フタリオオカミ 作:報酬全額前払い
そこかしこから食欲を煽る良い匂いが漂い、それに釣られてあっちこっちにフラフラと歩いていきそうなラップランドを引き連れて、俺は1つの屋台の前まで来た。
そこでは一年前に見た時と全く変わらない体格のいいウルサス人が、お世辞にも良いとは言えない愛想で屋台に立っていた。
売れ行きは……悪くはなさそうだ。
「ようオヤジ。相変わらず無愛想だな」
「だからこれでも笑みを作ってるつも──って、ロウガじゃねえか。久しぶりだな、一年くらいぶりか?」
俺が初めて此処を訪れた時からずっと煮豆のスープ屋台を営んでいるらしい彼を、俺は親しみを込めてオヤジと呼んでいる。
オヤジは俺が名前を捨てたとは知らないので、幽閉される前まで使っていた名前で俺のことを呼んだ。
「そんくらいだな。とりあえず煮豆のスープ2つ」
「まいど。少し待ってろ」
慣れた手つきでお椀いっぱいにスープをよそって渡してくる。俺が代金を払って受け取り、お椀の片方をラップランドに渡すと、オヤジは何故かニヤケ顔を俺に向けてきた。
「ちょっと見ない間にツレを変えたのか?まったく、無害そうな顔して隅に置けねぇ奴だ」
「そんなんじゃねぇよ。依頼だ依頼。コイツ連れて、これから大地に降りる」
「……どうも」
ラップランドが軽く頭を下げる。オヤジは最初、何故か生暖かい眼差しで彼女を見ていたが、次第に顔から笑みは消えていき、納得したように頷いた。
「なるほど……その嬢ちゃん、中々複雑な事情を抱えてるみてぇだ」
「分かるか」
「そりゃあな。何十年生きてると思ってやがる。ワケありの奴が持ってる空気を察するのなんざ朝飯前だぜ」
ラップランドの立ち振る舞いだけで何かを感じ取ったのだろう。茶化すのを止めたオヤジは真剣な顔で、今度は俺をジロジロと上から下まで見た。
「ところでオメェ……そんな装備で大地に降りるつもりか?」
「駄目か?軽そうなのは見た目だけで、実際の防御力は結構あるぞ」
「……はぁ……これだから素人は。
いいか、防御力の問題じゃねぇんだよ。お前が今から行こうとしてる大地ってのはな、隕石の落下から身体を吹き飛ばす竜巻まで、あらゆる災害が降り注ぐ魔境だ。そんな場所を歩くには相応の準備が必要なのは、言わなくても分かるな?
周りの連中を見てみろ。全員が専用の旅装束を上から着てる。ああいうのが無きゃ、無謀通り越して単なる自殺だぞ」
今着てるのは、見た目こそ普段着のようだが、実は防弾繊維で編まれた戦闘用の装束である。
餞別代わりにかっぱらってきた個人的に最高の防護服なのだが、オヤジからすればそれでも駄目らしい。
そしてオヤジの話を聞いていると、既に認識していた筈の情報不足の恐ろしさを改めて痛感する。幽閉される前、どうせ縁のない世界だからとロクに大地の情報を調べてこなかった事を後悔した。
「悪いことは言わねぇから今から街に引き返して買ってこい。値は張るが街なら品質も保証されてるし、ここでボロ布を売りつけてる連中みたいなのからボられることも無いだろ」
「でもなぁ……。今から街には戻れない事情があるし、そもそも金も無い。忠告は有難いけど、旅装束の用意は出来ないな」
「……死ぬぞ」
「それでも行かなきゃ、遅かれ早かれ死ぬ。コイツだけじゃなくて俺もな」
このまま進めば、オヤジの言う通り俺たちは死ぬのだろう。オヤジの言葉には、そういう連中を見て来た経験から来ているであろう重みがあった。
ただそれは俺たちにとって、人に殺されるか天災に殺されるかの違いでしかない。もう俺たちには進むしか道が残されていないのだ。
オヤジと俺の目線がぶつかりあう。その圧に負けないように見続けた結果、オヤジは降参するかのように目線を外して溜息を吐いた。
「はぁ……ったく、しょうがねぇ奴だ。少し待ってろ」
