駄文ですが良かったら読んでください。
"強くなりなさい 後悔しないように"
「ハァ、ハァ...ハァ」
深い森の中を彼女、
やっとの想いで麓の村までたどり着いた桜乃は見慣れた茅葺き屋根の家の戸を倒れ込むように叩いた。
「助けて!! 師範が、師範が死んじゃう!!!」
悲鳴のような彼女の声にただごとでは無いと感じたのか、家の主、
「桜乃、落ち着け、何があった!?」
「じいちゃん、鬼が出た、頸を切っても死なない鬼が!!師範が一人で戦ってる、お願い師範を助けて....
桜乃の意識はそこで途絶えた。
目が覚めると桜乃は見覚えがない場所で横になっていた。ここはどこだろう?そんな事を考えていた桜乃に声が掛かる
「目が覚めましたか?」
「あっ、はい。 ...あの、ここは?」
「ここは負傷した隊士や鬼の被害に遭われた方々の治療所ですよ。私はこの蝶屋敷を管理している胡蝶カナエと申します」
軍服を思わせる様な上下黒の隊服に白の羽織、腰まで伸ばした艶やかな髪と整った顔。印象的な蝶の髪飾りは彼女の美しさを引き立てていた。
「そうですか... 助けて頂きありがとうございました」
「いえ」
カナエは笑みを浮かべながらそう答えたが次第にその表情は曇っていく
「………貴方に伝えなければならない事があります、貴方の師である
その瞬間、桜乃の脳裏に昨夜の出来事が蘇る。
「師範は、師範は無事なんですか!?」
「村の人々から事情を聞き隊士を送り込みましたが、貴方の師の安否は確認出来ませんでした」
「えっ?」
「遺体の発見が出来なかったんです。……しかし、生きてる可能性は少ないでしょう」
「師範が...死んだ?」
「残念ですが、おそらくは」
身体の力が抜け、世界に穴が空いた感覚に襲われる。
理解はできる、鬼と闘い遺体がみつからない、食べられたと考えるのが自然だ。ただ気持ちが追いつかない。
その後の事はあまり覚えていなかった。頬が濡れている、おそらく泣いていたのだろう。そして桜乃の中にははっきりと2つの感情が芽生えていた。鬼への憎悪と弱い自分への嫌悪感が。
「カナエさん」
「はい」
「強くなりたいです、強くなってあの鬼を殺したい」
「…その道は辛く、険しいものです。死ぬかもしれません。貴方には幸せに暮らす選択もあるのですよ?」
「私は..師範を殺されました、選択肢などありません。あの鬼を知ってしまった以上幸せに暮らす事など出来ないです。
師範から教わった剣で私はあの鬼を必ず殺します」
紫がかった大きな瞳には、この年の少女には不釣り合いな憎悪と決意が表れていた。両親を鬼に殺され鬼滅隊に入った過去がある胡蝶カナエにはそれ以上桜乃を説得する事は出来なかった。
「分かりました。鬼滅隊への入隊には半年後に行われる最終選別を突破しなければなりません。詳しい説明は後でいたしますので、今は傷を治す事だけを考えてください」
「はい、ありがとうございます」
何かあれば近くの者に言ってくださいね、そう言って胡蝶カナエは部屋を後にしたが何か思い出したのか急いで戻ってきた。
「あっ、桜乃って呼んでいいかしら?」
「へっ?」
間の抜けた返事にカナエは思わず笑いがこみあげた。