桜の隊士   作:やさいせいかつ

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最終選別

"鬼殺隊"政府非公認でありながら千年以上の歴史を持つ、その名の通り鬼を狩る組織である。最も信頼される9人の柱と呼ばれる隊士を中心に、数百名の構成員がいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーカンッ

 

 

蝶屋敷に乾いた音が響いた。

 

 

「流石ね桜乃、前の師の教えが相当良かったのかしら?」

カナエは感心した様子だった。

 

 

 

今より半刻ほど前。

 

 

 

 

「いいですか桜乃、最終選別への条件はしのぶから一本取ること。準備は出来てますか?」

「はい!」

 

最終選別。鬼殺隊入隊の為の試験、その内容は過酷で毎年参加者の半数以上が命を落とす。

 

「しのぶも準備はいいですか?」

「いつでも大丈夫よ姉さん」

 

カナエは一度頷く。

 

「初め!」

 

カナエの声が響くとほぼ同時に2人の木刀は重なる。

 

 

 

 

 

時は現在へと戻る。

 

 

「…油断しただけよ」

 

黒い髪をまとめあげた蝶の髪飾り、整った顔立ちは姉・胡蝶カナエとよく似ている。悔しさをにじませた()()()()()の足元には叩き落とされた木刀が落ちている。

 

「しのぶは相変わらず負けず嫌いね〜、でも姉さんしのぶのそう言う所も好きよ」

 

しのぶは顔を真っ赤にして怒りを抑えていたが、カナエは気にする様子もない。半年間で見慣れた光景、桜乃はこの景色が好きだった。

 

さて、と仕切り直しカナエは桜乃を優しく抱き寄せる。

 

「半年間本当によく頑張りました、桜乃は私としのぶの自慢よ」

 

その言葉に"あたりまえよ"と言わんとばかりにしのぶは桜乃の小さい頭を撫でる。桜乃の涙腺はそこで限界を迎えた。

 

「あらあら、桜乃は泣き虫ね〜」

 

「だって、だってカナエさんとしのぶさんが ううっ...わたしうれしくて、ごめんなさいぃ、服にはなみずついちゃいましたぁ うっうっ…」

 

その様子にカナエとしのぶはアハハと笑う。

そこには鬼など無縁に思える3人の少女の姿があった。

 

 

 

 

 

 


 

最終選別を前日に控えた桜乃は故郷の村を訪れていた。

 

「半年ぶりか…」

そう呟き桜乃は見慣れた家の戸を叩く。暫くするとガラガラっと戸の開く音が聞こえ司波銀次郎が顔を出した。

 

「桜乃か?」

「私の顔忘れちゃった? 」

そう言っておどける桜乃を銀次郎は抱き寄せる。

 

「文で無事だとは聞いておったが、実際に会うまで安心など出来んかったわ」

 

「ごめんじいちゃん。修行が辛くてさ、戻ったら甘えちゃいそうだったから」

 

「そうか、そうか。ただ無事でよかった」

そう言うと銀次郎は名残惜しそうに桜乃から離れる。

 

「鬼狩りになるんじゃな」

「うん、師範と同じ鬼殺隊になる」

 

そうか。と言うと銀次郎は少し悲しそうな顔をみせたがそれ以上何も言わなかった。

 

「ゆっくりしていけ、この半年の話でもしよう」

桜乃は銀次郎に促されるまま居間へと昇り畳の上に腰を下ろすと半年間の出来事を話し始る。胡蝶姉妹と出会い本当の姉が出来た様だった事、修行が大変だった事。シュークリームと言う大好物が出来たこと。気づくと太陽は東に傾きはじめていた。

 

「そうか、そのシュークリンとか言うやつはそんなに旨いのか!」

 

「あはは、シュークリームだよじいちゃん。いつか食べさせてあげるね」

 

「こりゃまだまだくたばれんな!」

ワッハッハと口を大きくあけて笑う銀次郎を見て桜乃は懐かしさを感じた。

 

「もうこんな時間か」

「うん、そろそろ行かないと」

「寂しくなるな」

「私も寂しいよじいちゃん…あっ、じいちゃんに聞きたい事があったんだった。師範の呼吸について」

「小春の?」

「うん、零の型について師範は何かいってなかった?」

 

うーんと考える素振りを見せた後で銀次郎は答える。

「すまんが聞いた事がないの」

「そっか…」

 

ただ、そう言って銀次郎は話を続ける。

「参考になるかは分からんが、小春は縁側で桜を見て、散りゆく花弁を感じていると言っておった。儂には何のことかさっぱりわからんかったがな」

「花弁を…感じる」

「すまんな、力になれなくて」

「ううん、充分だよじいちゃん。ありがとう。じゃあ、私行くね」

立ち上がろうとした桜乃に声が掛かる。

 

「ちょっと待て桜乃、儂も思い出した事がある」

そう言って銀次郎は急いで物置に向かった。暫くして戻ってきた銀次郎の手には何かが握られていた。

 

「手鏡?」

「そうじゃ、小春がな桜乃の為にと作っておった」

「師範が」

「あぁ、お守り代わりじゃ持っていけ」

そう言って渡された手鏡は白地に桜の花の刺繍が施されていた。

 

「綺麗…じいちゃんありがとう!」

「無事でな、いつでも戻ってこい」

「師範がついてるんだもん、大丈夫だよ!」

「あぁ、そうじゃな」

 

行ってきます。そう言って村を後にする、外はすっかり夕焼け色に変わりヒグラシが鳴きはじめていた。桜乃は決意を新たに蝶屋敷への帰路についた。

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