そして全てが終わった。黒い機械人間は高速で離脱し、暴走したスバルは士が破壊し、そしてティアナは裏庭で意気消沈していた。
この一連の事件について、ティアナは執務官の特権を生かし、士達のことを伏せながらも説明、そしてあとは自分が調査すると無理やり管理局の人間を撤退させた。
その頃、事件を遠目から見ていただけのユウスケは、なぜかしつこく事情聴取を受けており、ようやく解放されたことに安堵の息をついていた。
「なんだよ局員のデバイスがいくつかなくなったって。いくら近くにいたからって、そんな戦闘すらしてない人のものを奪うかって言うんだよ」
わざわざ大きな声でそれを言ったのはユウスケがこの空気に耐えきれなかったからだ。先ほど身の内を話し、そのせいでスバルは前にでてしまったのだから、責任を感じない方が無理という話だ。夏美の方も、こんな状況でどう話しかけたのものかと立ち止まってしまう。
だがティアナを見下すように、その場に立っている士だけは違った。士は泣き崩れているティアナの腕を掴むと、無理やり起き上がらせるのだった。
「おい、お前には聞きたいことがあるんだ。さっさと店の中に戻れ」
「…………」
「士、そんな言い方ないだろう。この状況を一番わかってるのは士だろうが」
「そうですよ士君」
ユウスケと夏美は士を抑えつけようとするが、ティアナ本人がそれを拒絶する。そして士の手を借りながらも、ゆっくりと起き上がるのだった。
「私に何を聞くことがあるのよ」
「あの機械人間とあんたのいうロストロギアについてだ」
「そんなこと聞いてどうするのよ。あなたには関係ないことじゃない!」
「確かに関係ないかもしれないが、お前には関係あることだろ」
「……何を」
「それを使ってあんたのお仲間を助けるんだろ。だったら急いだ方がいい、あの黒いのがそのロストロギアに関係してるなら事が動き出すのももうすぐだ」
確かにティアナの当初の目的は、ロストロギアを使いなのはを助けることだった。だが、今のティアナには、もうその想いを貫き通す意思はなかった。
「……もうそんなこと、どうだっていいわよ。もうスバルはいない、私が無鉄砲に走り回って、結局一番近くいた大切な人を失ってしまったのよ。こんな私に今更誰かを助ける資格なんてないわよ!」
スバルが死んだ。そう言葉に出してしまうと、再びティアナの目から涙がこぼれ出した。あまりにも悲惨な彼女の姿を見て、誰もが声を失う。
だが、士はそんなティアナのことを無視して、腕を掴むと無理やり歩き始めた。
「な、何するのよ!」
「何かをするのはこれからだ。それにさっきの言葉を聞いて安心した。お前はまだ誰かを助ける資格があるってことだからな」
士はティアナの腕を掴んだまま写真館に戻ると、先ほどコーヒーを飲んでいた部屋まで彼女を連れて行く。
そして士に背中を押され前に倒れ込むと、そこにいる人物を見て自らの目を疑うのだった。
椅子に座っているおじいさんはニコリと笑顔を見せると、ソファーに座っている彼女を指さすのだった。
「この子のかっこうだとお腹が冷えそうだから、布団をかけておいたんだ。女の子が体を冷やしたらまずいからね」
そう言われた対象をティアナが見間違えるはずがない。体のあちこちに傷を負っているが、そこに横たわっているのはスバル本人なのだから。
目の前にある現実が理解できないと、ティアナは士に目を向ける。
すると士は一枚のカードを取り出し見せつけた。その手には、赤いライダー『カブト』と書かれていたカードが握られていた。
「俺はディケイドになった状態で、これらのカードを使うことにより、様々な世界のライダーの力を使うことができる。俺が使ったライダーは仮面ライダーカブト、そしてアッタクライドはクロックアップ。まああんたにわかりやすくいうと、目で追うことも出来ない超高速を可能にするのがこのカブトの力だ」
「……じゃ、じゃああなたはそのカードを使って」
「その通りだ。俺はカブトのクロックアップを使い、超高速でスバルを気絶させ、周りにいた奴のデバイスって呼ばれる武器を4つほど拝借した。そしてスバルを家に置き、クロックオーバー後に重なるように、デバイスをライダーキックで4つ破壊。その爆発と残骸はあたかも機械の体をもつスバルって奴が死んだように見えたってことだ」
一人だけ、事の全ての成り行きを理解していた士はそう淡々と説明していく。
そんな中、周りのメンバーは笑顔を取り戻し初め、ティアナに関しては、感極まって眠っているスバルを抱きしめていた。
「よかった、本当によかった。スバル」
「うん、本当によかった二人とも、イッテ!」
もらい泣きをしてたユウスケは士にゴンと後頭部を叩かれる。いったい何をすんだとユウスケは非難の声をあげようとするが、その前に士が上げた声にかき消されてしまうのだった。
「安心してるところ悪いが時間がないぞ。今はあくまで気絶させているだけで、何の処置にもなってない。このまま目覚めればスバルはすぐにでも暴れ出す。だから早くさっきの黒い奴の情報とスバルを拘束できる場所か人物を用意するんだ。俺の言ってることはわかるな」
士の声を聞いて、ティアナはゴシゴシと瞼をこする。そして泣くのはこれで最後だと、ギュッと目を閉じると、今まで士が見た中で一番焦点の合わさった視線で彼を見た。
「わかった。大丈夫、執務官としての特権もあるし、あの黒いのが今回のロストロギアに関係あるなら大体予想もついてる。それに拘束の方も昔一緒に働いてた先輩にあてがあるわ」
「だったらさっさとその情報を集めてくれ。それが調べ終わって、余裕があったらこの世界について少し教えてもらうぞ」
そう言って愛用のソファーを奪われている士は、木製の椅子に座り込む。ティアナはデバイスを通信モードに切り替えると、すぐに情報収集を始めるのだった。