そう言って背後に積まれた木箱を漁ったオヤジが出したのは、とても分厚い生地で作られた旅装束だった。見た目は膝下まであるコートのようだ。
至る所が汚れているし、所々に補修の跡がある。だが粗雑に扱っていた訳ではなく、むしろ丁寧にこの旅装束を扱ってきていた事が見た目から伝わってきた。それが二着。
「コレをやる。俺が使い古したボロだが、無いよかマシな筈だ」
「良いのか?二着って、どう考えても替えの分もあるだろ」
「ダメなら渡さねぇよ。どうせ新しいのを買うつもりだったんだ、捨てる手間が省けて丁度いい」
本当なのか、それとも俺に受け取らせるための建前なのかどうか分からない事を言いながら、堅パンの入った袋を俺に渡してきた。
「まあ、まずはそれを食い終われ。それから色々と教えてやる」
オヤジが顎で俺の横を指す。俺を置いて食べはじめればいいだろうに、ラップランドは煮豆のスープと堅パンから目線を外さず、律儀に俺を待っていた。
「そうするよ」
俺とオヤジは顔を見合わせて苦笑し、一先ずラップランドを連れて歩行者の邪魔にならないように壁際に寄った。
「待たせたな。食おうぜ」
「……スプーンは?」
「パンあるだろ。それをこう、スープに漬けて煮豆ごとすくって食う」
「な、なるほど。慣れるまでは苦労しそうだ」
渡した堅パンをまじまじと見つめ、どうすれば良いのか分からないのか、俺の動きを見よう見まねで真似して食べはじめた。
いかにも慣れた手つきで食ってる俺だが、実はこの方法に慣れていないのは内緒だ。俺もスプーン欲しい。
久方ぶりに口にした温かいスープはとても美味かった。体に染み渡るという表現は良く聞くが、この満たされるような感覚がまさしくそうなのだろう。
ラップランドの方を見ると、彼女は息をほっと吐いて目を細めていた。
「美味しい……」
「だろ?安くて美味くて量もある。色んな屋台を回ったけど、ここが一番だと俺は思うね」
もう二度と立ち寄れない可能性が高いのが惜しいくらいだ。
俺とラップランドは夢中で手を動かし、スープと、スープでふやけた堅パンをかきこんだ。最後の一滴までパンに浸して食べきってから、俺はオヤジのところへ戻る。
「美味かったよ。一年ぶりに食ったけど、やっぱオヤジのが一番だな」
「だろ?」
得意げに笑ったオヤジは、しかし次の瞬間に咳払いをして真面目な雰囲気を醸し出した。
「さて、時間も無さそうだし大事なところをかいつまんで教えてやる。
といっても、お前たちの目的地が分からない以上、大したアドバイスはできない。どこに行くにも絶対に守らなければならない基本は教えられるがな」
「それでいい。頼む」
俺は大地についてはド素人だ。基本的すら知らないのだから、まずはそこから知るべきだろう。
「よし、一度しか言わないから良く聞いて覚えろ。
まず第一に、大地で水は純金より価値のある物資だということを覚えておけ。大体の場合、水源に辿り着く前に水筒の中身が消えるから、途中で泥水を啜って命を繋ぐ必要もあるだろうな」
「泥水すらか。ぞっとするな」
「水を飲まなきゃ死ぬんだから仕方ねぇ。慣れないうちは腹を壊すだろうが、少なくとも死ぬよりはマシだろ。
同じ理屈で食料も貴重品だ。マトモな食い物を大地で入手するのは難しいから、大事にチマチマやりくりしていけ」
それは何となく分かる。過去に何度か見た事のある運び屋に密着取材したドキュメンタリーで、見渡す限り何も無い荒れ野を走っていたのを覚えていたからだ。不毛の大地という言葉があれほど当てはまる場所なのだから、それらが貴重なのは当然に決まっている。
「第二に、襲ってきた奴は問答無用で殺せ。大地は弱肉強食が罷り通る過酷な土地だ。武器を手にした相手を殺すのに理由を求めるな。
……なんて、お前に言う必要はないか」
「それはな。俺にとってはいつもの事だ」
「そんで──」
そこでオヤジは一旦言葉を切って、深呼吸をしてから声のトーンを1段階低くして言った。
