マブラヴオルタネイティヴ二次創作小説 熱砂の刃   作:賀川 シン

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砂漠を駆ける斬撃 ③

 ライノ中隊が救援に駆けつけて地上にいるBETAに対し牽制射撃を行いながら、着地する。

 後方では戦車小隊の車両が少し戸惑いながらも後退を開始していた。その様子を聞いていたライノ2は戦車小隊との通信を終えたライノ1に戦況を通達する。

 伝えると言っても中隊内で共有している戦術マップのデータは常に最新の状況に更新されているが、個人の状況把握の為に口頭での回答を常としてきた。そして、この二人の通信も中隊全体に聞こえている。

「現在、前方のBETA推定個体数は約900。ライノ1、攻撃隊形を鎚壱型(ハンマーヘッドワン)に変更し、ここで迎え撃つのがベストと思われます。どうしますか?」

「確認した。では前衛にライノ5、ライノ6、ライノ7、ライノ8。で敵を蹴散らしていく。今も湧き出している坑道入口まで一気に押し返すぞっ! 他の機体は前衛の支援、散らばった奴の後始末をするっ!」

 

 

 命令が下された瞬間、各機がポジションを変えていく。

「各機、センサー感度には留意するように、地中からの再侵攻にも注意せよ」

 ライノ1の命令に続けて、諸注意としてライノ2が中隊各機に促す。

「「「「了解っ!!」」」

 各機から応答の声が届き、指示があった機体が前に出る。各々の機体が自分が得意とする得物を握り、突撃準備が整う。その様子を確認するとライノ1は一呼吸を終えて、ライノ中隊全機に告げた。

「これより正面BETA群に対して近接機動戦を開始する! 少数だが全機、油断するなよっ!―――全機、突撃開始っ!!」

 前衛機の跳躍ユニットが青白く光ると同時にライノ中隊本格的にBETAとの戦闘を開始した。

 

 

 今回相手にするBETA群の大半が戦車級であり、大型種に分類する要撃級はそこまで多くはない。なので冷静な対処で攻撃していけば問題はないだろう。

 戦術機の突撃砲、36㎜機関砲のマガジンに装填されている弾数は2000発ほど、今回は数百程度の規模であるが、これが大規模な防衛線になればBETAの数は数万以上を相手にしなくてはならない。

 そうなれば、2000発の弾数はあっという間に底をついてしまうだろう。もちろん予備弾倉も装備されているが、突撃を行う際はマガジン交換する隙はなく、いざとなれば腕部装甲内に装備されている短刀を使う事もある。

 

 

 だが、BETAとの近接格闘戦は一瞬の油断が命取りとなり、その対処や状況判断の遅れは、戦車級に取り付かれて機体ごと食い殺されてしまうのだ。

 そういったリスクの方が高い為に現在では近接戦闘は推奨されていない。短刀ですら取り付いたBETAを振り払う為に使われるのが大半だった。

 しかし一部の衛士の中には敢えてBETAとの近接格闘戦を行う者もいた。

「あれはライノ6に任せてあるから……って一人だけ突出しすぎよっ!! ライノ7っ! もっと連携する事を考えなさいっ!!」

 同じように前衛ポジションのライノ8が堪らず言ってしまう。その視線の先には我先にBETA群に突入する不知火の姿があった。

 

 

 跳躍ユニットを巧みに扱い地表を掠めるように噴射地表面滑走(サーフェイシング)を行いながら、すれ違いままに戦車級を一刀両断し、要撃級は脚部を切り裂き、動きを止めると後続の機体が突撃砲で仕留めていく。

 部隊の中でもいの一番に突撃していくライノ7の操る不知火は両手に74式近接戦闘長刀を持っており、突撃砲は背中の可動兵装担架システムに装備されており目立つ戦闘スタイルで交戦していた。

 しかし、いくらなんでも向かってくる全ての数を捌き斬る事は出来ないが、前衛が命がけで切り開いた戦域の穴を中衛及び後衛の援護射撃によってBETAを次々と撃ち殺していく。

 味方の射撃で接近中だった要撃級が死に絶え、ライノ7が死骸を回避した瞬間、死骸に紛れて戦車級が3体飛び出して襲い掛かる。

 

 

 その行動にライノ7も即座に反応して、長刀を振りかざそうとした瞬間、戦車級が空中で肉片となって飛び散った。ライノ7の後方にいたライノ6が両手に持った突撃砲で対処、相方の的確なフォローに礼を述べる。

