フタリオオカミ   作:報酬全額前払い

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初めましての方は初めまして。どこかで会ったことのある方はドーモ。

独自解釈とオリジナル設定・オリジナル展開マシマシの二次創作ですが、暇つぶしにでもなれば幸いです。



プロローグ シラクーザ脱出編
大脱走


 人の人生を大なり小なり狂わせてしまうのが鉱石病というものだが、俺の場合も例外ではなく、その運命を大きく歪まされた。

 

 当時の俺は、鉱石病に罹患して一年ちょっと。

 罹患するまでは次期当主だの何だのと持ち上げておきながら、鉱石病に罹った途端に手のひらを返され、俺という汚点(弱み)を他の一族に見せないためか、何故かあった家の地下に幽閉されて文字通り獣のような扱いを受けていた時期である。

 

「…………はら、へったな」

 

 鉱石病に罹患した感染者っていうのは基本的に世間からは鼻つまみ者扱いだ。場所にもよるが、感染者であるというだけで奴隷より酷い扱いを受けるところも多いと聞く。通貨の発行元である龍門が、感染者を犯罪者扱いで排斥しているのは有名な話だ。

 俺の故郷であるシラクーザは一族によって対応が変わるが、その中でも俺の一族は感染者に対して特に否定的だった。感染者のみを"粛清"する一族なんて知られている時点で、その嫌いようは推して知るべし。

 

 そんな一族の生まれにも関わらず、感染が発覚して即座に殺されていないのは、俺がオリジムシ以下の価値しかない感染者でも利用価値があると判断されたからなのだろう。

 ただ、陽の光が一筋も差し込まない闇の中に一年以上も閉じ込められている時点で、俺が発狂して死んでもいいという現当主の思惑は垣間見えるが。

 

 そんな俺は、暗闇の中でも腹時計で時間を把握していた。メシの時間だけはキッチリと守っていたからか、幽閉されている時でも凡その時間を知ることは出来たのだ。

 

 だがその日は、いつもなら来るはずの時間になっても食事が来なかった。

 元から毒入りの残飯だったが、幼い頃から毒に馴れさせられた俺が毒なんかで死ぬわけが無い。それでも毒が混ざっていたのは……死ねばいいという願望と殺意が入り交じった結果なのだろうか。

 

 だが、それすら来ない。となると、とうとう餓死させる気になったのだろうと俺は判断した。

 

「……行くか」

 

 ならば此処から出ようと俺は決意する。元から大人しく殺されてやる気は無かったから、もし本気で殺されそうになったら、俺はこの地下から逃げ出そうと以前から計画していたのだ。

 

 ただ、俺の両手足を拘束する枷はガッチリと嵌っていて、普通に藻掻いたのでは何時まで経っても外れそうにない。しかし、それなら別のやり方を試すまで。

 俺はアーツを使って体内に溜まっている源石結晶に意識を向け、刃のように尖らせたそれを枷の内側から飛び出させた。

 

 外側からの攻撃には強い設計だったのだろうが、内側からの攻撃は想定していなかったのだろう。大した労力も無く枷を壊した俺は、一年ぶりに自由になった両手足で立ち上がった。

 

「ああ、窮屈だった。さて、これが罠じゃないと良いんだけど」

 

 まあ、罠なら罠で真正面から食い破る気ではあったが。しかし、地下を抜け出して家の中の様子を伺うと、家はもぬけの殻だった。

 

「何故……」

 

 どういう理由かは分からないものの、このまま待っていたところで地下に戻されるだけだし、千載一遇の好機を逃す理由も無い。

 俺は近くに居た不幸な召使いから衣服の保管場所を聞き出し、ついでに財布も頂いておく。龍門幣だけ抜き取るのではなく財布ごと持っていくのは、彼はもう現金を使う機会が一生来ないからだ。

 そしてボロ切れみたいな服を着替え、身体の源石結晶を隠す用のフード付きマントと、倉庫に保管されていた愛用の双剣を盗み出し、シラクーザの街中へと飛び出したのだった。

 

