東方理想郷 ~ Unknowable Games. 作:まこと13
今回は外伝1~4話(番外編)と32~38話(後編)のまとめです。
まとめは今回で最後になります。
……今さらだけど、だいぶ短くしたつもりなのにむっちゃ長いですね。本編のここまでの総文字数が卒業論文20回分を軽く超えてました(笑)
〇番外編
<さとり編>(外伝ノ壱)
かつて、地底に嫌われ者の妖怪がいた。
名を火焔猫燐。死体を持ち去り、怨霊を操る彼女は、嫌われ者の楽園とされる地底世界に来てなお受け入れてもらえなかった。
何度も拷問を受け、唯一友と思った相手からも裏切られ、人生に希望など何も抱いていなかった。
だが、そんな彼女にも運命を変える出会いが訪れる。
燐はある日、死体を運ぶ一行に遭遇し、その死体を盗もうと企んでいた。
その死体を守ろうとした妖怪を脅しつけるために怨霊を使役して――突然、燐の操る怨霊が何かに怯えたように逃げ出した。
そこにいたのは、一人の妖怪。
地底で一番の嫌われ者と名高い、古明地さとりだった。
燐は、さとりに期待していた。
さとりならば、もしかして自分と同じくらいの地獄を知っているのではないか、自分の境遇を理解してくれるのではないかと。
だが燐の予想に反し、燐が最悪を自負するその記憶を読んださとりは、まるで愉快な物語を見るかのように笑った。
燐が苦しみながら過ごしてきた日々など、地獄と呼ぶに値しないと言わんばかりの目で。
自分が誰よりも不幸だと思い続けてきた燐は、得体の知れないさとりに恐怖を感じ、とっさにさとりに向けて怨霊を放ってしまった。
だが、負の感情の塊であるはずの怨霊すらも、さとりから逆流した記憶に蝕まれて消滅していく。
その光景を前に、燐はたださとりへの畏怖で震えあがることしかできなかった。
さとりは燐とは比較にならないほどの闇を抱えながら、それでも燐に笑いかけていたのだから。
その日から、燐はさとりに服従した。
自分より不幸な境遇にありながらも優しく生きているさとりと出会えて、そして自分に優しく語り掛けてくれる空に出会えて、燐の人生はそこで変わったのだ。
だが、さとりにとって燐との出会いなど大した意味を持たない、日々過ごす中で見かける愉悦の一つに過ぎなかった。
それでも、さとりでさえもやがて興奮を隠しきれない出会いに遭遇する。
地底の奥深くに眠っていたとある歪み――それはやがて、さとりを運命という最高の玩具へと導いたのだから。
<萃香編>(外伝ノ弐)
鬼の四天王、伊吹萃香は誇り高き鬼だった。
鬼という種族の力を体現してきた力の求道者は、鬼以外に最強の名を冠する者を許容できなかった。
だからこそ萃香は、幽香を、紫を、天魔を、種族を超えてあらゆる者を力でひれ伏させてきた。
その萃香の次の標的は、紫から鬼以上だと評価されていた月人。
少し前に幻想郷に新たに現れた蓬莱山輝夜を打ち負かすため、迷いの竹林へと単身挑みに来ていた。
そして、萃香はスペルカードルールを無視し挑発を続けることで、輝夜に本気を出させようと画策していた。
一方で、輝夜は萃香の力になど全く興味はなかった。
ただ、輝夜には萃香と戦う理由があった。
前々から抱いていた別の目的、萃香はそれを成し遂げるには理想的な相手だと思ったのだ。
だからこそ輝夜は萃香の望み通りに戦ったが、それはあまりに一方的な蹂躙だった。
萃香の全力が簡単に止められ、まだ手加減しているはずの輝夜の一撃で萃香は満身創痍となっていく。
だが、輝夜の目的は萃香を倒すことではなかった。
「永遠」という、どんな恐怖も絶望も比較に値しない、最悪の概念を萃香の脳裏に刻み込もうとして実行したのは……
輝夜は自らの『永遠を操る能力』を使い、一瞬の間におよそ三千年、つまり百万日という歴史を創り出した。
