ゼロサーガ(ゼロの使い魔×ゼノサーガ)   作:宇宙間管理職

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第03話

「──私の重量から判断するに、馬を用いた移動は推奨できません」

 

[第03話:盗賊]

 

あの決闘以来、私ルイズことルイズ・フランボワーズの周囲は少し変わった。最近は自室と図書館を行ったり来たりで気づかなかったがあまり「ゼロのルイズ」と揶揄されなくなった。相変わらずキュルケはしつこく絡んでくるが。

そしてコスモス。彼女はその美貌と決闘のときに見せた力から一部の女生徒の憧れの的になっているらしい。小耳に挟んだ話だがどうやら非公式ファンクラブがあるとかないとか。それをよく思わないとりわけ上級生からは『邪神』などと呼ばれている。そんなことはどこ吹く風とコスモスは今日も厨房で皿洗いに勤しんでいる。

「コスモス!今日は虚無の曜日よ!街へ行くわ!」

結局『虚無の系統』についてはわからなかった。

というより情報がなかった。

わかるのはいずれも始祖ブリミルが使っただとか御伽噺レベルのことのみ。

教職員用の図書室や王室の書庫を調べればもう少し詳しくわかるかもしれないが今のところ八方塞がりだ。

「いってらっしゃいませ」

「違うわよ。あなたも一緒に行くの」

「折角美人なのにメイド服しか持ってないなんてもったいないわ。ヴァリエール家に仕える者としてもっとキチンとした格好をしないと」

「ついでに何か武器も買いましょう!前の決闘、あなたなんか不便そうだったし」

そう言いながらルイズはテキパキと身支度をする。

 

そして話は冒頭に戻る。

 

「え?コスモスってそんなに重いの?」

「私の重量は92㎏です」

「き、きゅうじゅうに!?」

ルイズは失念していた。すっかり人間と同じように扱っていたがコスモスはガーゴイル。当然、その身体は金属で出来ていた。

これでは街に着く前に馬が潰れる。どうしたものかと立ち往生してると空から「きゅいきゅい」という鳴き声が聞こえる。すると一匹の青い風竜が二人の前に降り立つ。

「この竜って確かタバサとかいう娘の使い魔よね……?」

タバサというのはあの忌々しきツェルプストーの隣でよく本を読んでいる女生徒だ。召喚の儀で風竜を喚んだとあってよく目立っていた。その使い魔である風竜が今目の前にいる。これは一体。

「もしかして……。私たちを街まで乗せてくれるの?」恐る恐る尋ねると「きゅい!きゅい!」と風竜がこちらに背を向けてきた。

「ここに乗れ……ってことね。やったわコスモス!足ができたわ!」

「じゃあ街までお願いできる?」

風竜はもう一度「きゅい!」と鳴くと二人を乗せて大空へ飛び立った。

 

キュルケはその日、窓の外を見ながら朝日を浴びてまどろんでいた。昨晩は部屋に男を呼んでベッドの上でエクササイズをして少々疲れていた。流石に五人連続はきつかったかと、たまにはのんびりするのも悪くないかな、と思っていると正門の近くによく知る姿を見つけた。なるほど、あの二人は今日は街へ行くのか。でもどこか様子がおかしい。何かトラブルだろうか。

しばらく眺めていると彼女等の前に一匹の風竜が降り立った。そして彼女等は風竜に乗ると飛び去っていった。キュルケは親友の部屋へと駆け出した。

 

タバサにとって虚無の曜日は至福の時間。1日を誰にも邪魔されず読書に費やせる。タバサは先月まとめ買いした『ノア計画~軋んだ破片~』と格闘していた。オーク鬼の肉を馬肉と偽る農家を直撃するところは思わず吐き気を催したがそれもこの作品の魅力の一つだろう。部屋を施錠、『サイレント』の呪文で防音も完璧。ドアを外から叩かれてる気がするが多分気のせい。校則違反の『アンロック』で鍵が開かれた気がするがそれも気のせい。こんな自分と友だちになってくれた赤毛の女生徒がさっきから肩を揺さぶってくるが気のせいってことにしたい。

タバサはしぶしぶ『サイレント』を解く。

「…………何?」

「ちょっと窓の外を見なさいよ!いいの?あれ!」

タバサは外を見る。外には使い魔であり風竜ってことにしているが実はちゃっかり韻竜だったりするシルフィードがコスモスとル、ルイ……ルイージとかいう女生徒を乗せて空の向こうへと飛んでいた。しばらく無言だったがキュルケに言う。

「…………いい」

「そ、そう。あなたがいいって言うならそれでいいわ」

「ごめんなさいね。読書の邪魔をしちゃって」

そう言って彼女は部屋を出て行った。

「シルフィード………」再び訪れた静寂の中でタバサは呟く。本の内容は頭に入って来なかった。

 

風竜のお陰でルイズ達は予定より早く街についた。帰りも送ってくれるかと風竜に聞いてみたら「きゅい!」と元気よく鳴いて飛んでった。恐らく目立つのを避けるためだろう。学院に戻ったらタバサとかいう娘に感謝しなくては。

