マブラヴオルタネイティヴ二次創作小説 熱砂の刃   作:賀川 シン

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砂漠を駆ける斬撃 ④

 

 

 ライノ中隊が戦っている戦場から後方、スエズ防衛線外延部にある第38補給基地では先ほどライノ中隊が救った砲兵部隊と戦車小隊が到着したばかりであった。未だ前線では交戦中とはいえ、距離がある為に現在では第二種警戒態勢が発令されていたが、基地内の空気は何処か気に抜けた雰囲気が漂っていた。

 後方の、更に言えばスエズ防衛線が近くにある事からの気の緩みがあるのだろう。

 前線から命がけで逃げ帰ってきた砲兵部隊と戦車小隊はその基地内の空気に苛立ちすら覚えてしまっていた。

「ここから目と鼻の先でBETAが地中進行を行っているというのに、ここの奴らはよく今まで生きて来れたな……」

 その戦車小隊長の愚痴に運転しながら操縦士が苦笑を浮かべて答える。

「今現在、このスエズ防衛線にて国連軍に続いて権力を行使しているのは中東連合ではなく、アフリカ連合ですからねー正直、アフリカ北東部以外で生きているBETAを見た事がないって奴もいる国ですから」

 戦車小隊がちょうどF4ファントムが3機ハンガーに待機している前を通る。胸部ブロックが開いており、衛士たちは機体から離れて談笑をしていた。

 

 

「そういえば……隊長って東ドイツ出身って聞いたんですけど、どうだったんです? 当時のドイツは?」

 何か話題を出そうとして新人である操縦士が基地に付いたことで気が緩んでいるのか、これまで興味があったものの訊けなかった話題を口にしてみた。

「おい、新入り。今はよせ」

 その話題に反応したのは西ドイツ出身の砲手兵であり、発言した操縦士に睨みを利かす。

 欧州戦線はBETA大戦の初期から地獄絵図となっており、今現在、欧州で元からの国土を維持しているのはドーバー海峡を挟んでいたイギリスのみであり、フランス沿岸部ではイギリス上陸を狙うBETAを減滅すべく、激しい戦いが繰り広げられている。

 東ドイツ・西ドイツは欧州戦線の中盤にて長い間、BETAを強固な防衛陣地をくい止めていたのだが、東ドイツ政府機関での反乱などの政治的不安とBETAの大規模侵攻が重なったことによって一度は立ち直したが1980年代には東・西ドイツは崩壊したのだった。

「いいんだ。まぁ、正直に言えばあんまり思い出したくはないがな。あの時から戦車兵だったが、我ながらよく生き延びたとは思うな」

 当時の記憶を思い出しながら小隊長が胸ポケットから煙草を取り出す。火を点けずに口にくわえると。

「故郷の東ドイツから西ドイツへの撤退、そこから西へ逃げ延びて……死にもの狂いで生きてきたってとこだ。すまんな、英雄じみた話は生憎持ち合わせてはいない」

 そう語る小隊長の顔色は陰り、操縦士はすぐさま謝罪するのであった。

 

 

 

 そして数分後、戦車小隊は燃料補充の為に補給所にたどり着いた所、基地内で急な縦揺れが発生した。それはついさっき戦場で感じた揺れと同じであり、思わず表情が凍る。そして小隊長が指示を下す前に補給基地全体に鳴り響く警報音が事態を通達する。

「き、緊急事態発生ッ! 当基地、東2キロにBETAが出現! 総員第1種戦闘配置ッ! 繰り返す! 総員第1種戦闘配置ッ! 戦術機小隊はすぐさま出撃し、BETA群を殲滅せよ!!」

 その警報を皮切りに基地内は半パニック状態となり、怒号と混乱が混じり合う。今日2回目のBETAとの戦闘にやれやれと思わず天を仰ぐと小隊長はインカムにて小隊各車両に告げる。

「最後の大仕事だ! BETA共をぶっ飛ばしに行くぞッ!! 今日の俺らには幸運が付いてる。絶対に生き延びるぞ!!」

 次の瞬間、返ってきた部下たちの応答に思わず小隊長は口元を緩めるのであった。

 

 

 第38補給基地に対し、BETAが奇襲をしかけてから約3分後。前線から離れて跳躍ユニットによる全速に近いスピードで荒地を疾走する2つの機影があった。前方では黒煙が上がり、基地外部及び内部での戦闘が始まっていると思われる。一戦を終えた後、高速飛行で向かっていたので基地に到着しても推進剤は3割を切り、弾薬も心許無い状況であった。

