アクタージュ 暗殺者(になるはずだった)ルート 番外編 作:朕好こう
私の好きなカレーの匂いが鼻腔をくすぐり、目が覚める。欠伸をしながら身体を伸ばして解す。いつもならそのまま二度寝しようとするが、景ちゃんのカレーは世界一美味しいので、二度寝なんてしない。
ご機嫌にステップなんか踏みながら、キッチンに行く。お勉強はからっきしだから、親に嫁として必要なスキルは叩き込まれてる。掛け算くらいは出来るんだから、馬鹿じゃないと思うのだけど。割り算は難しいから嫌い。
「景ちゃん、おはよ!なにか手伝うことある?」
近所迷惑にならないギリギリの声で景ちゃんに挨拶する。カレーを作っていた景ちゃんは振り向くとその綺麗な顔で可愛らしい笑みを浮かべる。
「おはよう、恋歌。もう少しでカレーが出来るわ。ルイとレイを起こしてきてくれる?」
「あいあいさー」
頷くと、ルイくんとレイちゃんを起こしに行く。2人ともぐっすりでとても可愛い。頬っぺをぷにぷにして遊ぶが、中々起きない。
「仕方ないなぁ、起きろー」
2人の脇に手を入れるとこちょこちょする。すると2人とも煩わしさに耐えられなくなったのか笑いながら起きる。
「ご飯だよ、2人とも」
「はーい」
元気よく、返事する2人の寝癖を軽く治して上げつつ、顔を洗わせたり身だしなみを整える。私の妹と弟が可愛すぎる…なんて見ていたらルイくんに。
「恋歌お姉ちゃん、変態な目してた!」
と言われ傷つく。確かにやばい目をしていたかもしれない。意気消沈したまま、景ちゃんに2人を連れてきたよと報告しつつカレーを皿によそる。何年もここに通っているから何処に何があるかなんて完璧に把握済みだ。前、まるで私たち、同棲してるみたいだねって景ちゃんに言ったら喜んでたくらい殆ど一緒に居る。
「ありがとう、恋歌。…いただきます」
「いただきます」
景ちゃんが最初に手を合わせ、いただきますをすると私含め3人も続く。ご飯に感謝をするのは欠かせないからね。ていうか、やっぱり景ちゃんのカレーは美味しい。これでお店やった方がいいレベルだ。…まぁ、彼女に女優以外の道が似合うわけないけど。
夢中でカレーを食べていると、レイちゃんが急にそう言えば、と言い出す。
「お姉ちゃんたち、今日5次審査だよね?」
「そうね」
景ちゃんが頷き、私は首を傾げる。5次審査?赤点の話だろうか。確かに前回の考査では赤点だったが、景ちゃんにスパルタ教育を受けなんとか補講を回避した筈…5次も受けるほど馬鹿じゃないのだ私も。
「なんの話?」
「だから、5次審査だよね?」
「恋歌、忘れてしまったの?スターズのオーディション。一緒に受けるって言ったでしょう?」
あっ!そうだった。考査で忙しかったのとスパルタ教育で数学の公式を無理矢理叩き込まれたから頭から飛んでいた。暗記出来るパンが有ればいいのに…
「考査で忘れてました…すみません」
2人に笑われ、頬が熱くなる。楽しみにしていたのに、忘れるほどのスパルタ教育か。夜凪景、恐ろしい子。そして定期考査は廃止して欲しい。
ごはんを食べ、オーディションの時間まで暇を潰す。ルイくんとレイちゃんと遊んだり、景ちゃんとじゃれたりそんなことをしているといつの間にか時間になっていた。
オーディション会場に着いて、お題を出された後に感じたのはこんなもんかという感想だった。お遊びで、スターズの名声目当てで来ている無能が多すぎる。悲しいという感情を演じる上で、心との分離が有れば悲しさを引き出せない。顔を隠せば本心は見えない。
少しだけ目を動かして景ちゃんを見ると、完璧な悲しみを表現していて誇らしい。昨日見た映画で思い出した感情だろう。私も負けていられないから、悲しみを演じる。景ちゃんとは趣の違う少し怒り混じりの悲しみを。
そしたら急にヒゲの男が景ちゃんに馬鹿にでも分かるように演じろと言い始めた。確かに無能に景ちゃんの演技は伝わりにくい、それは女優としてはマイナスだろう。自分と分かる人だけが分かっていては駄目だから。
景ちゃんが馬鹿でも分かるように演じていると私にも振られた。だから泣いてあげた。誰にでも理解出来るように。
景ちゃんとヒゲの男以外はざわめいて、大丈夫かと言い出したのでケロッとした顔で笑ってみせる。そうしたら安堵の息を漏らしたので、悲しみを表現出来たことに満足する。
これは合格だろうな、と思った後日、不合格通知が届き困惑するのだが。
最後の方は、恋歌ちゃんが辛口の嫌な奴に見えますが、スターズという日本を代表する俳優をウリにしてる会社に演技が下手な人居たら、会社の評価を下げるだけではなくその人自身に批判が集まりかねないと思っているからこその言葉です。基本的に演技に関しては真面目でプライドを持っているとしているので、不愉快に思われたらすみません。