マブラヴオルタネイティヴ二次創作小説 熱砂の刃   作:賀川 シン

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赤塵の旋風 ④

 戦闘開始から10分ほど経過していないのだが、戦っている綾音たちの体感的には一時間以上戦っているような疲労感が身体を蝕んでいく。

 視界不良もそうだが、特に回避運動を行う際に機体の歩行と重心移動のみで行わなくてはならない枷を掛けられている為、視界に映る敵の動きにより気を張っていなくてはならない。砂嵐の中での戦闘という特殊な環境で一瞬の隙が命取りとなる。

 特にこれが初戦闘である新米衛士の二人には耐えがたい疲労と緊張感で神経を磨り潰されそうに違いない―――だが、そんな状況化の中でも最初は不安しかなかった操縦も今は幾分か様になっている。正面から来るBETAの大半を綾音が受け持っている事もあるが、それでもよくやってくれていると綾音は思いながら、2人に告げる。

 

「徐々に敵の数も減ってきているはずだから、2人とも今が踏ん張りどころ」

 

「くっ、り、了解……」

 

「はぁ、はぁ、わかり、ました」

 

 視界に映る二人の表情に疲労感が滲み出ており、限界が近い事が判る。そして緊張の糸が思わぬ瞬間に解ける事になる。

 先ほどからの続けざまに襲ってきたBETAのパターンが変化したのだ。砂塵の中から飛び出していた戦車級や要撃級の襲撃が止み、足音が消えるほど不気味な静寂が戦場の空気を支配する。

 

「――――――」

 

 耳に届くのは砂嵐の騒音のみ、その間にも綾音は周囲に気を配り、他の二人も突撃砲と短刀を構えて襲撃に備えた。その状態が20秒、30秒、40秒と続く中、50秒が過ぎた所で事態が動く。

 突然、4番機がBETA出現口から反対側へと急に走り出した。予期してなかった味方の行動に綾音も同僚の2番機も反応に遅れてしまう。

 

「もうこんな所は、もう、嫌だぁぁあああッ!!」

 

 不気味なぐらいの静寂さというプレッシャーが恐怖となり、4番機の衛士の精神が耐えきれずに敵前逃亡を引き起こしたのだった。元より気の弱い所もあった事と初めての実戦がこんなに悪条件で、更に同僚を目の前で亡くなる光景を見たのが堪えたのか、あっという間に彼の心を擦り切ってしまったのだ。

 小隊長として半人前だった綾音はそこまで部下の精神状況まで把握できなかった。

 

「何をやっている!? ベルージっ!? 戻れ、死にたいのかッ!?」

 

 咄嗟に2番機が呼び止めようとするも、その制止を振り切って4番機の姿があっという間に砂嵐の中に消え、数秒後にはレーダーからも4番機の反応が消えた。砂嵐の所為かもしれないが、もしかしたらBETAの待ち伏せにあったかもしれない。

 その反応が消えた瞬間に2番機が助けに行こうと動きだす仕草を見た綾音が動きを制すると言う。

 

「駄目、今から行っても彼を助ける事は出来ない!」

 

「な……しかしっ!!」

 

「これ以上、犠牲は増やせない。残念だけど……こうなっては貴方だけでも守るしかないの」

 

 そう言って見つめる2番機の衛士の表情は悲痛とも歯がゆさが混じった表情でそんな表情を見た綾音は一瞬だけ言葉に詰まらせるも、状況を判断してこれ以上の犠牲者を出す訳にはいかない。だから少しでも鼓舞するように言葉を告げる。

 

「せめて……今、できる事はベルーシ少尉の分まで生きて、生き残ってBETAを殺す事で供養する事よ」

 

 そして風切り音に混じって、再び地響きのような足音が届くとBETAが砂嵐の中から飛び出してくる。しかもそれは散発的ではなく、息を合わせたように全方位からの一斉だった。

 その反応にすぐさま綾音は思考を纏めると指示を出す。

 

「背中は任せる! 私の動きに合わせて前進して!!」

 

「な、前進って!? こんな状況でどうするんですかっ!?」

 

 困惑しつつも、身体が命令に従っているのか、2番機も近づ離れずの距離で追走してくる。

 

