マブラヴオルタネイティヴ二次創作小説 熱砂の刃   作:賀川 シン

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砂漠を駆ける斬撃 ①

 

 

 遥か頭上に散々と輝く太陽の熱気を帯びた砂原はまるで生物が生きる事を拒むようであり、そのような場所で一つの中隊が30分ほどの間、待機命令を出されていた。

 

 

 ここはアフリカ北東部のスエズ絶対防衛線から東に出て、旧イスラエル・ヨルダン地区付近。

 そこには人が住んでいた形跡は残されておらず、数えるのが馬鹿馬鹿しいぐらいのBETAとの戦闘によって荒廃した大地となっている。

 外気温が軽く40℃を超えており、歩兵や戦車乗りであれば、嫌気の差すほどの任務であるが―――幸い、彼らの乗っている機体は空調完備されており、着ている強化装備には様々な環境からもその身を守る機能が備わっており、別に何かしなければ特に問題はない。

 

 

 戦術歩行戦闘機、対BETA兵器として人類が新たに開発した兵器に乗る彼らは衛士と呼ばれている。

 ただ、彼らは少し訳ありであった。

 彼らはこのアフリカ・中東戦線から遥か彼方の島国、日本から特別に派遣された戦術機部隊であるからだ。

 

 

 自国にBETAのハイヴを持つ日本が他国に戦力を出す余力はなく、本来であるなら彼らも日本を防衛戦力として投入されたに違いない。

 政治的に極秘裏で派遣されてひと月ほどが過ぎ、慣れない砂漠戦や環境の変化、戦術の違いなどに彼ら衛士も戦術機を整備する整備士たち、その他にバックアップのスタッフ達も徐々に慣れと余裕が出来つつあった。

 ここ最近の戦術機コンディションは日本に居た時と誤差はないぐらいに順調であった。

 

 

 彼ら、日本帝国軍特別中東派遣部隊、第604戦術機中隊。通称ライノ中隊は今回の作戦を指揮する中東連合軍のHQ(ヘッドクォーター・司令部)からの待機命令の解除を密かに待っている所であった。

 

 

 機内の電力消費を抑えるために薄暗い戦術機の管制ユニットの中でぼんやりとした瞳で戦術マップを見つめる一人の衛士の姿があった。

 彼女は退屈そうな表情で溜息をついた。この先では今でも突出してきた小規模のBETA集団との戦闘が続いており、本来ならライノ中隊も参加する予定ではあったが、いざ作戦地域に来たものの、HQから伝えられたのは戦場から離れたこの場所での待機命令であった。

 

 

 スエズ防衛線にBETAを進行させないことも大切ではあるが、このままだと自分達が来た意味が無いんじゃないかと思ってしまう。

 癖になりそうな溜息を抑えながらしていると彼女のパートナーともいえる衛士から個人通信が入る。

 衛士の着る強化装備には対G機能や対衝撃機能、生命維持装置などの機能が備わっており、その中でも頭部に付けるヘッドセットには網膜投影装置が戦術機のカメラやセンサーなど各種コンディションのデータが表示されている。

 なので衛士の乗る管制ユニットにはモニターの類は搭載されていないのだ。

 

 

 そして表示されたのはライノ中隊で唯一の同い年であり、同郷の出身、幼いころからの友達であったライノ6であった。

「少しは集中しておいた方がいいんじゃない? いつ突撃命令が下るか判らないんだし」

 そう言ってライノ6は戦術マップを確認しながら。

「まぁ、戦術マップを見る限りじゃ、こちら側が優勢だけどね~」

「でも奴らに優勢とかって、あまり意味がないんじゃない? 気を抜いて殺せる奴らじゃないし」

 ライノ7の言葉にライノ6はニコッと笑みを浮かべる。彼女の昔から変わらない笑みにライノ7も頷いて応える。

 

 

 今のご時世、昔からの友人と生きていられるだけでも幸せな部類かもしれない。作戦中ではあるが彼女たちとっては今の状況は気軽に会話が出来るほどの余裕があったのだ。

 すると、ライノ7、ライノ6に通信が入った。

 画面が開くとそこには眉を顰めた女性が映る。彼女はライノ中隊の副官であり、ライノ7、ライノ6に視線を向けると。

「ライノ2より呑気に会話しているお二人さん。いくら待機中とはいえ任務には交わしませんよー……気は抜かない。いい?」

「「了解」」

 上官の命令に即座に応答し、答える。

「それじゃあ、ライノ7また後でね」

「うん、また後で」

 そう言ってライノ6との通信を切った後、不意にライノ7は気付く。先ほどまで戦場へと援護砲撃を行っていた砲兵部隊から砲撃支援が無くなっていたのだ。

 しかしまだ前方では戦いが続いており、砲撃支援が必要であった。その疑問に答えるかの如くライノ中隊全機に通信が入る。

「全機、傾注。ライノ1よりオールライノ、先ほどHQから通信が入った。まぁ、察しのいい奴なら気づいているとは思うが、先ほどから支援砲撃を行っていた砲兵部隊の周辺にBETAの奴らが地中進行によって出現したらしい。すぐさま砲兵部隊は撤退を開始、付近で待機していた戦車小隊が撤退支援を開始した」

 

 

 そこで一呼吸の後にライノ1が中隊全機に号令を告げる。

「各機、これより待機命令を解除! これよりライノ中隊は撤退中の砲兵部隊の撤退支援を行う!」

 その瞬間を待っていたかのように待機していたUN(国連)カラーに彩られた日本帝国製の第3世代戦術機、不知火の跳躍ユニットに火が入る。

 一斉反転の後に撤退中の友軍へ向けて低空飛行で飛び出したのだった。

 わずかに残る丘陵地帯と乾いた大地が高速で流れていき、14機の戦術機は低空での飛行を行いながら陣形を素早く組んでいく。

 通称、楔壱型(アローヘッドワン)と呼ばれる戦術機部隊が行う一般的な突撃型陣形であり、弓の矢尻のような陣形である。

 そして、地表を高速で移動するライノ中隊が撤退を行う砲兵部隊をレーダーに捉えたのは命令が下されて約5分後の事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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