私の弾幕は霊夢のような狙いすました緻密な弾幕じゃない。弾幕をかわされたのならそこに更に弾幕を重ねる。
それも火力をあげて、こんどこそ仕留めるため。
私はそれで大体の弾幕ごっこに勝ってきた。詰まるところごり押しってわけだ。
あの中国にもいつもの戦法を取ったが、てんで当たる気配はない。頭上から放っているのだがとんでもないスピードでかわされる。この時点で流石の私も妖怪だと気付いた。
気付いた所で対策が思い浮かんだ訳じゃない。
ただ、あいつの動きに引っ掛かる点があった。
だから今度は奴の死角から火力を上げた弾幕を放った。
が、ダメ。
ははーん、もしや。私の疑問に奴は体で教えてくれた。
「さて、そろそろ堕としましょうか」
来た、スペルカード。これはピンチじゃない、チャンスだ。
奴を中心に展開される弾幕、退かずにその場で迎え撃つ。
お前が私の仮説通りなら、きっと次に計画通り動くはずだ。
虹色の弾幕に飲み込まれた霧雨。被弾音はない。
どうやらなんとかかわしているらしい。
「時間切れを狙ってるわね」
「時間切れ?」
「スペルカードの時間は有限よ。避け続ければスペルカードは終了する」
なるほど、これなら無理に攻め要らなくとも攻略できるわけか。霧雨はこんな弾幕の雨嵐の中必死に避けて反撃の時を待っているんだ。
次第に大量の弾幕の隙間が大きくなり、スペルカードの終了が見えてきた。
紅美鈴も手応えを感じなかったか、スペルカードの詠唱を止めた。
「そこだ!」
自らの放った弾幕を避け、止めを指さんと接近した。
この弾幕の中接近して至近距離で放たれたなら流石の霧雨も避けられない。
「霧雨、来たぞ!」
声を張り上げるが返事がない。
「これで、終わ...!」
紅美鈴の動きが止まった。
弾幕の隙間から見えたのは、空中で荒ぶる箒だった。誰ものせていない、箒だけが飛んでいた。
「くらえ!」
その下にはマジックアイテムを紅美鈴に向け腰を落とし、照射準備に入っていた霧雨の姿。
「恋符『マスタースパーク』!」
完全に不意をついた霧雨、これまでとは比較にならない威力の光線が発射されると、空中の紅美鈴を飲み込んだ。
どこまでも空に向かって上昇するマスタースパークは見ていて豪快で派手で、霧雨の言う弾幕はパワーだ、の言葉を象徴する一撃だ。
これ、相手は大丈夫なのか?
甲高い被弾音の後、門の柱にもたれる門番の姿があった。
肩で息をしている、どうやら無事らしい。
「不覚...」
「私の勝ちだな。門開けてくれ」
黙ったまま立ち上がると何倍もある巨大な門を両手で突いた。ぎぎぎと鉄が擦れる音がすると門は奥まで押し込まれ開いた。
「行こうぜ!霊夢、遊」
霧雨はピースしながら得意気になっている。
人がヒヤヒヤして見ていたというのに...全く、人の気も知らないで。
博麗と霧雨の元に駆け寄るとどーだどーだと霧雨は僕の脇腹を小突いてくる。
「よくあんな作戦思い付いたね」
「あの中国は耳が良いんだよ。弾幕も音で察知してる。だから死角から撃った弾幕も避けられていた。ってのに気付いたんだ」
「だからわざと箒をわかりやすく動かしてたのか」
「スペルカード発動中ならその場で回避している動きに見せかけられるし、視界も悪くなる。ここしかないと考えたわけよ」
博麗のいう通り、奇想天外だ。ただ奇策を用いてるんじゃなくて敵を理解し、即座に作戦を立てている。
頭の回転の早さと柔らかさも、霧雨の強さなのか。
「遊、早く行こうぜ」
「あ、ちょっと待って」
と、会話している最中にも紅美鈴が視界に入る。さすがにこのまま置いておくのも人道的に悪いんじゃないだろうか。
近寄ってしゃがみこみ、一声かけた。
「う、何か」
「その、ここに放置していくのが忍びなくて...取りあえず中まで一緒に行きませんか?」
「私は門番です。お心遣いは感謝いたしますが、仕事場を離れるわけにはいきません」
「そうですか、すみませんでした」
離れようと腰を上げた。すると紅美鈴は顔を上げ僕を見つめる。
「どうして謝るんですか?」
「いえ、弾幕ごっことは言え豪快な一撃が直撃したのが少し気になってまして。余計なお節介でした。」
「心配ありません。これは弾幕ごっこで私は妖怪です。仮に怪我してもなんてことないですよ」
「そうですか。なら良かったです」
微笑む彼女にあの気迫はなく、どこにでもいる少女だった。敵対していたのが嘘のようだ。
「それでは私は少し休みます。」
「では」
別れを済ませて待たせている二人のもとに駆け寄る。
2人は吹っ飛ばした彼女への心配は皆無のようだ。あんな姿を見るとごっことは言え恐ろしい。
どれ程華やかに見えても勝負だ、赤い霧を晴らすため、幻想郷のためにここにいる。
僕がここに来た理由はわからないが、何か役に立つことがあるなら喜んで協力する。
今はそれが皆目検討もつかないけど。
「それじゃ館に乗り込むぜ」
気を引き締めないといけない。この先博麗や霧雨は弾幕ごっこを繰り広げるはず、僕だって、何か...彼女たちのために。
「久しぶりに人の優しさに触れた気がします」
柱にもたれた紅美鈴は一人呟く。
「咲夜さんも彼のように優しければなぁ」
優しさではなくナイフが飛んでくる。客観的に見ると恐ろしい職場だ。
「勝てるのかしら、咲夜さんに」
あの人の能力は強力無比、他人の時間さえも奪う恐ろしい能力。
彼女たちがそれにどう立ち向かうのか、ちょっと楽しみである。