アクタージュ 暗殺者(になるはずだった)ルート 番外編   作:白鳩ぽっぽ

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決して有り得ないルート 第1弾


有り得ないルート集
愛昧Me地雷(マイン)


 ホテルのベッドで、何故か一糸まとわぬ姿で目が覚めた。そして、同じく生まれた時の姿の千世子ちゃんが私に覆いかぶさっていた。

 これはこれは…眼福ですなぁ…

 

「じゃなくて!ち、千世子ちゃん、何やってんの!?」

「おはよ、恋歌さん。早速だけどおはようのキスでもしよっか」

 

 満面の笑みを浮かべ、私の問いはスルーして朝の挨拶と軽いキスをした後、甘えるように首筋に吸い付いてくる。私が抵抗出来ないようにがっちり腕を掴んでいるし、足も千世子ちゃんの足が絡んでいて動けない。

 

 何事ですか、コレ。

 

「ふぁ…!?」

 

 弱いところを吸われて、思わず変な声が出る。千世子ちゃんは「可愛いよ、恋歌さん。恋歌さんのそういう押しに弱い所、大好き」、なんて言葉を囁きながら、私の下腹部に手を伸ばす。

 

「そ、そこは、本当に駄目だから…千世子ちゃん、1回落ち着いて話そ?」

「んー…恋歌さんが誘ってきたのに?」

「私が…?」

「昨日、恋歌さん、いっぱいお酒飲んでたから覚えてないかな。昨日はあんなに凄かったのに」

 

 昨日の私は一体何をしてたの!?千世子ちゃんも頬を染めるのやめて!?全然覚えてないから!!

 

「ねぇ、良いでしょ?1回やったら2回目も同じだし、凄く気持ち良くなれるよ」

「そんな破廉恥な子に育てた覚えは無いよ、千世子ちゃん!」

「煩いから、口塞ぐね」

 

 千世子ちゃんに唇で唇を塞がれる。千世子ちゃん、めちゃくちゃいい匂いするし、唇柔らか過ぎないですか…!?

 ていうか、不味い。本格的に雰囲気に流されちゃいそうだ。

 

「千世子ちゃん。私、マネージャーだから、ね?」

「うん、そうだね。でもそれ以上に幼馴染みだし、恋人でしょ?」

「こ、恋人ではないです」

「…昨日、あんなに愛してるって言ったのは嘘なんだ」

 

 千世子ちゃんの目から涙がこぼれ、悲しそうな顔をする。

 私は動揺し、涙を拭おうとして気づく。全く私の腕が動かない。さっきより強く拘束されている気がする。

 ていうか、千世子ちゃん、嘘泣きでしょ。10年も一緒に居れば演技だと気づく。ちょっとだけ騙されたけど。

 

 私がそんなことを考えてると、ちょっと強めに耳を食まれる。痛い。

 

「えっと、千世子さん。その…お怒りですか?」

「うん。だいぶ、怒ってるかな」

「な、なんででしょう」

「恋歌さんがシてくれないから」

「シてない?もしかして、実は昨日も…」

「昨日はシたよ。私が言ってるのは今日の分」

「…」

 

 顔が熱くなるのと肝が冷えていくのを感じる。マジか…私、ついにめちゃくちゃ可愛い千世子ちゃんに手を出してしまったのか……

 

 確かに、昨日は千世子ちゃんのデスアイランドのクランクアップと打ち上げがあって、テンションが最高潮だった。普段はあまり飲まないお酒も飲んだし、飲みすぎて記憶が無い。なので、もしかしたら千世子ちゃんとそういうことをしたという可能性はある。

 

 というか、その可能性が高い。常日頃からアキラくんから、お酒を控えるよう忠告されていた。私自身に記憶は無いが、私は酒を飲むと性格が変わるらしい。絡み酒というのか、酔っ払うと私は女の子をナンパするらしいのだ。でも本当に私に記憶は無い。

 気が付いたら家のベッドで寝ていて、隣には面識の無い黒髪の美少女が寝てるとかは前にあったけど、それ以外で女の子を家に連れ込んだ記憶なんて無い。

 気をつけようとは思ってるんだけど、お酒って美味しいから、テンション上がるとつい飲んじゃうんだよね。

 

 …もしかして、1番破廉恥なのって私なのでは。

 

「恋歌さんは、私の事嫌い?」

「うぇ!?」

 