萃香の能力でつくられた百万の分身を、輝夜は一日に一体ずつ消していくというカウントダウンを行っていく。
萃香は一切動くことのできないまま、ただじっと三千年の時を過ごす。
そして百万の分身が消えれば、輝夜は『須臾を操る能力』を使って萃香の分身の再生を促し、三千年前と同じ状況を創り出す。
ただ、前回と違うのは、次は一枚の爪を剥がして三千年。
その次は二枚、三枚、足の爪まで全て剥がされて既に六万年の永遠を萃香は激痛の中で何もできないまま過ごしてきた。
萃香の精神は極限まで追い詰められながらも、それでも永遠という名の地獄は終わらない。
臓器も、五感も、全てを奪われてなお終わることはない。
そして遂に、萃香の精神は壊れてしまった。
かつての誇り高き鬼としての面影など欠片もない、そんな弱弱しい姿となって――ようやく、輝夜は萃香を解放した。
輝夜に何の目的があったのかなど、萃香には知る由もない。
ただ確かに言えることは、その日、暴虐の鬼の四天王として悪名高き伊吹萃香は、鬼として死んだということだけだった。
〇後編ノ壱
<輝夜編>(32~38話)
霊夢はいつの間にか、何もない異空間に迷い込んでいた。
実際はアリスの『紫』の魔法に閉ざされた世界であるのだが、霊夢はそこがルーミアに敗北した幻想郷の成れの果てなのだと理解する。
そして、霊夢がその世界で唯一出会うことができたのが、輝夜だった。
輝夜は暇つぶしに霊夢にスペルカード戦を望み、霊夢も輝夜の最後の頼みを聞いてあげたいと思い、弾幕ごっこが始まる。
だが、本気で勝負しようと思った霊夢とは対照に、輝夜からはやる気を感じられなかった。
なぜなら、輝夜は霊夢が実際に本気を出していないことを、邪悪の力を出し惜しみしていることを知っていたから。
だから、輝夜は霊夢に自分が異変の黒幕であることを、そして霊夢の奥底に眠る最も深き闇を抉り出した。
霊夢の母を死なせた全ての元凶、霊夢の仇敵が自分であると輝夜が打ち明けるとともに、霊夢はその憎悪のまま邪悪の力に支配される。
だが、邪悪の力を全開にしてなお霊夢は輝夜に届かず、返り討ちにされてしまう。
やがて霊夢の死と同時に、この世界は終わりを迎えた。
別の平行世界、輝夜は以前の世界とは一つだけ分岐点を変えていた。
霊夢とのスペルカードルールを本気ではなく、ただ気楽に遊びで続けようと提案した、ただそれだけの違い。
それでも、この世界は平和に弾幕ごっこをしながら終焉へと向かっていく。
ゆっくりと無意味な世界は続き、やがて霊夢が餓死するとともに世界は終わりを迎えた。
そんな、何も報われない世界をどれだけ繰り返しただろうか。
数千万回、数億回――無数の歴史を渡り歩き続けた輝夜の精神は、既に限界を迎えていた。
自分が何者かも忘れかけ、やがて輝夜を見つけて話しかけた霊夢にさえ、何も感じることはない。
そして霊夢の、自分へ同情するかのような目に気付き、自然と出てきたのは――もう、全部終わらせてと、そんな言葉だった。
輝夜はもう、自分がどうしてそんなことを言ったのかさえもわからない。
ただ、気を紛らわすためにだけに、霊夢と弾幕ごっこを始めようとする。
だが、輝夜のその言葉から、霊夢は何かを感じ取っていた。
それがただの冗談ではない、輝夜の本音が漏れてしまったものだと気付いた霊夢は、邪悪の力でもって輝夜を消そうとした。
終わらせてという言葉が、こんな孤独な世界で生きたくないという輝夜の願いなのだと、そう思ったから。
だから霊夢は一切の遠慮なしに、邪悪の力を混ぜた弾幕でもって、輝夜との勝負へと向かっていった。
そして、輝夜もまたそれを受け入れた。
ここが終点でいい。もう何も考えられない今なら、全てを終わらせることができる。