とりあえず呉服屋に向かって適当な服を見繕う。ついでにコスモスの採寸も調べてもらい彼女の服を作ってもらうことにした。主人は「こんな美人の服を仕立てられるなんて腕が鳴る」と息巻いていた。ご主人様冥利に尽きる。相変わらずコスモスはされるがままだった。

よし!と一息ついてからコスモスに話しかける。

「次はあなたの武器を買いに武器屋に行きましょう!」

「はい。ルイズお嬢様」

「確か薬屋の角を右に曲がって……。あ、あれだわ」ルイズの指差す先には剣と盾の看板の店があった。

 

店に入ると亭主が手を揉みながらこちらに話かける。

「へぃ、貴族様。うちは真っ当な商売をしておりまして……」

「客よ」ルイズがそう言うと途端に亭主は営業スマイルに変わった。

「こいつは驚きだ。貴族様が自ら剣をお取りになると」

「使うのは私の従者よ」

亭主はKOS-MOSに目を向ける。なるほど、と言った風に頷く。

「こいつはなかなかの別嬪……、じゃなくて最近流行ってますからね」

どういうこと?と尋ねるルイズに亭主は奥の倉庫を物色しながら説明する。

「いえね、最近巷でフーケとか言う盗賊が貴族の屋敷に忍び込んで悪さを働いているそうで」

亭主の話を纏めるとこうだ。

土くれのフーケと名乗る盗賊が貴族の屋敷に侵入。秘蔵のマジックアイテムを盗んでいくらしい。その手段は巨大ゴーレムを用いての大胆な犯行。盗まれた後には土しか残っておらずそこから名付けられたらしい。

近隣の貴族は震え上がり従者にも武器を持たせているとのこと。

そう話ながら亭主は剣を携え二人の下へ戻ってきた。

「こいつなんてどうです?」

差し出されたのはレイピアだ。

「こいつはかの有名なゲルマニアのシュペー卿がこしらえたものでして。見てくださいこの柄の部分の趣向、そちらの従者様の美貌に勝るとも劣らない一品です」如何です?と目で訴える。

「どう?コスモス」

「はい。刀身の強度に難あり。儀礼用なら問題ありませんが数回の使用で破損。実用性は皆無でしょう」

KOS-MOSはバッサリと斬って捨てた。

唖然としてる亭主に店の奥から声が投げかけられる。

「へっ、ぼったくろうとするから痛い目見るんだよ」

「うるせぇデル公!今大事なお客様の相手をしてんだ!黙ってろ!」

「どこ?どこにいるの?」ルイズがキョロキョロと辺りを見回す。

「おぅ!嬢ちゃん。こっちだよこっち」

しかし声のする方向に誰もいない。

「オレだよ!オレ!」すると壁にかけられている錆びれた剣がガチャガチャと音を鳴らす。

剣が喋っていた。

「インテリジェンスソード?」と亭主に聞く。

「へぇ。誰が作ったのか知りませんが見ての通り錆びた剣。全然売れんわ商売の邪魔をするわで……」

面白そうね、と言ってルイズはKOS-MOSに尋ねる。

「はい。材質、強度ともに規定値を満たしております」

KOS-MOSの言葉にデルフリンガーが反応した。

「こいつはおでれーた。『使い手』……、いや違う。おめぇは『器』か?」

「おい嬢ちゃん!オレを買え!きっと役に立つ」

「まぁいいわ。元々買うつもりだったし。それでいくらなの?」

「へぇ、新金貨ひゃ「新金貨十でいい!」

とデルフリンガーが口を挟む。

「なんでぇデル公こちと「うるせぇ厄介払いが出来るんだ!文句言うな!」

ルイズとKOS-MOSは新金貨十枚を置いて出て行った。

 

それにしてもインテリジェンスソードなんて珍しいわね、と道を歩くルイズはKOS-MOSのもつデルフリンガーを見て言う。

「なんでぇ、嬢ちゃんの方が珍しいもの持っているじゃねぇか」

「オレがインテリジェンスソードだとしたらこっちの姉ちゃんはさしずめインテリジェンスガーゴイルってとこか」

「発言の意図が不明」

「そうか。姉ちゃんはまだ『覚醒めて』いないのか?」

「発言の意図が不明。対象デルフリンガーを格納します」

ルイズが聞き返す前にデルフリンガーが虚空へ消える。

「ちょ、おま。姉ちゃんちょっと待っ────」

「あ、ああああんた何したのよ!?」

ルイズが驚き声を上げる。

「対象デルフリンガーを転送します」

すると虚空から一太刀の剣が出現、KOS-MOSの右手に握られた。それはこのハルケギニアでは目にしない片刃の剣だった。

「こいつはおでれーた、今まで6千年は生きていたがこんな経験は初めて……ってえぇえ!?なんかオレの姿変わってね!?」デルフリンガーにとっても驚きだったらしい。

「ジン・ウヅキの使用兵器に酷似」

「あなたってこんなことも出来たのね……」とルイズは呆れていた。それより、と一呼吸置き、

「ねぇデルフリンガー。あなた今6千年って言ったけどもしかして始祖ブリミルとなんか関係あるの?」

「ブリミル?あー、ブリミルかぁ。何となく憶えてるけど全然思い出せねぇ」なにせ6千年生きてるからなぁ、と笑うデルフリンガー。

剣のクセに忘れるとかどういうことよ、とルイズはプルプル震えていた。

『対象デルフリンガーの記憶領域を解析』

『エラー』

『ERROR』

『error』

『非常に強固な障壁を確認』

『解析を保留』

 

