可奈美のお兄ちゃんは妹のために最強の剣士に目指す! 作:黒崎一黒
それと、可奈美(天使)が欲しい……妹に癒やされたいよ〜。
「そうか……あまり気を落とさないでください。十条さんがそう思っていただけで、もう十分あなたを懲りたと思います。」
翌日の朝。都は管理局のエントランスを訪れていた。今は壁に寄りかかりながら携帯端末で通話している。
そして、彼が通話している相手は十条姬和。彼女から昨夜の事情を聞かせてもらった。沙耶香を退けた後、途中までは累の車で移動、検問で別れ、その後にトラックに乗せてもらったらしい。因みに、沙耶香は途中で車から下ろして所轄に保護してもらったのだとか。とにかく、無事で良かったと思う。
けど、姬和の口調からかなり落ち込んでいるみたい。まぁ、それも無理もないか……。彼女は昨夜危うく沙耶香を殺すところだった。
「………今回の件は結果オーライだし、あまり自分を責めないでいただきたい。むしろ、俺のせいで貴女に迷惑を……はい、貴女は優しい人ですね。……照れなくてもいいです。とにかく、これからはもっと慎重にしてください。次は親衛隊が直接に貴女達を追うのかもしれません……そこはくれぐれもお気をつけて」
電話を切り、彼女との交流が終わったら都は長い息を吐いた。
昨夜は本当に危なかったらしい……。自分の要求で姬和を沙耶香との戦いで深く彼女の思想を変えた。……それを作った原因は間違えなく自分だ。
姬和に余計な意識をさせてしまった。本来、彼女を自分自身の思うのままにやらせてほしいと思ったのだけど……本末転倒だ。
「やはり私情を挟むのが良くないことだ。……そこは反省しないと」
「………あっ」
「ん?あ……」
その時、エントランスの自動ドアが開き、一人の少女が踏み入ってくる。白い髪に華奢な体躯、身を包んでいる鎌府女学院の制服と腰に差した刀。
その子を見た瞬間、都もあまりの驚きに口が開かれてしまった。その子も自分を見て、同じ反応だ。
「…………っ」
てっきり彼女は挨拶をしてくると思っていたが、彼女はわざと自分の顔を避け、何も言わずに去っていく。
「待って!沙耶香」
彼女の名前を呼び、急ぎに彼女の手を引っ張る。
何かあった。姬和でも察せない彼女の心の変化。
「何かあったのですか? 見たところは凄く疲れたように見えるが……」
「……どうしてわかるの?」
「目元に少々隈ができていますし、身体の重心もずれています。それに、制服の皺も寄っている。昨晩はあまり寝ておらず、ずっと制服を着ていたのではないのか?」
「……」
「何かあった?教えて、ここは俺とお前二人だけだ」
都は優しい口調で、一歩ずつ沙耶香の心の防衛を解かしていく。
そうしたら、彼女の小さいな手が震え始め、小声で話した。
「私、失敗した。失敗ができないのに……」
失敗?つまり昨晩……いや、それだけじゃ彼女がそんなに怯えないはず、他の何かが……。
「失敗できない、とは?」
沙耶香の呟きに引っ掛かりを感じた都は掘り下げて聞いてみた。
「どんな任務でも遂行する……しなきゃいけない、から」
「……あのババァ……高津学長に言われたのですか?」
小さく頷く。
その反応を見て、都は少し怒った。
もちろん、表情に現れはしない。けど心が確実に燃え始めた。
「あのバ……高津学長は貴女のことを何と言っているのですか?」
「…………」
「大丈夫、俺はちゃんと聞くから」
数秒経ち、沙耶香はやっと口を開いた。
「……私の後継者で、最強の刀使だって」
「どういう意味?」
「私の御刀は
つまり、あの人は元刀使か……。
それより、あのババァの御刀を受け継いだ沙耶香。まさかと思うが……あのババァは自分の理想を沙耶香に押し付けてない?
