「半田殿、日乃本帝國の軍隊を見学したいのだが、無理じゃろうか?」
「そうですね・・・少々お待ちを」
半田が一面だけ光る小さな板の様な物を取り出すと、それを操作して耳に当て、独り言を始めた。魔道通信でも出来るのだろうか?異常に小さいようだが・・・
「失礼しました。 静岡県東富士演習場畑岡地区にて【富士総合火力演習】の開催が予定されています。一般市民に向けて、我が國の軍隊はどれ程の実力を所有しているのか、分かりやすく説明する様な模擬演習ですが、実際の作戦行動を想定して進められるプログラムは圧巻ですよ。それでよければ手配できます」
「おお、誠にすまんがお願い申す!」
ワイバーンを超す超高速の哨戒機や、400m超の巨大船を有する日乃本帝國の訓隊を見学できる機会を得て、ハンキ将軍は上機嫌であった。
「他に行きたい方はおられますか?」
「私も行きます」
ヤゴウが手を上げる。他の3名は市街視察に出ると言うので、ハンキとヤゴウの二人で日乃本帝國本国最大の演習場にして、最大の模擬演習展示会である【富士総合火力演習】を拝見しに行く事となった。
因みに、博多が存在する福岡県から演習場が存在する静岡県までの距離は、史実日本と地形が全く異なっており、ゲーム世界で一番の脅威を誇っていた隣国に対抗する為に福岡県の隣には最大規模の陸海空軍共用の基地がある。そこが静岡県であり、隣同士なのである。良港の博多港からも近い立地に建てられたため、距離的には40kmしか離れていない。
余談だが、富士山はオブジェクトとして存在し、史実よりも約1000m標高が増えて4776mの日乃本帝國最大の火山である。本来であれば史実同様サイズの設置が行われるはずであったが、桁の設定を間違えた晴香のミスによりこのような形となった。
大型のオブジェクトほど、大規模な改装には巨額の金(ゲームの)が掛かるので、仕方ないとそのままになったまま、結局直される事無く異世界へとやってきてしまい、地形の大規模調整等のゲーム能力が使えなくなってしまったためにこれからもそのままな状態が続く。
* * * * *
翌日 静岡県御殿場市 東富士演習場畑岡地区 富士総合火力演習会場
ハンキとヤゴウは富士総合火力演習場の来賓席にいた。半田も同伴している。
(正直、高速道路と言う奴には目を回しそうになったが、やっと鉄龍たちの性能を間近で見れる!それに―――)
今回は総合火力演習。つまり、日乃本帝國に存在する陸軍、海軍、空軍の三軍全てが一体となって行う最大級の大演習である。鉄龍の性能は無論、陸軍や海軍に関しても興味しかないハンキ将軍は感激した。
ハンキだけでなく、ヤゴウも鉄龍の性能については興味があった。何より、未確認機の報告を裏付ける必要もある。その任を外務局側ではヤゴウが担っていた。
2人の緊張をよそに、富士総合火力演習が開幕する。
* * * * *
一般市民が軍の基地の中へ入場して軍隊と触れ合うなど、クワ・トイネ公国の常識からすれば異常である。しかし、見学しに来る人の多さ―――まるで難民の大移動でも見ているようだ―――を見るに、この国の軍は人々に愛されているのだなと気付くハンキであった。
『大変長らく御持たせ致しました。只今から令和2年度、富士総合火力演習を開始します―――』
とのアナウンスと共に始まった富士総合火力演習だが、ヤゴウの想像する軍事演習のソレを悪い意味で斜め上も予想を上回った。
まるで龍の唸り声の様な、低い咆哮を上げて広場を駆けて来たのは、緑と茶で塗装された鉄の地龍。異様に長い角の様な物を備えたソレは、5匹がそれぞれの場所に展開した。
「な、半田殿。アレは自動車という機械に魔道砲を搭載したものか?」
「魔道砲では無く、科学の力で放つ火砲ですね。それを搭載した戦う自動車です。」
『それでは、66式155mm自走留弾砲による、砲弾が地表で破裂する着圧射撃をご覧いただきます。』
『―――てぇッ!!』
―――ドドォンッ!!!
「「おおぅ!?」」
外務局員という、軍事に関係が乏しいヤゴウだけでなく、魔道砲を撃つ音を何回も聞いていたハンキ将軍でさえ驚く、まるで火山の噴火を思わす発砲音。そして、
『弾ちゃーく・・・今!』
遠方の土剥き出しに禿げた小ぶりの山に、煙で出来た花が咲いた。すると、数秒後には爆発音がこの会場に木霊し、大音響が轟く。
「「・・・・・・」」
長距離からこの様な大火力の威力投射。魔道砲ですら決して届かない、その更に超射程のこの【66式榴弾】が相手では、我が国の軍では長射程だった矢やバリスタをもってしても手も足も出まい。それ程、この超兵器は次元が違う。
それに、遠方から見た限り、あの着弾では砲弾その物が爆発したようだ。爆破する砲弾など、聴いた事も無い。もし着弾地点に兵が密集していたら・・・この一撃で100人は軽く吹き飛ぶ!