帰りもどこかで待機していた風竜に乗って学院へ戻る。学院の正門には二つの影があった。

風竜から降りて片方にルイズは尋ねる。

「なによツェルプストー。私になんか用?」

「用があるのは私じゃないの」

首を傾げるルイズにキュルケは続ける。

「こっちのタバサがあなたに用があるって」

そう言って一歩下がる。

ルイズもこの風竜がタバサの使い魔であることを思い出した。

「そういえばタバサ……って言ったわよね。あなたの風竜のお陰で今日は助かったわ。ありがとう」

「そんなことは……いい」

なにか思っていた反応と違う。

「あなたに決闘を申し込む。ルイージ」そう言ってタバサはルイズに杖を向ける。

「は?」ルイズはルイージと呼ばれたことにも気付かず聞き返す。キュルケを見る。キュルケも驚いていた。

 

二つの満月が夜の校舎を照らす中フードを目深に被り校舎の壁を手で叩く者がいた。

「なにが物理攻撃なら壊せるかもしれません、だよ。

こんなものどうしろってんだ」と息をつく。そこは学院の宝物庫の外側。伝説のマジックアイテム『破壊の杖』が保管されていると耳にしたフーケは学院長の秘書「ミス・ロングビル」として潜入。日々学院長のセクハラに耐えながら情報を収集していたのだ。

「物理的強度の高い壁にスクエアクラスのメイジがよってたかって『固定化』。賞賛に値するわ」

と呟いたところで足音に気が付いた。学生だろうか?フーケは草影に身を潜める。

 

じゃあルールはこれで良いわね。キュルケが音頭をとる。お互いに背中合わせで歩き出す。10数えたあと振り向きざまに一発お見舞いするということに決まった。あのあとルイズはキュルケにどうしてこうなったのか尋ねた。「なんかあの子、メイジとしての格が疑われるだとかなんとかって言ってたわ。付き合ってあげて」と頭を下げられた。

不本意だが貴族として全力を出さねばならない。

ルイズとタバサは歩き出す。

1、2、3

(というか私は何を詠唱すればいいんだろう)

4、5、6

(考えてみれば何を言ったって失敗魔法になるんだからどうせなら短いのが良いわね)

7、8、9

(そうだわ。アレにしましょう。短いし)

10

ルイズは振り向き杖を前に向け唱える。

「『ロック』!!」

 

タバサの背後の壁が爆発した。

 

決闘が始まる頃にはタバサはいつもの落ち着きを取り戻していた。少し大人気なかったと思う。しかしシルフィードが自分を見限ってしまったのかと不安になったのも事実。柄にもなく熱くなってしまった。

しかし決闘は決闘、本気でやらなければ相手にも失礼。これでもそこそこ修羅場を潜ってきた。高速詠唱には自信がある。せめて一撃で葬ってやろう。10数えて得意の『ウィンディ・アイシクル』を唱える途中でルイズの声が聞こえた。『ロック』?なぜ今その呪文を?一瞬虚をつかれたと思ったら背後から爆音が聞こえた。恐る恐る後ろを振り向く。学院の壁の一部が崩壊していた。

 

草影に潜んでいたフーケは歓喜した。宝物庫の壁の一部が破壊されるのを。どうして壊れたとかそんなことはどうでもいい。このチャンスを逃す手はない。フーケは駆け出し詠唱する。足下からの僅かな浮遊感。そこには巨大なゴーレムが出現した。

 

ルイズは混乱した。あの失敗魔法がタバサに直撃しなかったことは良かったが代わりに学院を破壊してしまった。バレたらなんて釈明すれば……。と考えていた矢先に巨大なゴーレムが壁の前に出現。壁を壊そうとその拳を叩きつけている。ルイズは武器屋の亭主の話を思い出した。もしやアレが土くれのフーケなのではないかと。ルイズは杖を構えながらゴーレムに向けて走り出す。

 

KOS-MOSはデータ収集を続けていた。タバサの魔法のデータは得られなかったがルイズの失敗魔法の発動条件、射程、威力などを分析していた。そこにフーケのゴーレムが姿を現す。KOS-MOSは観察を続ける。

『対象を敵性と認定、解析』

『全長:10m、材質:土砂』

『脅威度判定D+』

『敵性は召喚者ルイズが破壊した建造物に対して攻撃』

『敵性の術者を確認』

『分析』

『女性、20代』

『骨格より該当人物の割り出し』

『該当人物あり』

『登録名:トリステイン魔法学院秘書ロングビル』

『敵性の行動を静観』

『訂正』

『保護対象が敵性に接近』

『対象の精神は不安定』

『対象の保護を要請』

『任務確認』

『他者への存在の秘匿』

『懸念要因2』

『対象の保護を優先』

『行動開始』

KOS-MOSは今まさにゴーレムの拳に潰されそうなルイズに向けて走り出す。「R・CANNON」口にしたと同時にゴーレムの拳を吹き飛ばす。滑り込むようにルイズを抱え距離をとる。ゴーレムの拳は再生していた。

