黒猫さん隠し事とか出来そうにないし、クラス皆でどうにかせん? 作:本之蛆
「この前の配信見た? またセクハラデッキ使ってたよあの猫」
「見た見たそれ、にしても自分のアレがいけるってアレだよな。プレートなのに何がどうしてあんなになれるんだか」
「まじそれな。まあこっちは途中できりんさんの始まったから最後までは見てないけど」
「マジかよ」
まあそういうもんか。
Vtuberは良い。
生身の人間は基本的に不細工である。綺麗かな、と思っても良く見たら鼻が少し高かったり、顔が少し角張っていたりするのだ。
そうでなくても人は表情を歪めるし、たとえ笑顔であっても度が過ぎるとバランスが崩れたように感じてしまう。
テレビに映る芸能人なんかも基本的に内面は分からないし、アイドルなんてもっと分からない。
しかし。しかしだ。
Vtuberは違う。
声がそのままだから感情は繊細に感じ取れるし、有名になるようなVtuberには創作の登場人物と同じかそれ以上の強い個性がある。
それに、彼らは時折内面......というか中の人なんだけど、それを覗かせるからこそ人間味があるというか親しみのようなものを感じさせてくれる。
あれも演技だとは思いたくない。
Vtuberはオタク友達に勧められて知った。
友人はガチ勢だったがそこまではハマらず、なんとなく同じ会社の配信者を見て回るようになった。
友人達にはお前もすっかりリスナーだななんて言われたものの、ようつべを開いたときに配信があったら覗くぐらいで知ってるゲームだったとしても最初から最後まで追いかけたりはしないし、雑談は30分開けば長い方で基本的には切り抜きしか見ない。
そういうにわかにしかなれなかった......のだが。
最近、黒猫燦というVtuberにハマった。
ツイッターで騒ぎを知り、後でまとめを見てチャンネル登録を押して本家動画にも好評価をつけた。初めて感想も書いた。
天然とも違う。あまりにも残念。あまりにも陰キャ、あまりにも............そう、なんというか人間臭い。
あれは演技が出来るような性格じゃない。ただの淫猫だ。
まーそんなわけで最近は学校でもイヤホンつけてアーカイブを見るようになった............まあ、これにはもうひとつ理由があるのだが。
隣の席の黒音さん。クラスのマスコットというか......同志達と皆で遠巻きに見守っている。
さらさらの艶やかな黒髪で、集合写真を凝視して粗を探してもその顔に汚点は見つけられず、整った顔立ちであることを認めざるを得なかった希少なるリアル美形女子。
が、それ以上に陰キャ。
もうどう取り繕っても陰キャ。同志達は奥ゆかしいとか清楚とかオブラートに包んで言葉を濁すものの結局は変わらないから言うけど、アレは陰キャ。
正真正銘、生粋のコミュ障だ。
プリントが送られてくるときは絶対に目を合わせないし、渡すときも手だけ綺麗に後ろに回す。
尚、腕の照準があってないから前後は若干苦労する............のだが、前後の席の山田と清水は生き甲斐とか言ってた。高レベルの同志は言うことが違うぜ。
どうやら周囲に人がいるだけで若干つらいようで。
同志達に圧をかけられ、基本友達と話すときは友人の席に行くようにしてるし、スマホ弄るときはイヤホンをつけて回り見えてないですよアピールをして空気化している............ってアレ?
ん? これ音切って......ない。あれ? 音出てなくね?
確かに音量バーは伸びてるんだけど......
「おいちょそれ音漏れてる音漏れてる」
はい???????
太田がやって来て肩に手をおいた。
「今日から勇者って呼ぶわ」
「おいやめろ」
そんでその
「え............っはぁーマジかぁ~ってこれそっちまで聞こえてた? マジで?」
安藤さんたちは大ウケしてる。
その後ろの斎藤も笑い転げていた。あの野郎。
あーこれ接続切れてたわ............はっず。
「でもそれなに見てたの?」
「あーVtuber分かる? この前炎上してたやつなんだけど」
「あ、なんか知ってるかもそれ。猫のアニメみたいなやつだっけ?」
「いや黒猫燦だろ? それ急上昇ワード載ってたやつじゃん?」
あーうんそうそうそうなんだよーああその初投稿動画これなんだけどねーははは............
