東方凡庸録   作:バルバドス

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22話 取材中!

幻想郷の朝にも慣れた。

何かに追われるように起きていた憂鬱な朝も、ここでは毎日が休日の朝だ。

 

「今日のご飯はー?」

 

「まだ昼にもなってないよ」

 

博麗とゆるいやり取りをしながら境内の掃除を済ませる。最近色づいた葉が多いな、夏が終わり秋に入ったんだなと落ち葉で四季の移り変わりを感じるこの頃であった。

 

「どうもー」

 

昼が過ぎたあたり、掃除も一段落した頃に聞き慣れない元気な声が神社に響いた。顔を出すと見慣れた顔と初めて見る顔が並んでいた。

一つは金髪男、僕の知っているこんな派手な男は一人しかいない。それと初めて見る黒髪の白シャツスカートの女性は背中から黒い翼を生やし、頭に山伏なんかもつけている梵天?だったかをのせている。

一目で人には見えない彼女はぺこりと頭を下げて挨拶した。

 

「恋、そちらの方は?」

 

「いや俺もここに来る途中でばったり空で会ったんや。どうも俺と遊に用があるみたいや」

 

「自己紹介させて頂きますね!私射命丸文、新聞記者やってます!」

 

またもぺこりと一礼。こちらも名乗ろうとしたが

 

「高橋さんのことは存じ上げております!ネタになりそう...いえ面白い外来人が博麗神社にいると噂は立っておりますので」

 

「ねぇねぇ文、俺のことも知っとる?」

 

「はい、なんでも屋をやる金髪男は里じゃそこそこ有名ですから」

 

「もう世間様にバレちまったか、人気者は辛いわぁ」

 

馬鹿言ってる恋は置いといて話を進める。

 

「それで、ご用とは?」

 

「はい、私この度お二人のこと取材させていただこうと思い参った次第です!」

 

「しゅ、取材、ですか」

 

「お二人のことを私の新聞に掲載したいと思いまして」

 

「俺はいいけど、遊はどないするん?」

 

恋はあっさりと承諾した。まぁ好きそうだし、自分のこと話すの。僕は、どうなんだろう。人に話せるほど面白いエピソードも武勇伝もないし、取材しても何も出てこないと思うが。

 

「取材は大丈夫なんですが、面白いエピソードとかはあまりないですよ」

 

「安心してください。これでも私結構長いこと記者やってるので、いかに面白く書くかは心得てますよ」

 

「だって遊、お前が用水路の溝に落っこちた話も安心してできるな」

 

「おいそれは言うなよ。...あの、それは恥ずかしいので聞かなかったことに...」

 

「面白そうですね、それも含めてお話聞かせてください」

 

恋、これで溝に落ちた話が新聞にのったら暫く恨むからな。へらへらした顔をキッと睨むとピースを返された。言い直そう、未来永劫恨む。

 

 

 

「それで、何故博麗の巫女と魔法使いがここにいるのでしょう」

 

「ここ私の神社だし。ここで取材するなら巫女の私が立会うのはおかしい話じゃないでしょう?」

 

「やや腑に落ちませんがまぁ巫女は良いとします...魔法使いさんは関係ないですよね?」

 

「まーまー、私も二人のこと聞きたいし。私のことは無いものとして進めてくれ」

 

神社内の居間の小さな机を5人が囲んでいる。

いつの間にか中にいた博麗と霧雨に事情を説明すると面白がって居間までついてきたのだ。

 

「あ、これ取材料としてお納め下さい」

 

射命丸さんが何かを思い出し包まれた箱を机の上に置いた。博麗が飛びついて包を破ると中には馴染みのある団子が詰められていた。

 

「お二人がよく寄られる団子屋と耳にしましたので、どうぞお召し上がりください」

 

新聞記者、恐るべし。僕らのプライベートもある程度リサーチ済みということか。

 

「ほないただきま...ちょちょ霊夢に魔理沙、なんで2人が最初に食べるん?」

 

「すまん、腹が減ってた」

 

「場所貸してるんだし、いいじゃない」

 

「あはは、じゃあみんなで1本ずつにしようか」

 

4本あった団子を4人で分けたところて取材が始まった。何処からともなく手帳を取出しペンを握っている。

 

「では始めさせていただきます。遊さん、好きな食べ物は何でしょうか?」

 

