アクタージュ 暗殺者(になるはずだった)ルート 番外編 作:朕好こう
「暑い…一体何度あるのさ」
高校生になってすぐ、景ちゃんに頼まれた買い物で街に来ていた。太陽に熱せられたアスファルトの上を歩いてるからか汗が止まらない。
ちょっとひとやすみでもしようかと、ビルの陰に入る。そして忌々しい太陽を睨みつけようとすると大きな広告が目に入る。
「…百城千世子ちゃん」
王賀美陸無きスターズにおいて技術に優れた少女。王賀美陸の代理品にしか見えない彼女は、景ちゃんに出会わなかった私にも見えて、同族嫌悪みたいなものを催す。王賀美陸の演技は養殖できない天然物だから、真似しようとすればいつかガタが来る。彼女はそれを理解しているんだろうか。
「そろそろ行かなきゃ」
荷物を持って、前を向く。そこには変装した百城千世子ちゃんが立っていた。私と同じく、自分の広告を見ているのだろう。その横顔は、
「まるで仮面を被っているみたい」
ポロッと言ってしまう。景ちゃんにも恋歌は正直過ぎるから気を付けるようにと言われていたのに。百城千世子ちゃんは目を開いてこっちを見てくる。景ちゃん並の可愛さに心臓がドキドキする。目、おっきぃ……
彼女から少しだけ怒りの感情が見える。それはそうか、見知らぬ人に自分の心を掻き乱されるほど不快なことは無いから。でも、これは言っておかなければならない。
私から目を外し、行こうとする彼女に一言だけ告げる。
「その仮面、いつか脱げるといいね」
その瞬間、彼女の怒りが爆発する。けど騒ぎを起こすのは不味いと思ったのか彼女は黙って立ち去っていく。
きっと彼女の仮面を外せるのは景ちゃんだけだろう。私じゃ役者不足だ。スターズは今輝きを落としつつある。王賀美陸を手放してしまったのは痛かった。
その代理品のように売り出された百城千世子は今のままじゃ、王賀美陸の足下にも及ばない。技術はある。けど、それだけじゃ演劇は面白くならない。
「楽しみだなぁ」
先日景ちゃんと共に出したスターズへの応募。恐らく第5次審査まではトントン拍子で行けるだろう。ルックスでも演技でも、他の応募者に私達は負けない。あ、いや、ルックスだったら私は負けるかもしれないけど。でも今の私には百城千世子から盗んだ技術と景ちゃんから学んだメソッド演技がある。
帰りながら、未来のことに想いを馳せる。景ちゃんが主演で私が助演。景ちゃんが笑って、私も笑う。そんな未来に。
そんなことを考えていると、いつの間にか私の第二の実家とも呼べる夜凪家に来る。もう景ちゃんは帰ってきてるらしい。玄関のドアを開けると3人がおかえりと言ってくれる。
「ただいま!景ちゃん、ルイくん、レイちゃん。色々買ってきたよ!」
この後、内緒でお菓子を買ってきたのがバレて、ルイくんはお菓子で買収したがレイちゃんと景ちゃんにこってり絞られた。