東方凡庸録   作:バルバドス

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14話 語られぬ死闘

「いいぞフランドール!」

 

軽い身のこなしで吸血鬼の攻撃をかわしながら男は叫ぶ、

 

「ちょろちょろ、動かないでよ!」

 

男を破壊せんと能力を乱発するが地面が抉れど当たる気配はない。イライラを隠せないフランドールは更に攻撃を苛烈にしていく。

 

「これがありとあらゆるものを破壊する程度の能力か!」

 

「なにこいつ、はやく死んでよ!」

 

「じゃあ当ててみろよ」

 

挑発に乗ってしまったフランドールは両手で退路を絶つように破壊し始めた。しかしその僅かな隙間に逃げ込まれては、歪んだ笑顔を見せつけられる。

 

「まだまだ、俺はなにもわかっちゃいない。」

 

「うるさい、うるさい!」

 

「俺はなんだ?俺は誰だ?教えてくれよフランドール」

 

「死んで、死んでよ!」

 

「俺は、知りたいだけだ」

 

会話ではない。互いに叫んでいるだけの異様な光景である。

呆然と闘いを見守る博麗霊夢に、霧雨魔理沙が近づいて肩に手を置いた。

 

 

 

 

 

「何、魔理沙」

 

「...いや、何もない」

 

何か言いたげな顔だけして、魔理沙は何も話さない。

おてんば娘がここまで神妙な顔つきになるなんて、初めてかもしれない。

数秒の沈黙の後に、小さな声で呟いた。

 

「いいのか、このまま遊を闘わせて」

 

私は答えなかった。答えられなかった。

あのフランドールの瞳には狂気が宿っていた。恐ろしいまでに純粋で、震えるほどに底の見えない闇。

弾幕ごっこなんて生易しい身を削り精神を磨り減らす死闘でしか、彼女を止めることなんてできない。

それを、何も持たない普通の男が真正面からぶつかっていくのだ、止めるしかない。

だが、戦況は予想外の結果となった。

 

フランドールの熾烈な攻撃をひらりひらりとかわしている。それに焦ったフランドールの顔と、まだ余裕の見える遊。遊が精神的に彼女を追い詰めている。

 

それに、私は本当の貴方を知りたいの。

これが高橋遊の本当の姿なら、私はもっと見ておきたい。粗野で威圧感のある態度で、狂喜とも言えるあの笑顔、フランドールとなにも変わらない。

こんなのが、外にいたの?

この人間が、あの模様の何を教えてくれるの?

先程から叫んでいる自問自答は何?

尽きぬ疑問に、答えてくれるのはこの闘い。

 

「いいの、彼に任せる」

 

「だけど、死ぬかもしれないんだぞ!」

 

死なんて、遠いものだと思っていた。しかし私の目の前で繰り広げられる闘いは殺しあい。なぜこの2人は命の奪い合いが怖くないのか。死が怖くないのか。

 

「魔理沙は、死が怖い?」

 

「なに言ってるんだ、当たり前だろ」

 

「そうよね、だから...間にはいるのが怖い」

 

「怖い、か。霊夢も恐怖とか感じるんだな。」

 

「こんな時に茶化さないでくれる?」

 

少しだけ、いつもの会話が出来た。すると心の余裕が持てた。

止めるべき、わかっているけど...もう少しだけ、見ていたい。

私は、知りたい、高橋遊という人間を。

 

 

破壊、回避、これが闘い。弾幕ごっこがなければ、こんな原始的な闘いをしなくてはならなかったのか。

 

「フラン!止めなさい!」

 

「うるさい!黙っててよ!」

 

レミリアがフランドールに接近して腕をつかんだが振り払われ、能力によって力任せに吹き飛ばされた。体が地面を数回跳ねた後、咲夜が彼女を抱き抱え、声をかけた。

 

「お嬢様!」

 

「やめて、ふらん」

 

それでも手を伸ばしてうわ言のように妹の名を呼ぶ。

...さすがに、そろそろ私の欲求を満たすためだけに傍観していてはダメね。この不毛な闘いを終わらせなくちゃいけない。

2人の元へ近づく。

 

「手を出すなよ!これは俺とフランドールの闘いだ!」

 

「何言ってるのよ!殺し合いなんて止めなさい!」

 

「邪魔をするな!」

 

「邪魔なのは貴方よ!」

 

「霊夢!上だ!」

 

遊との言い争いに気を取られていた、魔理沙の声にハッと顔を上げるとフランドールが熱を帯びた細長い剣のような物を私の脳天に目掛けて振り下ろす態勢を作っていた。

完全に不意を突かれた。

 

「キャハハ、レーヴァティンで壊れちゃえ!」

 

「霊夢!」

 

全てがスローで見える。振り下ろされる凶器、フランドールの笑い声、そして遊が私の前まで走ってくるのも。

 

鈍い音と、何かが焦げる音がした。彼の背中で見えないが、小さく呻く彼の声が私の耳にははっきりと聞こえた。

 

「へぇ、切れないんだ」

 

「遊...ねぇ」

 

私は回り込んだ。そこには腕をクロスさせ剣を受け止めていた遊の姿があった。腕は切り落とされてないものの、剣の熱によって皮膚は爛れ手首から上は火傷で真っ赤になっている。床には肘から伝った血が水溜まりを作り、苦悶の顔を浮かべている。

 

「これで手、使えないね」

 

剣を引き抜いたフランドールは笑い声を響かせ、再度剣を構え直す。とどめを差すつもりだ。

私は咄嗟にお札をばら撒き牽制した。

 

「トドメ差したいから、邪魔しないでよ」

 

「やめて、もう遊は」

 

「まだだ!」

 

彼は距離を取ったフランドールに接近していく。

焼けて使い物にならない手のまま、まだ闘おうとしていた。

 

「もうやめて!貴方がこれ以上闘う理由はないの!私に任せて」

 

「理由はある、だから下がってろ」

 

「まだやるの?」

 

「当たり前だ」

 

なんで、理由って何よ。そんなボロボロになってまで闘う理由って何よ!

 

「フランドール、反撃させてもらうぜ...の前に」

 

彼は火傷した手にもう一方の手を重ね撫で始めた。

すると赤色が薄くなり、元の肌色に戻っていく。

 

「どうゆうこと...火傷が一瞬で」

 

あんなに重症だったのに、まるで魔法だ。しかし遊は魔法なんて扱えるはずもない。

 

「ねぇ、貴方...何者?」

 

「人間だが」

 

「その魔法、私も知ってる。怪我を早く直す魔法よね。それを出来るのって私と御姉様しかいないんだよ」

 

「じゃあ俺が3人目だな」

 

「それにその魔法、吸血鬼の頑丈な身体でないと耐えられないのに、貴方吸血鬼?」

 

「どうだかな」

 

「よく考えれば私の攻撃をあんなに避け続けられるのも人間な訳ないよね。やっぱり吸血鬼よね?」

 

「...ただの吸血鬼じゃない、面白いものを見せてやる」

 

治ったばかりの右手をフランドールに向けた。そして握りこぶしを作った。

 

「きゅっとして」

 

「!?」

 

「ドカーン!」

 

フランドールは空中に飛び上がった。すると立っていた地面が轟音を立て爆発した。

 

「私の、能力」

 

「いくぞフランドール、反撃させてもらうぞ」

 

 

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