そんな夏でした。
「思った以上に、身体がバキバキになりましたな〜。」
ますきとセッションの後、俺はチュチュに頼み、リビングでぐでんと寝転がっていた。横では汐音が爆睡している。この子も睡眠障害だからねー。といっても俺とはタイプが少し違うが。
俺の睡眠障害は、夜に眠くなりそのまま長時間寝る。
汐音は時間がバラバラなのだ。決まってこの時間というのがない。突然来てそのまま2、3時間程眠る。そういうタイプだ。
向こうではチュチュがますきのスカウトについて話している。バキバキの体を、無理やり動かして話に混ざる。
「佐藤ますきだったかしら?貴方を私の最っ強のバンドにスカウトするわ!」
あの後チュチュのお眼鏡に叶ったようで、合格だそうだ。
色も綺麗な黄色とオレンジが混ざってる。
「バンド?なんの話だ?私はてっきり汐音ちゃんの友達が、私の演奏を聞きたいだけと、おもってたんだが。」
そういえば、バンドの件はますきには言ってなかったな。やっぱり寝起きは思考が鈍化する。
「そういえば言って無かったな。この子はチュチュ、自分だけの最強のバンドを作りたいらしい。」
「メンバーは?」
「DJが私、マネージャーにluckがいるわ。」
「二人だけ?まぁべつにいいけとよぉ。」
「Welcome!もちろん歓迎するわ!そして貴方は今日から、マスキングよ!」
チュチュがますきとガシッと手を組む。仲良くなって何よりです。
チュチュってあだ名付けるの癖なのかな?luckとなマスキングとか
「そういえばますき、レイ姉さんと連絡って取れるっけ?」
「レイか?連絡先なら持ってるけど。」
「なら、また今度空いてる日に会えないか聞いてくれない?」
「自分から言えばいいだろ?」
「怖くて連絡出来ないのですよ。」
和奏レイ。俺がチュチュに紹介できる二人目の人材だ。しかしながら、問題が一点。
何を隠そうこの俺、黒鐘真倉は和奏レイが怖いのだ。
いい人なんだよ?優しいし、カッコイイし(女の人なんだけどね)。
ただ珍しいというか、奇妙というか、イレギュラーというか、なんというか…色がね見えないのだ。無色透明なんかじゃなくて本当に見えない。特性なのか何なのかも不明だが、とにかく儂は何を考えているか分からないあの人が怖いのだ。
「ったく、しゃあねぇな。」
そう悪態を吐きつつ電話をかけてくれるますき。
俺コイツのこういうとこ好き。
〜数分後〜
「今週の火曜日の放課後なら大丈夫だそうだ。あと真倉に伝言頼まれた。「こないだの蜂蜜レモン、美味しかったからまた食べたいなー」だってさ。」
そう言えば前は喉の調子を良くするために檸檬の蜂蜜漬け作ったな。なかなかに好評だったようだ。
「その和奏レイ?は、どのポジションなの?」
ポジションって、スポーツじゃないんだから。
「ベースだよな真倉。」
「正確に言えばベースとボーカルな。レイ姉さんの声は大人びてる。人を引き込むカがあるように思える。技量も高いんだ。」
といった所で、今日は解散。汐音はまだ寝てるのでチュチュに預け俺は買い出しに出かける。出かける前に冷蔵庫見たらものの見事に空っぽだったからなー。今日は日曜日だっけ?寝てたから日にち感覚消えてんだよな。明後日か、レイ姉と会うの。そんな事を考えながら近くのショッピングセンターまでバイクを走らせる。ちなみにますきと一緒だ。
「何から買うんだ?」
「とりあえず、日用品かな。食器用洗剤と、トイレットペーパー、ゴミ袋、etc…あと予備のルーズリーフとファイルとかの文房具。最後に食材かな。」
自分で言っててなんだか多いな。まぁ新学期だしそんなもんか。時刻は午後1時半頃だし、ササっと終わらせますか。
〜1時間後〜
「大体のものは大丈夫かな。ありがとなますき、買い物手伝ってくれて。」
「こんぐらいなら別に。まぁ報酬には期待させて貰うけどな。」
「何が望みだ?」
「そうだなぁー、じゃあまた今度一緒にケーキ作ってくれよ。」
「ケーキ?ますきってお菓子作り好きだっけ?」
「ああ、学校で作る機会があってな。それから趣味で最近始めたんだ。」
ケーキか、作り方はなんとなく知ってる。割と難しいイメージなんだが、どうなんだろうか?