そう思った輝夜は、最後くらい弾幕ごっこを楽しもうと本気で霊夢とぶつかっていく。
霊夢の全力の弾幕を軽々と攻略し、本気の霊夢ですら攻略困難な最高難度の弾幕を放っていく。
だが、一見勝負を楽しんでいるように見える輝夜に、霊夢は違和感を覚えていた。
『空を飛ぶ程度の能力』によって世界と感覚共有している霊夢には、その心の声が聞こえてしまっていた。
――誰か、助けてよ。
輝夜が一体何に苦しんでいるのかは霊夢にはわからない。
それでも霊夢は、言わずにはいられなかった。
目の前で苦しんでいる子を、泣いている子を放っておくことはできなかったから。
だから、霊夢は聞いてしまった。
一体何を一人で抱え込んでいるのかと、思うままに聞いたその言葉は……それでも、輝夜の記憶の彼方にある何かの記憶と重なった。
同時に、輝夜の記憶は混濁していく。
忘れていた何かが、忘れようとしてきた何かが、止めどなく溢れてくる。
だから、全てを思い出す前に終わりにしたかった。
弾幕ごっこなんてもういい、霊夢の力で自分の命を終わりにしてほしかった。
だからこそ輝夜は、自分こそが霊夢の母を死なせた元凶なのだと打ち明けた。
霊夢の憎悪を買って、すぐにでも殺してほしかったから。
そして、霊夢はそのまま憎しみに支配され、輝夜に邪悪の力の全てを向けて――――しかし、何も起こらなかった。
紫が、母が、こんな憎しみに囚われた最期など望まないことを、霊夢はギリギリで気付くことができたから。
そして、輝夜自身も思い出してしまっていたから。
この世界で、生きたい。忘れられるはずのない記憶と共に、その気持ちが蘇ってしまったから。
輝夜は溢れてくる記憶から気持ちを外そうと、再び弾幕ごっこに集中するが、次第に記憶は再び溢れてくる。
どれだけ忘れようとしても、どれだけ拒んでも、その記憶は止めどなく輝夜の中を満たしていくから――
だから、輝夜は目の前の一切を終わりにしようと思った。
さっきまでのような財宝の力で抑制された半端な力ではない。
輝夜の本当の全力、世界さえも滅ぼせる力でもって霊夢を迎え撃とうとした。
霊夢には、目の前に広がる輝夜の弾幕が、止められるものではないとわかっていた。
だからこそ霊夢は、変則的なスペルカードルールを提案する。
萃香との勝負の時に初めて使った、緊急手段。
お互いにスペル宣言をして強さを比べ合う勝負でもって、輝夜の全てを受け止めようとした。
霊夢が使った『夢想転生』。それは、世界と自らの存在を完全に一体化することであらゆる攻撃をすり抜ける無敵の力だった。
輝夜はそれすらも世界ごと破壊することで破ってしまうが、切り札を攻略されてなお霊夢は諦めなかった。
輝夜の心の奥底に眠る何かを呼び覚まそうと、必死に弾幕を魅せ続ける。
自分の力だけでは足りない、幻想郷にいる皆の弾幕を借りて、輝夜の心に訴えかけていく。
それでも輝夜には届かなかった。
だが、輝夜を助けることができなかったと諦めの思考に至る寸前で、霊夢は気づいた。
輝夜の弾幕から抜け落ちていた、一つの形の記憶。
輝夜の弾幕から否定されようとしていた、その形は……ルーミアのスペル、月符『ムーンライトレイ』と酷似していた。
そうして霊夢は、微かに見つけた輝夜の記憶の糸を辿っていく。
500年以上前、輝夜は一人の妖怪と出会っていた。
名をルーミア。空亡妖怪という、あらゆる妖怪を超越した闇の権化は、それでも輝夜にあっさりと蹂躙されてしまう。
別に興味を抱くほどの相手でもない、そう思い別れたルーミアとは、輝夜はそれでも後に再会することとなる。
ルーミアはその後、幻想郷に巣食った一つの強大な闇を発見し、それを自らが抑え込もうとしていた。
だが、それはルーミアの手にさえ負えるものではなかった。
