそれって最高にラッキーじゃん!!」
もう、自分でも何が本心で何が嘘なのかわからなくなっていた。
生き残る術がないと知らされた今、何もかもがどうでもよくなってるのかもしれない。
今では、そもそも外に出たいと思っていた事自体が嘘だったんじゃないかとすら思えてくる。
…いや、それでいいのかもしれない。
だって、ここにいるボクの存在そのものが、何度も改竄されていて嘘にまみれているのだから。
もう自分の事すら信用できない。
ボクって、結局誰だったんだ…?
「んなっ…!!君がそんな奴だと思わなかったよ…!!」
「狛研ちゃん…なんでだよ!!信じてたのに…!!」
「そんな…叶!!あなた、自分が何を言っているのかわかってるの!!?」
みんながボクを責めるなか、たったひとつの笑い声が裁判場に響き渡った。
「ふふふ…あーっははははははははははははははははははははははははははははは!!!素晴らしいよ叶さん!!君はなんて魅力的なんだ!!やっと本心を言ってくれて、僕は本当に嬉しいよ!!…さてと、叶さんも本当の気持ちを吐き出してくれた事だし、そろそろアレ行っちゃおっかな。」
「アレ…!?」
「あれ?忘れたの?最後は投票でみんなの運命を決めてもらうって言ったじゃん。じゃあ早速だけど、ルールの方説明してくから。」
そう言うと凶夜クンは指を鳴らした。
すると証言台に今までとは違う形状のボタンが出てきた。
「あっ…ボタンが…」
「ボタン!?オレの証言台にはねぇぞ!!おい、どういう事だ!!説明しやがれ!!」
「うるさいなぁ、ちょっとは静かにできないの?それじゃあ今から投票のルールを説明するよ。今からボクが選ぶ代表者一人に投票をしてらうよ。左側のボタンは、『リセットボタン』!これを押せば、全員おしおきしてこの世界を終わらせる。そして、次の周のコロシアイに今回の記憶を持たない状態で挑んでもらう。」
「ヒッ…!?なんだよそれ!!オレ達に死ねっていうのかよ!!?せっかくここまで生き残ってきたのに…ふざけんじゃねえぞ!!」
「何を今更…言っておくけどね、君達はすでに何億回も死んでるんだよ。」
「そんなの、今のオイラ達には関係ないじゃないか!誰かを殺したわけでもないのにこのままおしおきされるなんて嫌だ!!」
「だよねぇ。そこでもうひとつのボタン、『卒業ボタン』!これを押せば、みんなは晴れて才監学園を卒業できるんだ。」
「なら決まってんだろ!!卒業ボタンを選ぶ以外に方法はねぇじゃねえか!!」
「まあ、ここから出たらみんなの身がどうなるかなんて知ったこっちゃないんだけど。」
「えっ…!?どういう意味だよそりゃあ!?」
「よく考えなよ。君達は、オリジナルのパーソナルデータを元に作られたゲームのプログラムなんだよ?プログラムである以上、この世界から逃れる事はできない。オリジナルの君達はとっくの昔に死んじゃってるし…つまり、この世界から卒業するって事はそれすなわち君達の死を意味するんだよ。」
「はぁあ!!?なんだよそれ!!話がちげぇじゃねえか!!!生きてここを出られるんじゃなかったのかよ!?」
「やだなぁ、僕はここから出た後の君達の一生まで保証してあげるなんて一言も言ってないよ?」
「でも、ここから出たら希望ヶ峰学園の本科生に戻れるとかなんとか…」