 

キュルケは見た。ルイズが壁を破壊したのを。ゴーレムが現れたのを。ルイズが近寄りあの失敗魔法で果敢にゴーレムを打ち倒そうとするのを。しかしゴーレムの再生能力の前には無力だったことを。そしてキュルケは見た。隣にいたはずのコスモスがなにかを唱えてゴーレムの腕を吹き飛ばすのを。

 

ルイズは死を意識した。壁の破壊の汚名を晴らそうとゴーレムに立ち向かった。しかしすぐに相性が悪いのを悟った。どんなに破壊してもすぐにゴーレムは再生する。恐らく壁を完全に破壊したのだろう。こちらに振り向きゴーレムが拳を振り上げる。もうダメかと目を瞑った。その瞬間目の前で爆発音が聞こえる。目を開くと自分は誰かの腕の中にいた。「大丈夫ですか?ルイズお嬢様」ガーゴイルのクセにその瞳は慈悲に

充ちていた。

 

恐らくお目当てのものは手に入れたのであろう。フーケは『フライ』を唱えて森の中へ消えていく。

先ほどの爆音で目を覚ました衛兵や教師が近づいてくる。そこには土くれしか残ってなかった。

 

翌朝。魔法学院では、朝から蜂の巣をつついたような騒ぎが続いていた。

巨大なゴーレムで壁を破壊する、などという派手な方法で「破壊の杖」が盗まれたのだ。当然である。

破壊された宝物庫の周りには学院中の教師が集まりざわめいていた。

壁には、土くれのフーケの犯行声明が描かれている。

「破壊の杖、確かに領収いたしました。土くれのフーケ。」

教師達は好き勝手に責任を擦り合っているようだ。

「土くれのフーケ!ついに我が学院にも現れたか!」

「衛兵は一体何をしていたんだね!」

「平民など当てにならん!それより当直の貴族はどうしていたんだね」

「当直など、誰も真面目にやってなかったではないか!」

 

「さて」

教師達が集まりきるのを待っていたのか、オスマンが姿をあらわす。

「犯行の現場を見ていたというのは、君達かね?」

「は、はい!」

ルイズ、キュルケ、タバサ。そしてKOS-MOS。

「ふむ、君達か」

オスマンは興味深そうにKOS-MOSを見つめた。

「詳しく説明したまえ」

ルイズが進み出て、見たままを述べる。

「あの、大きなゴーレムが、ここの壁を壊して……たぶん「破壊の杖」を、盗み出したんです。」

「それで…肩に乗ってたメイジはゴーレムを飛び越えて、そのまま森の奥に……」

「ゴーレムは、皆さんの見た通りです……」

「ふむ。後を追おうにも、手がかりはなしか……」

このとき3人は昨日は夜の散歩をしていた、ということで口裏を合わせていた。

 

「ときに、ミス・ロングビルはどうしたね?」

オスマンが近くの教師に尋ねる。

「それがその……朝から姿が見えませんで……」

「この非常時に、どこに言ったんじゃ?」

「どこなんでしょう」

そんな風に噂をしていると、ミス・ロングビルが現れた。

「申し訳ありません、朝から、急いで調査をしておりまして」

「調査?」

「ええ。土くれのフーケの情報を」

「仕事が速いの。で、結果は?」

「はい、フーケの居場所がわかりました」

「誰に聞いたんじゃね?ミス・ロングビル」

「はい。近所の農民からの情報です。森の廃屋に、黒いローブの男が入って行くところを見たと」

ルイズが叫ぶ。

「黒いローブ?フーケです!間違いありません!」

オスマンは目を鋭くして、ミス・ロングビルに尋ねた。

「そこは近いのかね?」

「はい。徒歩で半日、馬で4時間といったところでしょうか」

「ふむ……」

コルベールが口を開く。

「オールド・オスマン!ここは急ぎ王宮に連絡を」

「それではフーケに逃げられてしまうぞ!」と一喝。

「よし、捜索隊を編成する。我と思うものは、杖を掲げよ」

周囲が、静まり返る。

 

「おらんのか?」

教師達は静まり返り、誰一人としてオスマンに向き合おうとすらしない。

ルイズはうつむいていたが、すっと杖を顔の前に掲げた。

「ミス・ヴァリエール。君は生徒じゃないか」

「誰も掲げないじゃないですか」

ルイズはまっすぐな目で、オスマンを見返す。

ルイズが杖を掲げているのを見て、キュルケも杖を上げた。

「ふふ、ヴァリエールには負けられませんわ」

それを見て、タバサも杖を掲げた。

「タバサ。あんたはいいのよ?」

そう言ったキュルケに、タバサは

「心配」

とだけ告げ、ちらりとルイズを見る。

キュルケは嬉しそうに、タバサを見つめた。

ルイズも感動した面持ちで、タバサにお礼を言った。

「ありがとう……タバサ……」

「ルイージとの決着はまだ終わっていない」

「い、いい加減私の名前ぐらい覚えなさいよ」

先ほどの感動はどっかにいった。

 