 そうやっておよそ1年ぶりに飛び出した街中は、記憶の中にある風景と比べても変化を殆ど感じられなかった。

 ただ、人が疎らだし、その動きも何処か慌ただしい事から、どうせ碌でもないことをしているんだろうと思ってはいたが。

 

「さて、どうやって出るかね」

 

 顔バレしないように、なるべく監視カメラの視界から外れるように動きながら、俺はこの移動都市から降りる事を決断していた。

 このまま逃げたところで、この狭い箱庭では限界がある。捕まるのは時間の問題だ。だったら大きすぎるリスクを背負ってでも、彼方まで広がる大地に立った方が良いなと判断したのだ。

 

「えーっと、干し肉に水筒。後は……栄養剤でもあればいいか」

 

 しかし当然ながら、この移動都市から大地に降り立つためには、いくつかの難関を乗り越えなければならない。

 

 まず一つ目、移動都市と外部を繋ぐ出入国管理施設には検問があり、身分証明をしなければ出られないということ。

 幽閉され、公式には死んでいるであろう俺は、このシラクーザでの公的な身分証を持っていない。いや、正確に言えば、期限切れの身分証しか無い。だから真正面から堂々と出る事は不可能。

 

 二つ目、その施設がシラクーザを事実上統治しているヤバい一族の管理下にあること。

 ウチも中々にヤバい一族ではあるが、あそこは次元が違う。そんな連中のシマを強行突破なんてしたら、何をされるか分かったもんじゃない。延々と追っ手を差し向けてくるとかが普通にありそうだ。

 

 そして三つ目、そもそもそこに辿り着く前に実家から大量の追っ手を差し向けられるだろうという事。

 なぜ実家がもぬけの殻だったのかは分からないが、俺の脱走は遠くない内に発覚するだろう。となれば、現当主は間違いなく俺を始末しにかかる。

 

「まさに退くも地獄、進むも地獄って訳だ」

 

 また、大地に降り立った後の問題として、頻発する天災が挙げられる。天災に巻き込まれて生きていられる確率は高くなく、その跡地に留まっていれば高確率で鉱石病を発症する。

 俺は既に感染者だから跡地の問題をある程度は無視できるが、天災の破壊力はどうにも出来ない。

 

 以上を統括して考えると、今からやろうとしている事が、ただの自殺行為だという事実が浮かび上がってくる。

 だが俺は、それを認識してもなお、この移動都市からの脱出を止めようとはしなかった。

 

 確かに、これは遠回しな自殺行為だが、何もせずに此処で殺されるよりは幾分マシだろうと思っていたからだ。どうせ死ぬのだから、今までのように命令に縛られるのではなく、自分の意思で何かしたいと思っていたというのもある。

 とにかくそんな考えで買い物を済ませ、屋台飯で空腹を満たしながら移動都市の出入口がある方角に足を向けた俺は、そこで彼女に出会った。

 

 あれは家が焼け、その灰が空を舞い、物の焼ける悪臭が漂う路地裏での出来事だった。

 人目を避けるために通ったそこで出会った彼女には、見られているのに見られていない。そんな矛盾しているような言葉が、ピッタリと当てはまる様子だったのを覚えている。

 

 どこまでも堕ちていけそうな深い闇を湛え、俺を通して別の場所を見ているような──そんな、虚ろな目。

 正直、最初は不気味だと思った。けどそれ以上に、その目を見慣れている気がして、更には惹かれている自分もいて、結ばれた目線を外す気になれなかった。

 

 その理由も分からぬまま、俺は声をかけた。どうしたんだ?と。

 

 その問いに何も答えず、彼女は手を伸ばし、ただ一言、こう言った。

 

「連れてって」

 

 どこへ、とも言わず、ただ連れて行けと。

 

 その言葉に、俺が答えを詰まらせた直後……

 

「居たか?!」

 

「いや、見当たらない!」

 

「そう遠くには逃げてないはずだ!探し出せ!!」

 

「50万龍門幣は俺のモンだ!」

 