「それは釈放されて出てきたら、の話だよ。『卒業ボタン』は釈放のためのボタンじゃなくて、ただのゲームのプログラムの破壊行為だよ。僕が自分の本体を破壊して、この世界そのものを亡き者にするんだ。…だって、君達屑が罪を償える機会なんてあるわけないじゃないか。」
「ふざけんなぁあああ!!!テメェ、よくも騙しやがったな!!!」
「嘘はついてないからこう言うのはちょっと違和感あるけど、騙されるお前が悪いんだよ。」
「…どちらを選んでも、私達の死は避けられないのね。」
「そんな…」
みんなの表情が絶望に染まった。
みんな、外の世界での未来を糧に今まで頑張って足掻いてきたんだ。
それが全部無駄だったと知って、ある者はやり場のない怒りに狂い、ある者は強烈な無力感に襲われた。
「さてと、じゃあ誰にみんなの未来を選んでもらおうかなーっと、叶さん!」
HOPEは、ボクを指差した。
「…。」
「あれ?無反応?」
「…予想はしてたし。」
「そっか。じゃあ叶さん。コイツらをどう料理するか選んで。」
「なっ…ふざけんなよ!!なんで選べるのが狛研ちゃんだけなんだよ!!オレ達にだって選ぶ権利くらいあるだろ!!」
「そうだよ、こんな投票、認めるわけにはいかないよ。ちゃんと最後まで裁判の公平性は保つべきなんじゃないのかい?」
「うっせぇな。NPCごときがこの世界を構成してる最高位の人工知能に口答えしてんじゃねえよ。叶さんの才能を育てるための養分にしかなれないモブキャラのくせに調子に乗らないでくれる?決定権があるのは、現実世界で死んでない叶さんだけなんだよ。」
「ッ…」
「あ、別に話し合いで決めてもいいよ。あ、ただし答えるのは叶さんね。解答権の変更はダメだから。さあ、叶さん。あと3分で決めてね。3分で決めないと、一人ずつ殺すから。」
「お、おい!狛研ちゃん!!頼む、卒業ボタンを押してくれ!!おしおきは嫌だ!!」
「オイラも、あんな殺され方をするのは嫌だよ。」
「私も…」
「みんな…」
「さぁ、選んでね。今ここで死ぬか、それとも永遠に死ねないか。」
ボクは、制限時間ギリギリまで迷った。
そして、最後の最後に、リセットボタンに手を滑らせた。
◆
僕には、わかっていた。
叶さんは、多分リセットボタンを押す。
だって、今までの980037545人の叶さんは、みんな同じ選択肢を迫られて、みんなこの世界をやり直す事を選んだのだから。
次の世界の自分が全てを終わらせてくれる可能性に賭けた叶さんもいたし、自暴自棄になって仲間の制止を押し切ってまでボタンを押した叶さんもいた。
今までの叶さん全員に共通して言える事は、みんな自分の背負っている罪の重さに耐えきれずに次の自分に肩代わりさせて死へと逃げたというところだ。
おそらく、この輪廻は永遠に途絶える事は無いだろう。
だって、叶さんにとっては他のみんなを皆殺しにして得られる幸福感を、僕にとっては叶さんの絶望を得られる唯一で最高の瞬間なのだから。
僕達にとってこのゲームが必要である以上、叶さんはそれを終わらせる決断なんてできるわけがない。
これは、今までの膨大な量のコロシアイから得たデータから導き出された、揺るぎのない結論だ。
僕が朽ち果てるまで、僕はずっと君のそばにいるよ。
「おっと、もう3分か。じゃあ、開票しまーす。結果発表ー!」
『卒業』
「…え?」
嘘だ。
なんで?