「そうか・・・・・・では3人に頼むとしよう」

オスマンは教師達の情けなさに落胆しつつも、その三人を見て決断する。

「二人はフーケの目撃者の上、ミス・タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士でもある」

全員が驚きの表情を浮かべる。年端もいかない外見の少女が、実力の証明である称号を与えられていることに。

タバサは我関せずといった感じでただその場に直立不動し、キュルケすらも驚愕していた。

「本当なの?タバサ」

タバサは無表情のまま頷き肯定し、オスマンは続けた。

「さらにミス・ツェルプストーはゲルマニアの優秀な軍人の家系で、彼女自身の炎の魔法もかなり強力であると聞いている」

キュルケは得意気な表情を浮かべ、胸を張り髪をかきあげた。

「そしてミス・ヴァリエールは……優秀なメイジを輩出した、かのヴァリエール公爵家の息女で……その……」

オスマンは口ごもる、必死に良いところを探そうとするものの見つからない。

視線を泳がせていると、KOS-MOSの姿が目に映った。先ほどから微動だにしない一人のメイドを。

KOS-MOSを見てオスマンは閃く。

「そう!彼女の使い魔はグラモン元帥の息子、ギーシュ・ド・グラモンを決闘において華麗な勝利を収めた武術の達人じゃ」

前ほど悲しくはないがルイズは自分の価値はそこにしかないのかとなんとも言えない気持ちになった。

オスマンはそこまで言って場を纏める。

「では、よろしく頼むぞ。ミス・ロングビル、案内役くを」

「はい」

そう命じられたミス・ロングビルの顔には、場違いなほど妖艶な笑みが浮かんでいた。

 

馬で四時間、馬車ならもっとかかるだろうと思っていたが実際には6時間近くかかった。馬車乗っていたのはロングビルを除く4人だったがなにか重い荷物が積まれていたのだろうか。

森の中の空き地に、廃屋があった。

元は木こり小屋だったのだろうか、朽ち果てた炭焼き用の窯と物置が並んで建っている。

「わたくしの聞いた情報では、あの中にいるという話です」

ミス・ロングビルが廃屋を指差して言った。

 

「わかったわ。ミス・ロングビルはこのまま馬車の前で待機して馬車を守っていてちょうだい」

「わかりました」とこちらに一礼する。

 

廃屋に近づきルイズはKOS-MOSに声をかける。

「コスモス。中の状態分かる?」

「解析します」

 

昨日、ルイズはKOS-MOSのことを二人に説明した。

非常に高度な技術によって作られたガーゴイルであると。KOS-MOSが肩を取り外したところで二人とも信じた。キュルケは「確かに平民だとは思っていなかったけどまさかガーゴイルだなんてね」と。タバサは何も言わずKOS-MOSを見つめていた。

 

「内部に生体反応なし」

「中央に『破壊の杖』と予想される物体を感知」

「そう。ご苦労様」

「とりあえずどうする?さっさと『破壊の杖』を回収する?」

ルイズの提案にあなたの使い魔滅茶苦茶ね、と呆れつつキュルケは首肯する。

「そうね。でも罠ってこともあるかも」

そこでタバサが口を開く。

「ルイーズは外で見張り。『破壊の杖』は三人で回収する」

ルイズはこめかみをピクピクさせながら同意する。

 

「……あった」

廃屋の中、タバサが呟き、何やらケースのような物をやたら重いのか引き摺っていた。

「それ……『破壊の杖』!?」

「間違いない」

タバサはフーケが持ち去る様子を、遠目で見ていて確信した。

キュルケはまじまじと破壊の杖が入っているケースを見つめる。

「盗品がここにあるということは……とりあえずまだ引き払っていないようね」

キュルケの言葉にタバサは頷き同意した。

 

「ねぇねぇ、ちょっと開けてみましょうよ」

キュルケが嬉々とした表情で言う。

タバサがキュルケを睨む。

「中身がきちんと入ってるか、開けないと確認出来ないじゃない?」

キュルケの言い分にも一理ある。

タバサも中身は気になっていた。

タバサが魔法でケースそのものに罠がないかを確かめるとキュルケがケースを開けた。

 

「……これが破壊の杖?なにこれ?つまんないわね~」

キュルケは好奇心が削がれたつまんなそうな声で言う。タバサは首を傾げつつも黙って見つめていた。

KOS-MOSは分析を続ける。

そのときセンサーが警告音を鳴らす。

同時にルイズの叫び声も聞こえた。

それから間髪入れずに、廃屋の屋根部分が丸ごと吹き飛んだ。

 

誰よりも早く反応したのはタバサであった。杖を掲げ即座に詠唱を完成させる。

『エア・ストーム』、強力な竜巻が巻き起こるトライアングルスペルが、廃屋内を覗き込むゴーレムに直撃する。

キュルケがタバサに続いて『ファイヤーボール』を放つ。

しかしそのどちらもさしたるダメージはなく、ゴーレムは第二撃を打ち込む為に拳を振り上げる。

 

