日乃本帝國召喚   作:背の高い吸血鬼

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おはようございます。書けたので投稿します


2話 マイハーク激震

第六飛龍隊は、無念に包まれた。天災と思われる未確認騎をその射程にとらえる事無く、引き離された。撃退は不可能。なら、自分達は死んででも阻止すると、覚悟を決めたのに・・・

 

「我、未確認騎を発見。攻撃態勢に入るも未確認騎は上昇し、超高々度でマイハーク方向へ進行した!繰り返す―――」

 

マイハーク防衛騎士団、団長イーネは、第六飛龍隊からの報告を受け、上空を見上げた。

 

もしかしたら、天災であるかもしれないという。本物の天災を見た事の無いイーネにとって、飛龍でも追いつけない正体不明の者、で脳裏に浮かぶのは、文献で見た天災の壁画だ。飛龍の上昇限度を超えて飛行していく恐るべき天災。それがまもなく経済都市マイハーク上空に現れる。

 

団長イーネは、空を睨んでいた。

 

遠くの方から黒点が浮かび上がった。それが不明騎なのかと一瞬だけ思考を逸らし、再び意識を戻すと、その不明騎は目前まで迫って居た。何と言う速さ。これが天災なのか!

 

・・・いや、そもそも、アレは竜なのか?

 

ソレは圧倒的な速度でマイハークをフライパス。ゴオォォオオオ!!といった聞き慣れない轟音を響かせマイハーク上空を通過し、途中で急旋回して上空を旋回した。

 

「アレは何だ!?」

「ば、化け物だ・・・化け物が攻めて来たッ!!」

 

街の人々は恐怖に顔を引きつる。その恐怖は感染力の高いウイルスの様に蔓延して行き、たちまち騒動になった。

 

奇妙異な物体、大きくて灰色の機体、羽ばたかない翼、怪奇な音、翼と胴体に赤い丸に花が描かれている。明らかな領空侵犯。しかし、飛龍は遙か遠くからこちらへ向かっている最中。攻撃手段はあることにはあるが、今回は接近が速すぎて、何も準備が出来ていない。

 

事実上現時点では迎撃不可能。我々は唯、その姿を見つめる事しか出来ず、非常に歯痒い思いに焦らされた。

 

謎の飛行物体はマイハーク上空を何度も旋回し、東方向へ飛び去った。

 

「・・・如何やら、アレは天災ではなく、飛行機械のようだな・・・」

 

火を噴いて飛翔する飛行物体など、聴いた事もない。だが、あの羽ばたかないフォルムを見るに、竜等の生物とは考えにくい。

 

そう結論付けたイーネは、上層部へと報告に向かう。

 

 

       *   *   *   *   *

 

 

クワ・トイネ公国 マイハーク 北側の港

 

経済都市マイハークの北側に位置するこの港は【ハイマーク港】と呼ばれている。

 

そのマイハーク港に基地を置くクワ・トイネ公国海軍第二艦隊はいつも以上に、緊張に包まれていた。

 

事の発端は3日前。公国が保有する飛龍隊の防空網をあっさりと越えた大型の未確認騎がマイハーク上空を旋回したからだ。特に攻撃を受けたわけではないが、その未確認騎はロウリア王国や列強のパーパルディア皇国も保有しておらず、未所属の可能性すらある。

 

この明らかな領空侵犯は未確認騎が所属する何処かの国家の偵察の可能性が高い。更に、その偵察に使用された未確認騎は飛行機械の可能性があるらしく、もし本当に飛行機械であったら、それは第二文明圏最大の列強【ムー】の飛行機械の可能性がある。

 

しかし、ムーは飛行機械を輸出していないはず。非公式か、はたまた属国となった国に払い下げられた飛行機械なのか。

 

真相は不明だが、もし公国が所属不明の存在から偵察を受けて居たらと言うのが問題で、軍の緊張感を倍増させた。

 

クワ・トイネ公国軍はすぐさま厳戒態勢となり、軍艦は全て出払って沖合にて哨戒任務に就いている。所属不明騎と会敵した第六飛龍隊も哨戒網を何時もの三倍以上に増して警戒していた。

 

マイハーク防衛指令室には各方向の哨戒状況が報告されている。が、特に何も発見されていない。

 

「ノウカ指令は何だと思いますか?例の所属不明騎の正体」

 

若手の幹部が指令に聞く。

 

司令は飛行機械の可能性の方が高い、そう思っていた。なぜなら、

 

「俺は実物を見てないから何とも言えんが・・・第六飛龍隊の全員が目撃している。しかも、その中で絵が得意な者が奴のイラストを寄こしてきたが・・・龍には思えんな。」

 

若手幹部に釣られて壁を見れば、第六飛竜隊の者が描いた例の未確認騎のイラストが掲示されている。何処か平べったい印象の竜であり、頭部が不自然に丸みを帯びて膨らんでおり、顎部分には髭かしこりの様な突起物。極めつけは羽ばたかず、尻から火を噴いてワイバーンよりも高速で飛翔するらしい事。

 

火を噴く攻撃はワイバーンでも可能だが、火を噴いて飛翔する竜など聞いた事が無い。

 

「やっぱり竜じゃ無いですよね・・・」

 

若手幹部が不安を隠さずに肩を落とした、その時。更に不安を煽るかのようにして通信員が鋭い声を上げた。

 

「司令!!」

 

司令と若手幹部の表情が強張り、視線を通信員に向けた。

 