 だが、2機の機影は速度を落とす事もなく、まっすぐに補給基地を目指して進んでいた。疾走する2機の戦術機、それはライノ中隊から送り出されたライノ7とライノ6の不知火であった。

「もう、こういう時の嫌な予感。綾音ちゃんの本当にあたるんだよねぇ……じゃあ、手筈通りにいくよ! 敵味方が入り乱れているから突撃砲の誤射には注意してね。特に120㎜」

「了解、でも私の突撃砲、さっき千里ちゃんに預けたから私、関係ないじゃ?」

 BETA群に突入する前の最終確認だが、調子を狂わせるような上げ足取りをするライノ7の返しにライノ6は思わずジト目で睨む。

「もう、変な所で茶々入れないの!―――ライノ6、交戦開始ッ!!」

 補給基地周辺に現れたBETA群は約300ほど、基地の外縁部には何十匹の戦車級と数体の要撃級の死体が転がっており、迎撃に出たF4ファントムが撃破されていた。

 救援向かう際に坑道出入り口でライノ7が捉えた微弱な振動、マップで確認した先にあったのがこの補給基地であったのだ。そしてライノ1に報告した際に万が一を考えて二人を補給基地に向かわせたのだった。 

 

 

 ライノ6は有効射程距離に敵を捕らえると同時に背部の兵装担架に装備されている突撃砲も前方に展開し、両腕にも構えた突撃砲による4門同時射撃を開始した。残骸などを貪っていた戦車級をピンポイントで次々と撃ち抜いく。

 この補給基地には数回立ち寄った事もあり、この基地の内部に漂っていた空気感から防衛隊の練度がそう高くはないと予測しており、助けるなら早急に敵を殲滅しなければ持たないだろうと残弾無視の短期決戦という選択を取ったのだ。

 内部に向かおうとしていたBETAが背後から迫るライノ6に攻撃対象を変更する。その行動を見て、ライノ6は後ろに付いて来ているライノ7に告げる。

「ライノ7ッ、行って! ここは全部私が食い止めるから! そっちは頼んだよ!!」

そう言った視線の先にライノ7が跳躍する姿が目に映り、その両手には長刀を持って基地内部へと姿を消した。

「綾音ちゃん……絶対に生きて帰ろうね」

 見届けた相方に一人事を呟くとそっと笑うと、ライノ6は自分のすべき仕事をする為に向かってくるBETAに対し、4門の突撃砲、36㎜総残弾数500発、120㎜残り4発を使って戦闘を継続するのであった。

 

 

 BETAに進行された補給基地内では逃げ惑う非戦闘員が障害物となり、迎撃に出た戦闘車両、歩兵部隊が有効打撃を与えられずにいた。その中にライノ中隊が救助した戦車小隊も交じっていた。彼らは残り少ない弾薬と燃料で防衛に回っている。

 戦車上部の機関砲を放つもメインゲートから進行してくるBETAを押し返すには火力不足であり、彼らを周囲を警戒していた歩兵が建物の影から飛び出してきた戦車級に胴体を掴まれると声を出す間もなく頭部から咀嚼されていく。その光景は何度も目撃しているが、見るに堪えない。歩兵部隊も小銃などで応戦するも数が多く、次々と犠牲となっていく。

「目標変更! 右側、戦車級の群れッ! 仲間たちをせめて人としての死を送ってやれ……撃てッ!!」

戦車級に囲まれ、人形のようにグチャグチャにされている歩兵たちに向けて主砲による砲撃を行い、双方とも微塵も残さずに殲滅する。

「各車、三十メートル後方まで移動せよ―――こちら515戦車小隊ッ! 司令部、どうした!? 避難状況はどうなっている!?」

 数少ない戦車と基地の歩兵部隊の応戦でBETAの死骸を積み上げるも、それを越えて迫りくる新手に防衛ラインを後退して応対しつつ、避難状況の確認を取るのだが返ってくるのは雑音ばかりであり、暴言を吐きだしそうになった瞬間、司令部のある建物が要撃級の硬い腕部によって崩れ落ちるのを目撃した。

 司令部の陥落により思わず舌打ちをする小隊長は他の戦車に残弾の確認に問い、一呼吸後には報告が返ってくる。補給も出来ずに砲弾は尽きかけており、逃げるだけの燃料も残っていない。

 

 