自分が最強になれないから、そこで沙耶香にその理想を押し付けた。何という自己勝手の人だ。
ますます、彼女への嫌悪感が濃くなってきたよ。
けど……現在最強の刀使は折神紫。この20年間渡って、誰でも彼女を超える刀使がいなかった。例え、あれは大荒魂でも……人の前でその力をあまり出せないはず。つもり、少なくともは実技で勝負する。
あれ?そう思うと、あの人強くない?滅茶苦茶強いじゃん!
いや、今はそれを気にするところじゃない。
つまり理想という話はその理由になれないということ?なら、あのババァは沙耶香に一体何を押し付けたのか。
「沙耶香!」
そんな時、怒鳴り声がエントランスに響く。ツカツカとヒールで床を鳴らしながら近づいてくる足音と、先程の声で誰なのか判別できた。
噂をすれば……と、まさかこの言葉を使う日が来るとは。
「……高津学長」
怯えた声であの女の名を呟く沙耶香。
そして、エントランス上の階段から降りてくる高津学長の姿がそこにあった。わざわざここまで出向いてくる辺りに。それと、先程の沙耶香との会話から普通の関係ではないことくらい察しはつく。
そういえば、一年前は沙耶香のことを何もわからないまま彼女を守ってしまったな。よく思えば、あの時の俺は無謀しすぎだ。
でも、それはきっとあのババァのせいだと思う。俺を怒らせたから。
「所轄に保護されるとはどういうことだ!? 任務に失敗して、よくもおめおめと戻ってこれたな!」
「……申し訳、ありません」
詰め寄り、顔の近くで強烈な剣幕で怒鳴る高津学長に沙耶香はすっかり萎縮している。
その様子は先日でも見た。舞衣ちゃんもあいつに……。
「ババァ……じゃなかった。高津学長、少し言い過ぎではありませんか?」
「何……? 貴様、一先日の……何故貴様がここにいる!まさか、また私の沙耶香を誘拐するつもり!」
一体どこから、その結論が出る……。
「勝手に人の名誉を汚れるな!俺はたまたまここで友達と電話しているところで、たまたま沙耶香さんと出会っただけ。」
高津学長は予期せぬ介入に苛立ち、視線を都の方へ向ける。そこでもう一度怒りが上塗りされた。
都は淡々と、静かに自分の通話記録を高津に見せつけた。これは自分が疑われないように示す行動。
そして、上に載っているのは「チョコミント大好き後輩」や「からかう甲斐がある後輩」と、最近の連絡者。
因みにに連絡者の名前だが……これは都が万か一に自分の携帯が他人に見られた場合に用意した対応対策。
まぁ、一部は趣味によってつけた名前ですが……そのおかけで、都はただ変人にしか見えない。
「それより、手練れの刀使二人を相手に無傷で帰還できたのですから。まずは、そこは喜ぶべきではないですか?結構凄いよ、沙耶香さんは」
「喜ぶだと!? 寝言は寝て言え、愚か者が! 私の言い渡した任務は達成できて当然。失敗した者を叱責して何が悪い!!」
「たった一人に成功する見込みの少ない任務を与えた、貴女にも落ち度があるのではないですか?」
「貴様……!」
歯軋りして威圧しながら距離を詰めてくる高津学長。普通の人ならば多少なりとも恐れ慄いてしまうだろうが、都の心にあるのは嫌悪感だけだった。
――自分の失敗も、他人の安否も認められない。何なんでしょう、この人は……。
それより、少しでも彼女のことをわかった気がする。そこまで任務にこだわるその態度は……。
「それとも、貴女は沙耶香さんの功績を利用して、ご当主………局長に媚を売りたいですか?」
「な、何を言う?」
「先日からの貴女の言動から推測すると、貴女は局長に異常の執著心と忠誠心が持っているかと……。そこで、尊敬する人に貢ぎ物をしたい。それが自分の功績であると認めてもらいたい。だから沙耶香さん一人に任せた。違いはありませんか?」
「……黙れ」
その反応……どうやら、間違えではなさそう。ますます、彼女の反応から真相が見えてきた。
「それと、沙耶香さんからは彼女が貴女の後継者であることを聞きました。つまり、彼女を育てた自分を称賛してほしい、局長の側近の座を手に入れるため、点数稼ぎに沙耶香さんを利用した。違いはありませんか?」
「黙れ……黙れ、黙れッ!!」
「……!」
