桜才学園一般生徒の日記   作:←↙︎↓↘︎→あの辺にスズヘッド

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前回の更新から約……四年


六ページ目

 

<月>日

 

 

近々水泳大会が開かれる。なのでプール掃除のお手伝いをしてきた。正直乗り気ではなかった……水泳大会自体に。

 

大変つまらない理由だけど僕が泳げないからだ。プールは学校行事だけで、海なんて旅行のパンフレットを見るくらいで行ったことがない。

海の家のバイトは夏には恒例だが、通勤手段や気温を考えて断念。つまりこれまで泳ぎというものに触れる機会がほとんどなかった。学校行事でも水に顔を付けたりしてた程度で、最悪泳げなくてもいいかとまで思っていた。

 

そんな事を笑いながら津田と話していたら他の人にも聞かれていたらしく急遽僕の水泳授業が開催されることになった。

 

泳げることに越した事はない! との事。

 

水着、破れてないか確認しとかないと……。

 

 

 

 

<月×日

 

 

 

水泳大会当日。みんなの手伝いもあってか何とか泳げるレベルにまで到達した。

流石と言うべきか、やはり生徒会役員たちは優秀な人たちだった。教えるのも上手で分かりやすい。

 

まぁ勝負には勝てなかったけどね。

 

多少泳げるようになったとはいえ、対戦相手が水泳部だったのも不運だった……。

お昼ご飯をみんなで食べた時、僕の弁当を見てみんな驚いてた。クラスのみんなや生徒会の面々は見たことがあるから反応は無かったけど、津田の妹のコトミちゃんやその友人の時さんは口を開けたまま止まっていた。

 

畑さんは僕の背後から手を伸ばして僕の弁当を一口食べて、

 

「あら美味しい。これは将来有望ね」

 

と一言溢してカメラ片手に去っていた。相変わらず自由というか、掴めない人だなと思った。弁当を褒められて嬉しかったけども。

 

 

 

<月:日

 

 

 

夏休みに入った。僕はいつも通りバイト漬けの日々。学校の長期休みは稼ぎ時なので気合いも入る。

 

津田は生徒会の仕事があるから学校に行かなきゃならないと言っていたっけ。大変だなぁ……。

 

夏になると世間ではイベントが多く、芸能人が来るイベント会場の設営や、工事現場のアルバイト求人が増える。良い条件の求人チラシを片手に歩いていると、目の前から見覚えのあるメイドが一人。出島さんがやってきた。

 

彼女は一人だったので休みの日もメイド服なんてプロだなぁと思っていたらすれ違い様に手を掴まれた。その視線は僕の持つチラシに集中している。

 

「成程、お困りのようですね」  

 

いや、何も言ってませんけど……出島さんの言葉にそう返すと彼女は僕からチラシを奪い取り、丁寧に折りたたんで自分のポケットに入れた。返してくださいよ、と声をかけると出島さんは何故か胸元から一枚の紙を取り出した。

 

「うちで働きませんか?」

 

渡された紙には僕が持っていたチラシなんか霞んで見えるような金額などが記載されており、これだけあれば一カ月……いや、三カ月は食べていけるくらいのモノだった。

 

出島さんが言うには男手が必要になったから七条先輩の知り合いである僕に話が回って来たらしい。何故だろう、少しだけ出島さんが天使のように見えた。

 

 

 

<月〒日

 

 

七条先輩の家に短期アルバイトに入った僕はお金持ちの生活というものに毎日衝撃を受ける日々である。

 

まず、家の何処にいても快適な温度だ。クーラーが効いているのだろう、屋敷の中の掃除で汗を掻くなんてあまりないし、使うものも箒やちりとりではなく最新の掃除機などだ。使い方を教えてもらい、掃除をしているとその便利さに感動した。

 

次に、食事は三食付いており、出される料理もシェフが作るもので一口食べただけで僕は手が止まってしまった。それくらい美味しかった。だって、正式な名称は分からないけれど僕の月の食費の何十倍もあろう高級肉だよ? ただでさえ日頃から肉をあまり食べない僕に、この衝撃は耐えられなかった。

