マブラヴオルタネイティヴ二次創作小説 熱砂の刃   作:賀川 シン

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大地を切り裂く鎌鼬 ②

 初めて顔合わせした時から、何処かいけ好かない奴だなっと思ったのだが、ミランダが感じた演習の相手である綾音の第一印象であった。

 相手である自分の事を見ていないようで、気にしない済ました表情を浮かべる綾音に対しミランダは、絶対にコイツに負けたくないと思った。

 

 

 だが、演習が開始して剣を交えた瞬間、そこに自分と綾音との間にある圧倒的実力差を直観的に感じてしまったのだ。

 シミュレーションとは全くの別物、機体性能すら当てにならないほど、綾音の操る不知火は俊敏に動き、その太刀筋を追うのに精一杯であった。剣捌きにおいては綾音の方が優勢であり、誰が見てもミランダが負けるというイメージが場の雰囲気に漂っていた。

 

 

 しかしミランダには綾音に比べて一つだけ秀でた物があった。それは最後まで諦めない『悪あがき』であった。演習で初めて綾音と剣を交え、改めて自分との実力差を感じながらもミランダは決して諦めなかった。

 どうしたら相手の剣戟を上手く避けられるか? どうしたら相手の裏を突けるか? 自分の行動をもっと最適化して勝ち筋を見極められるか? など、動きを止めずにミランダは思考をフル回転させながら、相手の動きを観察し続けた。

 

 

 相手も人間ならば、絶対に隙が生まれる。そのチャンスを逃がさない為にもミランダは死んでも食らいついてやろうと機体を操作した―――その瞬間が目の前に飛び込んできたのであった。

 

 

 相手の動きが鈍った瞬間、ミランダは瞳を見開く。絶対に負けるか!! という気持ちを載せた一撃がまるで吸い込まれるように不知火の左腕に直撃した。

 

「ッ、私だって……私だって! 無駄にここまで生き延びて来た訳じゃないんだぁぁああッ!!」

 

 声を荒げるミランダ、絶対に諦めない心と強く思った気持ちが力量を底上げする力となった。

 

「……負ける、もんか」

 

 その瞬間でも慢心せずにミランダは連撃を繰り出す。長刀での打撃に合わせて腕部に固定装備されているブレードベーンも攻撃の動作に交えて相手に攻撃の隙を与えないように立ち回った。

 だが、不知火側も動きがこれまでと違った動きを見せる。長刀に込められた一撃がより重く、連撃が速く繰り出されるのに芯を捉える一撃に受け止める度に機体全体が震えるほどで一層増す激しさに長刀に装備されていた防刃カバーが千切れ、部分的に実剣同士がぶつかり合うほどになっていた。

 その摩擦で火花が上がり、二機が振るう剣先に華を散らす。跳躍ユニットが点火し、広い演習場で斬り合う剣舞はまるで演劇を見ているような印象さえ、抱いてしまいそうになる光景であった。

 

 

 激しさを増す演習に長刀の防刃カバーはすでに無くなって刃が剥き出しになり、もし胸部ブロックに直撃すれば、そのまま機体ごと衛士の命が終わる。

 その光景をモニターで見ている中東・アフリカの軍高官達はざわつき、演習の中止を告げようとした瞬間、両中隊から「待ったッ」という要望に目を丸くする。

 

「君たちは彼女らの命が惜しくないのかねっ!?」

 

 その内の一人が思わず声を上げる。も、両中隊長は責任は自分達が持つ。とこの演習を強行するのであった。

 両中隊長はこの演習で二人の衛士の限界値や意識的なが高まるだろうと思い、その思考が同じだったのか、お互いに視線が合うと頷きあった。

 そして自分らの部隊員が勝利する事を信じて戦いの行く末を見守った。

 

 