「──最後に………………本当に、本っ当に飢えてどうしようもなくなったら、その時は選り好みするな。何を食っても生き延びろ」
「……どういう意味だ?」
「そのままだ。たとえそれが……」
そこでオヤジは言葉を切った。そして溜息をつくと、無言で首を横に振る。話したくない、というポーズだ。
並大抵のことでは動じないオヤジですらこうなるとは。何を食えば、こんな衝撃を受けるのだろう。
「……ロクでもなさそうな思い出らしいな」
「ああ。幾らそうしなきゃ飢え死んでたとはいえ、俺は人として超えちゃならねぇ一線を超えちまった。後悔はしてねぇが……あの時になって初めて、俺は人としてのプライドを貫き通して死ぬ奴の気持ちが分かったよ」
「………………」
「お前がどっちを取るかは分からねぇ。人のまま生きるのか、あるいは俺のように獣性を解放するのか──お前は、どっちにも転びそうだしな。
だが、そういう選択肢がある事だけは忘れるな。選択肢を選ばないのと選べないのとでは雲泥の差なんだからよ」
俺は無言で頷いた。スープで温まったはずの身体の爪先が、少し冷えた気がした。
「2人とも、これだけは覚えとけ。大地では躊躇った奴から死んでいく。生き残りたいなら、どんな汚いことでも躊躇うな」
締めくくるようにオヤジはそう言って、屋台の下から何かが詰まった袋を取り出した。
「あとは、これも持っていけ」
「これは……」
「活動に必要な栄養素が全て詰まったブロック状の保存食だ。見れば分かるが、一つ一つは口に含めるくらい小さい。それを口の中の水分でふやかして、噛んで飲み込む。大地を行く旅は大体コイツの世話になる。美味くはないが……少なくとも、岩を齧るよりはマシだよ」
ラップランドに旅装束を渡し、俺も旅装束に袖を通してからその袋を受け取った。
「ありがとう。この旅装束も大事に使わせてもらうよ」
「じゃあな。また会うかは分からんが、精々生き延びることだ」
そのやり取りを最後に、俺はオヤジの屋台に背を向けて歩きだした。
次に向かうのは、多くの旅人たちが利用する入国管理施設の入口だ。
「今の話って、全部本当なのかな」
「本当だろうな。あのオヤジ、ウルサスを出て長いこと一人で旅をしてるんだ。大地のことなら下手なやつより詳しいはず。
……そんな、旅慣れてるはずのオヤジが話をしたくないような出来事に、これから俺たちは遭遇する可能性が高い」
生き残りたいなら選り好みせず何でも食え。そして、どんな汚いことでも躊躇うな。
これらが基本だとオヤジは言った。ということは、そういう事態に直面する可能性が大いにあるということだ。基本的な事柄ほど、あらゆる場面で良く使われるのだから。
それを何となくでも理解したのか、ラップランドの表情が僅かに強ばった。
「怖くなったか」
「少し。でも負けないよ。ここで負けたら、父さんと母さんの仇討ちは出来ないから」
ドス黒い闇を秘めた目に決意の光を湛え、ラップランドは強い口調でそう言った。
両親の仇を討つというのが、大きなストレスと不安に抗うための柱となっているのだろう。その言葉の中には、どことなく縋るような感情も感じられた、ような気がする。
「その意気だ」
まあ、理由はどうあれ逃げるのに不都合が無ければ構わない。俺は頷いて検問所の列に並んだ。
「並んで大丈夫なの?ちゃんと調べられでもしたら……」
「安心しろ。あの検問所の警備員たちは顔見知りなんだ」
列はだんだんと短くなっていき、やがて俺たちの番が訪れる。俺は欠伸をしている、いかにもやる気の無い二人の警備員に気安く声をかけた。
「よう。久しぶり」
「おお?ああ、なんだ。生きてやがったのか。風の噂でアンタが死んだと聞いたんだが」
「誰だよ、そんな根も葉もない噂を流した奴。ちょっとトチって身を潜めてただけだっての」
「アンタがトチるなんて珍しい事を聞いたな。え?剣雨のロウガさんよ」
