東方理想郷 ~ Unknowable Games.   作:まこと13

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 今回は過去編(28話~31話(中編)と別作:霊夢と巫女の日常録1~18話)のまとめです。
 今回で最後まで行こうと思ったけど長かったので分割しました。




これまでのあらすじ③

 

 

 

<霊夢の回想>(28話)

 

 闇に飲まれた世界で、霊夢の心は侵食されていた。

 だが、霊夢を守ろうとする紫の力が、霊夢の心が完全に闇に飲まれることを拒んでいた。

 そうして霊夢は、温かい想いに守られながら思い出していく。

 大切な家族と過ごしてきた、かけがえのない懐かしき記憶を――――

 

 

<過去編>(別作:霊夢と巫女の日常録1~18話)

 

 まだ幼き霊夢は、いつも一人だった。

 誰にも傍にいてもらえない、誰にも認めてもらえない寂しい子供。

 だが、ある日偶然に見つけた、博麗大結界に封じられた邪悪の力を神降ししてしまったことで、霊夢の運命は変わった。

 

 邪悪の力をその身に宿してしまった霊夢は、当時の博麗の巫女の養子として育てられることとなった。

 巫女と2人で博麗神社で過ごす平和な日々。

 寺子屋で出会った、生意気な魔理沙や口うるさい慧音との日常。

 だが、ある日突如として寺子屋に現れた妖怪に対抗するため、霊夢は誤って邪悪の力を使ってしまう。

 邪悪の力の暴走を察知した紫と藍は、それをきっかけに霊夢がその力を使いこなせるようにしようと、霊夢を鍛え上げることとした。

 そうして、その日から博麗神社には3人の家族が増えた。

 霊夢と巫女に加え、紫と、その式神の藍、その更に式神の橙。

 にぎやかな5人家族の末っ子として、霊夢はキツイ修行に耐えながらもそれはそれで幸せな日々を過ごしていた。

 

 

 休みなく修行を始めておよそ1年、霊夢は遂に橙に勝てるレベルにまで成長した。

 その褒美として与えられた3日間の休日を使って、霊夢は魔理沙の家に行くことに決める。

 霊夢が邪悪の力を使ってしまった日以来、寺子屋に来なくなってしまった魔理沙のことが気になっていたのだ。

 だが、今の魔理沙からは霊夢が知っている頃の明るさは消え失せ、完全なガリ勉になっていた。

 

 霊夢は寺子屋において、知力においても体力においても自分は他の子とは別格なのだと自負するほどに優秀だった。

 だが、幻想郷の経済的権力を握る霧雨家の跡取りである魔理沙は、知力においては霊夢と比べてなお別格だった。

 負けず嫌いの霊夢のプライドは、それを許さなかった。

 自分と同い年の子に自分以上の相手がいることが耐えられず、今までの霊力や体力の修行を放り出して、魔理沙を見返してやるためだけに紫たちと1週間みっちり数学の勉強をすることになった。

 

 そして一週間後、霊夢は魔理沙の家に乗り込む。

 霧雨家の厳重なセキュリティを潜り抜け、遂に魔理沙のもとに辿り着くと――魔理沙は空虚な目で、ただ黙々と勉強に打ち込んでいた。

 その姿が、霊夢には気に入らなかった。

 霊夢は一週間の勉強を終えて、自覚していた。

 知力において、自分は魔理沙には決して届き得ないのだと。

 霊夢のプライドはそれを認めるのを拒んでいたが、同時に霊夢は心の奥では魔理沙のことを認めていた。

 だからこそ、本当は勉強なんてしたくないくせに、一人で殻に閉じこもっているだろう魔理沙にイライラしてしまった。

 だから、霊夢は魔理沙に言う。

 自分を追いかけてこいと。

 同じ道に来るのであれば、自分はどこまでも先の世界を切り開いてやると。

 

 魔理沙もまた、本当はそんな霊夢の生き方に憧れていた。

 自分は霧雨家を継ぎたいわけじゃない、本当は魔法使いになりたかったんだと、その夢を再び思い出して。

 そして、魔理沙は決心する。

 霊夢に追いつくと宣言して魔法使いになる道を探し、一人で霧雨家を飛び出して――

 

