カミサマに捨てられた世界で神様に愛されたものたち 作:snowchild
双子が各々選んだ『仕事』に従事し、15歳になった年。
極東支部に初めての新型神機使いが配属された。
幸せな生活が次の瞬間には崩れ去るなど、このご時世ではいたく当然のこと
焼ける臭いと腐敗した臭い
脳髄の奥深くまで響く咀嚼音と不気味に甲高い笑い声
大人は残らず死に絶え
子供は残らず囚われた
そしてひっそりと、その集落は真実と共に地図から抹消された。
抹消された、筈だった。
集落を襲った光景と消された真実を持ったまま唯一逃げ延びた子供は、そのまま姿をどこかへと隠した。
その子供の名前は、
第八ハイヴ・フェンリル極東支部には暗黙の了解ともいうべき
噂や逸話が幾つか存在する。
その中でも一、二を争うのが『
神機使いたちの守護者とまで呼ばれる人物だった。
「でも、そんな人が本当にいるのかな?」
「さあ。でもさ、俺にこの話教えてくれたのリンドウさんだぜ?」
荒れ果てた大地を、一台のジープが走っていく。
それを運転しているのも、搭乗しているのも少年二人だ。
ハンドルを握るのは、オレンジや黄色といった色彩の洋服を身につける藤木コウタ。
帽子の間から覗く髪は茶色で、快活そうな色を称える瞳も同じ色。
その隣で計器を睨んでいるのは、フェンリル支給の青い士官服姿をした神薙ユウ。
日本人には珍しい、金に近い明るい茶髪に碧眼という容姿を持つ。
三つの年の差がある二人だが、先日適性試験を通過して
極東支部の第一部隊に配属された所謂同期である。
「リンドウさんが入隊した時は居なかったみたいだけど」
「でもブレンダンさんが入隊した時にはもう居たって僕は聞いたよ?」
「げ、その人幾つなんだろーな」
入隊して日が浅い為に、二人に回ってくる任務は演習もかねて小型アラガミの討伐ばかりである。
当然作戦地区も極東支部――――通称『アナグラ』に近い為に移動はヘリではなく
ジープや軍用トレーラーだ。
そのため移動時間の間、こうした雑談に興じることが多い。
今回の議題は直前でコウタが聞いた『戦神』について、だった。
「でもさー、誰もその人見た事ないっておかしくね?」
コウタが核心の疑問を口にする。彼が気になって仕方がなかったのは
「作戦中も無線でコードは良く聞くけど。姿は誰も見た事ないっていうし」
「え、コウタ全員に聞いたの?」
「まっさかー。俺はヒバリちゃんと第二部隊の人達に聞いただけ」
だから帰ってからサクヤさんやシュン達にも聞こうと思って
既に二人の視界には、『アナグラ』の外部装甲壁が見えている。
「あれ、ソーマには聞かないの?」
「・・・お前、それマジで言ってる?」
そういえば、と同じ第一部隊に所属している自身達よりも六年先輩にあたる少年の名前を出す。
途端、コウタは引き攣った顔でユウを見た。
そんなくだらないこと聞いてぶん殴られても知らないぞ、とその目が雄弁に語っている。
「僕たちよりも入隊して長いから知ってそうだけど・・・」
「そーだけどさー・・・」
丁度その時、計器がノイズ音を発した。
一瞬身構えるが、聞こえてきたのは極東支部のオペレーター・竹田ヒバリの明るい声である。
『ユウさん、コウタさんお帰りなさい!第六外壁のゲートを使用してください』
「わかりました!―――じゃあユウ、続きは
コウタの小声に軽く頷き、座席にまで広げていた計器や地図を片付け始める。
その間に二人を乗せたジープはゲートを潜り、車輌保管庫へ向けて低速で走り始めた。
「おう、帰ってきたな新人!」
エレベーターから歩いてきたユウとコウタの姿を確認し、一番近くにいた整備士が声をかける。
二人が降りたのは神機保管庫。
出撃ゲートや車輌保管庫に近い此処には極東支部に所属する神機使い達の神機が保管・管理されている。
「ただいまかえりました!リッカさん居ますか?」
「二人ともおかえりなさい。リッカさんはラボに呼ばれていていないので僕が変わりに預かりますよ」
整備士に変わって声をかけたのは、コウタと同じ歳の少年・シキだった。
深い緑の髪に、珍しい黄金色の瞳。
『贖罪の街』で保護されてから、シキはこの場所で働き始めたのである。
身につける藍色のツナギは、サイズこそ変わったものの最初に支給されたものと同じ形であり、
年季の入った油などの汚れで所々黒ずんでしまっていた。
「じゃあシキ、宜しくね」
「はい」
ユウから神機を受け取り、近くの管理用ノルンへ駆け寄るシキの後ろを付いていく。
「あ、そーだ。シキは『戦神』って知ってる?」
「知ってますよ。良く皆さんが話してますよね」
作業の手は休めずに頷けば、コウタがやや興奮気味に乗り出した。
「じゃあさ、その人の神機って見た事ある!?」
あまりの勢いにやや驚いていたシキだが、コウタの言わんとしていることがわかったのだろう。
「作戦コードが『戦神』で登録されている神機は見た事ないですね」
申し訳なさそうに謝るシキに、コウタもそっか、残念と肩を落とした。
「あ、二人ともお帰りー!」
タイミング良く現れたリッカの明るい声に、沈みそうだったコウタの空気が立ち直る。
「帰ってくる時もずっとあの調子でさ。なんでそこまで気になるんだろう?」
「コウタさんなりに考えがあるかもしれないですね」
「・・・ねえ、シキ。さっきの事って本当?」
作業を続けるシキの背中に、ユウが静かに問いかける。
シキは彼に背中を向けたまま。
「ええ、リッカさんにも聞いてみると良いですよ」
そう、確かにシキは
「でも、逢った事はあるんだよね?」
「・・・」
核心めいた質問に、シキは答えなかった。
「ごめん、変な事言っちゃった。気にしないで」
でも、とユウはシキの薄い肩に手を置く。
新型の神機使いであるユウは、配属されてすぐに彼の手に触れて『過去』を覗いてしまったことがある。
それ以来、こうして触れても映像は流れてこなくなったがユウなりにシキを気にかけてはいた。
三つ年下だから、とか
過去を覗いた後ろめたさから、でもない。
「何でも抱えて、僕に秘密にしないでね?」
シキの方も、最初の接触で自身の『過去』を視ているという確信がユウにはある。
そして、恐らく共通点にも気付いているだろう。
ユウが触れて覗いてしまったシキの過去。
その一部分には、ユウの奥底に眠っているものと全く同じ光景があったのだから。
今回はユウ視点(話毎に視点がころころ変わるのは作者の悪いクセ)
ものすごい捏造してますが、このユウ君はオリ主と若干の関係があるようです。