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
嘘だ!!あり得ない、なんで叶さんは卒業を選んでいるんだ。
僕の予想が外れた事は今まで一度もなかった。
980037545人の叶さんは、全員リセットを選んでこの世界をやり直したんだ。
僕の計算が狂うはずがないんだ。
「叶さん…なんで…」
「よく考えたら、キミの思い描いた通りに動くのがバカバカしく思えてきた。何でもかんでも自分が思い描いた通りに事が進むと思ったら大間違いなんだよ。」
「あり得ない…!!君は、今の世界に絶望したはず…この世界をやり直せば、次の世界ではもっといいエンディングに辿り着けるかもしれないんだよ!!?大体、元はと言えば死にたくないというわがままでこのゲームを最後まで生き残った君に今すぐ自分の意識を消す決断なんてできるわけないじゃないか!!」
「ゴチャゴチャうるせぇ!!!」
「ッ…!?」
「別に、どのみちここでゲームオーバーになるなら、ボクはその後がどうなろうと…キミの素晴らしい計画とやらがどうなろうとどうだっていいんだよ。」
「そんな、叶さん…どうして…!」
「今までは生きる事に精一杯だったけど、この世界で生きる方法が無いって知って吹っ切れた。キミの言ってる事が正しければ、現実世界にはボクの肉体があるんでしょ?本当はその肉体が目覚めて、このコロシアイとかは全部永い眠りについていたボクの夢でしたー、なんて展開になってくれる事をちょっと期待してたりするんだよね。そうなりゃあ、ボクはキミの用意した檻から脱出して生きて元の世界に戻れるって事だよね?それってすっごくラッキーじゃない?」
「そんな天文学的確率に賭けるなんて…君は何を考えているんだ!!おかしいだろ!!」
「だって、ボクは【超高校級の幸運】だよ?幸運に期待して何が悪いのさ。狂っているボクが好きなら、黙って結末を見届けろよ。」
「あはははははははははははははっ!!!」
「なっ…テメェ、何がおかしいんだ!!」
「いや、ごめんごめん。今までこんな展開になった事なんてなかったから、ついね。あーあ、とうとうやってくれたね叶さん。僕にとっての最悪の想定が、まさか君の思い描く理想だったなんてね。皮肉なもんだね。散々人に絶望を与えてきた僕が絶望させられる立場になるなんてさぁ。でもまあ、何億回とかけて積み上げてきたものを一気に崩される絶望もまた一興か。最期の最期に僕を魅せてくれてありがとう。」
僕は、懐から赤いスイッチを取り出した。
「それじゃあ、気を取り直して最後はパーっといきましょうか!!今回は、このコロシアイの黒幕である【超高校級の不運】景見凶夜クンのために!スペシャルなおしおきを用意しました!…ではでは、おしおきターイム!!」
僕は、それを思いっきり叩いて押した。
ボタンの画面に、ドット絵のモノクマとモノベルに連れ去られる僕の様子が映し出された。
GAME OVER
カゲミくんがクロにきまりました。
オシオキをかいしします。
モニターに映るのは、レトロな雰囲気の古い劇場。
年季が入った赤いステージカーテンに、客が数人いるだけの閑散とした仄暗い空間。
カタカタとフィルムの音だけが鳴り響き、不気味な雰囲気を演出している。
椅子には、景見を除く15人の生徒が座っていた。
…が、全員首から上が子供の落書きのような雑な見た目になっており、本来あるべきはずの口が無かった。
上映開始のブザー音が鳴ると、15人の生徒達は一斉に手を叩き始めた。
幕が上がると、白黒の画面の中央で景見そっくりの少年が首を吊っていた。
頭と目が極端に大きく描かれ、胴や手足が極端に細く描かれた特徴的な絵柄で描かれた少年だった。
景見の下の床が開き、首のロープが切れて景見は下に落ちる。
そこで画面に文字が現れる。
