アクタージュ 暗殺者(になるはずだった)ルート 番外編   作:朕好こう

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鬱要素あり。
恋歌ちゃんは自己否定、利他的思考の塊だと言うことと依存してるのはどちらかなって話。



『ゴミはゴミ箱へ』

「お姉ちゃんは優秀なんだから、貴女も見習いなさい」

 

 無能でごめんなさい。お姉ちゃんの残りカスでごめんなさい。

 私の努力は認められない。だって結果が無いから。努力は結果でしか認められないから。頑張るのは当然のことだから。

 

「ノロマだなぁ、お前。邪魔だし帰ってよ」

 

 邪魔してごめんなさい。私なんかが意思を持ってごめんなさい。

 私の意思は認められない。だって皆と違う事をするから。この世界は多数決で決まるから。少数派が淘汰されるのは当然のことだから。

 

「髪長すぎじゃん、切ってあげるよ。ほら」

「うわ、かわいそ」

「バッサリ行くね」

 

 …生きててごめんなさい。失敗作の癖に呼吸してごめんなさい。

 私には生きてる価値がない。誰にも必要とされていないから。頭が悪い癖に人の心ばかり伺う子は気持ち悪いから。

 

 私には居場所が無い。家族も、友達も皆、嘘吐きだ。ニコニコした顔の裏側にはどす黒い感情を宿している。私にはそれが分かってしまう。見たくもない醜い感情が私を嬲る。

 

 

 苦しい。でもその苦しみを忘れられる方法がある。

 

「死ね、死ね死ね死ね死ね死ね死ね」

 

 何度も鏡の私に呟く。何度も自分を殺す。私が苦しいのは、醜い感情が有るからだ。人に悲しみが、怒りがあるからこんなに苦しいのだ。なら負の感情なんて不要だ。

 

「笑え」

 

 鏡には笑顔の私が写る。もっと自然に笑え。笑っている人間は好かれる。笑顔で居れば皆も嫌わないで居てくれる。楽しいという感情だけを刷り込め。自分と他人の喜びの差を無くせ。人と同じものを見て笑え。つまらなくても、嫌いな人の前でも、笑え。

 

 

 これが私の家に帰ってきたら、毎回やること。景ちゃんには絶対に見せられない。きっと幻滅されちゃうから。

 部屋をぐるっと見回すと壁には景ちゃんや千世子ちゃん、王賀美陸の写真が貼ってあり、床には演技の本が散らばっている。

 

「面倒臭いけどアメリカに行く前に掃除しなきゃなぁ」

 

 溜息を吐く。私は掃除する時に見つけたモノの中身を見ちゃうタイプだから進まない。

 壁に貼られた景ちゃんの週刊誌の切り抜きを見る。うん、可愛い。週刊誌に取り上げられた時の景ちゃんの寝顔を見ると幸せな気持ちになる。いつも生で見てるのを自慢したくなるくらいの可愛さだ。

 その隣に貼られているのは、千世子ちゃんの宣材写真だ。千世子ちゃんがこの間くれたモノで、なんで渡されたかよく分からないけど1番綺麗に撮れたものらしい。

 

 私の写真はひとつも無い。だって私を彼女達と同列に扱うことは出来ないから。同じ舞台に立ちたいと願うのも本当は烏滸がましいことだ。

 それに有ったとしても、すぐに破り捨ててしまう。だって醜いから。こんな醜い私の顔なんて見るに堪えない。私が笑顔でいる写真を見ると、私を殺したくなって仕方が無い。偽物の癖に、嘘つきの癖に。

 

 生きてる事すら罪なのに。

 

「……生きてていいのかな」

 

 可愛くて優しい景ちゃんと過ごす日々は幸せだ。ルイくんとレイちゃんと遊ぶのも楽しいし、成長していくのを見て私も嬉しくなる。千世子ちゃんは私を引っ張ってくれるし、好意を隠さないで伝えてくれる。星先輩はヘタレだけど優しい人だと思う。

 でもこんなに幸せでいいのかな。私だけ偽物なのに、彼女達と居て良いのかな。彼女達は全力で生きてるのに、私は常に演じてる。

 

「良いんだよね?だって皆が好きなのは“私”なんだから。演じていれば許されるよね」

 

 皆が好きなのはこんな私じゃなくて底なしに明るくて(空気が読めて)誰にでも優しい少女(都合のいいやつ)なんだから。

 演じるのは悪いことじゃない。うん、悪いことじゃないよね。大切な人達と一緒に居るために必要なこと。だから、これからも私を殺す。それだけで彼女達と居られるなら私の命なんて塵以下だ。

 

 …でも、我儘が許されるなら、ありのままの自分を愛されてみたいなぁ。

 

 

 

 ここは何処だろう。真っ暗だ。いや、上には大きな満月がある。私は見たことがある。この大きな満月を何処かで。

 

「…愛されないよ」

 

 小さい頃の私が立っている。記憶に無い、小学生の頃の私。アルバムだけで見た事のある少女。

 

「愛されないに決まってるよ。だって貴女、嘘吐きだもの。夜凪景と百城千世子にずっと嫉妬してる」

「…煩い」

 

 私は彼女の首に手を掛ける。でも彼女は意に介さず喋り続ける。冷めた目で私をずっと見ている。

 

「ねぇ、褒められて心地良いでしょ。でも、褒められたのは貴女の技術じゃないよ?全部、誰かのモノ。他人の功績で褒められて嬉しい?」

「煩いッ!!」

 

 訳の分からない感情が私を支配する。手に力を込めているのに中々死なない。やめて。私の心に踏み入るな。

 

「貴女、惨めだね。感情なんて完全に殺せる訳ないのに。それは抑えつけてるだけだよ。いつかタガが外れて取り返しが付かなくなる」

「黙ってよ、私は…こうでもしなきゃ愛されないの」

 

 悲しいも怒りも忘れていた…忘れようとしていた感情が爆発しそうになる。醜い感情が私を支配しようとする。

 

「…あぁ、貴女って本当に馬鹿だね」

 

 彼女は呆れた顔をすると消え去る。

 それと同時に目が覚める。…久しぶりに夢を見た。それも悪夢の類だ。残った醜い感情を消す為にまた私を殺す。

 要らない記憶と感情は捨てなきゃ。…要らない私は捨てなきゃ。

 

 鏡を見れば笑顔の私が居る。これでいい。これで、良いんだ。




久しぶりに気分が上がる曲を聞きながら、執筆したら出来上がった作品です。…どうしてこうなった?
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