そんな会話をしながら歩いてると、前の方で撮影が行われているようで軽い人集りが出来ていた。
「なんだ?この人集り。」
「ああ、なんか雑誌の撮影らしいぜ。」
人混みは苦手なんだがなぁ、迂回するか。そんな事を考えていると、不意に怒鳴り声が聞こえてきた。
「ちょっと! いつまで待たせるのよ!?」
「すみません! すみません!」
「すみませんじゃないでしょ!? こっちは一時間以上も待ってるのよ!? このアタシを待たせるなんていい度胸ねぇ!?」
「本当にすみません!」
「あの…私達は大丈夫なんであまり怒らないであげて下さい。」
「そ、そうっす。私たちは気にしないんで。」
なんかトラブってるなー。てかあの二人、どっかで見た事あるような?何処だっけ?記憶の中を探していると、ますきが急に騒ぎだす。
「お、おい真倉!あそこに居んの麻弥さんじゃねぇか!」
麻弥?これまた聞いた事あるような、って!
「あ!本当だ!大和麻弥さんだ!なんでこんなところに?ってもう一人は、確か若宮イヴだっけか。」
点と点が線になった。あの二人は「Pastel*Palettes」略してパスパレのメンバーだ。前にテレビで見た記憶がある。
「ちょっとだけ見てきていいか?」
ますきが興奮気味に聞いてくる。
「別にいいけど、俺離れてていいか?人混みに近づきたくない。」
行ってくる!と、意気揚々と人混みに紛れる。
パスパレが好きというよりか、コイツの場合麻弥さん目当てなんだろうなぁー。
てかなんかトラブってたよな?遅れてるのが、どうとか、聞こえてくる。
〜撮影side〜
「田地さん、どうします?もう直ぐに始めないと次のスケジュールに間に合わなくなります。」
「仕方ないわね。とはいえ、困ったわねぇ。今日の構図としては、イヴちゃんと麻弥ちゃん、もう一人の男性モデルを使って、今時のカップルを演出してもらおうかと思ってたんだけど……ねぇ、この際だから、このショッピングモールにいる一般男性を使うのもアリかもしれないわね。服のサイズはあるでしょ?」
「はい、一通りは揃えてます。」
しかし、ある程度見た目にスペックが無いと、服に負けちゃうのよねぇー。今時のカップルに会う年齢でかつ、服に負けないような、男なんて都合よくいるわけ…いた!
「ちょっとそこの君ぃ!!」
〜真倉視点〜
何故だ、どうしてこうなった!
あ、ありのまま今起こった事を話すぜ。
俺は人混みから少し離れたベンチでやすんでいた。しかし気づいたらいつのまにか着替えされられ撮影に参加させられていた!
な…何を言っているのかわからねーと思うが おれも何を受けたのかわからなかった…。頭がどうにかなりそうだった。催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃねぇ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
声をかけられ→引っ張られ→服渡されて→着替えされられ→撮影開始。そして今に至る。強引すぎて着替えるときにやっと仮面かぶれたよ。
「ハイハイ!いい感じねぇ!」カシャカシャ
「その表情!もっと流し目を!」カシャカシャ
「もうちょっと色っぽく!」カシャカシャ
「笑顔よ、笑顔!」カシャカシャ
「大丈夫ですか?初めは誰だって緊張します!もっとリラックスしてください!」
若宮イヴだっけかこの子。近くで見ると可愛いな。流石モデルさんっといった感じだ。しかも優しい。しかしこんな大衆の面前で一般人の俺がモデルと撮影してたら帰り道刺されそうで怖いんだが。
「じゃあ次!麻弥ちゃん出番よ!」
「ハイっす!ってアレ?黒鐘さんじゃないっすか!お久しぶりです!」
「久しぶりだね、大和さん。」
サポート時代に数回同じになった事があるからか、相手側は覚えていてくれた。ちなみに連絡先も教えてある。ますきに秘密にしてたんだがな。言おうもんならありとあらゆる手を使って吐かせようとするだろうし。ますきにとっては憧れそのものたからな。現に今もスッゴイ目でこっち見てるし。顔は怒ってるが色がオレンジと赤だ。
俺に対してはスッゴイキレてると思われる。
そんな事を考えながら撮影は続いていた。
「休憩入りまーす!」
「お疲れ様です。黒鐘さん!とってもブシドーでした!」
「えっと褒められてるのかな?大和さん。」
「イヴさんの言葉使いは少し独特っスからね。
それにしても一般人のサポートで入ったのが黒鐘さんだったとは。驚きました!実際にあったのは半年ぐらい前でしたっけ?雰囲気変わりましたね。」
「覚えてるよ、半年前に一緒に機材の修理したからねー。あれからちょくちょく連絡くれてたし。
少しまえにこっちに引っ越したから、また後日一緒にお茶でもどうですカッ!」
後ろからチョークスリーパー食らった!ますきだな!いや、気付いてたけどね!避けたら倍になる気がしたから食らったけど、なんでいんだよ!
「真倉ちょっとこい!」
「ちょっタンマタンマ!首閉まってる」
ズルズルと引きずられる。だ、誰か助けて〜
前回評価をくれた、斎藤努さん。
星9の高評価ありがとうございます。
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