名前のない終劇
【超高校級の不運】景見凶夜 処刑執行
落ちた先はバラの荊棘が張り巡らされた部屋だった。
景見は、モノクマとモノベルに連れ去られ、十字架に磔にされた。
すると、白鳥のコスプレをしたモノベルが小さなガラスの靴を持ってきて景見に履かせようとした。
しかし、靴が小さすぎてはまらなかった。
白鳥のコスプレをしたモノクマはノコギリを取り出すと景見の爪先を切り落とし、無理矢理靴を履かせた。
すると画面の中が煙に包まれ、今度は景見はあたり一面から剣が生えた部屋で四肢を鎖で繋がれていた。
羽澄のコスプレをしたモノクマが鎖を引っ張り、景見を操り人形のように無理矢理踊らせた。
壁や床から生えた剣が、景見の身体に突き刺さっていく。
すると日暮のコスプレをしたモノベルが口笛を吹き、大量の肉食獣達を呼びつけた。
肉食獣は躊躇なく景見の体を貪っていく。
その後も、生徒のコスプレをしたモノクマとモノベルが景見を拷問する映像が続いた。
画面が白黒で絵柄もファンシーな雰囲気なせいか、見た目の残酷さはだいぶ軽減されているが、実際に行われているところを想像するとどれも痛々しいものばかりだった。
そして、最後には校舎が映った。
廊下にいた景見は、プラカードを持った生徒達に追いかけられる。
景見は、生徒達から逃げ続け、ついには屋上まで追いやられた。
あたりを見回して、下を見た景見はふぅと深いため息をついて飛んだ。
◆
「さよなら。」
僕はこの世界に絶望した。
だから命を断つ事にした。
見慣れた屋上。
僕はここで、何度も踏みとどまった。
勇気がなかったから、ここまで生き延びてしまった。
でも、それも今日で終わりにしよう。
飛んだ。
世界の色が、筆で伸ばしたような模様を描きながら撹拌される。
もう、今まで抱えていた苦しみも、吹きつける風の冷たさも、何も感じなくなった。
これが、死ぬって事なのか…
ーーーーーああ、今日もいい天気だ。
僕は、そっと目を閉じた。
ーーーーーーーーーーグチャ
◆
画面内には、黒い華が咲き乱れていた。
劇場内は拍手喝采に包まれ、上映終了のブザーと共にステージカーテンが閉まった。
その瞬間、モニターの画面が乱れ始めた。
劇場がバラバラになっていく様子が映り、最後は砂嵐になってそのまま電源が落ちた。
終わった。
ボク達を散々苦しめてきた黒幕は、案外あっけなく死んだ。
すると、ボク達が黒幕のおしおきシーンを見終わるや否や、裁判場が大きく揺れ始めた。
「なっ、なんだこれ!?地震!?」
「何が起こっているんだい!?」
「ッ、ねえ!あれ見て!」
裁判場の天井に亀裂が入り、崩れ始めた。
ホログラムのようにバラバラになった天井は、暗闇の中に吸い込まれていく。
「なんだよあれ…何がどうなってんだよ…!」
「…終わりだ。」
「…え?」
「さっき、HOPEは自分の本体を破壊するって言っていた。多分、さっきのおしおきで奴の本体が破壊されたんだ。だから、この世界を管理する存在がいなくなった今、この世界は原型を維持できなくなったんだよ。ボク達が消えるのも時間の問題だ。多分、あと数秒で全員跡形もなく消え去るよ。」
「なっ…!なんでだよ、チクショウ!せっかくここまで生き残ったのに!なんでオレ達が消えなきゃいけねぇんだよ!!オレは、消えるなんて嫌だぞ!!」
「あ…」
「!!」
柳人クンの身体が崩れ始めた。
「柳人クン!!」
「詩名!!」
「詩人!!」
「嫌だ…オイラは、消えたくない…!みんな、助け…」
バシュッ
柳人クンは、跡形もなく消えた。
「詩人…そんなっ…!」
「!?おい、なんだよこれ!!」
陽一クンの足が崩れ始めた。
「陽一クン!」
「栄養士…!」