 唐突に千世子ちゃんが抱き着いてきたと思ったら、悲しそうに私に聞いてくる。これは演技。これは演技…と自分に言い聞かせる。でもちょっと、変な気持ちになるかも。

 

「私は恋歌さんのこと、愛してるよ。ずっと、一緒に居たいくらいには」

「あ、愛って……よくそんな恥ずかしいこと言えるね……あと私みたいな奴、好きになっちゃダメだよ。千世子ちゃんは可愛いんだしさ。ほら、男の人も女の子からも好かれてるでしょ。あ、アキラくんなんてどう?ヘタレだけど優しいし、きっと幸せにしてくれると思うな。私なんかより善い人はいっぱい居るんだから」

 

 千世子ちゃんみたいな可愛い子が、私なんか好きになるわけない。きっと優しくされたのを勘違いされているだけ。彼女が8歳の頃から一緒に居るから、親愛と恋愛を勘違いしているんだ。

 

 …まぁ、私、恋愛なんてしたことないし、人を本当の意味で好きだなんて思ったことないけど。

 この世に生を受けて21年。1回も私は人への愛情なんて感じたことない。高校2年生で告白された時も愛情を知りたくて、付き合って性行為までした事はある。でも、気持ち良くも、愛情も感じることはなかった。ただ、獣のように腰を振っているのを見て、愛に振り回されて可哀想だなとだけ思った。その後、君は僕といるのが退屈なんだろなんて言われて別れたけど。退屈なんじゃなくて、興味が無いだけなんだよね。

 

 千世子ちゃんもその人と同じで、愛に振り回されているだけ。ここは大人として目を覚まさせてあげなきゃ。

 

「私は恋歌さん以外、考えられないよ」

「いや、だから…」

「私じゃ、ダメ?」

 

 狡い。上目遣いで、そんな泣きそうな顔で言われたら何も言えないよ。

 

「ダメじゃないけど…」

「本当?嬉しいな」

 

 あーぁ、美少女って卑怯だよね。笑顔とか最強クラスだしさ。守ってあげなきゃって思わせるのが上手だよ、本当に。

 

 

「…2人きりの時だけ、恋歌って呼んでいいかな。それで、私のことは千世子って呼んで欲しい」

「勿論だよ、千世子ちゃ…千世子」

 

 …可愛い子に頼まれたら断れないよね。意思が弱い大人?なんとでも言いなさい。千世子ちゃんくらいの美貌に頼まれたら、殺人だって平然とやってのけるよ、私は。冗談抜きで。

 

 あ、でもこれは愛とは違うかな。千世子ちゃんは大切だし、好きだけど…ちょっと違う。芸術作品に対して抱く感情と一緒。綺麗だなぁ、凄いなぁって遠巻きに見ている感じなの。芸術作品に傷つけようとしたら、怒るでしょ?それと一緒で、千世子ちゃんに傷がつくなら、私は悪魔にでも鬼にでもなれる。そういうことなんだよ。

 

「大好きだよ、恋歌」

 

 千世子ちゃんが可愛らしく少し頬を上気させながら、告白してくる。

 ここで私はなんとも思ってないって言ったら、どんな顔するかな。泣いちゃうかな。

 …それは嫌だなぁ。千世子ちゃんは笑顔の方が似合うもの。というか美少女は笑顔が1番だよ。泣き顔は嬉し泣きの時だけで十分。

 

 だから、私は嘘を吐く。彼女が求める解答を、笑顔で答えてあげる。

 

「私もだよ。千世子」

 

 嘘は人を幸せにする。

 

 人は嘘を吐かないと生きていけない。

 人は仮面を被って、精一杯愛されようとする。

 

 それで良い。だって真実が良いことだとは限らない。真実を知ることで傷付く事なんていくらでもある。

 

 だから、これは千世子ちゃんを守るための優しい嘘。

 

 …だから、虚しくなんて無いよ。




【√条件】
・百城千世子8歳と出会う
・星アキラ8歳と出会う
・2人より3歳年上のお姉さん(精神年齢小学生)
・演技ステータスはメソッド演技無し、百式演技術S
・百城千世子を溺愛している(無自覚)
・暗殺者√及び俳優√からマネージャー√
・本編と違い、愛の片鱗も自覚しないまま、大人になったので愛情表現が歪んでいる。

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