 交を描くようにぶつかり合う二機の戦術機は全身を砂煙で汚れ、その手に持つ長刀の刃は激しい切り合いの連続で所々刃がほころんでしまっている。

 互いが並行し滑走していく際に先に仕掛けたのは不知火が仕掛ける。右脚を軸にして急停止を行う。強引な方向転換を行うも勢いを殺さずに短距離跳躍でラファールとの距離を一気に詰める。

 その反応にラファールも動きを合わせてきた。両脚で着地すると膝を曲げて、脚部に掛かる衝撃を吸収し、姿勢を安定させると迎撃態勢を整えた瞬間に不知火が先に長刀を振り抜く。

 

 

 左肩部、関節部分を狙った一撃に気づいたミランダは咄嗟に肩部スラスターで機体の重心を強制的にずらすもその動きに即座に対処する不知火は手首の角度を変えて追走する。その剣先は肩に装備されていたカーボンブレードで直撃を避ける。

 

「くッ、まだ、まだまだッぁあああッ!!」

 

 鋭く踏み込まれた一撃に肩のカーボンブレードは切断されるも、ミランダは臆せずにラファールを不知火に向けて突っ込ませる。加速してラファールが体当たりした所為で機体にはこれまでにない激しい衝撃が走る。

 揺れる視界の中、思った以上の行動を見せるラファールに不知火に乗る綾音も思わず声を上げる。

 

「ッ、こんな事で……負けてられないッ!!」

 

 ラファールを撥ね退けるようにダメージを負った左腕を強引に機体同士の間に入れると緩衝材として払いのけると機体への直接のダメージを避ける。その瞬間、機体ステータスに左腕全体が真っ赤となり、大地には捻じ切れた不知火の左腕が音を立てて転がっていく。

 バランスが崩れた機体を立て直すとお互いにボロボロとなった長刀を向けた。演習終了時間が2分を切った時、不知火に通信が入った。

 それは指揮所ではなく、目の前にいるラファール、ミランダからの通信であった。

 

「どう? 自分よりも格下に噛みつかれた感想は? あんまり嘗められるのは好きじゃなくてね」

 

 綾音を見るミランダは口角が上がり、不敵な笑みを浮かべる。その姿を見て綾音の瞳は誤魔化せない。余裕なんてものは一切なく、殺気を隠せない視線に綾音も真摯に答える。

 

「ええ、確かにあなたの言う通り、この演習は嘗めていたし、正直こうなるとは思っていなかったよ」

 

 そう言いながら、視界に掛かる前髪をはらうと綾音はミランダに向けて長刀を突き付けて挑発を込めて宣言する。

 

「だからこそ……次の一撃で終わりにしてあげる」

 

「……ええ、奇遇だわ。私の方こそ、次で終わりにしてあげますわッ!」

 

 最後にお互いに睨み合うと通信を終える。それぞれの得物をしっかりと握ると弧を描くように機体を加速させ、集中力を高めていく。

 砂塵が舞い、熱波で煌めく大地で今―――二機の戦術機が雌雄を決するべく、お互いに研ぎ澄まされた精神力を持って来たるべき瞬間を待った。その緊張感は画面越しにも伝わっており、見守る人々も息を呑んでその時を待つ。

 

 

 ――――――その時がやってきた。

 残り演習時間が20秒を切った瞬間、加速を続けて間合いを計っていた二機がほぼ同時に相手に向かって突撃を開始した。

15秒前、充分に加速を得た二機はあっという間にお互いの機体を間合いに捉える。

10秒前、ラファールは不知火を中心に捉えると跳躍ユニットによる加速と長刀の重さを最大限に利用した一撃を叩き込んでいく。

 5秒前、相対する不知火は振りかぶられた長刀に自らの長刀の軌跡に合わせて、真向から刃を下から上へと振り抜いていく。お互いの刃が重なり合う瞬間、ミランダは自分の勝利を確信していた。

 

 