無難な質問だ。これは僕も無難に答えたほうがいいかな。

 

「は、ハンバーガーです」

 

「遊、ハンバーガーって何?」

 

博麗がキョトンとした顔で僕に尋ねる。幻想郷にハンバーガー、ないんだ。

 

「えっと、バンズ、違うパンに肉や野菜を挟んだ料理のこと」 

 

「サンドイッチと何が違うんだそれ?」

 

今度は霧雨に尋ねられる。

 

「パンが分厚いというか、焼かれているというか、パンそのものに味がついているというか、牛肉が使われているかないか...兎も角サンドイッチとは別物なんだ」

 

「ちょっとお二人、これは私の取材の場というのをお忘れなく」

 

「いやさ、聞いたことない食べ物だったつい、な?」

 

霧雨は博麗と顔を見合わせ苦笑いした。

 

「正直私も興味ないわけじゃありませんが、あくまで今は遊さんと恋さんの取材ですので...それで、恋さんの好きな食べ物は?」

 

そういやこいつの好きな食べ物ってなんだろう。高校時代何度か一緒にご飯食べたが和洋中なんでも食べたな、肉も野菜も魚も美味い美味いって食べてたし。少なくとも嫌いなものはないんじゃないか。

 

「俺はうどんだ」

 

うどん...予想外だ。思い当たる節はカツ丼を頼んだときにつけていたミニうどんしかない。

 

「意外ですね、がっつりな料理が好みかと思いました」

 

「ま、でも俺嫌いな食べ物はないで。出されたものは何でも食べるで」

 

そうして射命丸さんの一問一答に答えつつ、時折博麗や霧雨が横から口を出しつつ、そんな取材の場になった。

好きな色や好きな場所、特技、こいつとは高校時代一番付き合いが長いが、意外な返事が次から次に出てくるもので、案外知らなかったんだなと染み染み感じた。一問一答もある程度出尽くした頃、とある質問がされた。

 

「恋さんは遊さんのこと、どう思ってますか?」

 

恋は眉を潜め顎に手をやり唸った。そんなに悩むことなのか?皆が恋の顔を見て答えを待っていた。

 

「...唯一無二の親友」

 

「恥ずかしいからやめてくれ」

 

ポツリと漏らしたその言葉に思わず突っ込んだ。

恋は笑いながらも僕の方を向き

 

「じゃあお前は俺のことどう思ってるん?」

 

「...まぁ、一番中の良い友人とは思ってる」

 

なんで改めて面と向かって言う必要があるのか。すごい恥ずかしい。

 

「仲良しね」

 

「おいおい遊そんな変な顔するなって」

 

霧雨にからかわれて、博麗には笑われた。はぁ、こっち見ないで、もうやめてくれ。

 

「遊さん、まだ取材続けますよ!」

 

博麗神社の午後の居間がいつも以上に騒がしくて、楽しくて、心地よかった。空がオレンジ色に染まるまで、取材は止まらなかった。

 

 

「本日は貴重な時間を割いて頂きありがとうございました!」

 

射命丸さんはもう見慣れたお辞儀をして、空に消えていった。比喩表現でなく、本当に消えるような速さだった。あとから博麗に聞いたのだが彼女は天狗だったらしい。

 

「それじゃ遊、今日の夕飯は?」

 

「ごめん、買い物しなきゃ」

 

「だったら私もついていくぜ」

 

「ほな俺待ってるわ」

 

射命丸さんが去ったあといつもの4人でいつもの流れで夕飯を囲むことになった。取材ですっかり頭から抜け落ちていたが、今日買い物の日だったので、今から里に向かわないといけない。

急いで僕が買い物かごを持って出てくると霧雨が付いていくと言ってきた。

 

「普通の買物だけど」

 

「たまにはいいじゃないか」

 

一人で行くよりは楽しいし、いいかな。博麗の力を借りて空に浮かぶと霧雨も箒に跨がり僕の後を追ってきた。

 

 

 

 

 

「あー夕飯楽しみやなー」

 

買い出しに向かう二人を見送る巫女と金髪。

完全に見えなくなった頃、巫女は金髪の方を向いた。

 

「恋、居間に来て」

 

「どしたん、告白?」

 

「話がしたいの」

 

取材中とは違う、力の入った表情と真剣な眼差し。

恋も茶化すのをやめて何も言わずに居間に入っていった。

 

 

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