「…………」

 一瞬の刹那、小隊長が言葉を失い、返答が遅れるとその空気を悟ったのか操縦士と砲手の視線が突き刺さる。

 外部モニターには戦車級が胴体部にある巨大な口を開き、自分達を食い殺そうと迫ってくる。

 2号車が残りの残弾を気にせずに砲撃を行い、3号車からは部下たちが逃げ出そうとしていた。もはや戦車小隊も統制がとれずにいた。小隊を任された身として、部隊員の命を最優先に考えた結果、小隊長は備え付けのアサルトライフルに手を掛けるとハッチに手を掛けて残り二人に命令を下す。

「いいか。残りの砲弾を撃ちながらお前たちは後退しろ! 少しでもこの基地から離れるんだ! スエズまで行けば生き延びれる」

「し、小隊長はどうするつもりで!?」

 動揺の隠せない操縦士の言葉に小隊長は達観した表情で自分の部下への最後の言葉を伝える。

「部隊の穴を埋めるのが俺の役目だ。時間稼ぎぐらいは作ってやるよ―――あとは頼むぞ!」

 そう言って引き止める言葉を振り切って小隊長は外へ飛び出した。インカムで2号車にも同じような命令を告げる。

「隊長……り、了解、しました……砲撃しつつ、後退。撤退するっ!!」

 砂塵を上げて後退しつつも、最後までBETAに撃ち続ける部下たちの厚意に残された小隊長は不敵な笑みを浮かべると、その胸に誇りを覚え、手にしたアサルトライフルの銃口を向けて発砲する。

 

 

「貴様らに! 殺された俺の家族ッ! 俺の故郷ッ! 部下たちの無念ッ! 今、ここで晴らしてもらおうぞぉぉぉ!!」

 その瞳に憎しみを込めて、その言葉に恨みを吐いて、引き金を引き続ける。

「うおぉぉぉぉッっ!!」

 自分に突っ込んで来る戦車級に最後まで狙いを定めて臆する事なく撃ち続ける。

 小隊長が今日で自分が死ぬ事を覚悟したその瞬間―――何処からの突風によって小隊長の身体は吹き飛ばされたのだった。

 3メートルほど吹き飛ばされるも何とか受け身を取ったが酷い脳震盪でとても立ち上がる事は出来ずに、最後に意識を失う前に目にしたのは長刀を構えた青い戦術機の姿であった。

 

 

 前方には見えるだけで40体ほどの戦車級、更にその後方には要撃級が4体の姿を確認する。

 自分の後方には味方の歩兵が数名、強行着陸で吹き飛ばしてしまった兵士は脱出しようとしていた戦車が一両戻ってきて、兵士を回収していった。その状況把握中にも飛び掛かる戦車級に一閃、また一閃と剣戟を浴びせるライノ7の不知火。

「もう、遠慮はいらない。こいつらは殺す。一匹残さずに殺し尽くしてやるっ……」

 操縦桿を握る手に力が入り、ライノ7は不知火を前進させる。長い前髪に見え隠れする暗い怒りが込められた瞳はBETAをゴミ以下の価値もない。人類の敵であるBETAを消し去る事しか考えていなかった。

 一気に距離を詰めるとBETA側も自分たちのキルゾーンに突撃してくる獲物に集中して攻撃を仕掛ける。瞬時に複数に分かれて多方向での包囲攻撃を行い、ライノ7に飛び掛かる。

 

 

 もし機体に取り付かれてしまえば、戦術機の装甲は喰われ、あっという間に戦闘行動不能になる。それが旧型の第1世代機でも、新型の第3世代機でも同じだ。だが、今回は相手が悪かった。

 同じ攻撃レンジを得意とし、更に攻撃行動を理解した上で瞬時に襲い掛かる戦車級の間合いを測る。

 たった一瞬の時の流れを捉えるかのようにライノ7は右からくる戦車級2体を屠ると主脚で前進し、手を捻ると長刀の剣先でもう1体の戦車級を切り裂いた。一連の流れで3匹を殺し、動きを止めずに左手に逆手で持った長刀がもう1体を真っ二つとした。

 次々とライノ7に襲い掛かる戦車級だが、そのほとんどが機体に触れる事も出来ずに血潮が舞う。

 唯一、触れられたのはライノ7に踏み殺された1匹のみである。メインストリートが真っ赤に染まり、その中で立ちふさがる不知火の装甲は真っ赤に染まっていた。前衛の戦車級を倒し、次は要撃級へと目標を変更してライノ7は進む。

