マブラヴオルタネイティヴ二次創作小説 熱砂の刃   作:賀川 シン

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大地を切り裂く鎌鼬 ③

 3日後、スエズ基地、戦術機地下ハンガーにて。

 

 

 とぼとぼと、通路を歩くライノ7こと鈴風・綾音少尉の足どりは重く、その表情も何処か浮かばれない。その隣を同じような表情で歩くフランス陸軍のミランダ・アルセイフ少尉も一緒に歩いていた。

 そして、その背後には使いの者ごとく、付いてくるライノ6とガルム8がニコニコと談笑しながら二人の後に続いていた。

 

 

 例の罰ゲームは昨日の内にフランス側で一度行われており、今日は日本側で罰ゲームが行われる。その際に被った精神的ダメージが大きく、それをまた行われるという現実が綾音とミランダの足どりを重くする。そうしてゆっくりと更衣室に入っていった。

 

「これだったら、まだBETAと殺し合った方がマシな気がする……」

 

 椅子に座ってぼやく綾音の後ろにライノ6こと、綾音の幼馴染である浅倉・千里(あさくら・ちさと)が櫛や化粧品などを次々と用意していく。昨日も同じことを思ったのだが、この幼馴染が活き活きとしている表情を見て鏡越しに綾音は頬を膨らませる。

 

「もう、ちーちゃんは他人事だと思ってさ~完全に私ら、見世物じゃん」

 

「はいはい、だったらもう少し不知火を壊さないように扱いましょ~ね~」

 

「それは……私だって気を付けているんだけど……」

 

 ニコッと笑みをこぼす千里は慣れた手つきで綾音の黒髪を梳いていく。元より綺麗な髪質をしているので、一手間加えていくだけで見栄えが断然良くなるのだが、綾音自身はお洒落については全くの無頓着であるのでこうして髪を梳く機会は多かった。

 鏡越しに見る綾音はジッとしていれば羨ましいほどに可愛いのに、今はジト目でムスッとしている。部隊内では見せない素の反応が可愛らしくて後ろから抱きつくなる衝動に駆られそうになるがグッと堪えて拗ねた綾音に言葉を投げかける。

 

「―――それは皆も知っているし、私だって分かっているんだよ」

 

「え? 何が?」

 

 髪を梳かす手が止まり、思わず振り返りたくなるがセットが崩れてしまうので綾音は視線だけを鏡越しに千里に向ける。

 

「だって綾音ちゃんが何時も先頭に立って、部隊の皆の道を作ってくれるから。一番危ない役目を自分から背負ってくれてるのは、言葉にはしないけど皆、知ってるよ」

 

「……私、突撃前衛だし、それしか出来ないし、それに、それにさ、何時もちーちゃんが後ろに居てくれるから出来る事だから……」

 

 後ろから聞こえる言葉と鏡越しに見る千里の様子が気になる綾音は改めて死地に何度も付き合ってくれた幼馴染に対して礼を述べる。

 

「一人だけじゃ、どうしようもない時なんていっぱいあったよ。初陣の山口の時も、京都の時も―――あと、一番辛かった東海道撤退戦の時も……皆が、ううん……ちーちゃ、千里ちゃんが居てくれたから私も頑張れたんだよ」

 

 ふと、綾音の脳裏に記憶が蘇る。

 あの時の事を思い出すたびに胸の奥がチクリと痛む。生き残るだけで必死でBETAの進撃をくい止める事が出来ず、目の前で仲間が、民間人が、次々と犠牲になっていく、地獄絵図を鮮明に記憶しまっている。

 自分が知っている人達が消える光景は二度とごめんだ。そうならないように努力して、戦って生き抜いていたのだ。

 いつの間にか綾音は自分の肩が震えているのに気付いた。それが怒りなのか、悲しみなのか、自分ではすぐに理解できなかったが、考えるよりも早く肩から腕が周り、後ろからそっと抱きしめられたのが判った。

 

「私も、だよ。綾音ちゃんが一緒に居てくれたから、頑張れた……お互いにここまで生きて来れたんだから、お相子様」

 

そっと回された腕に手を置き、優しそうな微笑を浮かべると綾音は「ありがとう」と囁き、落ち着きを取り戻した千里も目じりをそっと拭うと「こちらこそ」と告げると髪の毛のセットを再開するのであった。

 それを横目で見ていたミランダ達はというと。

 

「あ、私たちもしてみます? ギュッとかハグとか? それとも頬を合わせてスリスリとかでもいいですよ!? 私的にはウェルカムですから」

 

 鏡越しで言うガルム8の表情はやや興奮気味であり、ミランダは呆れ顔で拒否する。

 

