アクタージュ 暗殺者(になるはずだった)ルート 番外編 作:朕好こう
「恋歌、あーん」
「ん、おいひぃ」
「夜凪さんって、恋歌ちゃんに甘いよね」
「そうかしら?千世子ちゃんだって恋歌に甘いと思うのだけれど」
「夜凪さん程じゃないよ」
“私”はとてもシアワセだ。“私”を好いてくれる綺麗な女の子2人に囲まれて、イチャイチャ出来るんだから。景ちゃんから貰ったケーキを食べていると千世子ちゃんが手を握ってくる。普通に手を握ってくるから恋人繋ぎに変えてあげる。少しだけ千世子ちゃんも嬉しそうだ。“私”もそれに合わせて笑顔になる。
「あ、ズルいわ。私も繋ぎたい」
「景ちゃんも?仕方ないなぁ、はい」
千世子ちゃんと手を握っていることに気がついて頬を膨らませる景ちゃんが可愛くて、手を繋ぐ。これがシアワセなんだろう。きっと、これは普通の人間が求める愛とか言う感情なのだろう。別に本当に何かを感じてるわけじゃないけど、景ちゃんの表情から読み取ったことを“私”に反映させる。
「恋歌ちゃん、夜凪さんを置いて水族館に行かない?あ、最近は部屋で今までの子以外にも魚も少し飼い始めたんだ。だから私の部屋でもいいよ?」
「本当?千世子ちゃんの部屋行きたいな」
「待って、恋歌。千世子ちゃんから変態の気配がするわ。私も行く!」
「無理して来なくていいよ、夜凪さん。恋歌ちゃんは私が責任持って大切にするから」
「何がいいのかしら!?あの日に決めた約束を破らないで欲しいわ!今日は私の日って決めたでしょ!」
2人で“私”を置き去りにして喧嘩し始める。彼女たちが“私”のアクションを求めない限り、“私”は動かない。“私”の存在意義は彼女達の望む愛を与えること。女優としての輝きを失って、壊れかけの“私”を救ってくれた彼女たちに出来るのはそれだけしかないから。
「恋歌(ちゃん)はどっちが好き?」
2人とも息ぴったりで聞いてくる。仲が良くて羨ましいことだ。“私”は笑顔で答える。いつも通りの回答を、いつもと変わらない笑顔で。
「2人とも大好きだよ」
“私”がこう答えれば、2人とも顔を赤らめて喧嘩を止める。
「本当は決めて欲しいけど、恋歌が好きって言ってくれるなら私はいいわ。まぁ、私が恋歌にとっての1位に決まっているけど」
「それってルイくんとレイちゃんが居るから好かれてるんじゃない?夜凪さんは付属価値なんじゃない?」
「もう2人とも。喧嘩はダメだよ」
また喧嘩しそうな2人を宥める。これは彼女達が望む仲裁だ。1度目の喧嘩は止めず、2度目の喧嘩は止める。それが彼女達の望み。ミスは許されない。彼女たちが許しても、“私”が許さない。“私”は望まれた役を演じることだけが許された行動だ。あの日から“私”に許されたのはそれだけだ。
“私”たちはあの日から一緒の家に住んでいる。ルイくんとレイちゃん、景ちゃんと千世子ちゃんの4人。ルイくんとレイちゃんは今年で中学生だ。2人ともあんなに小さかったのにどんどん大きくなっていく。と言っても昔の彼らを覚えている訳じゃなくて、アルバムとかの記録と照らし合わせたから分かるだけだ。彼らと交わした言葉をあまり覚えていないけど、“恋歌お姉ちゃん”を望んでいるみたいだから、“私”はそれを演じてあげる。景ちゃんから聞いた限りだと、“恋歌お姉ちゃん”は明るくて優しい女の子だったらしい。だから出来るだけ笑顔と人を気遣うことだけは忘れない。
「…恋歌、大好きよ」
「“私”もだよ。景ちゃん」
今日は景ちゃんと一緒に寝る日。日替わりで千世子ちゃんと景ちゃんの寝室を行き来する。何もしないでお喋りしたり、ずっと手を繋いだり、まぁ色んなことをする。2人には傾向があって景ちゃんは“私”を愛したいらしい。甘やかしたいみたいだ。千世子ちゃんは“私”に愛されたいみたい。景ちゃんの時は彼女からの行動を待ってあげる。
「大好き…大好きなの」
「うん」
これが彼女のシアワセなら、“私”に一切の自我は許されない。彼女の思うままに生きればいい。彼女の愛に答えてあげればいい。
翌日は千世子ちゃんと寝る日だ。千世子ちゃんには積極的に抱き着いたり、キスしてあげる。彼女がもういいよって言うまで愛してあげる。
「…恋歌ちゃん」
「どうしたの?千世子ちゃん。今の好きじゃなかった?」
「……ううん」
「そっか。じゃあもう1回しよっか」
“私”は彼女たちの愛を埋めてあげるだけでいい。そんな事で“私”を救ってくれた対価になるかどうかは分からないけど。でもそれが彼女たちのシアワセなら。きっとそれは“私”にとってのシアワセなのだろう。
だから捨てないで。
“私”を見捨てないで。愛して。ずっと一緒に居たい。痛い。遺体。異体。いたい、いたい、イタイ…
ダメだ、自我を持ったら“私”は壊れちゃう。“私”の存在意義は彼女たちの望みを叶えること。それだけでいいのだから。それ以外は考えなくていいんだ。