「やばっ!?」

その様子を見て、キュルケとタバサは咄嗟に『フライ』で廃屋から飛び出した。

間一髪二人は逃れたものの、廃屋は粉々に粉砕されていた。

「くっ……」

キュルケはゴーレムとの距離を測りながら、呪うように声を漏らす。

本当はKOS-MOSも連れて退避したかったが、時間がそれを許さなかった。

純粋にあのゴーレムが強い。自分達の魔法が殆ど通じず、時間稼ぎすらも出来なかった。

 

「コスモス!!」

ルイズの悲痛な叫びが木霊する。

キュルケとタバサの姿しか見えない。周囲にもコスモスの姿は見受けられなかった。

となると廃屋と一緒に潰された可能性しか考えられない。

タバサが口笛を吹く。彼方から飛んできた風竜はタバサを乗せ、そのままキュルケとルイズを回収した。

そのままゴーレムの攻撃範囲外まで上昇し、旋回しながら辺りを見渡す。

「降ろして!」

上空から見てもコスモスが見つからず、ルイズは叫ぶ。

「無茶よ!!」

未だゴーレムは廃屋に拳を振り下ろしたまま、上空を見上げている。

今降ろせば十中八九ゴーレムの的になる、キュルケはルイズを止めようとするものの聞く耳を持たなかった。

「まだ生きてるかもしれないでしょ!早く助けないと手遅れになるわ!!」

そう叫ぶとルイズは躊躇いなく飛び降りた。

その無謀な行動を予想していたのか、タバサがすぐさま『レビテーション』の魔法をかける。

やんわりと地面に降り立ち、ルイズが壊された廃屋に向かうために走り出そうとした時だった。

 

舞い上がった土煙が晴れていく中にルイズは奇妙な光景を見た。ゴーレムの拳が片腕で押さえられている。そんなことができるのをルイズはただ一人しか知らない。

「コスモス!!」ルイズが叫ぶ。

「ここは私が食い止めます。お嬢様方はフーケを追ってください」そこにいたのはいつも通りのコスモスだった。

 

ゴーレムは空いている左手でKOS-MOSを殴ろうとする。しかし素早くKOS-MOSはゴーレムの右腕を駆け上がりジャンプ。ルイズ達の近くまで距離を取った。

「フーケを追う、ってどうやってよ!?」キュルケがゴーレム迎撃のために『ファイアーボール』を詠唱しながらKOS-MOSに聞く。

「今からその準備をします」

KOS-MOSは蓄積されたデータから推測されるある可能性を確信に変えるべく行動する。

「行きます」

凛とした声が森に響く。

 

 

 

「ヒルベルトエフェクト」

 

 

 

その瞬間世界が裏返った

 

『ファイアーボール』を唱えていたキュルケは気付いた。自分の杖の先から赤い線がその火の玉に吸い込まれていくのを。それを見てタバサが『ウィンディ・アイシクル』を詠唱すると杖から二本、青と緑の線が空中で集まり氷の槍を作り出した。

そしてルイズはゴーレムの足下から伸びる沢山の黄色い線が森の奥へと続いているのを見る。

「わかったわコスモス。アレを追ってフーケを見つけろって言うのね」

「ここは任せられる?」

「問題ありません」

「じゃあ頼んだわよ」

「お任せください」

それを聞くとルイズは森の奥へ駆け出す。二人を載せた風竜も空から線を追う。

ゴーレムの前にKOS-MOSが立ちはだかる。

「行かせません」

「力比べです」

第2ラウンドが始まる。

 

KOS-MOSは分析する。

『ゴーレムの破壊は容易』

「R・CANNON」

迫る右拳を破壊する。

『光学兵器の使用による周辺環境への被害を危惧』

「F・GSHOT」

両腕に転送した2つの三連ガトリング砲がゴーレムの表面を抉る。

ゴーレムはそれに応えるように再生を続ける。

「F・SCYTHE」

飛び上がりながら巨大な鎌を転送。そのままゴーレムの左腕を根本から刈り取る。

『召喚者ルイズが対象に接敵』

「R・BRADE」

右腕から白い刃が伸びる

「デルフリンガー」

左手に握られたのは今日手に入れた剣

「やっとオレの出番か。待ちくたびれたぜ」

「ジン・ウヅキの戦闘パターン、再生」

再生が追いつかないのだろう。

ゴーレムは壊れ掛けの身体でなんとか背後のKOS-MOSへ振り向く。

「連舞迅雷刀八本」

雷を伴う2本の剣によってゴーレムは跡形もなく切り刻まれた。

「お眠りなさい。甘美な優しさの中で……」

それは崩れるゴーレムに向けた言葉なのか。

『戦闘行動を終了』

武装を解除しながら走り出す。

『対象の捜索を開始』

 

フーケは感じる。おかしい。ギーシュとかいうドラ息子を倒した平民がいるとはいえ残りはガキのメイジが三人。それなのにゴーレムは再生し続ける。ここでゴーレムを自壊させ逃亡するのも考えたが『破壊の杖』を諦めるのは惜しい。