「ありがと、ライノ6」

 と、短めな返事を返す。

「いつもの事でしょー別に気にしないでよ。綾音ちゃんは……ってごめん、今は任務中だった」

 昔からの親友なので一瞬の気の緩みにて名前で呼んでしまうと、ライノ7は口元に少しの笑みを浮かべるとそっと言葉を口にした。

「ううん、別にいいよ。千里ちゃん」

 その声色は戦闘中のものであったが、優しい口調にライノ6は思わず口元に笑みを浮かべてしまうのであった。

 

 

 ライノ中隊到着後、BETA群の進行速度が加速度的に弱まり、戦域マップからBETAの数を表す赤点が消えた事を確認し、ライノ1はデータリンクにて中隊各機に通信を行った。

「敵の数は残りわずかだが、坑道入口には十分に警戒を行え、奴らはどこにでも湧いてくるからな。ライノ各機、残弾報告―――」

 突撃砲のマガジン交換の為に二機一組で交互に交換し、ほんのわずかであるが気を休める時間が生まれる。その間に前衛にて警戒中であったライノ7とライノ6はBETAが現れていた出現口付近まで来るとそっと穴の奥を覗きこむように見ていた。

 振動センサーなどで追加のBETAは来ていない事を確認しているがその坑道は異質であり、不気味さは拭えない。

 その入り口を見ているライノ7の様子に気になってライノ6が尋ねる。

「ねぇ、一つ質問してもいい?」

「……ん? どうしたの?」

「いやぁ~もしかして、綾音ちゃんさ、この中に入ってみようとか思ってない?」

 まだ警戒中とはいえ、敵影は無いのでフレンドリーな口調で問うライノ6、その質問にライノ7は自分の長い長髪が横に揺れるぐらいに傾けると。

「……だめ?」

「だめだめ」

「少しだけでも?」

 

 

 何か引っかかるのか、ライノ7の様子にライノ6が何かあるのだろうと長年の付き合いで察して訊くことにした。

「何か、あるの?」

「確証はないんだけど、これ、見て……」

 そう言うとライノ7がいつの間にか坑道内に振動センサーを張り付けており、そのデータと音源データを見せる。

「微か、だけど……何か動いている形跡があるんだよね」

 確かに僅かではあるがセンサーに反応があるのは確かなのだが、現在もBETAとの交戦している戦域がある為にその振動などを拾ってしまっている可能性も高いのでライノ6はとりあえずライノ1へ報告する事にした。

 もし、何も準備なしでBETAの地下坑道に突入する事はあまりにも危険である。BETAの作る坑道ないは戦術機でも移動は可能ではあるが、高度は取ることも出来ず、回避行動は取り辛い。

 しかも不意に作られている横穴に小型種がいることも多く、奇襲を仕掛けられる場合がある。

 

 

 戦闘地域でこうした坑道を発見した際にするのは速やかに入り口を爆破して潰さなくてはならないのだが、今回はそれを行う砲兵部隊がすでに撤退している―――しかもライノ中隊にはHQより連絡が入り、他で交戦中の戦術機部隊への支援要請が通達されているのであった。

「ライノ1、どうやら他の部隊は芳しくない状況になっているようです。幸い、ここの坑道からはもうBETAの増援は無さそうですので、センサーを設置して向かうべきでしょうが……どうします?」

 隊長補佐としての意見を述べるライノ2の言葉にライノ1の頭では思考が巡る。

 正直に言えば、今すぐに潰す必要はないが、少なくてもこの坑道はアンバールハイヴに繋がっているという可能性が高く、もし次に起こりうる大規模侵攻の際に使われる可能性が高いので先ほどHQにはこの坑道の存在を報告して戦闘が終わったのちに工作部隊などで封鎖するようにと進言している。

 

 

 そして現在、救援要請が掛かっているのは中東連合軍ではなく、遠征で来ているアフリカ連合軍の戦術機部隊であり、戦線が中東よりでもアフリカ連合の方が発言力が強く、派遣部隊として間借りしているライノ中隊としては命令の拒否はよほどの理由がないかぎりは出来ないだろう。

 変わりゆく戦局の中で中隊長としてライノ1は最善の答えを出さなくてはならない。先ほどライノ6から来た報告にも耳を通してライノ1は情報と自分が培ってきたBETAとの苦い経験を示唆して、命令を告げる。

「よし、ライノ各機に告ぐ。一戦を終えて疲れているのは分かるが、これより我々は味方戦術機部隊の救援へ向かう事になった。総数は不明であるが、我々なら殲滅できるはずだ。データリンクにポイントを表示させる―――あと……」

 戦域マップに次へ向かうポイントが更新され、ライノ中隊各機が低空飛行で向かう中、ライノ1は最後に名指しで二人を指名し、別命令を下すのであった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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