東方凡庸録   作:バルバドス

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12話 吸血鬼の眼差し

廊下を歩き大きな扉を開けると、大きな部屋に繋がっていた。

 

「あら、また客が来たの?」

 

「お、霊夢!」

 

そこには魔理沙と、部屋の奥の大きな椅子に座る青がかった銀髪の少女が1人いた。白を貴重とし、赤のラインが入ったドレスがよく似合う彼女は、肘かけに肘をつき顔を寄せて鋭い白い歯を覗かせている。よく見ると背中から翼が伸びていて、特徴的な歯と組み合わせて吸血鬼かそれに近い種族であるのを看取した。

 

「遊は?」

 

「霊夢と一緒じゃないのか?」

 

「...急にいなくなった」

 

そう現実は思い通りとは行かない。彼はどうして1人でふらふらと私のもとを離れるのか、飛べもしない霊力も魔力も妖力もない無力な人間を自覚しているのに。

 

「不味いんじゃないか、あいつ1人じゃ何も出来ないぜ」

 

「それは彼自身がよくわかってる。だから、1人で何処かへ行ったのが理解できない」

 

「遊も勘がはたらいたとか?」

 

「だからはたらいた所で何も出来ないじゃない。それに仮にそうだとしても彼の性格上私へ事前に伝えるはずよ」

 

「そうだな、なんか一言いいそうだよな」

 

何も言わずどこに行く気なの。

...本当の貴方をみつけるんじゃないの?

もしかして、私のみえないところで本当の貴方になろうとしているとか。やっぱり何か隠していた?

わからない、貴方の事はやっぱりわからないけど、私は貴方を信じる。逃げた訳じゃない、遊は大事な何かを思い出すために行動したんだ。

わかった、だったら私も博麗の巫女の責務を果たさなくてはならない。私も遊も、今は自分の事に集中すればいい。

 

 

 

「...ねぇ」

 

不機嫌そうな声だった。当然である、突然の来客者2人が自分の部屋でやいややいやと会話を始めたのだから、文句を言う権利は当然ある。

 

「用がないなら帰ってくれるかしら」

 

腕を前後に振るい追い払うジェスチャーをしながら、2人の来客者をきっと睨み付ける。その鋭い眼差しに2人は、心の奥底にまで突き刺さる畏れを感じた。

強者の眼差しは、相手の戦意を奪い死の恐怖を呼び起こす。それが出来るこの少女は外見からは想像もつかない力を持っている、と肌で感じた巫女と魔法使いの顔は一層引き締まった。

 

「待たせたわね。私は博麗霊夢、博麗の巫女よ」

 

「霧雨魔理沙、普通の魔法使いだ」

 

「レミリアスカーレット。スカーレットデビルとは私の事よ」

 

「なんだそれ」

 

「...まぁいいわ。ここに来たのも最近だし、知らなくても仕方ない」

 

巫女と魔法使いは紅い悪魔にピンときてないようで首をかしげている。

 

「レミリアスカーレット。単刀直入に言うけど霧を止めなさい。これは幻想郷の総意よ。」

 

「嫌よ、これで日中外で騒げるのに」

 

「日中ってお前、吸血鬼か?」

 

「えぇ、歴史ある由緒正しき吸血鬼の一族よ」

 

人の血を吸い永きを生きる闇の世界の住人。それが吸血鬼又の名をドラキュラ。彼女の余裕は強者ゆえ、備わった恐るべき力を振るえば鮮血が舞い苦痛に悶える声が響き渡るだろう。間違いなく生物の限りなく上にいる存在である。

当然人間である博麗では身体能力の差で勝ち目はない。しかし毅然とした態度で臆することなく立ち向かう。彼女にも絶対的な自信、博麗の巫女のプライドがある。

 

 

「あんたのための幻想郷じゃない。いますぐ霧を止めなさい」

 

「止められるなら止めてみなさい!博麗の巫女!」

 

「結局こうなるのよね!」

 

対峙した2人は飛び上がり、宙で舞いながら弾幕を放つ。真正面から放たれる弾幕、敵の進路を塞ぐいやらしい光弾、死角から襲い来る札。持てるすべてをぶつけ合う。ごっこと言うにはあまりにも熾烈な戦い。

血は流れずとも、傷を負わずとも、彼女たちは互いに譲れぬもののため気力を削りあう。

 

「天罰『スターオブダビデ』!」

 

青の光弾が博麗の周囲に表れると、分裂し四方へ飛び散る。難なく避けられるが、光弾の間をすりぬけるように光線が駆け抜ける。

 

「面倒なスペカね」

 

「まだ終わりじゃないわ」

 

天罰のスペカの時間が切れると、間髪いれずに次のスペカを掲げた。

 

「神罰『幼きデーモンロード』!」

 

青の光弾と巨大な黄色の光弾、そして青の光線が一度に放たれる。自由を奪う光線に囲まれると、そこに光弾が容赦なく襲いかかる。

博麗霊夢はまたもかわす。彼女の能力は空を飛ぶ程度の能力、空中は彼女の独擅場である。

必要最小限の小さな動きで体力の消耗を抑えながら、危なげなく立ち回れている。

しかし、連戦の疲労は確実に彼女のパフォーマンスを鈍らせる。

 

「く、ここまでやるとはね」

 

「そろそろ反撃いいかしら?」

 

それに一番早く気づいたのは彼女自身。敵に悟られる前に一気に決着をつけようと決死のスペカ攻勢に出る。

 

「霊符『夢想封印』!」

 

無論ここは夢想封印以外にない。疲労により重くなる体を目一杯に使いスペカを掲げた。

 

「この程度なら!」

 

弾幕をぶつけ相殺し強引に道を作る作戦に出たレミリア。しかし、正面から横からレミリアを飲み込まんと押し寄せる弾幕に次第に額に汗を浮かべるように。

 

「はあぁぁぁぁ!」

 

全身全霊全てを込めた、今までで一番の夢想封印。

 

「く、こんな...!人間に、

 

 

 

 

 

 

残念」

 

 

レミリアの付近の弾幕が消し飛んだ。次々と、消えていく。不適に笑う彼女が持つ槍、これで弾幕を殺しているのだ。これもレミリアのスペカである。

 

「な、なによそれ」

 

「神槍『スピア・ザ・グングニル』、本来はこんな使い方じゃないんだけど...本当の使い方はこうやって、ね!」

 

レミリアは持っている槍を博麗目掛けて投擲した。紅い槍は真っ直ぐと博麗の心臓目掛け、弾幕の間をすり抜ける。博麗は夢想封印を止め直ぐ様回避する。

 

「神術『吸血鬼幻想』!」

 

隙を逃さず、博麗に息をつかせる暇もなくレミリアは3枚目のスペカで攻勢に出た。その早さに博麗も一瞬反応に遅れてしまう。

巨大な光弾が数個放たれたがなんとか反応出来た。

しかし、博麗の疲労もとうとう身体に出てしまった。

巨大な光弾の軌道に小さな光弾が表れ不規則に散らばり始めた。この動きについていけなかった。

 

「終わりよ!博麗の巫女」

 

動きが止まった博麗を見てレミリアは勝利を確信した。

弾幕が今度は博麗を囲み、接近する。

負ける、初めての敗北が現実になろうとしている。

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