桜才学園一般生徒の日記 作:←↙︎↓↘︎→あの辺にスズヘッド
○月☆日
世の中はバレンタインで大騒ぎ。
僕は稼ぎ時なので当日もチョコ売りのバイトが入っている。こういうイベント日って、お金が稼げていいよね。
柳本はソワソワしていた。女子生徒の数が圧倒的に多いこの高校なら確率も高いんじゃないか、と語っていた。果たしてそうだろうか? 最近は友チョコなどと言う物もあるらしいし……。
それしてもチョコか……久々に食べたいな。うーん、売れ残りを安く買えたりしないだろうか……?
○月♪日
バレンタイン当日。柳本がワックスで髪を固めて来ていたので笑ってしまった。津田は既に家族からチョコを貰ったらしい。コトミちゃん、兄想いなんだな。他にも生徒会の面々にも貰いそうだ。
僕も三葉他柔道部の子たちから貰えた。僕に渡した後すぐに津田たちにも渡していたから義理チョコだろうけれど、嬉しかった。恥ずかしそうにチョコを渡してくる三葉は多分魔性の女だ。勘違いしてしまいそうになったよ。
その後津田経由で生徒会の面々からチョコを渡された。七条先輩のだけ中で何かが動いていたので津田に聞いたら「知らなくていいよ」と真顔で言われた。ウチに帰って開けてみたら小さな機械が入っていた。七条先輩はこれで僕に何をして欲しかったんだろう……。バイト中もずっとこの事で悩んでいた。
ちなみに売れ残りのチョコは安く買えた。
○月・日
そろそろ受験の季節。つまりコトミちゃんが
最近は毎日のように津田に教えを乞いているらしい。津田も妹に頼られて満更でもない様子。
コトミちゃんが合格できるよう、僕もお祈りしておこう。知り合いが不幸な目に遭うのは嫌だからね。
+月○日
コトミちゃんは無事合格した。のでお祝いパーティに参加した。
何でも筆記はそれなりだったけど面接の時にとても気の合いそうな先生に当たったらしい……横島先生か? 横島先生だろうな、絶対。
色んな人に祝われているコトミちゃんはとても誇らしげだったが、兄の津田は何処か渋い表情だった。理由を聞いたら「気の合いそうな先生」に引っかかっていたらしい。天性のツッコミ体質の津田は、自分が苦労するであろう
+月%日
津田が畑さんから頼まれたエッセイに悩んでいた。
なんでも意外に文才があるらしく、好評だったらしい。僕は読んでいなかったから分からないけれど……。
うーん。畑さんに頼んだら前載せていた奴見せてもらえるだろうか? でも、変な交換条件持ち出されそうだな……。
大人しく次に出るであろうエッセイを読もう。うん、それがいい。
+月×日
今日は日直だったけど、バイトの所為で少し遅れてしまった。同じ当番の三葉には申し訳ない事をした。三葉は「気にしないで!」って言ってくれたけど、今度から気をつけよう。
何時もより三葉との距離が遠かったのでどうしたのか、と聞いてみたら
「練習終わってすぐだから……汗臭くない?」
三葉もやっぱり女の子なんだな〜という感想は胸に秘めて別に臭くないし、気にしなくてもいいよ。と言っておいた。女の子に向かって臭いと言う奴は色んな意味で勇者だと思う。本人の名誉の為に書いておくけれど本当に三葉は臭く無かったからね。
日直の仕事が終わると日も暮れていた。男の僕が送ってあげないとという使命感があったのだが、先に三葉に
「私強いから、守ってあげるね!」
とやる気いっぱいの表情で言われてしまった。……確かに三葉は柔道二段だし、力の差は分かるんだけど、男として少し情けなかった。
+月=日
バイト帰りにまた畑さんに待ち伏せされていた。頼み事があったらしい。
超絶貧乏男子生徒とお金持ちお嬢様のお宅拝見をしたいらしい。お金持ちお嬢様というのは七条先輩の事で、貧乏は僕だ。しかしそんな記事を出したとして、誰が興味があるのだろうか?