 すでにボロボロになったお互いの長刀だが、自分の持つ長刀は重さで叩き斬る物であり、切れ味はさほど威力に比例しない。

 それに対し、不知火の長刀は引いて斬る物であり、切れ味が悪ければ比例して威力が低下してしまう。

 その理由もあってミランダはこの状態であるなら自分の方に分があると考えていた。

 

 

 そして演習残り時間――――――プラス2秒後。

 

 

 甲高い残響が耳に届き、ミランダは自分の目の前で起きた光景に自分の目を疑った。宙を舞ったカーボンの塊が自分の手にしていた長刀の一部だと認識した後、改めて自分の手にした長刀は中間部から切断されていて、乾いた大地に残骸が突き刺さる。

 

「……そんな、うそ……だ、だって、貴女の長刀だって、もう!?」

 

 視界を上げるミランダが振り返って、自分に向けられる長刀を持つ不知火の姿に問わずにいられなかった。思わず通信を接続し、不知火に乗る綾音に問うてしまう。

 ウインドウに映る綾音の姿も疲労した雰囲気でミランダに視線を合わす。そこには初めて顔合わせした際に見せた冷めた表情はなく、頬が高揚していて、瞳はキラキラとしていた。

 自分から通信したのにミランダの方がどうやって声を掛けるかと迷ってしまうほどだった。

 すると呼吸を整えたのか、口元に見えを浮かべると綾音の方が返事をする。

 

「確かにこっちの長刀ももう限界だったよ。運が悪かったらこっちがやられたかもしれないけど、でも今回は私の勝ち、だね」

 

 そう言って満足そうな表情を浮かべる綾音は子供っぽく笑い、それを見たミランダは一瞬だけポカンとしてしまうものの、どことなく拍子抜けしてしまい、口元を抑えて笑い出す。

 

「ふふふ、貴女って本当に変な人ね―――いいわ。今回は私の負けよ。でも覚えておいて、次は私が勝ちますから。その剣を叩き斬ってやりますので覚えておきなさい」

 

「覚えておくけど、次も負けるつもりはないからね」

 

 そうやって二人の会話が終わった瞬間、両機に通信が入ってきた。ウインドウを開くとそこには部隊長を含む仲間たちの姿が見えた。綾音は自分が勝利した事を確認する為にライノ1に問うと。

 

「まぁ、状況的にこちらの勝利には違いないんだが……」

 

 なぜか言葉に詰まるライノ1の姿を見て首を傾げる綾音であったが、よく耳を澄ますと複数の叫び声が聞こえてきた。

 

「だから嫌だったんだよ。実機での演習なんて! あの破損状況じゃ、中破レベルだぞ……」

 

「左腕の予備は―――隊長さん、ライノ7に腕を拾ってこいって伝えておいてくださいッ!」

 

「今日は機体をバラして……明日からオーバーホールだな。また格納庫暮らしが始まるなぁ~」

 

 と、騒がしいレベルで騒ぐ整備員たちの声に思わず綾音は視線を逸らし、その姿にライノ1は苦笑を浮かべるといつの間にかその後ろに整備副班長が現れると綾音に向かって告げた。

 

「さっき向こうの整備班と話したんだが、後日の罰ゲーム、二人とも決定事項って事で。以上、そちらの意見は一切聞かないので、よろしく~」

 

 そう捨て台詞を吐いて日本帝国とフランス陸軍の整備員たちがぞろぞろと演習指揮所から退出していく。

 何か言いたげな綾音の表情を見て、ライノ1はすまなそうな表情で「って、事だから頼むな」と釘を刺され、綾音は大きく溜息を吐くのであった。

 すると通信を切り忘れていたミランダも同じような言葉を伝えられたのか「お、お兄様ッ! 本当にするの!?」と驚きの声を上げていた。

 

 そして通信を切る際にミランダが綾音にぼやく。

 

「ねぇ、これってさ、結局の所……私たち勝っても負けても罰ゲームをやらされる運命だったんじゃない?」

 

「……もしかして最初から仕組まれていた、とか?」

 

 呆れ顔になる二人は思わず同時に溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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