『それでは、66式155mm自走榴弾砲による、スラローム着圧射撃をご覧いただきます』
「・・・半田殿。【すらろーむ】とは?」
「スラロームとは、ジグザグに走行しながら射撃する高度な射撃技術です」
「なんと!動きながら撃つのか!?・・・それで、当たるのか?」
五匹がほぼ同時に動き出し、それぞれジグザグに動き始めた。そして急カーブを行っている最中に射撃命令が下り、射撃員はその命令を忠実に守り、砲を撃ち放つ。
鉄の化け物が大地をうねりながらの、10kmの射撃。本当に当たるのか?と疑問顔のハンキたちをあざ笑うかのように、先の着圧射撃の着弾地点で爆破が発生する。当たったのだ。これほどの激しい軌道を描きながらの射撃で。
兵で言うならば、騎馬でジグザグに走行しながら、弓で100m先の1mの的の中心を射る様な物。普通ならまぐれや奇跡が起こらない限り当たる事は無いが、地を駆ける化け物は『効力射』と命令されると共に、次弾を人間が装填しているとは思えない速度で次々に発射し、その全てが的に吸い込まれる様にして命中する。
10式戦車に初搭載された射撃管制装置の発展型であり、走行中も主砲の照準を目標に指向し続ける自動追尾機能があり、タッチパネル操作でも主砲の発砲が可能である。なので98%以上の、驚異の命中精度を誇るのだ。水平射撃で榴弾砲でも戦車のように攻撃できるが、あくまでも榴弾砲である。正式に戦車は存在するが、最近の自走榴弾砲は移動しながらでも撃てるなら撃つことが求められる。それに答えて開発された66式榴弾砲は走行射撃も可能な仕様となっていた。
それからは【AH-23cヤンマ攻撃ヘリコプター】の上空からの30mmチェーンガン射撃や、無人標的機を【06式短距離空対空誘導弾】による空中破壊、強化外骨格と12.7mmを弾くセラミック装甲を備えた【1式強化外骨格】を纏った兵たちによる高速展開など・・・
陸軍だけでもクワ・トイネ公国軍は勝てない。有利に立てる分野が魔法程度しかない事を見せつけられた。
『左手上空をご覧ください。上空で待機していた【F-3】制空型戦闘機が時速850kmで侵入してまいりました。火力誘導班により照射されたレーザーにより、誘導爆弾を投下します』
「なっ・・・!?」
「何じゃと!?な、半田殿!今850km言ったか?聞き間違いでは無いのか!?」
ハンキが興奮して半田に話しかける。
「はい、間違いございません。時速850kmとアナウンスしていました。」
左方向から無音で、飛行物体が飛んで来た。来賓席に近づいた頃、漸く音が聞こえ始める。
「何と言う速さだ!」
「これが、マイハークを飛んだ【鉄龍】かの!」
ハンキたちが吼える。
「いいえ、件のアレは哨戒機でして、こちらは戦闘機です!戦う為の飛行機です!!」
周囲の音に負けじと、半田も吼える。
―――イィィイイイィイイイイ!!
マットな質感に覆われた大型のステルス機―――第六世代戦闘機【F-3】はウェポンベイより爆弾投下後、垂直に近いのではないかと思うほどの軌道で上昇を始める。主翼上部には一部剥離した空気が白い雲を作り、翼端では主翼下部から上部へ周り込む空気によって白い航跡を引く。
―――ゴオォォォオオオオオォオッ!!