俺とラップランドの身分証の下に龍門幣を仕込み、それを受け取らせながら俺は顔を顰めた。あまり聞きたくない二つ名だからだ。
「お前……俺がその二つ名が嫌いなの知ってるだろ?」
「許してやってくれ、こいつなりの親愛表現って奴だ」
「おい、余計なこと言ってんじゃねぇ!」
「なら良いけどさ」
金を握らせたことで俺の身分証が期限切れなことを見て見ぬフリしつつ、警備員の二人(ちなみに名前はダンとクリフという)は入国管理施設の中で使える専用のパスを作成する。
その手を止めずに、俺の嫌いな二つ名で親愛を表現してきたダンはラップランドに言った。
「嬢ちゃんがどんなツテを使ってコイツを雇ったのかは知らねぇが、護衛にコイツを雇うとはな。高かっただろ?」
「まあ…………そう、かな」
「かーっ羨ましい限りだ。おいロウガ。戻ってきたら、俺達に一杯奢ってくれよ」
誤魔化しにしては微妙なラップランドの返事だが、あえて見て見ぬふりをしたのか、それとも単に興味が無いだけか。特にツッコミを入れることなく俺に会話を振ってくる。
「この依頼が終わったらな。そのためにも、一番良い奴を頼む」
「任せとけ。ただその分、美味い酒を奢れよ?」
「おうよ。忘れないように、しっかりとメモ帳に書いとくさ」
言質はとったからな。とクリフが言い、わざわざ自分のメモ帳にまで書きだした。
酒を奢る約束を書き終わったクリフがメモ帳を仕舞うのとパスの発行が終了するのは、ほぼ同時だった。
「一応言っておくが──」
「分かってる。俺は優しい警備員に正式な書類を提出してコレを貰った。後ろ暗いやり取りなんて何も無い、お前らは俺に騙されただけだ」
「それでいい。さっさと行け、次がつっかえてる」
投げて渡された黄色のパスを首にかけ、検問所を通り過ぎると、そこは検問所の前に広がっていた騒々しさとはまた違う騒がしい空気が流れていた。
そして前に広がるのは、五つの大きなゲートと、そこに並ぶ多くの旅人たち。ゲートの向こうに人が流れたそばから次が追加され、途切れる気配が無い。
シラクーザ唯一の玄関口だけあって、出入国管理ゲートは1年前と変わらぬ混雑具合だった。
「相変わらず、ひっでぇ混み具合だ。嫌になる」
「すごい……こんなに大地を行き来する人が居るんだ」
ラップランドは初めて中心街に来た田舎者のように辺りをキョロキョロを見渡して、周囲の旅人たちと自分のパスの色が違うことに気付いたらしい。首を傾げて俺の方を見る。
「ところで、ボクらのパスと周りの人達のパスは色が違うけど、このパスの色に意味はあるの?」
「大アリだ。行くぞ、俺たちはこっちだ」
灰色のパスを首に掛け粛々と並ぶ旅人たちを無視して、俺はラップランドの手を引いて1番端にある如何にも高そうなカウンターに向かった。
「"狼の牙"のロウガだ。生体認証で確認を頼む」
「畏まりました」
黄色いパスを提示しながら機械に指を通して認証を済ませる。幽閉されていた間に登録しておいた生体データが消されている可能性もあったが、どうやら杞憂だったらしい。
「確認できました。本日はどのようなご要件で?」
「彼女の護衛を頼まれた。ラップランド、身分証を」
「分かった」
ラップランドの身分証を表から裏まで確認した受付員は、それを隅々まで目を通す。
「失礼ですが、行き先などをお聞きしても宜しいでしょうか?」
「え?ああ……龍門の方に行く予定だよ。向こうの親戚に会いにね」
「そうでしたか。……身分証をお返しします、お気をつけて行ってらっしゃいませ」
適当な理由で受付員の質問を乗り越えたラップランドと俺は丁寧なお辞儀に見送られ、奥の通路を歩く。この通路に人は居らず、先程までの喧騒とはうって変わって静かな空気が広がっていた。
「……で、このパスの色だが、これは一般とは別のルートを通って外に出られる権利を証明する色だ。大抵の場合、金を積むと手に入る」