「このままだと埒があかない、から。BETAの出現口を120㎜で封鎖して、一時的に敵の流入を止めた後に全力疾走でこの場から撤退する」

 

 接近してきた要撃級に牽制で左手に持つ短刀を投擲する。前腕触角にて投擲された短刀を防御した瞬間、綾音の駆る不知火が一気に距離を詰めると両手持ちになった長刀で右前脚部から胴体部まで一気に切り裂いていく。

 バランスを崩した要撃級の身体を踏み台にして出現口へと向かう。網膜投影に映る機体コンディションが脚部を始め、黄色く点滅している。

 しかし、ここで脚を止める訳にはいかない。後ろには自分の行動を信じて必死になって付いてくる2番機の姿が映り、綾音は前に進み続ける。

 ―――そして何度かのBETAを薙ぎ払った後、レーダーにポイントを付けた出現口までたどり着いた。

 

「出現口まで距離、300mッ!! 2番機、タイミング合わせッ!!…………120㎜、撃てぇ!!」

 

 不知火はガンマウントを前面に展開し、イーグルも手にしていた突撃砲でマガジン内のありったけの120㎜砲弾を撃ち込む。大きな音と共に出現口の出口が崩れ、濃い砂煙が2機を包み込む。

 

「やったっ!?」

 

 思わず喜びの声を上げる2番機、それとは反対に綾音は咄嗟に背後を振り向く。イーグルの背後に幾つもの黒い影が今にも襲い掛かろうとしているのだ。跳躍ユニットが使えない今の状況ではたった数十メートルも遠い。そして綾音の目の前で2番機が戦車級の群れに飲み込まれそうになる。

 

「こ、こんな所で! 死んで、たまるかよぉぉぉぉおッ!!」

 

 何とか反応しつつも36㎜を撃ちながら右腕を薙ぎ払うも数匹の戦車級しか撃ち殺せず、取りつかれると同時に関節部を始め、無作為に装甲が喰い千切られていくと機体の姿勢が保てず背中から倒れこむ。

 一斉に警告音と機体ステータスが真っ赤に染まり、緊急脱出の警告が2番機の衛士の頭を駆け巡る。外部センサーもやられた為に網膜投影に外部映像が映らなくなり、薄暗い管制ユニット内が肉眼に映る。

 その間にもガリガリと機体が喰われていく音が響き、脳裏に過るのは同じような状態になって脱出した3番機の衛士の姿だった。

 その映像と共に綾音がその時に言った言葉が脳裏を過り、脱出装置のボタンを押すのを躊躇う。しかし2番機の衛士にはもう10秒も耐えられる神経がなかった。恐怖で叫びそうになった瞬間、網膜投影に綾音の姿と声が届く。

 

「ッ! 絶対に何とかするからッ! 私が合図したら機体を捨てて、外に脱出してッ!!」

 

 その言葉に思わず目を丸くして信じられないといった様相で2番機の衛士は叫ぶ。

 

「こんな状況化で脱出なんて……正気ですか!?」

 

 その言葉に綾音は機体を必死にコントロールしながら、正気を失いそうになりながら自分の言葉を待つ2番機の衛士の瞳を見つめて、自分の思いを込めて伝えた。

 

「もう、誰も死なせないないッ! 何とかするから、だから……今だけでもいい、私を、私を信じてッ!」

 

 次の瞬間、銃撃音と斬撃音が同時に伝わり、激しい振動と共に先ほどまで聞こえていた戦車級の咀嚼音が遠のく。

 

「――――――今ッ!!」

 

 綾音の合図と共に決心した2番機の衛士は胸部ブロックのハッチを開くと―――

 

「うぅゎわぁぁぁああぁぁぁああぁっ!!」

 

 大声を上げて思いきって飛び出す。刹那、彼の視界を覆うのは全面の黒であった……思わず腕を掲げて視界を塞ぐ。もう駄目だと思って死を覚悟した。

 ―――だが、次に襲ったのは衝撃と反動によって自分の口から洩れた苦痛の吐息だった。えっ!? と驚いた瞬間に動く自分の四肢にがある事に驚きつつ、同時に隙間から光が漏れだすのが判った。思わず見上げるとそこには砂嵐の中、長い黒髪が靡きながら管制ユニットから身を乗り出して腕を伸ばす綾音の姿だった。

