マブラヴオルタネイティヴ二次創作小説 熱砂の刃   作:賀川 シン

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砂漠を駆ける斬撃 ②

 

 

 これまでBETAの進軍方法は分かって二つのみである。

 一つ目はハイヴから無数湧きだし、膨大な物量によって大地を進撃して突撃する方法。

 二つ目は地中に巨大なトンネルを掘り、そこから進行する方法である。

 これらを察知する方法としては軌道上からの軍事衛星による望遠カメラによる映像解析や地表に敷設する振動センサーなどによって大体の進行方向を割り出す事が出来るのだが、今回は運が悪かったのか、後に判明したことだが、作戦前日に戦域で起きた砂嵐のお蔭でセンサーの一部が破損してしまったのだ。

 

 

 さらに砲撃による振動や支援による有効打を与えていた事による兵の慢心もあり、状況判断が遅れた事も原因の一つであった。

 砲兵部隊は突如として現れたBETAの群れに驚きを隠せずに混乱していた。

 トンネル出現口から這い上がる大量の戦車(タンク)級に得物を見るや否や全速力で捉えようとする。その中で唯一、冷静な対処を行っていたのは護衛についていた戦車小隊であった。

「全部隊の撤収を急がせろっ! ぐずぐずしていると全員戦車級に食い殺されるぞっ!!」

 怒声でインカムに告げる戦車小隊の小隊長、彼らを含む戦車小隊の隊員は長らくも欧州戦線で戦ってきた兵士たちであった。

 その為、現状況においても少々の動揺だけで済んでいるのだ。

 

 

 だが、戦車小隊以外の今回の砲兵部隊はアフリカ連合軍から送られた後方部隊であり、実戦を経験したことのない兵士が多くいた。

 マニュアル通りの事しかまだ出来ない新兵同然ともいえる者たちの周囲に突如としてBETAが迫るとしたら、そこにはパニックが心を支配する。

 後方の自分たちの周囲にBETAが突然現れると思ってもみなかった砲兵部隊の大多数が足元をすくわれている。

 その間にも戦車小隊が現れたBETAに対し、砲撃を開始していた。

「ちくしょっ! 装備なんか捨てていけっ! とっとと全員トラックに乗り込むんだよ!! 責任っ!? んなもん、生き残った後に考えればいいんだよっ! だからとっと走れっ!!!」

 砲兵部隊を指揮していた指揮官が叫び、輸送用のトラックに誘導している。その間にも戦車級が動き回る資源(人間)を狙う。

 

 

 その様子を確認していた戦車小隊の小隊長が無線で他2両の戦車に命令を下す。すでに肉眼で確認できるほどにBETAが迫っているのだ。

「よし、第一射……撃て!」

 狙いを先頭集団に付けて砲撃を開始する戦車小隊、彼らの乗る欧州連合軍製のレオパルド2の主砲、120㎜滑空砲が戦車級の先頭個体を複数纏めて吹き飛ばす。

 圧倒的な砲撃力は戦車を持っている。だが、圧倒的な物量を持つBETAに対してたった3両の戦車では手数が足りず、すでに200匹以上のBETAが戦車の砲撃に怖気つかずに突撃してくる。

「小隊長っ、このままだと奴らに押し切られるっ! 至急に距離を取らなければ!!」

 砲弾装填の自動化が行われており、わずか3人で乗る戦車の中、自分たちにも目掛けて突撃してくるBETAに姿に操縦士が思わず告げる。

 だが、その言葉は小隊長に一蹴されてしまう。

「無駄だ。今から距離を取ろうにも前方の戦車級は時速80キロで向かってくるんだっ。今から後退してももう遅い」

 

 

 あくまで冷静に自分たちが置かれている状況を部下に伝えると操縦士の顔が一瞬だけ悲痛な表情を浮かべるが、現実に戻り、込み上げてくる思いを堪え、思わず愚痴る。

「くそっ、この辺りの坑道は全部埋めたんじゃねーのかよっ! ふざけやがって!!」

 操縦士はこの隊にきて半年ほどしか経っていないこの小隊唯一の新兵であり、腕はいいがまだ戦場の理不尽さについての考えは甘かった。

「こちら、3号車! クソ野郎どもが迫ってきているがどうする―――このまま先頭集団に火力集中を行うのか!?」

 声に焦りを含む言葉に小隊長は告げる。

「もう少しだけ堪えてくれ。先ほど救援要請をだした―――そちらの撤退準備は終わっているのか!?」

 切羽詰まる状況の中、確実に命令をこなす部下たちに申し訳なさを感じつつ、インカムにて砲兵部隊の指揮官に状況確認の通信を行う。

「今、終わった! くっ……すまない……!!」

 ちょうど、収容が終わったのだろうか、兵員輸送用のトラックが走り出していた。

 装備品と幾人かの欠員を出したものの、人員を満載したトラックは従来のスピードが出せず、舗装もされていない荒地を進んでいく。

 