その闇を飲み込もうとしたルーミアは、自分の裏側に存在していた悪の人格に精神を乗っ取られてしまったのだ。
ルーミアはそのまま幻想郷の妖怪の群れとその頭であった藍をゴミのように蹴散らし、幻想郷に崩壊の危機をもたらしていく。
それを止めたのは映姫と紫、そして紫によって命を救われた藍だった。
ルーミアを止めることには成功した3人だったが、ルーミアに巣食っていた闇の力は、紫や映姫の力をもってしても消滅させられるようなものではなかった。
だから、3人はルーミアに巣食っていた要素を4分割し、それぞれ別の場所に秘密裏に封印することとしたのだ。
存在の要素は再びルーミアへ、能力の要素は地獄の底へ、力の要素は博麗大結界へ、そして闇の要素は映姫が極秘裏に封印した。
そうして力を封じられ、500年近くも低級妖怪として生き続けたルーミアは、偶然にも再び輝夜と出会った。
少し前に宿命の相手を失って虚無感に囚われていた輝夜にとって、力を失ってしまった今のルーミアは格好の玩具だった。
だから、ルーミアが死ぬまでのわずかな間、その行く末を観察しようと。
最初はただ、それだけのつもりだった。
だが、輝夜の記憶を辿っていく中で霊夢は気付く。
ルーミアと過ごしているその時間に、輝夜が何かかけがえのないものを感じていたことを。
だからこそ霊夢は、その記憶を手探りで探し当てる。
自分がかつて、初めての異変でルーミアと勝負した時に感じた、あの感覚。
霊夢はあの貧弱な弾幕が秘めていたメッセージを再現して、輝夜へと届けた。
すると、輝夜の心は何かに掻き乱されるように乱れていく。
やがて輝夜の心の奥へと手が届いたかに思えた瞬間――突如として、辺りは冷たい記憶に支配された。
それは輝夜が幻想郷の住人を皆殺しにして、世界を滅ぼした記憶。
誰も救われることのない世界の繰り返し、そして輝夜に向けられる負の感情の嵐。
輝夜はそれを受け入れていた。
いや、むしろ求めていたのだ。
自分の中にある楽しい記憶や優しい記憶を、絶望と憎悪に満ちた負の記憶で掻き消すために。
だから、輝夜は霊夢に偽り続ける。
自分はこの異変の全ての元凶なのだと、憎むべき敵なのだと。
そして輝夜は全てを終わらそうと、遂に禁じられた最後の手段を使ってしまう。
それは輝夜の能力によって光速にまで加速した物体同士の衝突がもたらした、超密度物質ブラックホール。
その力を前に、流石の霊夢すらもただ飲み込まれていくことしかできなかった。
だが、それでも霊夢は諦めなかった。
ルーミアの残したメッセージ、絶対に輝夜を一人にはさせないという弾幕の形。
その強き想いは、輝夜の奥底に眠る別の平行世界の記憶をも誘発した。
輝夜にとってかけがえのない大切なもの。
それは、本当はこの幻想郷に生きる皆だった。
本当はただ、輝夜はそんな大切なものたちと過ごした眩しい記憶の数々を忘れ去りたいだけだった。
幾多の世界で皆を救えないかったことに、そして幾度となく見捨ててしまったことに、これ以上耐えきれなかったから。
だからこそ輝夜は、憎しみで全てを塗り潰そうとしてきた。
だが、そんな大切な記憶を忘れられるはずがなかった。
やがて輝夜の中から溢れ出した、ただ皆を守りたかったという想いは、全ての闇を切り裂いて戦いの終焉をもたらした。
そして、輝夜は霊夢に打ち明ける。
自分が今まで『永遠と須臾を操る能力』を使って幾多の平行世界を渡り歩き、幻想郷の皆と生きるかけがえのない時間を守ろうと戦ってきたことを。
最初はただ、ゲーム感覚の気まぐれだった。
それでも、新たな世界に渡るたびに大切なものは増え続けて。
だけど、全てを救うことなんてできない。
大切な人たちを救えないたびに、見捨ててしまうたびに、輝夜は心が張り裂けそうになっていく。
それでも輝夜は、いつか全てを救える世界が見つかると信じて数十億の世界を渡り歩いてきたのだ。