え? それはそれとして黒音さんがビビってる?
いやまあ悪かったとは思うけどその、どこに連れていく気なんちょ、同志ほらミスぐらいあるじゃん? ちょまおい楽しそうだからノっただけで同志のノリは元々理解仕切れてないって言うかこれは流石に過保護だってちょっとは刺激に慣れた方が良さげじゃおい........................
......
............
..................
酷い目に遭った。いつもどれだけ注意を払って黒音さんと接してると思ってる、こちとら授業の会話全部綱渡りなんだぞおい............話しかけすぎても警戒されるし会話が少ないと露骨に気落ちするし、何も気にしてない風に適当に最低限必要な会話をする難しさを酌んでだな..................
陰キャなのに美人だから罪悪感が凄いし............
ってここに人集まったから黒音さん死んだのでは............
横を見る。
くろねさんはかたまっている!
............。
あーこれごめんとか言うよりそっとしとくか......話しかけてもいつもの倍警戒されそう..................
「───学校でリア充共が私の初配信たれ流して騒いでたんですけど!!! マジ許せねえよなあ!?!!!!!」
ふーん黒猫リスナーだとしたらマナー悪いな......ってん? いやそんなわけないか。
ん?????
ちょっと待てあのとき同じ教室にいて陰キャしてた奴って............大久保さんと若林さん、と黒音さん?
黒音さん??????????????
いやまさか黒音さんが黒猫とかそんなわけというか流石にそれならもっと誤魔化して喋るだろないないないない黒猫が誤魔化しとか出来るわけ無いんだよなぁ............
確かめるか。そうだ、同志達も巻き込もう。
あのー同志ー確証はないのですがー。
勿論、接触なんてことはしない。
丁度初コラボが近づいてきたことだし、コラボ当日まで観察していれば自ずと答えは出るはず。
......
............
........................
クロだ。
同志達と観察してみて確信した。ただ両者とも陰キャでポンコツというだけではなかった。
黒音さんのその日の行動と黒猫燦のツイートには符合する点が偶然とは言い難いほど多かったのである。
黒猫燦のキャラからして同志の何割かは絶対に認めないかと思ったが、同志達は「ギャップがいい、萌える、尊い」と一様に黒猫燦を肯定した。怖い。
あのとき学校外での観察はしないようにやんわり止めといて良かった............
いやにしてもリアルであったことをそのままツイートしすぎでしょ。
まあそんなわけで、黒音今宵=黒猫燦は確定。
コラボ当日の今日、めっちゃ顔色悪いしね。
でもなんか約二名こっち凝視してるのめっちゃ怖いんだけど......あ、黒音さんをか。
そういやこの前からやけに避けられてたけど......まあ、陰キャだしギャル系陽キャに話しかけられたら逃げるか。陰キャだし。
黒井さんはマジで分からん。
あー同志知ってる? あそう。ふむふむ。
まあ気づいてる人がいるならどうにかしてくれるか............多分そういう感じだし。
おーい同志ーちょっと教室開けよー。
自然な流れで同志達を中心にして皆オープンスペースや他のクラスに流れていき、教室はほとんどあの三人だけとなった。凄いな同志達の誘導術。
詳細は残っている隠密女子同志に後で聞けばいいか。
保健室で休んで回復した後、黒井さんから謎の激励を受けた黒音さんは無事に下校していった。
いやー2度も教室空にした甲斐があった。眼福。
いや隠密女子同志って何???????
お読み下さりありがとうございます。
主人公は変質的な百合好きで、男子は美少女には触れるべきではないと思っているちょっとヤバい紳士。
同志のことを「怖......」とか言ってられないんですよね。
同志達はアレですかね、男子共が暴走したときに黒音さんを守るため、度を越したアプローチを防ぐために団結し始めて............隣の席になった奴が話が分かりそうだったから勧誘した、みたいな。
リアル黒猫燦が一体どんな言動を取るのかイメージが怪しかったのでほとんど台詞は無くしたんですけど、どこか間違いがあったらすみません。