日乃本帝國召喚   作:背の高い吸血鬼

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お久しぶりです。


14話 海戦前

中央歴1639年4月25日 マイハーク港

 

 

ついに、ロウリア王国が4000隻以上(正確には4400隻)の大艦隊を出向させたという情報が伝えられ、マイハーク港に基地を置く、クワ・トイネ公国海軍第2艦隊は艦船を集結させていた。

 

各艦は、帆をたたみ、港に集結し、きたるべき決戦の準備をしていた。敵船に切り込むための梯子を水夫が点検し、打ち込む火矢と、それを漬ける油が続々と船に詰みこむ。

 

矢を防ぐ木盾が、等間隔に設置され、大型弩弓バリスタが船横に配備される。

 

クワ・トイネ公国第二艦隊の総戦力。およそ50隻の、国家の未来が掛かった全力出撃である。

 

「壮観な風景・・・なのだが、な・・・」

 

提督パンカーレは、集結している自軍の艦船を眺め、溜息を付いた。

 

何故なら、港の水深が低すぎて入港出来ない、という理由で、マイハーク港の沖合500m程の場所で停止している日乃本帝國海軍第三派遣艦隊が瞳の中に映り込んでいるからである。全て木造の自軍艦船に対し、日乃本帝國の艦船は全て鉄でできている。木と鉄。防御力的に見れば、差は歴然だろう。

 

それだけでない。大きさも、自軍艦船での最大全長の40mを誇る旗艦船ですら、小舟に見える程、彼等の船は何倍も大きい常識を逸脱した大きさなのだ。

 

おまけに、多種に渡る魔道兵器を大量に配備しているらしい。

 

彼等の海軍を見て、我が海軍を見れば、何とちっぽけに映る事か・・・

 

「ライ。観戦武官を担当するブルーアイたちを連れて来い。そろそろ、日乃本帝國から【ユソウヘリ】が来ると伝えよ」

「はっ」

 

剣術での海軍主席の座に上り詰めた、若き幹部のブルーアイ等、計18人がそれぞれパンカーレの前へとやって来る。

 

日乃本帝國海軍での戦闘では、基本的に魔道兵器で全ての戦闘を行うので、剣を使う様な事態は万が一を省いて発生しないだろう。と、日乃本外務省経由で通達されていたが、それでは安心して部下を送り出せないだろうという気遣いから、全員帯剣してても良いという許可が下りており、向かう者達の腰には二本の剣が携えられている。

 

「諸君。彼等が一体どのような魔道兵器を扱い、どの様に戦闘を行うのか、その目に焼き付けて欲しい。諸君らの報告が、この国を変えるかもしれないからだ・・・頼んだぞ!」

「「「ハッ!!」」」

 

【ユソウヘリ】が飛び立つ時間になると、派遣艦隊で一番大きい小島のような、平べったい艦船から1騎の奇妙な鉄竜が飛び立つ。虫に例えるとトンボのような、飛行機械だ。以前見たものは、緑と茶のマダラ模様であったが、今回は白色をしたもので、ずんぐりした見た目をしている。

 

それがバタバタと音を立てて広場にやってくると、下方に吹き荒れる突風に、カンパーレ提督とブルーアイ等は顔を覆った。

 

広場に駐綺した飛行機械は、風と轟音を次第に弱めていく。胴体横の扉が開き、中からまた違ったマダラ模様の軍服に身を包んだ男が、しっかりした足取りで歩いてくる。カンパーレ達も歩み出ると、降りた男が敬礼する。

 

「こんにちは。私は日乃本帝国海軍のクワ・トイネ公国派遣部隊の勝埼と申します。この度、クワ・トイネ公国の観戦武官殿を迎えに上がるよう、指示を受けて参りました。」

「初めまして。私はクワ・トイネ公国海軍第二艦隊の作戦参謀をしております、ブルーアイと申します。この度は日乃本帝国の救援、感謝します。」

「それではどうぞ皆様、こちらへ」

 

ブルーアイたちは荷物を抱えて恐る恐る飛行機械ーーー輸送ヘリコプター【CH-53C重箱】と言ったかーーーに搭乗する。

 