「……しないわよ。てか、年下に欲情、しかも同じ女にとか少し気持ち悪いです」

 

「あふん、そういう目つき戦闘中のガルム1に似てる~兄妹って感じがしますね~」

 

「兄様の話はもういいから、早くセットしちゃってください」」

 

 そう言われて渋々ガルム8は髪のセットを再開し、ミランダは横目に映る綾音たちの姿を見て思う。

 

 

『昔からの友人、か―――今のご時世、それは貴重な存在よ……大切にしなさい』

 

 不意に脳裏を過るのはまだフランスという国が存在していた時の事。自分がまだお嬢様として生きていた幼い日々の記憶。それは今になってみるとまるで夢を見ていたかのような時間だった。

 あの時に遊んでいた友人達はフランスを脱出する際に離ればなれとなり、今も行方はつかめていない。

 ただ無事であればと願うばかり、ミランダは遠き祖国の思い出を大切に心へ仕舞い込むのであった。

 

 

 数十分後、いつもならハンガーに係留されている戦術機に整備員たちが集まって仕事をしている光景が窺えるのだが、今日は様子が違った。機械音はせず、すでに手を止めて一か所にざわざわと集まっていた。

 

「いやぁ、眼福するなぁ」

 

「そうっすよねー見慣れている強化装備も冷静に考えるとアレッすけど、何時もとは違う姿ってのはギャップがあっていいっすよね」

 

 集まった整備員の中には少なからず女性もいるので甲高い黄色い声も混ざり、楽しんでいるようであった。

 

「きゃあ! 少尉~可愛いぃ~こっちに視線ください~目線は上目使いで……はい、もう一枚!!」

 

「ナチュラルな金髪ってやっぱり綺麗よね。それに戦術機の操縦も悪くないし―――ねぇ、もしよかったらライノ中隊に来てみない? え、スカウトはお断り?」

 

 この騒動の中心にいるのはメイド服を着た綾音とミランダの二人であった。いつもはしない化粧を施された二人の見違えった綺麗な姿に歓声が飛び交っていた。これらの衣装の提供はアルセイフ家の長男からであり、それはミランダの兄であるアレクセイ・アルセイフ大尉からであった。

 この状況は前日に行われた欧州連合フランス陸軍の戦術機ハンガーでも似たような状態となり、一つだけ差異があるとしたら、フランス側では和服を着て行った事、それとミランダの兄、アレクセイが和服を着た綾音に一目ぼれをして求婚を申し込んだぐらいであろう。

 

 ―――求婚は速攻で拒否されていたが、どうも諦めてはいないようであったが―――

 

 そして今回は日本向けという事でメイド服となった。何故フランス人であり、このご時世でメイド服やら和服などを用意できたのかというのはまた別のお話。

 

 

 メイド服を着てする事といえば―――という事になり、作業員たち一人一人にお茶などを入れていき、笑顔を見せて奉仕するサービスを行う事になった。家事などに不慣れな綾音とミランダが見せる仕草が終始、その場を和ませる結果となり、これで部隊内でのいいリラクゼーションとなった。

 当の二人はようやくお茶入れなどの奉仕を終えて、小休憩の為に椅子に座るとそれまで作っていた笑顔を崩し、意気消沈したように溜息を吐くと天を仰ぐ。

 物凄い疲労感と共に、二人は同時に呟いた。

 

「「これからはもう少し丁寧に乗ろう……」」

 

 ―――流れていた穏やかな時間が終わり、戦術機ハンガーに機械音と共に人々の言葉が響き渡るとそこには何時もの光景が戻っていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 次回予告。

 ライノ7に絶対絶命の時が迫る! 
 大砂嵐の中で動けない友軍を守りながら無数のBETAから守り抜く為に自分の技量を出し切って生き残る事は出来るのか?
 もう誰も失わせない。ただその想いを持って自ら振るう剣を信じる綾音に正気はあるのか?

 次回、第三章 「赤塵の旋風」


 後書き。


 最初の頃に比べて投稿ペースが落ちてしまい、申し訳ありません。
 作者の私情で色々とありまして、モチベーションが上手く持てませんでした。
 今回のお話はもう少し掘り下げて出来た事もあったのですが、戦闘の描写などがグダついた所やキャラの会話など省いて分かりにくい頃もあったかもしれません。
 
 その内ですが、番外編で資料的な物も投稿したいと思っていますので次の第三章の投稿が終わった後で挟みたいと考えています。アフリカ大陸や中東などの状況など色々と―――

 少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。よければまた次のお話でお会いしましょう。

                              賀川シンでした。





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