 

 およそ1年後、今まで通りの日常を過ごしてきた霊夢は、ある日夢を見た。

 誰にも認めてもらえない、一人の悲しい人間の夢。

 かつての紫と藍を2人同時に相手にしてなお退ける、とても人間とは呼べない化物の夢。

 だけど紫は夢の最後に、その人間に博麗の巫女をやってみないかと誘っていた。

 

 その夢が何だったのか、霊夢にはわからない。

 だが、少なくともその夢に登場する人間は、今の巫女とは別人なのだろうと思っていた。

 なぜなら、今の巫女は大人のくせに「今日はピクニック」とか言って霊夢の布団に飛び乗ってくるような子供っぽい人なのだから。

 

 今回のピクニックには、霊夢と巫女と紫、一年ぶりに会う魔理沙と、寺子屋の教師である慧音が一緒に来る予定だった。

 だが、別に呼んでないはずのアリスもいた。

 どうやらアリスは半年ほど前から魔理沙の魔法の師匠をしているそうだった。

 そしてアリスの奇行に振り回された霊夢は思う。こいつは苦手だ、と。

 今回は顔見せ程度のつもりだったのか、アリスは適当に霊夢たちをからかってからすぐに帰ってしまう。

 アリスのせいで微妙な再会になってしまった霊夢と魔理沙だったが、それでも魔理沙は最初から感動の再会になどするつもりはなかった。

 霊夢に追いつくと宣言したのだから、まずはその成果を見せたいと。

 そうして、霊夢と魔理沙の一対一の勝負が始まった。

 

 たかが一年の修行で自分に追いつけるはずがないと侮っていたが、霊夢は今の魔理沙の力を前に驚きを隠せなかった。

 確かに魔理沙は体力も戦闘能力も霊夢には遠く及ばない、それでも圧倒的知力でもって身に付けた魔法は、既に霊夢の喉元に届くレベルになっていたのだ。

 それを理解した霊夢は、少しだけ本気を出してしまう。

 だが、紫たちのような妖怪とばかり勝負していた霊夢は、人間の脆さを忘れていた。

 たとえ魔法を使えるようになったとはいえ、魔理沙はまだ10歳足らずの人間の女の子なのだ。

 屈強な妖怪さえ沈める霊夢の蹴りを受けられるはずがなく、それはたった一撃で魔理沙には致命傷となってしまう。

 死にゆく魔理沙を救う方法として、紫が提示したのはただ一つ。この状況を覆せる万能薬の材料となる伝説上の植物をも司る妖怪、風見幽香の協力を仰ぐことだった。

 だが、巫女は自分は他に魔理沙を救うあてがあると言い、魔理沙を連れて人間の里に向かった。

 霊夢もまた、魔理沙を助ける方法は多いほどいいと思い、幽香のもとへ向かうこととした。

 

 幽香のもとに辿り着いた霊夢は、ぶっちゃけ焦っていた。

 そこに着く途中、誤って花畑を踏み荒らしてしまったから。

 バレないように、バレないように気を付けながら幽香に協力を依頼したが――やはり、バレていた。

 花畑を荒らしたことで虐められ、幽香のドSっぷりに泣きそうになる霊夢だったが、魔理沙の命が危ないため今は泣き言を言ってる場合ではなかった。

 霊夢は魔理沙を助けるために幽香に真剣勝負を挑む……が、そんなの勝てるはずがなかった。

 やがて追い詰められた霊夢の心の奥で、何かが蠢いていた。

 このまま負ければ魔理沙を助けられない、魔理沙が死んでしまうと。

 その感情が霊夢の中にあった邪悪の力を呼び出し、目の前の景色の全ては一瞬の内に灰燼に帰した。

 

 目覚めると、霊夢は博麗神社で寝ていた。

 それを看病する巫女から、魔理沙が無事であったと聞かされるも、その一連の流れが紫の策略であったことを知らされる。

 霊夢の中にある邪悪の力の制御を次の段階に移すために、わざと幽香に挑まざるを得ない状況をつくったのだと。

 だが、巫女は霊夢を危険な目に遭わせた紫を許さず、絶縁状を出さんばかりだった。

 そして、巫女は霊夢から邪悪の力を引きはがすことを約束し、その後は邪悪の力のことや修行など忘れて2人で平和に暮らそうと言ってくれた。

 