 

「ッ! じ、時間がないッ! 早く来てッ!!」

 

 焦燥感の滲む綾音の表情に自分が今、どのような状況に置かれているかなど冷静に考える思考はなく、生き残りたいという感情で綾音の手を取る。

 背後で音がなったと思うが振り向くことはせずに不知火の管制ユニットに飛び込む。次の瞬間には先ほどまで二番機の衛士が乗っていた不知火の左手に戦車級が張り付いており、指先がもぎ取られる。

 綾音は衛士を収納した後、数秒の間で素早くシステムを再起動させると不知火の左手に纏わりついていた戦車級ごと左手を長刀で切り落とすのであった。

 

 

 不知火に飛び込んだ衛士が次に目の覚ました時、自分がまだ生きている事に驚きつつ、今、どのような状態でいるのか理解できなかった。真っ先に感じたのは鼻先に当たる硬い物と両頬に当たるフニャッとした謎の感触であった。

 自分の状態がどうなっているのかを確かめるべく光を求めて顔を上げようとした瞬間に綾音の声が届いた。

 

「―――今は戦闘の邪魔になるから顔は上げないで! 出来るならそのままくっ付いていてッ!」

 

 戦術機の操作に集中したい綾音は視線を向けずに言葉で伝え、思わず二番機の衛士はどうしたらいいか判らずに振動に耐えるように身体を固定するかのように力を込めてしがみ付くように抱きしめてしまう。すると今度は熱が籠った声で綾音が再度、注意する。

 

「あ、あ、あんまり……強くは止めて欲しい、かも」

 

 そしてここで二番機の衛士がハッとする。今、自分が抱きしめた物も、今、自分がどんな状態なのかも――――――今、自分が綾音の胸に頭を埋めて、彼女の腰に腕を回して抱きしめてしまったという事実に一体どうしたらいいのか!? と思ってしまうも先ほど綾音からそのままの姿勢でジッとしていて、という言葉を思い出し、自分の色々な感情を抑え込んでとりあえずジッとしておく事にした。

 この歳になって赤子のように女性に抱きつく事になるとは思ってなかったので、その羞恥で恥ずかしくなってしまうものの、その一方では何処か心に安らぎすら覚えてしまっていたのだった。

 

 

 異性が自分の身体に抱きつくような事は殆ど経験はなく、本音を言えば動揺を隠せなかった綾音だったが、何度か呼吸を整えて吐息と共に羞恥の気持ちを一緒に吐き出す。幸い、不知火は左手を失ったぐらいで戦闘継続は可能なレベルである。

 出現口を潰したことで襲撃するBETAもその数を減らしているが、機体自体はボロボロで極力、戦闘は回避しつつ、脚部での移動で後退を開始しつつも、足元に広がるBETAの死骸に足を取られそうになる。

 未だに側面や前方から逃がさないようにBETAが迫ってくるも跳躍ユニットを使用しない限りBETAを振りほどくことは出来ない。背部ガンマウントを後ろから来るBETAに対応させ、右手に持った長刀で正面及び側面からの襲撃に備える。

 しかし、左手が使えない為に左側の襲撃には一度、動きを止めて対処しなくてはならない為に相対的に距離を稼ぐ事が出来ずにいた。突撃砲は120㎜は残弾は無く、36㎜も500発を切っている。更に機体の状態も防塵装備をしているとしても細かい粒子状の砂粒が機体を蝕んでいった。

 

 

 右手に持つ長刀も耐久限界が近く、脚部も酷使ているので足元の踏ん張りに違和感を覚えていた―――そして次の動きに転じようとした時に急に機体の重心がぶれる。すぐさま綾音は立て直しを図ろうとするも荒地や損耗した脚部ではまるで氷上の上にいるような感覚になってしまい、コントロールを失ってしまっていた。

 

「ッ、衝撃にそなえ―――」

 

 自分に抱きつく衛士に声を掛けると同時に不知火が大地に転がる。激しい振動と共に警告音が鳴り、機体に次々と振動が奔る。これは戦車級が機体に取り付いた事を知らせる音であり衛士にとって恐怖でしかない。自分の胸元で震える二番機の衛士に綾音は視線を向けると言葉を掛ける。