「くそっ。何だってんだい」

ゴーレムの再生が追い付かなくなってきた。どれだけ集中放火を加えているのか。

すると足音が聞こえる。

「あなたが、あなたがフーケだったのね!ミス・ロングビル!」ルイズが立っていた。

「そ、そうさ。あたしが『土くれのフーケ』さ」

フーケは考える。ルイズだけならなんとかなる。

「お友達は置いてきたみたいだけどいいのかい?」

杖を持つ手はびしょびしょだった。

「あら?みんな来てるわよ?」友達っていうのは気に入らないけどね、と言いながら空を見る。

フーケも釣られて上を見ると上空で風竜が旋回している。なぜここまで接近されることに気付かなかったのか。さっきから息苦しい。顔も髪の毛も汗で気持ち悪い。「な、なぜ」なんとか声を振り絞る。

「あら?気付かなかったの?自分の杖をご覧なさいよ」フーケは自分の杖を見る。そこから黄色い線が廃屋の方へと伸びていた。わかったようね、とルイズ。そして黄色い線が途切れる。ゴーレムが倒されたことをフーケは悟った。

一つ聞きたいんだけど、ルイズがフーケに話しかける。「どうしてこんな手の込んだことをしたの?」

「はっ。それはね、『破壊の杖』を盗んだはいいけど使い方がわからなかったからさ」

「こんなことになるならさっさとトンズラすればよかった」肩で息をしながら応える。

「でもね。今のお喋りで少しは回復できたよっ!!」

フーケは『フライ』を使い飛び立つ。

そして目の前で起きた爆風の直撃を受け地面に叩きつけられた。「ティ、ティファニア……」それがフーケの最後の言葉だった。

ルイズはホッとする。咄嗟に反応できてよかったと。

そして空から見ていたキュルケとタバサは信じられないものを見た。フーケの前に突然白い光が集まったと思ったら収束して消えたのだ。その後起きたのはルイズの失敗魔法。

そこに廃屋の方からボロボロのメイド服を着たKOS-MOSが現れる。

「お怪我は御座いませんか?お嬢様方」

 

学院長室で、オスマンは戻った四人の報告を聞いていた。

「ふむ、ミス・ロングビルが土くれのフーケじゃったとはな」

「一体、どこで採用されたんですか?」

脇に控えたコルベールが問いかける。

「町の居酒屋じゃ。彼女は給仕をしとっとのじゃがな、この手がついっと、その、尻を」

「で?」

コルベールが先を促す。

「それでも怒らなかったんじゃよ。だからつい、秘書にならないかと言ってしまった」

「なぜです?」

本当に理解できないといった表情でコルベールが言った。

「うむ、今思えばあれもフーケの手じゃったに違いない。全く、女は魔物とはよく言ったものじゃのう」

コルベールはその時、今更ながらフーケのその手にやられ、宝物庫の弱点について語った事に思い出した。

「そ、そうですな!美人はそれだけで、いけない魔法使いですな!」

あの一件は自分の胸だけに秘めておこうと思いつつ、オスマンに調子を合わせる。

「その通りじゃ!君はうまいことを言うな!コルベール君!」初めて正しく名前を呼ばれたかもしれない。

ルイズとタバサ、キュルケの三人は呆れ返ってそんな二人の様子を見つめていた。

 

生徒達の冷たい視線に気付くと、オスマンはことさらに厳しい顔を作って見せた。

「フーケは捕らえ、『破壊の杖』は無事に宝物庫に収まった。一件落着じゃ」

「君達三人の『シュヴァリエ』の爵位と、ミス・タバサの『精霊勲章』の授与を宮廷に申請しておいた」

ルイズ・キュルケ・タバサ、三人の顔がぱあっと輝いた。

「本当ですか?」

キュルケが、驚いた声で言った。

「本当じゃ。君達はそれぐらいのことをした、当然の結果じゃよ」

「コスモスにはなにも無いんですか?」

「君たちはすでに知ってると思うがそもそもコスモス君は人間ですらない。すまんの」

オスマンは手を叩きながら三人に言う。

「さてと。今日の夜は『フリッグの舞踏会』じゃ」

キュルケの顔の輝きが、さらに強くなった気がする。

「そうでしたわ!フーケの騒ぎですっかり忘れておりました!」

「今日の舞踏会の主役は君達じゃ。用意をしてきたまえ」

三人は、礼をするとドアに向かう。

KOS-MOSだけは相変わらず無表情にそこに立ったままだった。

「お嬢様方はお先に用意をしてください」

KOS-MOSは言った。三人は心配そうに見つめていたが、頷いて部屋を出て行く。

「コスモス君は『破壊の杖』の正体がわかっているようじゃの?どう思う」先に口を開いたのはオスマン。

「はい。この『破壊の杖』と呼ばれる連携火器は明らかにこの大陸の技術力を逸脱しています」

「もしやこれは君の世界のものかの?」

コルベールも期待の眼差しでKOS-MOSを見る。

「いえ違います。恐らくロストエルサレムがまだ存在していた頃のものだと推測されます」

「「ロストエルサレム?」」聞き慣れない単語に二人は聞き返す。

「ロストエルサレム。それ人類発祥の地。そして約束の地。数千年前、人類が活動拠点を宇宙に移してからはその存在は人々の間から消えました」

そこに待ったをかけたのはオスマン。

彼はこの『破壊の杖』の話を始める。

まとめるとどうやら約30年前、ワイバーンから自分を助けてくれた恩人の形見らしい。

「しかしコスモス君の話を聞くと彼のいた場所は数千年前に消えたと聞く。どういうことじゃ?」

「推測の域は出ませんが、恐らく異なる時間軸なのでしょう」

「私の世界の地球は存在しませんが、別の世界にはまだ地球はあると思われます」

「さっきから突拍子もない話ばかりじゃが今のは君が考えたのかね?」

「いえ、これは経験に基づいた判断です」

 