階段を上って、二階に相当する高さの通路には窓が取り付けてある。
俺たちはそこから下で順番を待つ旅人たちを見下ろした。
「普通の旅人は手荷物検査なんかを受けた後、ゲートを通って反対側へ抜ける。
あのゲートは感染者を見つけ出すためのものだ。あそこを感染者が通った時、身体に宿る源石結晶に反応してブザーが鳴る仕組みになってる。ブザーが鳴ったら警備の連中が駆けつけて、そいつを取り押さえるって訳だ」
そう言い終わったタイミングで、入国側からブザーが鳴った。慌てて逃げ出そうとした男を、飛び出してきた警備員が複数人で取り押さえる。
『待ってくれ!知らなかったんだ、自分が感染してるなんて知らなかったんだよ!!』
「──ちょうど、あんなふうにな」
「ふうん。こっちにあのゲートが無い理由は?」
「政治的な都合らしい。ここは所謂VIP待遇の人達も使うんだが、そういう人に何かの間違いでゲートが反応して、お偉いさんが感染していたとバレると色々厄介な事になる。最悪、政治問題から戦争にまで発展しかねない。
だから最初から設置しない。調べなければ感染していないのと同じだからな」
だから感染者である俺は此処しか通れない。心もとない手持ちから大金を支払って一番いいパスを発行してもらった理由だ。
尤も、金を貰ってこのパスを発行したあの二人は、以前のように俺が書類審査や身体検査といった面倒を避けたいと思っていただろう。
褒められたことではないが、以前から賄賂で面倒な検査をスルーしておいて本当に良かったと思った。
「…………世間って、思ってたより薄汚いんだね」
「逆にお前は、随分と可愛がられてたんだな。それは悪いことじゃないが、これからはその薄汚い世間を生きなきゃいけない。
そして今まで守ってきた法に触れるような悪いことも、やらなきゃいけない日だって来るだろう。俺たちに手段を選べるほどの余裕なんて無いんだからな」
「分かってる。でも中々慣れないんだ。生き残るために必要とは分かっていても……」
俺は感染者という害虫以下の扱いを受ける存在だし、ラップランドの方は理由は分からんが命を狙われている。これでは真っ当に生きることは不可能に近い。どこかで手を汚す必要も、きっと出てくるだろう。
とはいえ、ラップランドの気持ちも分かる。突然意味の分からない環境に置かれて、ついこの前まで守っていた法を破れと言われて、すぐ破れる奴はそう多くない。
「まあ、気に病むことは無いぞ。確かに生き残るために、このパスを発行してもらうための賄賂を払った。これは汚いことだが、その程度なら大体の奴はやってるし、賄賂なんてこれからやらかす事に比べたら些細なことだ。
それに復讐だって、傍から見ればタダの殺人に過ぎない。こう言っちゃ悪いが、その考えは今更だな」
「……」
どのような理由があれど、国境を強引に突破することは犯罪だ。それを今からしようとしている俺たちは、これから先、犯罪者としてしか扱われない。
それに復讐という理由で人を殺すラップランドは、言い訳のしようもない罪人になる。その復讐が本人にとっては正当なものであるとしても、その怒りは他者には分からないのだから。
だから、本当に今更なのだ。
今回に限らず、これから途中で「現地人だから知っていて当然」というような情報や単語(例:今回の狼の牙)が出てきます。
もちろん皆さんにとっては意味の分からないものばかりなので、どこかで説明を入れたいのですが、主人公が現地人という都合上、知っていて当然な知識をペラペラ喋りだすのは違和感を感じてしまいます。
なので、途中で主人公以外の誰かの一人称で進む"独白"という閑話のようなものを混ぜ、可能な限りそこで情報や単語などの意味を喋らせる予定です。それすら無理そうなら特殊タグを使って何とかします。
なお、現時点でラップランドは未感染ということをお伝えしておきます。