霊夢は最後まで、そんな輝夜の傷をどうしてあげることもできなかった。
きっと輝夜はまた繰り返し、地獄の中に身を投じていく。
再び今の世界を諦めて、輝夜は次の世界に進もうとする。
だが輝夜が今の世界を終わらせようと思ったその時、聞こえるはずのない人間の声が聞こえてきた。
〇番外編
<アリス編>(外伝ノ参)
かつて、幻想郷と魔界の戦争があった。
正確には戦争ではない、たった一人の幻想郷の妖怪、風見幽香と、魔界全土の戦いである。
だが、その戦争を掌の上で転がしていたのは、一人の小さな妖怪、まだ幼きアリスだった。
魔界人たちを次々と薙ぎ倒し、遂に魔界の奥地にまで迫った幽香に、アリスはここで退くよう提案した。
幽香はその提案を受け入れず、アリスと戦うこととなった。
既に数百の魔物との戦いを経て消耗していたこともあり、幽香はアリスの「七色の魔法」に敗れてしまう。
だが、決着の寸前で、本物の魔神である神綺によってアリスが退避させられてしまっていた。
神綺は、アリスによる地上侵略の目的が、『虹』色の魔法の完成のためであることを示唆する。
虹の魔法はあらゆる願いを叶える力、全世界の願いが集まって初めて現実と化す力であった。
アリスはそんな新たな理論を追い求めるすることだけを愉悦とする研究者であり、きっとそれを諦めるつもりはない。
だが、幽香もまた、これ以上魔物が地上に出てくるのを許容する訳にはいかない。
そこで神綺が考えた代替案は、魔物の代わりに幽香がアリスの友達として地上に出ればいいというものであった。
友達、という訳ではないが、その戦争は、幽香がアリスを連れて地上に戻ることによって穏便に終息することとなった。
その後、アリスが地上に出てから数十年が経ち、既に『虹』色の魔法の困難性、全世界70億人超の願いを集めることが不可能であることを悟り始めていた。
今回の異変で、輝夜に出会うまでは。
輝夜は既に億を超える平行世界を渡り歩き、その心にはその分だけの願いが宿っていたのだから。
だが、アリスが本当に注目していたのは、既に心が壊れかけていた輝夜ではない。
輝夜の心の奥に潜む、もう一人の誰かの魂が抱いた願い。
輝夜と同じく無数の平行世界を渡り歩いてきた、とある人間の願い。
七十億回以上繰り返された平行世界の願いは集束し、やがて全世界の人々の数まで届いた願いの力は、遂に『虹』色の魔法を成した。
<ルーミア編>(外伝ノ肆)
輝夜は、不死者の生命に価値を感じていなかった。
不死者は終わりがない故に誰かと深く交わることができない、月社会にいた頃からそれを思い知らされていた。
だからこそ自分の人生を、そして自分と同じ蓬莱人の人生を、すぐにでも終わらせるべきものとして認識していた。
だが、ルーミアは輝夜のそんな認識を受け入れなかった。
自分を救ってくれた友人に、そんな思いなどしてほしくなかったから。
だからこそ、この世界に生きる楽しさを輝夜に知って欲しくて、ルーミアもまた孤独を求めた。
誰と一生を遂げることができなくても、また次の出会いを探せると。
そして、たとえ自分がいなくなっても、きっと輝夜の隣にいてくれる友はいるのだと、そう伝えたかったから。
だが、それはかつてのルーミアの願い。
裏人格に乗っ取られた今のルーミアには関係のない願い。
今のルーミアは何もできない無力な妖怪ではない。幻想郷最強の鬼、勇儀を相手にしてなお蹂躙できる別次元の存在なのだから。
それでも、ルーミアの意志とは関係なく押し寄せた闇に勇儀が飲み込まれると同時に、ルーミアは気付いてしまった。
自分の全ては結局、無意味なものであると。
自分がただ、定められた計画のためだけに生まれた存在なのだと気付くとともに、闇の中に消えていった。