 だが、霊夢にはわかっていた。

 紫は悪意を持ってこんなことをしたのではない、必ず何か必要な理由があったはずだと。

 そして、巫女と同じく紫たちも今の霊夢にとっては大切な家族なのだと。

 だから、霊夢は決断する。

 巫女を説得して、家族5人でもう一度やり直そうと。

 

 

 

<真相編>(東方理想郷29~31話)

 

 霊夢は、夢を見ていた。

 幻想郷を滅ぼさんばかりに博麗神社で力を振るう化物と、それを止めようとする2人の姿。

 その2人が、紫と巫女であることは自然と理解していた。

 そして、その夢で出てきた化物が、恐らく邪悪の力に支配された自分の姿であったことくらいなんとなくわかっていた。

 こんな出来事を経てなお、巫女も紫たちも自分を育て上げて一緒に過ごしてくれる。

 自分にはもったいないくらいの家族を、こんなすれ違いで今さらバラバラにしたくはなかった。

 

 夜遅く、巫女は一人で静かに博麗神社を出る。

 霊夢はこっそりと、巫女を尾行していく。

 辿り着いたのは、迷いの竹林だった。

 そこに入っていった巫女を追おうとして、霊夢は同じく巫女を追っていた紫と合流する。

 巫女は竹林に入り忽然と姿を消してしまったため、何か特殊な結界でも張ってあるのかと紫と共に探索していたが、気付くと霊夢は一人で異様な空間に迷い込んでいた。

 

 そこで見つけたのは、憎しみに支配された巫女の姿。

 そして、巫女を殺そうと立ちはだかる、何者かの姿だった。

 やがて霊夢の存在に気付いた巫女は、その相手から霊夢を守ろうと奮闘するが、やがて追い詰められてしまう。

 それを見ていた霊夢は、このままでは巫女が死んでしまうと、感情が不安定になっていく。

 そして、霊夢は無意識に邪悪の力を解放してしまい――次の瞬間、目の前には何もなかった。

 ただ、自分の手の中にあった巫女の焦げたリボンの破片を見て、自分が巫女を殺してしまったという事実だけを悟ってしまった。

 

 その日から、霊夢は博麗神社で一人待っていた。

 あの日の出来事が全部嘘で、巫女はいつか帰ってくるんだと信じていたが、そんなはずがなかった。

 やがて霊夢は、巫女を殺してしまった事実に耐えきれず自殺を目論むも、紫に助けられていた。

 霊夢は自らの罪を紫に打ち明けるが、逆に霊夢は紫に感謝されてしまう。

 紫にとって巫女は幻想郷を維持するための道具でしかなく、今はもう邪魔だったのだと。

 それを聞いた霊夢は、悲しみや絶望よりも、紫への怒りや憎悪に支配されていた。

 その感情のままに、霊夢は紫に向かって全てを吐き出す。

 紫はそれを、全て受け止めた。

 本当は紫自身も巫女を失った悲しみで壊れそうになりながら、それでも霊夢に巣食った負の感情を吐き出させ受け止めてあげるために悪役を演じていたのだ。

 そして、紫は霊夢に新しいルールを提案する。

 それが『スペルカードルール』。

 霊夢が誰かを傷つけなくて済むように、皆が笑ってケンカできるようにと、この日を境にそんなルールが広められていった。

 

 やがて、スペルカードルールが広まった幻想郷で、霊夢は再び笑顔を取り戻す。

 これからもずっと、紫はずっと自分の傍にいてくれるのだと、そう思っていたのだから。

 

 だが、もう紫はいない。

 異変の脅威から霊夢を守るために自らを犠牲にしてしまったのだから。

 だけど、最後に僅かに遺された紫の思念体は、霊夢に優しく語り掛ける。

 もう、自分がいなくても霊夢は一人じゃない、皆が霊夢を待っているのだと。

 だから、霊夢は再び立ち上がる。

 幻想郷の大切な仲間たちを助けるため、紫に最後の別れを告げた。

 

 