「軍艦ピーマから報告!【未確認の大型船を発見。現在地、マイハーク港から北へ60km。これより臨検を行う為、同船に向かう】との事です!」

「大型船だと・・・?」

 

 

       *   *   *   *   *

 

 

クワ・トイネ公国

マイハーク港沖合60km地点

 

クワ・トイネ公国海軍第二艦隊所属の軍艦ピーマは、不審な大型船3隻に向かっていた。

 

帆をいっぱいに貼り、風を動力として進むと共に、太鼓のリズムで帆船より突き出したオールを漕いで向かう。軍艦は既に臨戦状態に移行しており、水兵は皆、革鎧に身を包んでいた。

 

「船長、未確認の船たちは接近する私達に気付いたのか、急速に速度を落としている様ですね」

「そうだな・・・副船長、臨検は私が先陣を切る。もしもの事が有れば、君に全てを任せる。」

「は・・・何か懸念することがありましたか?」

 

ミドリ船長が大型船を凝視したまま顔を動かさないので、副船長も大型船たちを注視する。しばらくして漸く、こちらが接近しているはずなのに相手に辿り着かず、輪郭だけが大きくなる事実を認識する。

 

余りの大きさに距離を誤認していた。

 

「副船長・・・あれは、大きさが船の水準を超えてないか?」

「は、はい・・・私には孤島が浮いてるようにしか・・・」

 

絶句していたミドリ達は、なんとかその会話を絞り出した。

 

「船の上に、白い生地に草に囲まれた赤い丸、その中心にピンクの花が掲げられた旗が・・・うん?」

 

ミドリは出撃前に海軍基地で見た未確認機のイラストを思い出す。そのイラストには、胴と翼に赤丸と花が掛かれたマークが存在し―――

 

「―――ッ!?あの船は未確認機と同じマークを持っているぞ!」

「なんですと!?」

 

既に射程に入って居るだろうに攻撃されない事から、最大限の警戒。軍艦ピーマの船員一同がその巨体に圧倒される中、大型船に近づく。

 

すると、大型船の上から数十人の人間が軍艦ピーマに向けて点滅する光を照射する。何らかの攻撃かと身構えたが、大型船の人間が手を振っていることから、敵対の意思はないことをアピールしているのだろうか。

 

船長ミドリは険しい表情のまま振り返る。

 

「これより同船の臨検を行う。諸君は私の指示、もしくは攻撃を受けない限り、決して此方から攻撃してはならない。また、相手は所属不明だが、もしかすると新興国かもしれん。国と国のやり取りになる為、不用意に高圧的な態度を取る事を禁ずる。良いな!」

「「「「「ハッ!!」」」」」

 

船長ミドリは、大型船の船員の誘導に従い、同船に移った。

 

 

       *   *   *   *   *

 

 

日乃本帝國より南に900km地点の海域

日乃本帝國海軍 ハイドロゲン水素タービン動力空母赤城型二番艦【加賀】

 

海水から水素を摘出し、それを燃料とする事で事実上の【燃料無補給艦】となった【加賀】は、異界の海を奔る。

 

突然他国との通信が途絶し、人工衛星の信号すら探知不能となり、全く別の世界に転移してしまったと理解した晴香と日乃本帝國政府は、新世界固有の不明現象やジェット機を超える速度で飛翔する超生物が存在した場合などを考慮し、有人ではない帝國海軍の洋上型無人哨戒機【海蛇】を各方面に飛ばした。

 

日乃本帝國は日本国の様に一国だけで生きて行けないなんてことはないが、それでも資源は不足する。早急に文明のある国々と国交を結び、資源やこの世界の情報を確保する事が絶対だと認識した政府は、迅速に行動。まずは南方面に発見した、規模から推測して文明を持つと思しき民族と国交締結の可能性を見出す為、帝國海軍最大の航空母艦の一隻である【加賀】に外交官を乗せて派遣する事を決定する。

 

何故に加賀が選ばれたかと言うと、広範囲の哨戒は無論、異世界の国家より攻撃を受けても小国程度なら問題なく消滅させられる戦力を有する空母は適任だと判断されたからだ。しかし、空母単艦で送り出して何かあってはいけないので護衛として金剛型ミサイル巡洋艦【比叡】と吹雪型汎用駆逐艦【吹雪】、水中には蒼龍型潜水艦【剣龍】も随伴する。

 

砲艦外交になるのでは?と否定的な意見が出たが、晴香皇帝が強く願ったことでこの編成により派遣が決定したのである。異世界転移により外交官を送る際、大きな船一隻では舐められる可能性の方が高いと小説知識により理解していたからだ。

 

因みにこの時は、晴香皇帝はこの世界が【日本国召喚】の世界だと気付いていない。

 

レーダーに小さな船を捉えた【加賀】は、対象民族の船と判断して接近を図り、やがて一つの帆船を発見する。歴史の教科書に出て来そうなほど設計が古く、よく見ると火矢に用いる油壺や矢避けの盾、革鎧に身を包んだ水兵たちが茫然として本艦を見上げているのがわかる。

 

何パターンか想像していた晴香皇帝以外の幹部たちは、この世界の構造がどうなっているのか全く不明な状況で、現地人を傷つける訳にはいかないと慎重に減速し、舷梯を降ろす搭乗口を開き、隊員たちが現地人を招き入れる。

 

隊員は現地人を【加賀】の甲板に案内すると、外交官が話をする事となった。

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