カミサマに捨てられた世界で神様に愛されたものたち 作:snowchild
その日の討伐任務は、ひどく簡単なものになるはずだった。
『その存在』を見つけてしまう前までは。
神(アラガミ)に全てを奪われた世界・・・。
殺伐としたこの時代で。
僕の、
私の、
声は、聞こえていますか?
「贖罪の街」
教会が建ち、神様を信仰していた人々の暮らしていた幾多のビル群に囲まれた地域だ。
今は世界を闊歩するアラガミに荒らされ、嘗ての面影は見る影もない。
だが、誰も住まなくなったその場所に降り立つ影があった。
一人は背の中程まで伸ばした髪を風に遊ばせる女性。
整った美貌は鋭い空気を持ち、翡翠の瞳が油断なく周囲を見回している。
その手にはくすんだ黄色の銃器型がしっかりと握られており、
異常があればすぐに発砲できるようになっている。
もう一人は男で、まだその面差しに少年の名残を残している。
顔立ちは銃を持つ女性と似ており、髪の色もその双眸の色も同じだ。
右手には赤く巨大なチェーンソーのような剣を持っているが、
のんきに煙草をくわえている。
最後の一人はどう見ても子供であった。
身体は大きく青いモッズコートで隠れ、顔立ちもフードですっぽりと覆ってしまっている。
その肩には小柄な体躯に似つかわしくない、巨大な黒いノコギリ状の刃を持つ剣を担いでいた。
彼らの腕には揃って赤い腕輪がはめられている。
神を喰らう者。
『ゴッドイーター』の証である。
「作戦エリアに到着、これより任務を開始する」
『わかりました。敵情報を送信します』
無線でやりとりを続ける女性を傍目に、青年は笑みを浮かべ大袈裟に肩をすくめてみせた。
「やれやれ、姉上も勤勉なことで。今回の討伐は小型アラガミだけですよ?」
「その油断が命取りになる。・・・貴様はもう少し緊張感を持て」
「わかってますって。これでも油断はしていませんよっと・・・、どうした?」
今まで無言で姉弟のやりとりを見守っていた子供が、ふと顔を崩れた教会へ向けた。
フードから覗いたアイスブルーの瞳に、子供に似つかわしくない剣呑な色が浮かんだ。
「・・・なにか、いる」
静かな言葉は、問いかけに応えたものではなかった。
しかし先程までふざけていた青年は気にすることなく、緊張の混じった面差しで教会を見上げた。
「アラガミか?」
「あぁ。・・・いや、違う・・・?」
鋭い女性の問いかけに子供は即答したが、すぐに困惑したように呟いた。
他の誰よりも鋭い感覚を持つ子供が言葉を濁すのは初めてのことで、
それを知っている女性と青年は驚きの表情を浮かべた。
「っあ、おい待て!」
予備動作もなく突然走り出した子供に、慌てて青年が声をあげる。
「追うぞ!」
「姉上!?ったく!!」
美貌を歪めて盛大に舌打ちした女性が猛然と子供の後を追う。
青年もそれに習い、走り出した。
先行して走り出した子供が見たのは、教会の奥地で対峙する小型のアラガミ「オウガテイル」と。
遠目で確信はないが、おそらく自分とそこまで歳の変わらないだろう二人の子供。
しかも、ゴッドイーターの証である腕輪をつけていない、普通の子供だ。
追われてここまで逃げてきたのだろうか?
疑問が脳裏を掠めるが、救出が先である。
後ろから追ってくる女性と青年も子供とアラガミの存在に気付いたらしい。
「援護する!その間に叩け!」
何の力も持たない民間人では、小型のアラガミにすら太刀打ちできない。
響いた張りのある指示に持つ武器を握り直した時だった。
アラガミが断末魔の声を上げ、地に倒れ伏したのは。
唐突な出来事に驚き、足が止まる。
先程まではアラガミに隠れて見えていなかったのだろう、倒れたことで
子供の片方が刀身の短い「武器」を持っているのが見えた。
だが、その武器は本来、民間人が手に出来るものではなく。
またその所有者以外が触れることの出来ない筈なのだ。
疑問のままに駆け寄れば、子供は男の子と女の子。
顔立ちがそっくりであるので兄弟だろう。
「武器」は女の子が持っていた。
「・・・お兄さんたち、だれ?」
威嚇するように睨む女の子の後ろで、男の子が声をあげた。
この『出逢い』こそが、物語の始まりであったが
それを知る者は、誰もいない。
「もしこうだったらいいな」という妄想の元、書き始めちゃいました。