高津学長はあまりの怒りで理性が飛ばされて、右手で都の胸ぐらを掴む。元刀使のせいか、女性にしては中々腕力がある。
隣の沙耶香は息を呑んで固まっているが、都は眉一つ動かさずにその右手首を左手で掴み返す。
「もはや、一つの反論もできませんか?クズ女」
「………っ!」
都は高津学長を強く睨み、そして左手に力を入れる。確かに腕力では刀使に遥かに及ばないが、少しの痛みくらいは作られる。
そのおかけで、高津学長は一瞬だけ痛みで顔を歪ませた。
「貴女は沙耶香さんのことをどうでもいいと、彼女を道具しか扱えないクズ中のクズ女。俺はそんな貴女を許せない……沙耶香は貴女の道具じゃない!彼女は生身の人間!女の子!彼女の学長なら、ちゃんと彼女を大切にしろ!」
都もあまりの怒りに、ずっと隠してた感情を漏れた。それは糸見沙耶香のために、怒った感情である。
「ぐっ……!」
少し力を入れ過ぎたのか、それとも都の怒りを理解したのか。高津という女は自ら手を離した。
「くれぐれも忘れんなよ………沙耶香は貴女のものじゃない。彼女を利用するな」
「ぐっ……!い、行くぞ、沙耶香。」
「…………はい」
高津学長は悔しそうに目を細め、エントランスの出口へと向かう。沙耶香は少し遅れるが、軽く頷き、その後を追ってゆっくり歩いていく。が、二、三歩のところで都の方に振り返った。
「…………」
けど、そこには何かを言い出そうで迷っている様子の沙耶香。きっと、どういう反応をするかを迷っていますね。
「ゆっくりでいいから、落ち着いて。そして、冷静で、自分がしたいことを心の中に決めつけよ」
優しく、彼女にそのことを伝う。急かして言葉よりも、整理がつくまで待ってあげることの方が大切だ。
「…………うん、わかった」
「それと、誰に邪魔されて、力不足の場合は、あれを握り締め。そうすれば、俺は必ずお前を助けに行く。」
ふと、何かを思い返そうな沙耶香はすぐ御刀を固定装置から取り出して、その鞘につけるぬいぐるみを見つめる。
そうしたら、彼女はそれを大切そうに握り締めて再び都の方へ見る。
「………絶対?」
「……ああ……絶対だ」
「………うん。ありがとう、都」
そこで、彼女は僅かに笑った。これは彼女なりの変化なのかもしれない。
彼女は元々感情が薄い女の子だからな。
「お礼を言うなら、助けた時に言え」
「うん、わかった」
それから、都と沙耶香とお互いが別れた後、都は再び舞衣の元へ歩き出していく。
そろそろ、羽島学長との相談が終わったところだ。
◇
「騎士や王子というよりは物語の主人公みたいですね」
さっきのことを全部見てしまった、同じ鎌府女子学生は隠れながら、その感想を述べる。
「素敵ですね〜〜糸見さんの英雄!騎士……いや、英雄でいいや。とにかく!やっぱり彼は唯一糸見さんを救えた英雄!」
キラキラした目で、彼女は都の姿をじっと見つめる。
彼は常識に囚われない男。口は少々汚いですが、それでも糸見沙耶香のために怒ったその様子はかっこよかった。
「それにしても……高津学長はあんな風に糸見さんを見ていますとは……お姉さんとしては許しません。」
そして、さっきの都から口に出した件に女の子は今までもない怒りに顔か歪んだ。
学長とはいえ、そんな道具扱いは流石に受け入れない。特に糸見沙耶香は可愛くて、小動物みたいの妹。
そんな妹がいじめられたら、お姉さんとしては黙っていられない。
「糸見さん。大丈夫。私は英雄さんを連れて、あなたを救います!それがお姉さんの役目ですから!」
そんな決心をして、彼女はどこかに行ってしまった。
ちなみに、彼女の名前は
そして、彼女は一年前の件により、都のことを知り、彼を代わって沙耶香を守っていた。
◇
「会いに行くんのですか?」
沙耶香と別れた後、舞衣と合流。日はとうに沈み、時刻は七時を過ぎている。今度は作戦本部へと足を運んでいた。
「確か鎌府の人が可奈美ちゃんたちと会ったって鎌府の子から聞きましたから、話を聞きに行こうと思って」
朝は会ったばかりなのに……。
都が舞衣が指している鎌府の人物を知っている。それは糸見沙耶香という女の子。
「それにしても、結構親切な方ですね。舞衣様にそんな機密情報を」
任務のことはともかく、居場所まで舞衣に教えてくれた……何なの、鎌府は沙耶香派とババァ派に分けているの?