【CH-53C重箱】

アメリカ海兵隊のCH-53Kを日乃本帝国海軍仕様に拡大発展させた大型の輸送ヘリ。小型の走行車両から数十人もの人員、大量の物資を輸送できる。武装はM2重機関銃を左右1丁ずつ装備可能だが、現在は装備していない。名前の由来は、いろいろ入るからと搭載するものを食材に例えて、重箱となった。

 

内部には装飾など一切ないが、座席はふかふかで心地がいい。

 

「それでは離陸します。シートベルトの装着をお願いします」

 

勝埼がこのようにします、と自身も座席に座ってシートベルト装着を実践して見せる。それを観戦武官たちは見様見真似で行う。金具がカチャっと音を立てて外れなくなると、勝埼が問題ないか確認して周り、CH-53C重箱が離陸を開始する。

 

奇妙な浮遊感だ。ワイバーンよりは多少遅いものの、翼の羽ばたきによる上下運動もなく、滑らかな上昇にブルーアイたちは驚く。ほとんど揺れずに飛翔するこの飛行機械は、ワイバーンよりも快適で、何より私たちのような人だけでなく大量の荷物を運ぶことができる。

 

「これは、素晴らしいな・・・」

「一体どんな構造なんだ?さっぱり分からんな・・・」

 

母艦までの飛行の最中、ヘリコプターの有用性に感嘆しっぱなしであった。

 

沖合に停泊中の母艦に近づくと、遠目で見ていたものとは比べ物にならない大きさに圧倒される。

 

「凄まじい大きさだ。見ろ、このユソウヘリと同型の物や、鉄竜の姿も」

「戦闘は魔導兵器で行うと言っていたが、これだけの大きさだ。兵の数も膨大だろう。白兵戦でもいけるのではないか?」

「航空母艦と言ってた。海上の鉄竜基地なのだろう。白兵戦は周りの小型・・・いや、我々からするとどれも大型だが、が行うのでは?」

 

彼らを受け入れるのは、二ヶ月前にクワ・トイネ公国へと外交官を派遣した、日乃本帝国海軍に4隻存在するハイドロゲン水素ガスタービン動力型航空母艦【加賀】である。全長400m、全幅90mと広大な飛行甲板の上には、ギム防衛戦で3万もの敵兵を殲滅した第六世代戦闘機【F-3C海神】や随伴無人戦闘機【XQ-3C青雲】が待機している。

 

CH-53C重箱は、管制官に指定された場所へと着艦。安全扉が開き、勝埼先導の元、ブルーアイたちが加賀の甲板に降り立つ。

 

(報告にあったが、本当に鉄なのか・・・一体、どのような魔法で浮いているんだ?)

 

ブルーアイたちの知識では、船=木製なのである。報告では鉄と書いてあっても、そんなことないだろうという思いで、実際に乗ってみると鉄製で。理解できるはずもなく、ブルーアイたちは混乱を強めた。

 

彼らは勝埼に言われるがまま、艦内に入る。

 

「中が明るい・・・これも、電気という魔法なのか?」

「つまり、このカガというのは魔導船ということか」

 

城内と錯覚するほど広い艦内を案内され、艦橋に入ったブルーアイたちは艦長に対面する。驚いたことに、この第三艦隊旗艦の艦長は女性であった。そして、そういえばと思い出す。日乃本帝国の軍隊では女性も採用していると。しかし、まさか艦長職でも就けるとは。

 

今度は遅れぬように、ブルーアイが敬礼した。

 

「クワ・トイネ公国海軍観戦武官のブルーアイです。この度は援軍、感謝いたします」

「初めまして、艦長の南雲です。早速ですが、我々は武装勢力の船の位置を既に把握しています。ここより西側500kmの位置、凡そ5ノットの低速ですが、こちらに向かってきています。我々は明日の朝出撃し、武装勢力に引き返すように勧告の後、従わない場合は殲滅する予定です。ああ、勿論、降伏や撤退する場合は攻撃を停止しますが・・・」

「せ、殲滅?・・・全て、殲滅ですか?」

 

そんなバカな。いくら魔導兵器を満載していたとしても、そんなことが可能なのか?いや、殲滅してもらえるなら、我が国にとってありがたいことなのだが・・・

 