七条先輩は紹介する事が多いだろうけど、僕はすぐ終わってしまう。畑さんにそう言うと
「実物の写真に貴方さえ写っていればいくらでも誇張するわよ。私、記者だから」
なんて事を真顔で言い出したので、しっかりとした紹介をしなければならなくなった。……そもそも記事を書く事を了承していないのだが、してもしなくても新聞に載るだろう。畑さんだし。
部屋はいつも綺麗に掃除していたからか、写真を撮っていた畑さんは不満気だった。部屋が汚そうというイメージを持たれていたのは心外だ。住んでいる所はボロいけれど(大家さんに失礼)、部屋は綺麗にしている。まぁ物がほとんど無いといった方が正しいけどね。
畑さんの取材が終わってから気付いた、僕の人生で自分の部屋に入る一番最初の女子が畑さんだった事に。
+月°日
新聞は特に誇張されていなくて安心した。良かったけど、最近無くなっていた周囲の謎の優しさが復活した気がする。うーむ、やりにくい……。
特別扱いされるのは苦手だ。僕自身、自分に特別な才能や容姿を持っているわけでもない普通の凡人故に。ただただ必死に生きてきて付いてきたものが貧乏という称号だっただけで……。
七条先輩は色々な意味で有名で、それ相応の才能を持っている。ここまで自分と差を感じてしまうと、嫉妬の感情など湧かないらしい。物語の主人公・ヒロインを側から眺めているような、そんな気分だ。
まぁそれくらいで人を嫌いになったことは無いので態度を変えたりなんかする事は無いけれど、七条先輩は相変わらず考えている事がわからない。彼女は「うふふ」と上品に微笑むのみで、渡されたプラスチックのボールとフリスビーは押し入れに仕舞い込んだ。僕にペットを飼って欲しいのか?
×月・日
新入生が入ってからはや一週間。新しいクラスには見覚えのある顔がたくさんあって安心した。男子の少なさ故か、今年も津田や柳本と同じクラスだ。先生たちに感謝しなれけば。初めて絡んだ
津田の妹であるコトミちゃんも早速友達を作ったらしく、津田と喋りながら歩いていたら偶然出会ったので紹介された。トッキーこと
×月☆日
今日は五十嵐先輩とぶつかってしまった。慌てて謝ったけど男性恐怖症はあんまり治っていないらしく、僕とぶつかってから5分くらい彼女は固まって、壊れたロボットのような笑い声を出して何処かへ消えていった。五十嵐先輩が男性に慣れてくれる日は来るのだろうか。新入生が来たから男子が増えたし、苦労するだろうな……。
×月…日
柔道部に新入部員が入り、三葉はやる気が高まっている。試合にも連続で勝利し、ドンドン腕を上げている──という内容の新聞部の記事を見た。流石だなぁ、三葉は。これからも頑張って欲しい。
みんなで応援したら更にやる気の炎が燃えたのか、柔道部の練習はかなり過酷な物になっていた。多分三葉はみんなを信じてその内容にしたんだろうけど、女子が2リットルのペットボトル3本を背負って10kmマラソンはスパルタというか何というか。
他の女子の目が死んでいく様を見た。
○月・日
そろそろ長袖も暑いと感じる今日この頃。七条先輩は階段でまだポケーっと立っていた。暑さにやられていたという訳ではなく、いつもの天然だった。
「善谷くんは大きいのと小さいのどっちが好き?」
脈略も無くそう聞かれたので大きい方ですかね……? と答えた。質問の意図は分からなかったが、七条先輩は嬉しそうだったので合っていた筈。
……質より量を選んでしまう貧乏人の悲しい性だ。
七条先輩の後には萩村と会った。眉間にシワを寄せ、機嫌が悪そうだったのでどうしたのかと尋ねたら
「ちょっと、頭から離れなくてね……七条先輩の持っていた小説が」
萩村は速読もできるらしく、一度読んだ内容は忘れないらしい。流石天才だ。小説の内容を聞き忘れたけど、ホラーだったのかな? 七条先輩もそういうの読むんだなぁ……。