 

「少し、ううん……激しく揺れるから、しっかりと抱きついていてね」

 

 そう言った瞬間に二番機の衛士と視線が合った事に気づいた綾音はわずかに微笑む。その微笑みにこんな状況なのに見惚れてしまいそうになるも、何とか返事を返すと、綾音は頷いて次の行動を起こす。

 

「あんた達に黙って喰われるほど、私は、大人しくないんだからッ!」

 

 思わず叫んだ言葉と共に綾音は跳躍ユニットの安全装置をカットして、跳躍ユニットを点火した。大地を削るように不知火を滑らしていく。その間に機体には激しい振動が襲うと共に機体へのダメージが跳ね上がる。そしてロケット推進からジェット推進に切り替わった瞬間、綾音は即座に機体から跳躍ユニットを切り離す。

 粒子状の砂粒が防塵フィルターを通り抜けて、高温の複合ジェットエンジンユニットに張り付いた瞬間に砂粒が高温に晒されると同時にガラス化し、吸気口や排気口を塞いでしまう。

 そして熱が逃がす事が出来なくなった跳躍ユニットはそのエネルギーに耐えきれずに爆発してしまった。その爆風は容赦なく不知火を吹き飛ばし、何度も荒地に機体を叩きつけられて転がっていった。

 張り付いていた戦車級もその爆風で吹き飛んでおり、何とか綾音たちは機体ごと喰われる事をまのがれるも、その衝撃は尋常ではなく、搭乗していた2番機の衛士はうめき声を上げた後に気絶してしまっており、綾音も一瞬だけ意識を失いそうになりつつも何とか根性で耐えるがその視界がぼやける。

 

 

 そんな中、何とか操縦桿を握り締めて機体を立て直そうとするが、反応が鈍い。そこで網膜投影に映し出される機体ステータスに綾音は気付いた。

 爆風で吹き飛んだ際、脚部の装甲はめくれ上がり、右足首が捻じれて立ち上がる事が出来なくなっていた。更に残っていた右手も肘から先が無くなっている。背部のガンマウントは動きそうにはなく、完全に戦闘不能となっていた。

 

「強化外骨格は―――駄目か……胸部装甲が変形してハッチの解放も不可能、か」

 

 完全に打つ手が無く、綾音は…………敵を視た。まだ生きているBETAの逞しさに思わず笑いが込み上げてきそうだった。

 疲労が籠った溜息を出して、乱れた前髪を払おうとした際に自分の額から出血している事に気づき、再度薄ら笑う。ふと上を見上げるといつの間にか砂嵐が止んでおり、上空には澄みきった青空が広がっていた。

 

「綺麗な、空……何処にいても、この空は変わらないんだなぁ―――」

 

 

 その光景は不思議と綺麗で何とか耐えていた綾音も意識が遠のく中、最後に空に2つの黒点を見つけた。それは何かを探しているようで、どうも目標を見つけたかの如く迫ってくる。意識が遠のく中で聞こえてきた轟音と共に閉じゆく視界に一閃の閃光が迸ったのだった。

 

 

 ――――――暗い意識の中、頬に当たる風を感じて、綾音はゆっくりと目蓋を開く。管制ユニットが格納されている胸部装甲ハッチが強引に取り除かれており、外から熱風と共に腕が伸びてくる。

 一瞬、戦車級か。と思われたが、それはあまりにも細く、明らかに戦車級では無い事が判り、綾音は自分に触れそうになった手を取ると口を開く。

 

「ここは、地獄? それとも現実?」

 

 その問いかけに思わず握られた手に少しだけ力が籠り、やや呆れ顔で言葉が返ってきた。

 

「もう……とりあえず、ここは地獄でもあり、現実でもあるよ――――とりあえず、お疲れさま。綾音ちゃん」

 

 そう告げるのは綾音が所属するライノ中隊6番機を駆り、綾音の親友である浅倉・千里のその人であった。何故? という疑問が出ず、綾音は胸に抱く2番機の衛士をコクピットシートへ横にすると千里の手助けを使って機体から外へ出る。