 

 その姿を確認したあと、戦車部隊長は部下に対して非情な命令を下さなくてはならなかった。

 現在、撤退中であるトラックは荷物である人員を超過して乗せている為に思う様に速度が出ず、このままでは基地に戻る前に戦車級に追い付かれてしまう危険性があるのだ。

 そして現在、BETAを足止め出来る戦力はたった3両の戦車のみ、9名の戦車乗りと数十人の砲兵部隊員、どちらかを天秤に掛けなくてはいけないのだ。しかも、悩む時間はもうない。1分でも数秒でも貴重な時間なのだ。

 その一瞬の刹那、戦車小隊長は命令を下す。

「よしっ! お前らが待ちに待った後退の時間だ!……といいたいが、後退しているトラックは速度が出せない状況だ。我々はトラックとBETAの間に割って入り、後退の援護を行う! あのクソ野郎どもにありったけの砲弾をぶち込んでやれっ!! いいな! 無事に帰った気絶するまで飲み明かすぞっ!! わかったかっ!!」

「「「了解っ!!」」」

 絶望的な状況化、今告げた言葉に応と答える部下たちに小隊長は触れ出る感情をギュッと押し込んで小隊全員の生還を果たすべく指揮を執った。

 

 

 だが、現実非情であり。真実でもあった。

 戦車小隊の奮闘虚しく、敵との推定距離が残り2キロを切る。いつ捕捉されても分からない。しかも残りの砲弾も尽きかけていた。

 内心、戦車小隊全員が己の死を悟った瞬間、一匹の戦車級が小隊長の乗るレオパルド2に迫り、砲弾の装填が間に合わないと判断した小隊長は身体が先に反応していた。

 戦車の上部ハッチを開き、取り付けれた機銃に手を伸ばす。

「隊長っ!!」

「戦車兵なめんじゃねーぞぉぉぉおおーーー!!」

 間に合うかはわからない。機銃の安全装置を外し、コックを下げる―――距離として50mを切り、戦車級の巨体が飛び掛かる形でその陰を落としていた。その光景を目の前にしても、小隊長の瞳は最後まで諦める事なく、その眼光は戦車級を捉えて、機銃のトリガーを引こうとした瞬間。

 

 

 BATEが空を舞ったのだった。否、正しくは空に砕け散ったのだった。

 砕け散った戦車級の赤い血しぶきが降りかかり小隊長は思わず腕で視界を覆う。真っ赤に染まる視界の中、轟音と共に前方に迫るBETA群に対して一斉の機銃掃射が行われる。

 あまりの銃撃音と爆風などでヘルメット越しに耳を塞ぐと共に、視界が開き次の瞬間に映った光景は死に絶える戦車級の残骸と砂埃を上げて荒地に着地する巨人の姿だった。

 と、同時に各車に備わっている通信機器より声が聞こえてきた。

「こちらは国連軍所属、日本帝国派遣部隊。第604戦術機中隊、ライノ中隊だ! 撤退要請支援の為に参上した! これより貴隊の撤退を支援するっ!」

 

 

「に、日本帝国!?……了解した。では、こちらからも支援砲撃で援護する」

 車内に戻り、インカムと通信機器に視線を向ける小隊長は内心、援護要請から5分ほどで戦術機部隊を寄越した上層部の素直さに驚いていた。

 今もBETAが現れた地下坑道からは小型種が溢れかえっており、その個体数は数百規模となっていた。

 その状況を見てライノ1が戦車小隊に向けて進言する。

「現状況、このままだとBETAとの近接戦闘になる。その場合、支援砲撃はこちらの動きを阻害する可能性がある。我々としてもこれ以上のリスクは負いたくない」

 そう告げると小隊長はその言葉に込められた意味を察知すると、すぐさま小隊に通達する。

「―――了解した。貴殿らの援護に感謝する! 各車、とっとと撤退するぞ! 遅れるなっ!!」

「え、あ、はいっ! 了解!!」

 小隊長の援護という言葉に準備していた操縦士は思わず撤退という言葉に反応が遅れていたが、身体が自然と命令通りに車体を後退させていた。

 その言葉に砲手についていた兵士が言葉を上げる。

「あいつら、俺らが誤射する奴らだと思われたんですかね!!」

 その台詞に小隊長は「そうじゃない」と一言告げて、砲手にくぎを刺す。

 

 

「あの戦術機部隊の装備を見てみろ。背中にマウントされているのは近接戦闘用の長刀だ。こんな世の中でBETAとの近接格闘戦をするような奴らだ。そんな奴らにとっては砲撃は邪魔になる。つまりは遠まわしに俺らに何も負い目を感じずに撤退してくれと、言っているようなもんだ」

「へぇ、よくわかりましたね。流石うちらの小隊長だ」

 砲手もその言葉に納得したのか、僅かに笑みを浮かべ、その様子に小隊長は「半分、感みたいなもんだ」と思わず呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

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