 本来であるなら戦車級が全滅する前に要撃級が合流できるはずだったが、ライノ7の殲滅率が速すぎて合流できなかったのだ。それに後退している戦車小隊の援護射撃が基地施設に対して行われ、瓦礫を作る事で要撃級の進行スピードを遅らせた為ででもある。

 

 

 速い行動で自分の目の前まで来たライノ7に対し、要撃級もモース硬度15以上の硬さを誇る前腕部を振るう。それは旋回性能の高い要撃級の振り抜いた一撃であり、戦術機程度の装甲なら貫いてしまうほどの威力と速さを持つ。

 だが、その攻撃は空振りに終わった……攻撃した要撃級が気づいた時には自分の身体を支える四つの四肢の内の一つが切り落とされていた事に気づき、次の瞬間に胴体部が真っ二つに切り裂かれていた。

 ライノ7は不知火の空力制御と足さばきを自分の身体を扱うように扱い、要撃級にフェイントを掛けて攻撃を誘ってから右側の脚部を切り裂いて、止めをさした。

「まず、一つ」

 その隙に2体の要撃級がライノ7の左右から攻撃を仕掛けてくる。網膜投影上でBETA急接近の警告アラートが表示されるもライノ7は呼吸を乱さずに、その場で跳躍ユニットの主機を点火させると、右腕部を振り上げると跳躍ユニットで強制的に反転すると同時に今度は左腕部でサイドスロー気味に薙いだ。

 

 

 跳躍ユニットの風圧で砂煙が巻き上がり、2体の要撃級はその間に動くことはなく、砂煙が引いたと同時にゆっくりとその巨体が地面に伏せる姿であった。右から来ていた要撃級は正面から長刀で止めがさされており、左側から来ていた要撃級は胸部右斜めから長刀が突き刺さっていた。

 瞬時の判断としてライノ7は左手にしていた長刀を『投擲』し、みごと要撃級に直撃させたのである。

 だが、実際に一番その事に驚いたのはライノ7本人であった。短刀なら投擲経験があったものの、自分の主武装である長刀を投げるのは命綱を外す事と同義であるからだ。

「……成功して、よかった」

 思わず毀れる本音にライノ7はそこで身体に溜まった緊張感を解す。しかし、網膜投影に映る機体コンディションは肩から腕部に掛けて黄色に表示されており、かなりの負荷が掛かっていた。

 投擲してしまった長刀は中央部分からひびが入り、使用不能となっていた。すでに連戦状態であり、この基地に来るまで残っていた推進剤の殆どを失っており、先ほどの噴射においてガス欠となってしまった。

 一度、態勢を整えるべく主脚による後退によって距離を取る。残る要撃級は1体、戦車級も隠れている為にどれだけの数が居るかは分からない。

 

 

 センサーに目を配りながらも不意にライノ7は自分の後方にある基地の出入り口を確認する。そこには最後に脱出する戦車の姿があり、ライノ7は内心、ホッと胸を撫で下ろした。

 これで最低限の自分の仕事は終えたと思えたからだ。仲間ではないが、自分が何も出来ずに人がBETAによって蹂躙させる光景は2度と御免だ。と―――あとは隠れているBETAを殺せば任務終了である。呼吸を整えると長刀を正眼の構えで待つ。

 機体はボロボロであるが、ここでBETAをくい止めなくてはならないのだ。センサーに複数の反応を検視し、ライノ7は迎撃態勢を整えた。が、ライノ7に隠れ迫るBETAの身体を閃光が貫く。

 

 

 それは次々と残っていたBETAを仕留めていき、最終的に残っていた戦車級と要撃級を倒しきってしまったのだ。

「…………え?」

 ライノ7は思わず気の抜けた言葉が漏れると同時にその閃光が放たれた方向を見上げると、そこには基地の城壁の上にて両手で突撃砲を構えているライノ6の姿があった。

「ごめん、外の片付けにちょっと手間取ったよ。でも、ベストなタイミングだったでしょ?」

 少しふざけた口調でライノ6が述べると同時にライノ7も一気に緊張感が解けてしまい、ホッとして返信を行う。

「ふぅ、助けてくれて……ありがと」

「いいの、いいの。それにー綾音ちゃんの事だから基地施設の事や脱出する人たちの事を考えて、最初から近接格闘戦を仕掛けたんでしょ。本当に綾音ちゃんは心底、優しいんだから。推進剤切れ寸前なのに、本当に偉いね」