 ……遠くから、大人たちのピリピリした声が聞こえた。その声に反応して、彼女は身体をビクッと震わせた。

 そういえば今日は、何処かの一族が内部で"粛清"されたのだと道をすれ違う人が話で言っていたような気がする。

 

 そして今の彼女の反応。関係者である事に疑いの余地は無い。もしかしたら、というかほぼ間違いなく大人たちのターゲットだ。

 

「どこへ?」

 

 だが俺は、そんな彼女に敢えて問いかけた。彼女はそんな俺に、絞り出すような声で答えた。

 

「ここじゃない、どこか……!」

 

「俺はこの都市を降りる。それでもか?」

 

「それでもいい。ここでないなら、どこでも!」

 

 やけっぱち気味の言葉に、俺は何故さっき、この子の目を見慣れている気がしていたのかの理由が分かった。

 

 自分に似ていたのだ。鉱石病に罹ったばかりの、少し荒れていた頃の自分の目に。

 続くと思っていた明日が取り上げられて、急に訳の分からない地獄に突き落とされて、もうどうでもいいやと半分以上自暴自棄になって、だけど確かに、自分をこんな目にあわせた不条理への怒りを募らせている──そんな目だ。

 

 俺の場合、その不条理は鉱石病という復讐のしようがない理不尽だった。だから諦めもついた。

 では、彼女の場合は?

 

「お前も、同類か」

 

 俺は彼女の手を取っていた。

 多分、俺は彼女に同情したのだろう。似たような経験のある先輩として、なんとなく面倒を見たかったのもあるかもしれない。

 この時の俺の心中を、俺は自分でも分かっていなかった。

 

 彼女の抱える問題は、どう考えても厄介事だったが、それはそれで構わなかった。これから、このシラクーザを支配する一族と実家に喧嘩を売るのだから、敵が一つ増えたところで、なんてことはない。

 

「同類……?」

 

「いや、気にするな。こっちの話だ」

 

 ……段々と声が近くなってきた。ここに居るのがバレるのも時間の問題だ。

 

「じゃあ、行くか」

 

 彼女を背中におんぶして、俺は大人たちの声から離れるように走り出した。

 その際にずっと呟いていた「必ず殺してやる」という怨嗟の言葉と、背後で段々と強く、大きくなっていく火の手が、彼女の心の内に秘めた物の大きさを表しているような気がしながら。

 

 

 

 

 それから、段々と火の手が大きくなっていく某所を離れ、シラクーザの入国管理施設の近くにある森の中で、俺と彼女は少し休んでいた。

 

「一応確認しておくが、本当に良いんだな?この先は命の保証なんて無いぞ」

 

「……いい。どうせ戻ったところで殺される。それじゃあ、父さんと母さんの約束を守れない」

 

「殺されるとこまで一緒かよ……」

 

 ほぼ分かっていた事だが、やはり彼女は命を狙われているらしい。ということは、あの時に聞こえた50万龍門幣とは彼女の懸賞金の事だろうし、あの燃えていた家は彼女の実家か、それに近しい物だったのだろう。

 

「…………君も」

 

「うん?」

 

「君も、誰かに狙われているのかい?」

 

「狙われてるっていうか、このままだと近いうちに殺されそうだから逃げて来た。が正しいな」

 

 そう言って俺は長袖を捲り上げた。腕の表面に出てきている源石結晶を見た彼女は、そのドス黒い闇を湛えた目に僅かな理性の光を浮かべながら納得したように頷く。

 

「感染者、か。それなら狙われる理由は十分あるね」

 

「だろ?」

 

 まくった袖を戻し、俺は椅子がわりにしていた倒木から立ち上がった。

 

「行こうか。もう歩けるよな?」

 

「ああ……もう平気」

 

 彼女も立ち上がって土を払い、俺も並行して歩きだす。彼女の身長は、俺と同じくらいらしい。

 

「そういえば名前を聞いてなかったな」

 

「そういうのって、男から名乗るもんじゃないのかな」

 

「そうか?まあいいや。じゃあ名乗るが、俺は…………うーん……」

 