「話は変わるが君にはコレを扱うことはできるのかね?」

「オールド・オスマン!一体どういう……」とコルベールが口を挟んできたところでオスマンが手で止める。

「はい。ガイダンスに従えば誰でも扱えます」

「こんなもの残していても仕方がないからの。どうやら一回しか使えないようじゃし。明日にでもカマンベール君に使わせてやってほしい。個人的には外側さえ残っていればそれで十分じゃ」

コルベールは自分の名前を間違えられことにも気付かず子供のようにはしゃいでいた。

 

「コスモス君は舞踏会に出るのかね?」

「はい。本日は使用済みの食器類の増加が予想されます」

「舞踏会にはでないのかの?」

「はい。私の仕事は皿洗いです」

そう言ってKOS-MOSは部屋をあとにする。

もったいないのう、というオスマンのぼやきは誰にも聞こえなかった。

 

「おいコスモス!!」料理長のマルトーが恐ろしい手際で食器を捌くKOS-MOSに声を投げる。

「なんでしょうか」

「おめぇさんは舞踏会には出ねえのか?」

「必要性を感じられません」

「まぁ、俺としちゃあそれでも良いんだがな。御主人様がお待ちだぜ」そう言って厨房の出入り口を指差す。

 

「ルイズお嬢様。なにかお困りですか?」

ドレス姿のルイズが扉の前に仁王立ちしている。

「なにかじゃないわよなにかじゃ!」

「こんなところでなにをしているのよ」

「皿洗いです」

「そうじゃなくて!!あなたも出るのよ!舞踏会に!」

「必要性を感じられまん」

「必要性とかいいのよそんなの!」

シエスタ!とルイズが叫ぶ。

「はっ。ここに」どこからともなくシエスタが現れる。

「コスモスにドレスを着せるわ。手伝ってちょうだい」

「喜んで」

そう言うとKOS-MOSは二人に連れ去られた。

 

 

ホールの壮麗な扉が、音を立てて開いた。

「ヴァリエール公爵が息女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢!」

「そしてその使い魔、コスモス嬢の、おな~~り~~~」

会場の喧騒が途切れる。

ルイズは長い桃色掛かった髪をバレッタにまとめ、ホワイトのパーティードレスに身を包んでいる。

肘までの白い手袋が、ルイズの高貴さをいやになるぐらい演出し、胸元の開いたドレスがつくりの小さい顔を、宝石のように輝かせていた。

しかし彼女の一歩後ろで控えているKOS-MOSは格が違った。ルイズと同じ白いパーティードレスを着ていながらその姿は聖女そのもの。その存在感に圧倒され誰も口を開くことができない。あわよくばお近づきになろうかと画策していた男共は直視することすら憚られた。

これじゃあどっちが主役かわからないわ、とルイズは小さく口にした。

 

二つの月が照らす中、パーティーはまだまだ続く。

 

 

 

アルビオン王国サウスゴータ地方、ウエストウッド村

 

ここで一人のメイジがサモン・サーヴァント行っていた。

 

「私の名前はティファニア。五つの力を司るペンタゴンよ。私の運命(さだめ)に従いし、『使い魔』を召喚せよ」

 

瞬間、光に包まれる

 

なんとか目を開く。すると目の前に黒い肌に紫色の鎧のようなものを身に着ける女性が立っている。

 

「ど、どどどどうしましょう。人間が召喚されるなんて私聞いてません」

あたふたするそのメイジに向かって女性が声をかける。

「私を召喚したのは貴様か?」

「は、ははははいいい。私です。私ティファニアです」

そのメイジはティファニアと名乗った。

周囲を見回す女性にティファニアは話しかける。

「あ、あの~」

「なんだ?」

「ヒィッじゃなくてえーっと……」

「はっきり喋れ」

「あっ、はい。すみません。その、とりあえずあなたのお名前は?」

一瞬虚をつかれたようだったがその女性は空を見上げながら口を開く。

 

「T-elosだ。覚えておけ」

 

そしてT-elosは空に見える二つの月を見ながら思考する。

(もちろんいるんだろうな。KOS-MOS)

彼女笑みは歪んでいた。

 

また一つ、世界が壊れていく。

 

 

 




第03話も読んでいただきありがとうございます。
文章量は増えてるのに話がまったく進みません。
おかしいですね
フーケさんはよく頑張ったと思います。

あとティファニアの口調がまったく思い出せない。

次の投稿は多分間隔が開きます。
用語解説も追加しておいたので是非読んでみてください。


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