マブラヴオルタネイティヴ二次創作小説 熱砂の刃   作:賀川 シン

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赤塵の旋風 ②

 薄らと砂塵の舞う空の下、4機の戦術機が荒地を滑走していく。先頭を行くのはUNブルーに塗られた不知火であり、その後ろには同じくUNブルーのF-15C・イーグルが3機が左右に揺れる不安定な挙動で続いていた。

 その姿を確認しつつも臨時で戦術機小隊の1番機を任された綾音は内心、溜息を吐いてしまう。

 

 (どうして私が新人のお守りなんて任されたんだろうか……)

 

 網膜投影に映るイーグルの挙動を見る限り、主機出力に振り回されている事が判り、機体に乗りなれていない事が誰の目にも明らかであった。

 跳躍との間に大地を蹴って、脚力と跳躍ユニットの噴射タイミングを合わせて行うショートジャンプですらまだまだ無駄の大きい跳躍であり、新兵の練度の低さに不安しか残らない。

 それでも遅れずに付いて来れるのは強力な跳躍ユニットを持った米国製戦術機の優秀さを示していた。

 

 

 今、綾音たちが現在居るのは未だにBETA群との迎撃行動が続けられる戦場であり、未だに10数㎞先では戦闘が継続している。

 格納庫で機体の調整の為に待機中だった綾音に突如として下された命令。

 ―――それはアフリカ連合軍に配属されたばかりの新米衛士3人を連れて戦場慣れをさせる為にその先導役&護衛役として指名されたのだった。

 本来なら中隊を指揮するライノ1や中隊の管理運営を行っている総括役などを通じて、お互いのスケジュールなど、どういった戦況状況で行うか、などを念密に話し合いをするのだが、それら全てを戦術機越しの簡素なブリーフィングで済まされてしまったのだった。

 

 

 その安易な対応に憤慨した綾音はブリーフィング終了と同時にその指令を受諾した総括役の上官に対し明らかに苛立ちを込めた言葉で『どういう事なんですか?』と問うと向こう側も眉を顰めた表情で綾音に事情を説明した。

 ―――聞かされた話を要約すると、新米衛士の3人はアフリカ連合軍の政府高官の息子たちであり、本来ならまだ前線に出るレベルではないのだが、自慢の息子たちにいち早く戦場の空気を味わってほしくて、その経験をさせてほしいという計らいという事らしい。

 

 

 その話を聞いた瞬間、綾音は呆れた表情を浮かべると思わず言葉を吐き出す。

 

「……私は子供の預り所ではないんですよ。そもそも私1人で3人の面倒をみるなんて……能天気すぎます」

 

 と、愚痴ったのを思い出しながら何度か目のショートジャンプを終えて、センサーに感があり、耳を澄ます。

 未だに続く前線からは轟く爆発音や砲撃音が聞こえ、綾音の操る不知火は即座に周囲の安全を確認する。そして次に新米の3人に声を掛けた。

 

「このあたりが接敵警戒範囲です。これ以上進むとBETAの奇襲に何時出くわすか判りませんので、この辺りで待機しますが、周囲の警戒は厳に……各センサーには目を配っておいてください」

 

 一応、任されているという事で軽い命令を下すも、自分には合っていないと思いながら必要最低限のマナーを守り、新人衛士3人に接する事にした。

 回線には新人衛士3人の表情が映り、どうも綾音の下した命令に不満なのか何とも言えない表情をするとその中の1人が代表して綾音に意見具申を求めて発言の許可を求めてきた。

 画面越しに漂ってくる嫌な雰囲気を感じながら綾音は発言を許可した。

 

「鈴風少尉ッ! もう目と鼻の先は最前線ではありませんか! 味方が生死を賭けて戦っているのに我々がこんな所で見守るのは……我慢なりませんッ!」

 

「もう少しなら近づいても問題なのでは、センサーには何もないですし……問題ないのでは?」

 

「ふ、二人とも。初出撃だし、安全にいこうぜ……はぁ……緊張で吐きそうだ」

 

 各々に発言し、その間に綾音は口を挟まずに聞いていたが、最後にリーダー格の新人衛士が叫ぶ。

 

「アフリカ連合の政府外交官の息子と言われ続けて、ぬるま湯な対応に苛立ちつつも怠らず訓練に励み、自分たちは実力で衛士となりましたッ! 鈴風少尉、ここまで来て我々は止まれないのです」

 

 その心意気に思わず綾音は言葉を失う―――もちろん、悪い意味で―――

 こういった自己主張が強い思考の人間はチーム内での輪を乱す可能性があり、何かと指摘して自分の手柄を得ようとするからだ。

 もし、ここで何が起きても自分の責任が発生しなければ、綾音は命令を放棄し、「ご自由にどうぞ」と言ってしまいたい。が、それではアフリカ戦線で行っている自分達ライノ中隊の活動にも支障をきたす心配がある。

 なので、非常に面倒ではあるが、自分の気持ちをグッと押し込んで綾音は戦術マップを開くと、説得する為に説明を行おうとする。

 

「その志は大変結構ですが、しかしながらあなた方は今日が初の実戦、不慣れな機体で―――」

 

 慣れない指揮で言葉を巡らせながら答えようとする綾音が言いかけたその際だった。

 

「ッつ!?」

 

 突如として機体を揺らすほどに激しい振動が4人を襲う。

 

「なっ、何なんだッ!?」

 

「うわぁぁあ、だ、大地が、揺れる」

 

「く、どういう事なんだ!? まさか、これって!!」

 

 3人が各々違う反応を示す中、綾音はこれまでの経験で察したようですぐさま思考を切り替えると戦闘態勢を整えると動揺している3人に綾音が命令を下す。

 

「各機! 耐震センサーの感度を最大に設定し、低空飛行で跳躍を開始します……まだ幾ばくかの猶予はありますが、3人とも覚悟を決めてください」

 

 そう告げた瞬間、3人の視線が綾音に集まる。3者三様の視線を受け止めると綾音は応えた。

 

「BETAが来ます。各機、兵装ロックを解除して戦闘態勢を―――大丈夫ですか? もし覚悟がないのであれば、ここでスエズに引き返してください……この場所には私たちしかいませんし、今は私が現場指揮官として責任を持ちますので、覚悟のある人だけついて来て下さい」

 

 その言葉を告げた瞬間、3人中2人はすぐに頷き、1人は言葉に詰まらすも頷く。その反応を確かめた綾音は3人の新人衛士に命令を告げた。

 

「わかった……では全機、私に続いて、跳躍開始ッ!」

 

「「「了解ッ!!」」」

 

 そうして綾音の不知火を先頭に4機の戦術機が震動が起きた先へと向かう。その先の空は赤薄く風がまっているのであった。

 

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