 そんなライノ6のべた褒めぶりに、ライノ7は恥ずかしそうに首を横に振る。

「ちが、違うって! その、私は元々接近戦の方が好みっていうか、その~だから……」

「ふふ、だから~なに~?」

 

 

 お互いの事をよく知る戦友・親友の言葉にライノ7は反抗したかったが、これ以上何か言おうとしてもライノ6に言葉遊びで勝った事はないので、ここはひとつ。

「だから、私が剣を振るう事で師だったお爺ちゃん、お婆ちゃん、父さん、母さん、お姉ちゃん、あと避難先で暮らしている妹や弟の為にも私は……頑張らないといけない。鈴風流剣術、ここにありって、ね」

 そう告げてライノ7は構えを解くと、そっと長刀に視線を這わせた。ライノ6がそっと降り立つと不思議な表情で口にする。

「綾音ちゃんってさ。ちゃんと話せば他のメンバーと馴染めそうなんだから、もう少し素でもいいとは思うんだけどな~」 

「べ、別に他の人たちとちゃんと話すけど、私って、話すとき変に緊張しちゃうっていうか―――もう、千里ちゃんの意地悪っ」

 そう言って黒髪から覗く戸惑う表情が見ていて可愛らしいが、これ以上からかって嫌われるもは嫌なので、ライノ6は謝罪するとポロリと小声が毀れてしまう。

「……こうしている時のあなたが、本当のあなたなんだろうね」

「え? 何か、言った?」

 ライノ7の言葉に思わず口にしてしまっていた事に気づくも、ライノ6は外面は落ち着いた様子を整えてニコッと笑顔を作るという。

「ううん、ただ綾音ちゃんはやっぱり可愛らしいなって~言っただけだよ~だ」

「むむ、もう~……あ、そういえば、私たちの部隊が今、どうなっているか分かる?」

 先ほどから変な会話な流れになっている為にここでライノ7は会話の流れを変えるべく、戦況の事について話題を出す事にした。

 

 

 

 どうも機体に色々と無理を掛けてしまっているのか、先ほどから遠距離通信の調子が悪く。ライノ7の不知火は先ほどから中隊で共有する戦術マップが更新できずにいた。流石に事情を知ったライノ6も真面目になり、ライノ中隊に敵の殲滅に成功と報告すると、すぐさま連絡が届く。

 どうやらライノ中隊側もさきほど作戦完了し、現在、救援に向かった戦術機部隊と共に帰還中ということらしく、こちらに合流するのは10分ほど掛かるらしく、合流までライノ7とライノ6には再編した防衛部隊が戻ってくるまで待機という命令が下された。

 

 

 ライノ7達が補給基地からBETAを殲滅してから約5分後、補給基地から救援要請の為にスエズ基地から防衛部隊の先発隊がやって来た。数機のF16とF4が基地内に着陸し、基地のメインストリートに装甲車両が流れ込んでくる。武装した歩兵が降りると周辺の警戒を行い、小型種が潜んでいないかをチェックする。

「各部隊は分散しつつ、小型種が潜伏していないかをよく確認しろ! 一人での行動は禁ずる。かならず二人以上で行動を行え」

 歩兵部隊の部隊長が次々と命令を下して、部下たちも即座に展開していった。そして次に視線を向けたのはこの補給基地を救った2機の戦術機であった。通信役の兵士にすぐにチャンネルを開かせると、まず礼を述べた。

「こちらはスエズ基地所属の第88工作復旧大隊である。諸君らの活躍によってこの補給基地や人命を救ってくれたことに、同胞たちに変わり礼を述べたい。感謝する」

 その返答にライノ6が返答を行う。

「国連軍所属、日本帝国軍特別中東派遣部隊、第604戦術機中隊です。今、現状はBETAの再侵攻はないと思いますが、十分に気を付けてください」

「了解した。あとの処理は我々に任せて、君らは撤退してくれ」

 

 

 そう告げられると同時に補給基地上空に数十機の戦術機が現れ、その中からUNブルーで彩られた機体がその群れから離れて基地近辺に降り立つ。

 ライノ中隊の本体が合流するために補給基地に立ち寄ってくれたのだ。その後、基地内のBETA個体は確認できず、基地外部で待機していた工作部隊の本体が続々と基地内へ進み、復旧作業の準備を開始する。

 推進剤を使い切っていたライノ6とライノ7には推進剤の補給が行われ、補給後、中隊全機が揃ったライノ中隊はようやく帰還の途へ就くことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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