「おい、嘘だろ…!?まさか、オレも消えるってのかよ!?うわぁああああああああああああああああああああああああ!!!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ消えたくなぁあああああああああああああああああああああい!!!」
バシュッ
「…あ。」
陽一クンは、全身が光の粒になって消えた。
「そんな…」
残るは、ボクとゐをりちゃんだけになった。
「…!!あ、叶…!!」
「ゐをりちゃん…!」
ゐをりちゃんの顔が崩れ始めた。
「あ…あああ…!」
「ゐをりちゃん!!」
ボクは走った。
ゐをりちゃんの身体が崩れるよりも速く。
そして、その手を掴んだ。
「叶…!助け…」
…が、その手は光の粒になって手からすり抜けて消えた。
バシュッ
「…あ、あは…あははは…」
残るはボクだけになった。
校舎は、今も崩壊を続けている。
ボクは、この世界にたった一人残された。
そして、ボクもじきに消えるだろう。
ボクの両手は、消え始めていた。
身体が、痛みもなく少しずつ崩れていく。
ボクは、消える前にこの世界を見渡した。
思えば、長いようで短い数日間だった。
ここに来てから、嘘だったとはいえみんなと友達になって色々楽しい事をしたりつらい事を乗り越えたっけな。
実際にはうんざりするような世界だったけど、お別れを言わなくちゃ。
ボクは、少し微笑んで声を漏らした。
「さよなら。」
最終章 断罪のエンドロール ー完ー
『ダンガンロンパPRISON V4 さよなら僕らの永久収監生活』
原作:『ダンガンロンパシリーズ』様
企画:景見凶夜
キャラクターデザイン:景見凶夜
原案・脚本:景見凶夜
グラフィック:景見凶夜
モーションデザイン:景見凶夜
モーションポートレート・グラフィック:景見凶夜
システムプランナー/進行管理:景見凶夜
システムグラフィック/ムービー:景見凶夜
マップデザイン:景見凶夜
タイトルロゴデザイン:景見凶夜
スクリプト:景見凶夜
台本作成:景見凶夜
デバッグ・テストプレイ:景見凶夜
プロデューサー:景見凶夜
ディレクター:景見凶夜
プログラム:景見凶夜
音声担当:景見凶夜
絵コンテ・演出:景見凶夜
作画監督:景見凶夜
動画:景見凶夜
仕上げ:景見凶夜
撮影:景見凶夜
編集:景見凶夜
3DCG:景見凶夜
制作進行:景見凶夜
アニメーションプロデューサー:景見凶夜
アニメーション制作:景見凶夜
音楽:景見凶夜
サウンドエフェクト:景見凶夜
レーコーディング:景見凶夜
マスタリング:景見凶夜
プロモーションネゴシエーター:景見凶夜
プロモーションマネージメント:景見凶夜
セールスプロモーション:景見凶夜
パッケージデザイン:景見凶夜
ソフトウェアマニュアルデザイン:景見凶夜
パブリシティデザイン:景見凶夜
スペシャルサンクス:穴雲星也
入田才刃
景見凶夜
神座威織
狛研叶
財原天理
栄陽一
詩名柳人
白鳥麗美
翠
朱雪梅
羽澄踊子
日暮彩蝶
不動院剣
舞田成威斗
癒川治奈
ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン
ディレクター:景見凶夜
プロデューサー:景見凶夜
END
ー才監学園生存者名簿ー
【超高校級の工学者】入田才刃
【超高校級の不運】景見凶夜
【超高校級の絶望】神座ゐをり
【超高校級の幸運】狛研叶
【超高校級の資産家】【超高校級の勝者】財原天理
【超高校級の栄養士】栄陽一
【超高校級の詩人】詩名柳人
【超高校級のマドンナ】白鳥隥恵
【セキセイインコ】翠
【超高校級の曲芸師】朱雪梅
【超高校級の知能犯】方神冥
【超高校級のダンサー】羽澄踊子
【超高校級の生物学者】日暮彩蝶/【超高校級の人狼】暁裴駑
【超高校級の侍】不動院剣
【超高校級の喧嘩番長】舞田成威斗
【超高校級の看護師】癒川治奈
【超高校級の国王】ラッセ・エドヴァルド・シルヴェンノイネン
ー以上0名ー