カミサマに捨てられた世界で神様に愛されたものたち   作:snowchild

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作戦エリアに突如侵入してきた大型種・クアドリガとの戦闘を余儀なくされたユウとコウタ。
その二人の前に現れたのは、入隊して間もない頃、コウタが話題にした『戦神』のコードネームを持つ神機使いだった。


欧州からの来訪者・中 ‐ある日の第一部隊討伐任務・西暦2071年1月~2月‐

雲の発生する地点より更に高い高度を、要人を乗せたヘリが飛んでいく。

 

「・・・ああ、もう来たのか」

 

シュリは遥か上空から僅かに聞こえるそのローター音を見上げ、その口角の端を吊り上げた。

そしてほぼ同時に耳元から聞こえてくる騒ぎ。

 

 

「好きにはさせない、」

 

 

オープンチャンネルで拾った無線の声。

そこから聞こえてきた声は、シュリの随分と見知ったもの。

 

傍らに突き刺していた神機を手に取り、眼下に広がる荒れた教会跡地を見下ろす。

耳元と眼下のエリアからサラウンドに聞こえてくる耳障りな咆哮と駆動音に、シュリは人知れず獰猛な笑みをその美貌に浮かべた。

 

 

手の届く範囲だけでも守ってみせる。

『あの時』とは違い、皮肉にもシュリは力を得たのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユウとコウタは、今まさに信じられない光景を目の当たりにしていた。

 

 

『作戦コード『アレス』、交戦を開始する』

 

 

無線越しに聞こえた声と、ほぼ同時。

黒い影が降ってきたと認識した直後に、クアドリガのミサイルポッドが結合崩壊を起こしていた。

 

目の前の標的(ユウとコウタ)しか認識していなかったのだろうクアドリガは、落下の勢いと影の体重が加わった重い一撃に苦悶の声を上げている。

 

「コウタ!」

「おう!」

 

その隙を逃すほど、ユウは呆けていない。

コウタも突然のことに驚いてはいたものの、神機の照準はピタリとクアドリガに向けられたままだ。

 

名前を呼べば、心得た、とばかりにコウタの神機から氷属性に切り替えられたバレットが連続で発射させる。

ユウもまた、神機を銃形態へと切り替えて(コウタと同じアサルト型だが、微妙に銃身は異なっている)氷属性のバレットをクアドリガへ叩き込んだ。

 

だが、決定的なダメージには程遠い。

 

怒りの咆吼が轟き、周囲の空気がビリビリと振動する。

活性化したクアドリガが見境なしに暴れまわり、それだけで周囲に衝撃波が広がりユウたちを襲う。

ユウは咄嗟に装甲を展開し、衝撃波から身を守る。

 

「~っ!あっぶねー!」

「大丈夫!?」

 

対し、ユウと同様に衝撃波の範囲内にいたコウタは地面を転がることで衝撃波を避けていた。

ぎりぎりだったのか、左の頬が切れて盛大に出血している。

 

「これくらいどうってことないよ」

 

駆け寄れば、そこまで深くはない傷だった。本人もけろっとしており、体勢を立て直して銃口を再び暴れるクアドリガに向けている。

そのクアドリガの周囲を飛び回る影があった。

 

巻き上がる砂塵とあまりに早い影の動きの為に、その姿をきちんと視認できない。

ただ、相当な重量の神機を操っているのだろう。聞こえる切断音はひどく重い。

 

『新兵、動けるのなら援護』

 

再び聞こえてきた冷静な声音は、今現在クアドリガを翻弄している人物のものだ。

 

「わかりました!」

 

コウタが再び発砲を始める。

ユウは剣形態でクアドリガ目掛けて走り出した。

 

『旧型はそのまま撃ち続けろ。新型はこれがダウンしたら前面装甲を叩け』

 

インカム越しの指示には、呼吸の乱れが一切見られない。あんなに動いているのにすごいな、とユウは

何処か能天気に頭の端でそんなことを考えた。

だが、油断しているわけではない。

のたうつ度に発生する衝撃波やミサイルを避け、最大限近付きキャタピラ状の足を斬りつける。

 

痛みに仰け反ったところに、コウタのものではないバレットが命中する。

 

「ユウ!コウタ!」

「サクヤさん!」

 

顔をあげれば、離れた場所でサクヤが神機を構えているのが見えた。

気が付けば、直ぐ近くでソーマもクアドリガに攻撃を開始している。

 

再びサクヤの神機が火を吹き、重い発砲音を轟かせた。

正確な狙撃がクアドリガの頭らしき骸骨部分に命中し、クアドリガが地面に倒れる。

 

『今だ』

 

ユウは神機を下段に構え、勢いをつけるように走り出す。

狙うは前面装甲。

普段は鋼のような組織で覆われているその場所が、ダウンしたことによって内側の脈打つ赤い生肉が覘いている。見た目通りに柔いその箇所は、クアドリガの弱点だ。

 

「終わりだよっ!!」

 

走る勢いを乗せたまま、神機を突き刺しそのまま回転させると思い切り頭部付近まで斬りあげた。

血液を真似たオラクルが切断箇所から噴き出し、次いでクアドリガの全身から同様の血飛沫があがる。

ファンブルという現象だ。

 

「とっととくたばれ!!」

 

最後の足掻きといわんばかりにその身体を起こそうとしたクアドリガに、ソーマの咆哮と共に繰り出されたチャージクラッシュがまともにヒットする。

 

今度こそクアドリガは倒れ、その活動を完全に停止した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よかったわ、二人とも無事みたいね」

「平気です!あの人が助けてくれたし・・・って、あー!!?」

 

サクヤが駆け寄り声を掛ける。

怪我をしているのは見れば分かるので、二人の元気な様子に安堵の息をはく。

 

対し、コウタは何かに気付いたのかいきなり大声をあげた。

それに驚いたのは隣に立っていたユウである。

 

「いきなりどうしたの?」

「俺たちを助けてくれた神機使い!作戦コード『アレス』って言ってたよな!?」

「・・・ああ、そういえばそうかも」

 

クアドリガの突然の乱入と、始まった戦闘で聞き流していたが、インカム越しで聞いた声は確かにそう言っていたとユウも記憶している。

 

「あれ、そういえばどこに行ったんだろう?」

 

思い出して首をめぐらせるが、フードで隠れて表情がよく見えないソーマが少し離れたところに立っているだけで第一部隊以外の人影はどこにもなかった。

確かに途中まではインカム越しとはいえ声が聞こえていたし、戦闘音も確かに聞いている。

 

「さっきまでは確かにいたよな・・・?」

 

サクヤの応急処置を受けるコウタが訝しげに呟き、ユウも曖昧に頷く。

 

 

 

『・・・でも、さっきの声』

 

コウタとサクヤの会話を聞き流しながら、ユウは記憶を掘り返す。

 

 

冷静沈着で的確な指示を出してきた、冷たい響きの口調。

低すぎず高すぎず。張りがあり耳心地の良い声音。

 

 

 

「・・・どこかで聞いたこと、あるような・・・」

 

 

 

その声を、一体何処で、いつ聞いたのだろう。

 

 

 

物思いに耽るユウの耳に、迎えのヘリの音が遠く聞こえ始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




戦闘シーン終了です。
冒頭でシュリが見送ったヘリコプターには『あの人』が乗っています。
次回からオリジナル要素が満載でストーリーが進んでいきますがよろしくお願いします!
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