「はい、殲滅する予定です。」

「失礼ですが、敵の総数はご存知でしたでしょうか?」

 

ブルーアイは日乃本帝国が海軍に対して敵の規模を知らせていないのではと危惧する。勿論、そんなことはない。

 

「武装勢力の船数は約4400隻と把握しています。クワ・トイネ海軍の皆さんに随伴いただく必要はございませんとお伝えしておりますが、貴官ら観戦武官殿の安全は保障いたします。ですので、明日までは艦内でごゆっくりとおくつろぎください」

 

ブルーアイたちは改て驚く。彼ら日乃本帝国海軍は、自分たちだけでクワ・トイネ公国海軍の協力を得ずに4400隻もの大艦隊に挑むつもりなのだと。

 

 

 

       *   *   *   *   *

 

 

 

その日のブルーアイの日記より

 

私はクワ・トイネ公国の民として、無事日乃本帝国の船に乗船した。

 

船までの空飛ぶ飛行機械の乗り心地は非常によく、金属でできた非常識な巨躯を誇る航空母艦という軍船も、艦内の温度が一定に保たれ、夜でも内部は明るい。ここは本当に海に浮かぶ船の中なのか?と疑いたくなるほど、艦内は揺れない。そんな巨船の艦長が女性であることにも、内心とても驚かされた。何もかもが常識外で、本当に驚かされる。

 

艦長と謁見した際、彼らはロウリア王国の軍船4400隻を相手に、たったの15隻で挑むと聞かされ、最初は自殺行為だと思った。しかし、艦内や、特別に兵装を見学させてもらうと、これほど大きく、そして金属でできていれば、確かに火矢では燃えず、バリスタでは貫けぬだろうと容易に推測できる。そもそも傷つけられないのならば、この船で体当たりすれば良いのではないだろうか。相手は木造船である。船体が金属ならば、このような戦術も可能なのでは?と案内の帝國兵に聞いてみた所。

 

『たとえ木造でも、船体が傷ついたら整備に時間がかかります。なので、我々は接近戦は極力行わず、離れて遠距離から攻撃を行うのです。それが、私たちの戦いの方法であります。』

 

とのこと。船体に傷とは・・・鉄製なのだから問題ないと思うのだが、それが彼らのやり方らしいので、強くは言えない。

 

そして武装だが、【しうす】という接近防御火器システムを見学させてもらった。白く細長い頭部に、腹から6本の棒が突き出た奇妙な生物を彷彿とさせる奇怪な兵器だが、実際の攻撃方法を魔導映像で見せてもらうと、一分間に約6000発もの光弾を高速で打ち出すと言う魔導兵器だった。これ一つを陸に配備できれば、戦列を組んだ数万の歩兵をも簡単に薙ぎ払えよう。まさに凄まじいの一言。一体、何を相手にこんなものを搭載しているのか。

 

名前に接近防御火器とついているように、誘導魔光弾(彼らは対艦誘導弾と言った)を迎撃する為の兵器らしい。誘導魔光弾といえば、御伽噺の悪しき大帝国、ラヴァーナル帝国が唯一実用化していたとされる伝承の究極兵器だ。そんなものを迎撃する為に作られたとは、見た目は一見奇妙だが、性能を知れば究極兵器から艦隊を守る頼もしい兵器に思える。

 

他にも兵装はあるらしいが、この航空母艦には搭載されていないとのこと。この艦の役目は、海上の鉄竜基地であって、主戦闘は周りの巡洋艦か駆逐艦が行うようだ。直接見れないことには残念でならないが、それらの軍船に守られている航空母艦が一番安全なのは理解している。戦闘時は艦橋からでもみれるそうなので、観戦させてもらおう。

 

はじめはたったの15隻と一時絶望感に飲まれたが、敵の攻撃がこちら側に通用しない可能性が高い。そして、日乃本帝国は、この戦いに絶対の自信を持っているようである。

 

これほどまでに緊張する観戦武官の任は、生まれて初めてだ・・・

 

 




いや、本当にお久しぶりです・・・気力が湧いたので書きました。不定期です。
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