「なんで……そこで詰まるのさ。まさか、名前が無いとか?」

 

「いや。改めて考えると、今までの名前を名乗る必要って無いなと」

 

 名前が単に気に入らないのもあるが、あの名前を使っていると何時までも実家に縛られるような気がした。

 ……良い機会だし、ここで新たな自分になる意味合いも込めて、新しい名前を自分に付けよう。

 

「なあ。俺の名前ってどんなのが良いと思う?」

 

「いや知らないよ」

 

「だよなあ……じゃあ、ルプスでいいや」

 

「ループス族だからルプスかな。安直だね」

 

「ほっとけ。ネーミングセンスなんて無いんだ」

 

 段々と沈んでいく太陽が、森の中を茜色に染め上げていく。膝くらいの高さまで育った草をかき分けながら進んでいると、急に強い風が背後から吹き抜けていった。

 俺に、追跡者の存在を臭いで知らせながら。

 

「……追いつかれたか」

 

「え?」

 

「伏せろっ!!」

 

 まだ名前を聞いていない彼女の頭を掴んで一緒に地面に倒れ伏す。すると、彼女の頭があった空間を一本の矢が引き裂いていった。

 

 身体のバネを使って跳ね起きて抜剣。一年ぶりに抜いた愛剣は、こんなに重かったかと思うほどズッシリとしていた。

 

「だいぶ鈍ってるな」

 

 顔を顰めながら感覚を研ぎ澄ます。感覚だけは身体を動かさなくても鈍らないように出来たが、それでも不安は拭えない。

 

「へへっ、やっぱり俺達が一番乗りか。泥臭い捜索を抜けてきた甲斐があったな」

 

「俺の鼻の良さのお陰だな。分け前は半々だぞ」

 

「分かってる、分かってる」

 

 ……若いと思った。ここでいう若いとは、年齢ではなく実戦経験的な意味でだ。話を聞くだけでも分かる無鉄砲さは、その若さ故に生じたものだろう。

 わざわざ見せつけるように姿を見せたのは二人。話の内容から察するに、今この周辺に居るのは、この二人以外に居ないはずだ。

 

「見つかった……!でもなんで?見られないように逃げて来たのに」

 

「恐らく、あの短弓を構えてる奴が猟犬の一族なんだろうな。あそこの一族出身の連中は特別に鼻がいい」

 

「詳しいな。なら俺が、獲物を絶対に逃がさない事も知っているな?」

 

「ああ。だが分からないな。猟犬は同じ一族と、最低でもツーマンセルで狩りを行う一族の筈だ。気難しく排他的、他の奴と組むことは無いと言っていい」

 

「……くっ」

 

 優秀だが面倒臭い。そんな評価をされていた。もちろんこれは一年前の情報で、幽閉されている間に変わった可能性もあったが、苦虫を噛み潰したような顔から察するに、情報に変化は無さそうだ。

 では何故か、と考えた時。思いついた事を俺は口に出した。

 

「なるほど、ヒトリオオカミか」

 

「ッ!!」

 

 ヒトリオオカミという言葉は、ループス族のみに意味のある差別用語だ。

 

 一族という群れを成して生きるループス族にとって、群れから追い出されるというのは、死刑と並ぶ最高に重い刑罰である。

 一匹狼……もといヒトリオオカミという用語は、その一族から追放されるに足りる何かをしでかしたという、犯罪者と同じ不名誉すぎる称号なのだ。

 

「ガキが……口の利き方には気をつけろ」

 

「そうは見えないだろうが、もう20は越えてる。それよりキレるって事は、図星だな?」

 

「黙れっ!」

 

 そいつは激昴した状態で弓を引いた。放たれた矢は、しかし俺ではなく彼女を狙っている。

 

「やらせん」

 

「おっと、俺を忘れるなよ!」

 

 左の剣で矢を叩き落としながら、右の剣で切りかかってきた男を受け流す。

 このままこの二人と遊ぶ気なんてサラサラ無い俺は、さっさと片付けるためにアーツを使うことにした。

 

「悪いが時間が無いんでな、もう終わらせる」

 