 そこは先ほどいた荒地ではなく、戦術機が何機も立ち並び、機械音や人の声が聞こえてくる。そう、ここはアフリカ大陸絶対防衛線の要であるスエズ基地であった。

 

「あの状況で助かるって……何があったの?」

 

 端的に告げる綾音の言葉に千里はホッと胸を撫で下ろすように静かに息を吐くと返事を返す。

 

「私達が作戦を終えて帰投中に全周波数で救難信号を送る戦術機が居たの。いかに作戦範囲外とはいえ単機でいるなんて在りえないでしょ」

 

 連れられて不知火を降りながら頷く綾音に笑って答える千里が指を差す。そこには帰投してきた戦術機がハンガー入りを待つために並んでおり、ライノ中隊もその一部に混じっており、更にその中にF-15イーグルが一機混じっていた。

 その姿に綾音は思わず瞳を丸くする。

 

「あれって……もしかして」

 

「だから気になって中隊長に許可を取って私とライノ9で向かったら、そこに居たのが、綾音ちゃんが連れて行った4番機くんだったの」

 

「あ、あの子、生きて、いたの?…………よかったぁ」

 

 思わず膝から崩れ落ちそうになる綾音を咄嗟に支える千里はそっと頭を撫でて慰める。その後の話を要約すると。

 あの瞬間に逃亡した4番機は運がよかったのか、BETAの攻勢が一時的に少なくなってきた瞬間だったらしい。多少なりとも機体は損傷したものの、砂嵐から脱出すると何とか救援要請をするためにスエズ基地方向へ戦術機で走っていた所を偶然に通りかかったライノ中隊が傍受したという事だった。

 綾音が意識を失う前に見た空に飛ぶ黒点は救助にきた千里たちであった。

 

「私達が救難信号を出している戦術機に近付いて、最初の一声が仲間を助けて。だもの、状況を確認したら綾音ちゃん達が危ない状況だっていうから、本当に私たちが直ぐに駆けつけられて本当によかったよ……あとで中隊長や整備班の人たちにも色々と頭を下げにいかないとね」

 

 自分の機体から降りて、不意に綾音は自分の不知火の様子が気になって振り返る。

 そこにはもう自分では立ち上がる事が出来ないほどに損傷した自分の不知火が鎮座しており、辛うじて付いている肩をライノ中隊の不知火が支えている状態であった。丁度、コクピットシートに横にしておいた2番機の衛士がタンカーに乗せられており、救急車で運ばれていた。

 

 

 その瞬間に綾音の中で何かが崩れる音が聞こえ、思わず地面を見つめる。

 炎天下の中でポツポツと汗が流れ落ちる様子がぼやけてよく見えなくなる。ポツポツと汗と一緒に目じりから流れていく雫を抑える事もなく、綾音は声を押し殺して涙を流す。それは自分の所為で死なせてしまった新人衛士へ謝罪を込めた言葉だった。

 

「綾音、ちゃん……こういう時でも我慢するものじゃないのに」

 

「ごめん、ごめんなさい……私が、私の所為で」

 

「もう大丈夫だから、今は……ゆっくりと休んでね」

 

 これまでの緊張の糸が一気に綻び、溢れだす感情を制御できない綾音をただただ労うように千里が抱きしめるのであった。

 

 

 その後、今回の件について、ライノ7、鈴風・綾音の処分についてはアフリカ連合へ身柄引き渡しの事案が発生したが、その時の無理やりに押し付けたような命令や作戦など、指示を出したアフリカ連合側の傲慢が他者での事情聴取で明らかになった事もあり、国連軍のアフリカ方面軍総司令の判決により、何とか2週間の謹慎処分という形に落ち着いたのであった。 




 このたびは1か月ほど更新が遅くなってしまいすいません。


 この小説は自分が同人誌で発行していたものに追記・変更しながらしていたもので、今回の第3章で同人誌の内容に追い付いてしまいました。
 今のご時世(2020年・夏)でイベントなどで同人活動やイベントの中止などで作品の公開が難しくなる中、初めてインターネット上で公開する形をとってみました。


 今後はここで終わる事なく出来るなら最後まで書いていこうと思っているので、もしよろしければ、最後までお付き合いしてくだされば幸いです。

 ※更新は遅いですが、その辺はご了承ください。
 
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