雷鳴の様な轟きが周辺一帯に響き渡る。機体の後ろからは赤い炎が二つ見える。アフターバーナーの点火。その飛行機は短時間の内に、蒼穹の大空へと消えて行った。
「「・・・」」
ハンキもヤゴウも、初めて見る戦闘機に絶句している。
空中で投下されたレーザー誘導爆弾は、レーザーにより照射された目標に向かって微調整を繰り返しながら、目標に向かって突き進み、着弾。これまた大きな爆発音が響き、着弾地点には50m程のキノコ雲が出現した。
『右手上空をご覧ください。先程の【F-3】が戻ってまいりました。』
「え、もう!?」
『【F-3】は時速600kmほどで進入し、皆さまの前で旋回します。この間、パイロットは旋回中、大きなGがかかります』
F-3が客席前で大きく旋回する。
「これ程の運動性能を有しているのか・・・」
そのまま上昇
「あの体勢から、更に上昇が可能なのか!?」
その後もインメルマンターンや宙返りといった、普段の総火演では見られない、空軍機F-3の曲芸飛行。ステルス性能と高運動性を両立したその機体は、さながら灰色に染まったブルーインパルスのようであった。
今回のちょっとした曲芸飛行は、使節団員の歓迎の為に行ったが、見学に来た市民たちに好評なら、来年度からは空軍機による曲芸飛行もプログラムに入れる事となる。
「・・・なあ、半田殿。あの・・・えふ・・・なんとかという鉄龍は、一体どれくらいの速度が出るのじゃ?よもや、あれが全力ではあるまい?」
「【F-3】ですね、最大速度はマッハ―――音速、つまり音が伝わる速度の2.9倍ですね。音速を超えると衝撃波が出る為、今日の飛行は、時速850kmくらいに抑えていたみたいです。」
「「・・・・・・」」
絶句。
『―――左手海上をご覧ください。』
無言で海上を見ると、巨大船がいつの間にか存在した。灰色であり、砲が一門しかない割には異常に大きな船体を持つ、チグハグな印象を抱かせる船だが。
『対地攻撃任務が与えられた駆逐艦【山風】より、通常弾頭のトマホーク墳進弾が発射されます。爆発の際、とても大きな音が発生しますので、注意してください』
『―――トラック№253。トマホーク墳進弾撃ちー方始め!』
『トマホーク模擬墳進弾、撃ちー方始め!』
突如、山風と言われた軍船が燃え上がる。すると、もうもうと発生した白煙から、光の矢が放たれた。
トマホーク模擬墳進弾は【山風】より発射されると、安定翼を展開して、設定された目標である白の台に向かって突き進む。そして、
『トマホーク模擬墳進弾命中!』
先程F-3が投下した爆弾よりも大きな爆発が発生し、100mを超えるキノコ雲が発生。遅れて、爆発音と共に衝撃波が観客席にまで到達し、ハンキ達は恐れおののく。
見学しに来ていた帝國民たちは興奮のあまり歓声を上げた。
* * * * *
【66式155mm自走榴弾砲】
CI-5(CI-4の後継)と射撃管制装置を装備して、走行射撃が可能となった自衛隊の99式の様な物。
通常最大射程は40km。特殊弾使用時の最大射程は70km。なお、現在は更に高射程化を目指した特殊弾の開発中である。
【AH-23Cヤンマ攻撃ヘリコプター】
AH-64Dをイメージして自国生産された攻撃ヘリコプターだが、二重反転ローターやステルス性の付与などにより外見はアパッチに全く似ていない。しかし、出力が大幅に上昇したため重装甲化。並みの攻撃では胴体を抜くことが困難となった。
武装
・30mm単銃身機銃
・00式短距離空対空誘導弾(射程約40km)
・01式短距離空対地誘導弾(射程約40km)
・70mm無誘導弾収容器(一対16発ずつ)
【06式短距離空対空誘導弾】
装甲車に搭載された短距離誘導弾。
射程は50km
【1式強化外骨格】
人工筋肉等によるアシストにより60kg超過の装備を身に纏いながらでも16kmの速度の走る事が出来る【0式補助強化外骨格】の12.7mmまで耐えうるセラミック装甲を備えた戦闘用パワードスーツ。装着式のバッテリーは24時間持つが、様々な戦闘行動により消費電力が異なる為、実質稼働時間は12~16時間程度。体温を電力に変換する発電装置も初期から搭載されているが、効率はそれ程良い訳では無い為、5時間の充電で30分ほどしか稼働出来ない。
武装
・12.7mm重機関銃
・その他各種装備
【F-3】
主に制空戦闘に重心を置いた制空ステルス戦闘機。派生型として制海型が存在する。制空型だが対地攻撃も可。ステルス性能が極限まで洗練されており、並みのレーダーには影すら捉えられない。戦闘行動範囲の拡大により大型化、それに伴いウェポンベイの拡大により様々な兵装を備える事が出来る。
武装
・20mm多銃身機銃or指向性高出力レーザー各種一門
・20式長距離空対空誘導弾(射程150km強)
・10式中距離空対空誘導弾(射程100km)
・00式短距離空対空誘導弾(射程40km)
・500kg無誘導爆弾
・500kg誘導爆弾
・8式燃料気化爆弾
制海型
・20mm多銃身機銃or指向性高出力レーザー各種一門
・10式中距離空対空誘導弾(射程100km)
・00式短距離空対空誘導弾(射程40km)
・30式超長距離空対艦誘導弾(250km強)
駆逐艦【山風】
対地、対空、対艦、対潜戦闘を卒なくこなせる汎用性の高い帝国海軍が保有する駆逐艦。汎用性の高さから、姉妹艦が世代が違えど40隻以上存在するベストセラー傑作艦である。
武装
・127mm速射砲一門
・20mm多銃身独立動作式機関銃二門
・12.7mm機銃四門
・垂直発射装置68セル
・30式艦搭載型超長距離空対艦誘導弾発射機4門×二機
・533mm単魚雷発射機三門×二機
・その他チャフなど
基本【日本国召喚】の流れで進みますので、この先どの様な事が発生するかは殆どの読者さまは知っていると思います。なので、もしこれから先のお話に出して欲しい兵器とか話でもありましたら感想から意見をお願いします。
―――意見されたものでも、必ず書くわけではありません。
あと、専門的過ぎるもはちょっとご勘弁を(にわかですのでw)