 俺のアーツは大したものではない。指定した範囲内の、一種類の物質を剣のように鋭くできるだけだ。

 ド派手な見た目のアーツではないが、俺はコレを気に入っている。鋭くするだけ、というと聞こえは悪いが、様々な場面で応用の利く能力だからである。

 

 また、感染者になったことでアーツが強化されたらしく、体内・体外を問わず源石結晶を剣のように加工する事も可能になった。実家の地下から脱走する時に使ったのは、こっちの能力だ。

 

 デメリットとしては、鋭くしている間は常にアーツの力を使わなければならないので燃費は悪いことと、周囲の環境に左右されること。

 何も無い荒野の真ん中とかだと、このアーツは殆ど役に立たないだろう。

 

 だがたとえば、この森の中に生えている膝ぐらいまで高さのある草に剣のような鋭さを与えれば、それは立派な凶器となるのだ。

 

「もう一度攻めるぞ!援護射撃を頼む!」

 

「ああ!まずはクソガキ、次に小娘だ!!」

 

 剣を持った方の男が俺に突進してくる。どうやら俺が厄介だと判断してくれたらしい。これで彼女から意識を逸らして守りやすくなると同時に、あまり時間をかけずにこの二人を始末できるだろう。

 そうして一歩を踏み出した男の足は草に隠れて見えなかったが、どうなったかは手に取るように分かる。そこは俺が草を"鋭く"したエリアだからだ。

 

「ぎゃあっ?!」

 

 踏み出した足をズタズタに切り裂かれたのだろう。訳が分からない、という困惑が込められた悲鳴を上げながら、バランスを崩して前のめりに転倒した。

 倒れたそこも、当然ながら"鋭い"雑草まみれだ。

 

「良かったな。雑草で串刺しなんて、中々レアな経験だろ」

 

 元々雑草や葉っぱは、人の指を浅く切れるくらいの鋭さを持っている。その鋭さが剣のようになれば、そしてそれが大量に生い茂っていれば、そりゃ酷いことになるのは自明の理だった。

 絶叫する余裕も与えられず、全身を刺し貫かれた男は僅かに痙攣し、そのまま動かなくなった。

 

「な、何をした!?」

 

「答えるとでも?」

 

 さっきまでの威勢は何処へやら、ヒトリオオカミの猟犬は恐怖の眼差しを俺に向ける。

 

「さて、大人しく殺されてくれないか。こっちは一刻も早く先を急がないといけないんだ」

 

「バ、バケモノめ!」

 

 俺の目線に耐えきれなくなったのか踵を返すと、木の枝にジャンプで飛び乗ろうとした。もう一人の末路を見て、草むらが危険だと判断したのだろう。

 

「逃がさん」

 

 ならば、無理矢理にでも叩き落とす。

 俺は利き腕である左の剣を振るい、衝撃波を出して飛び乗ろうとした木の枝を切り落とした。

 

「そのまま落ちろ」

 

「なあっ?!テメ──」

 

 当然、落ちるであろう地点は既に"鋭く"なっている。即席の即死トラップに引っかかったヒトリオオカミの猟犬の末路は、語るまでもないだろう。

 

「潜伏能力は中々……いや、俺の看破が弱すぎるだけか?どちらにしろ、戦闘力はそこらのチンピラと同じだったな。リハビリの初戦としては丁度いいけど……」

 

 愛剣を収めて振り返る。彼女は安心したかのように息を吐いていた。

 

「大丈夫か?」

 

「ボクは大丈夫。それより強いんだね、安心したよ。一緒に逃げる人が頼りないと不安だからさ」

 

 そして彼女は、すぐ近くで惨たらしい死体が二つ並んでいるというのに、それを作り上げた俺に怯えるどころか幾らか信用したような笑みを見せた。

 

「さっきの話の続きで名乗るけど、ボクはラップランド。何時まで一緒かは分からないけど、ひとまず宜しく」

 

「……よろしく」

 

 ただ、その目は相変わらずドス黒い闇を湛えていて、一欠片も感情は見えなかったが。

 

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