七条先輩はそんな僕を見てニコニコしており、少し恥ずかしくなった。

 

最後に、やはり賃金だろう。時給が他のアルバイトの何倍もあり、いっその事此処に就職したいとさえ何度も頭の中をよぎった。

 

……が、そこまでお世話になってしまったら申し訳ないという想いが僕の中で勝ってしまい、超優良短期アルバイトに運良く出会っただけだと気持ちに整理をつけた。

 

後は家にエスカレーターがあるとか、数千万円の壺を恐る恐る磨いたりだとか、僕は驚きすぎて感覚が麻痺したのだろう、すげー。としか言えなかった。

 

 

 

<月々日

 

 

 

七条家でのアルバイト最終日。お世話になったお礼を言った後、頂いた少し分厚い茶封筒を大切に鞄に入れていた僕に七条先輩は声をかけてきた。なんでも、夏休みだからみんなで海に行きたいらしい。みんな、というのは生徒会の面々だろう。

 

何故僕にその報告をしてきたのかは分からなかったからとりあえず楽しんできてくださいね、と言うと七条先輩は不思議そうに首を傾げた。

 

「善村くんも行くんじゃないの?」

 

どうやら知らない内に参加資格を得ていたらしい。七条先輩の言葉に今度は僕がえ? と首を傾げる番だった。

 

七条先輩が言うには海水浴の企画が立ち上がった時、津田が男一人は肩身が狭いから誰か誘おうかと口にしていたらしく、それで七条先輩は津田の友人で生徒会の面々とも知り合いの僕が来るものだと思っていた、との事。

 

初耳ですよ、と七条先輩に言うと先輩は携帯で何処かに通話をし始めた。相手は津田らしく、七条先輩はぷりぷりと擬音が鳴っていそうな感じで津田を叱っていた。もう、ちゃんと誘わなきゃダメだよ! ……みたいな感じで。

……まぁ、津田の電話番号を持っていても連絡手段がウチにはないし、夏休みでバイトに明け暮れていた僕が津田と会う可能性は低かったし誘う以前の問題だ。仕方がないだろう。

 

叱られている津田に申し訳ないと思いつつお説教が終わるのを待っていると、僕の背後にいつの間にか出島さんが立っていた。通話に夢中の七条先輩に聞こえないようにボソッと、小声で出島さんはこう言った。

 

「その茶封筒の中身、少しおまけしてあります。その意味が分かりますか?」

 

……と。最後に何故か僕の耳にフッ、と息を吹きかけたのは謎だが、どうやら海に行くことは初めから決まっていたようだ。

 

 

 

 

<月〆日

 

 

 

海水浴の予定はつつがなく進み、当日を迎えた。久しぶりに会った津田にお前、少し焼けた? と少し黒くなった肌を見て言われたり、制服姿ではない天草先輩や萩村を見て私服もおしゃれだな、と思ったりした。

 

引率は横島先生と出島さんが行うらしく、人数と荷物の問題で僕と七条先輩は出島さんの車へ、津田たちは横山先生の車で行くこととなる。出島さんの車(流石にリムジンではなかった)の助手席には何故か既に膨らんだイルカの浮き輪が置かれており、仕方がないので後部座席に乗り込んだ。

 

七条先輩と雑談しながら海の景色を見たり、バックミラー越しの出島さんの意味ありげな視線にビクビクしたりしながら僕らは海水浴場に着いた。

 

海水浴場には思ったよりも人がおらず、こんな事もあるのか? と思っていたらどうやら七条先輩のプライベートビーチらしい。ははぁ……お金持ちは凄いや。

 

パラソルの設置をしていたらビールを片手に持った横島先生に腕を掴まれ(凄く力強く)、オイルを塗れと水着をはだけさせて言ってきたので丁寧に断って天草先輩に助けを求めた。天草先輩は横島先生を見て一瞬固まり、自分のある部分と見比べた後チクショウ! と言いながら背中にオイルを塗ってあげていた。

 

僕の語彙力が足りなくて申し訳ないが、女性陣の水着はどれも素敵だったと書いておく。だから七条先輩、感想をねだられても困ります!

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