 そして時は異変の最中に戻る。

 魔理沙と別れてから、藍は一人永遠亭に向かっていた。

 現状を打破しうる唯一の可能性である、輝夜に助けを求めるために。

 だが、輝夜は自分で異変解決には向かわず、藍と新たに式神契約を結ぶことで藍に力を与えることとした。

 

 その力をもとに再び一人で異変の解決に向かう藍を尻目に、輝夜は永遠亭へと残っていた。

 そこに突如としてさとりが現れる。

 さとりは輝夜の心を読み、紫の死の原因が輝夜にある事実、そしてこの異変の黒幕が輝夜であることを知った。

 だが、輝夜は別に真相を知られたことを焦ってはいなかった。

 ただ静かに、さとりにはここで消えてもらうと、そう告げた。

 

 輝夜がこの異変が始めたのは、ゲームの世界の中に幻想郷を落とし込もうとしたことがきっかけだった。

 幻想郷に解き放たれた邪悪の力、それに対抗する幻想郷の住人たちの葛藤を眺めるだけの愉悦。

 直接自らが介入はしない、それでも異変の行く末が面白くなるように少しずつ誰かを動かしていたのだ。

 

 さとりはその事実を輝夜の心を読んで全て知ってしまうが、最もさとりの気を惹いたのは、異変の事実ではなかった。

 輝夜の心の奥底に、たったひとつ固く閉ざされた一つの計画の名。

 それを知ろうとし、更に輝夜の奥底に眠る心の乱れまでも読み取ろうとしたさとりは、輝夜から危険視されその場で排除対象となってしまう。

 だが次の瞬間、消滅したのはさとりではなく輝夜だった。

 その結果をもたらしたのはさとりではない、七色の魔法を操るアリスの力。

 アリスはそれを使って、輝夜を足止めすると同時にさとりを逃がしていたのだ。

 だが、禁呪の力をもってしても輝夜を完全に止めることは容易ではなかった。

 だからアリスは七色の魔法の切り札、『紫』色の魔法を使って輝夜を自分とともに異空間に閉じ込めることとした。

 

 そうして輝夜から逃げ出したさとりはルーミアのもとへ向かい、レミリアを陥れていたのだ。

 だが、たとえレミリアを陥れようとも、今のルーミアを相手にさとり一人で太刀打ちできる訳がなかった。

 ルーミアの目に映っていた映姫の姿さえも、相手の心的外傷を想起するさとりの能力によって生み出された幻に過ぎなかったのだから。

 だが、あっけなくルーミアに捕らえられてしまったさとりの目は笑っていた。

 全ては、さとりの計画通りだったのだから。

 

 さとりは世界を恨んでルーミアに味方をした訳でも、誰かのために孤独に戦っていた訳でもない。

 ただ、レミリアの『運命を操る能力』という玩具を楽しむためだけに、こうして輝夜やルーミアの前に現れただけなのだ。

 幻想郷の崩壊という運命を知り、その結果が嫌われ者の自分の気まぐれによって左右されてしまうという滑稽な戯曲を楽しむため。

 ただそれだけがこの異変の中でさとりが抱いた目的なのだ。

 そんなさとりの思考を、ルーミアは理解できなかった。

 自分とは決して相容れない危険な歪みを排除しようと考えた時、さとりの援軍が現れた。

 こいしにお燐に空に勇儀、強力な助っ人の登場という起死回生の状況を前に、さとりは……自ら闇に飲まれることに愉悦を見出した。

 こいし達が怒りのままにルーミアに向かっていくのを見ながら、さとりは自分という異物が世界の運命にどんな影響を与えるのかを期待しながら、一人闇の中に消えた。

 

 そして、もう一つの戦いも終盤に差し掛かっていた。

 輝夜を異空間に足止めしていたアリスにも限界が近づいていたが、それでもアリスは最後まで諦めなかった。

 最後に七色の魔法全てを超えた『虹』色の魔法を放ち、そして輝夜に敗れた。

 だが、輝夜はアリスの足掻きを無意味なものとはしなかった。

 アリスの目論見に合わせるかのように輝夜は『紫』色の魔法に介入し、自らその異空間に取り残されることを選んだ。

 

 

 

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