なら、私は間違えなく沙耶香派だね!
「ええ、少し変な子ですけど……最後は彼女のお姉さん(義理)と名乗っている。」
ビクッ!
「お兄さん?」
自称お姉さんを聞いて、都は身体が恐怖で震えた。
「申し訳ありません……少し自称お姉さんに苦手で……」
「そ、そう?」
ええ……精神的には駄目。
おっぱいが好きだけど、あ〜いうタイプは無理だ。
「それより、早速参りましょうか。舞衣様」
「うん、そうだね……確かに取調室にいると聞きました」
取調室か……なんて彼女があそこに待機させたのか……軟禁?いや、流石に人道的に腐っているから、そこまではしないはず……それに、ちゃんと警告もしたし。
そして、数分歩くところーー
「ねーねー、ちょっといい?」
「ん?」
取調室に向かう途中に、都たちは誰かに声をかけられた。
「こっちこっちー」
声の主は廊下の壁に背中を寄りかからせて立っている。
歳は舞衣や可奈美よりも下だろうか、沙耶香と同じくらいだとすると中等部一年生といったところか。ピンク色に近い紫髪……元い薄桃色の長髪に小柄な体躯。身長は沙耶香より僅かに低い程度。何よりも目を引いたのは腰に差した御刀とコーヒー色の制服。
「最悪だ……」
舞衣より先に口が滑った都は少女を見た一瞬に、嫌な表情をしてた。
彼女のことを知っている。
彼女はあの御前試合の決勝選で少し手合わせした相手。あの時はまだ彼女の名前を知らないが、この後獅童さんから聞いた話によるとーー
「……あなたは、親衛隊の……!」
「親衛隊第四席、
燕 結芽は史上最年少で親衛隊入りを果たした刀使であり、現在第一席の彼女をも上回るほどの実力者という触れ込みの少女。
しかも、初めての一撃で都にもこう讃えたーー可奈美より上回る剣士かもしれない。
「やっぱり覚えてたんだ〜。おにーさん。もしかして、ロリコン?」
「シスコンです。」
「ふーん……」
親衛隊の少女――結芽は興味深そうに都をジロジロ見つめる。不躾な視線ではない。無邪気、無垢とも言える純粋な好奇心や観察欲だ。
「えっと……私たちに何か用があるんですか?」
「ああ、そうそう」
都の答えに苦笑した舞衣は燕 結芽に尋ねる。結芽はようやく思い出したと言わんばかりに右手の握り拳を左手の平にポンと置く。
仕草が可愛いな。
「お姉さんは犯人の二人を見つけて、逃げられちゃったって聞いたけど、それホント?」
「それに関しては言い逃れのしようがありませんね。私の実力不足としか言えません」
「ふーん、そーなんだー」
結芽は一瞬だけ相対している都から視線を別の方向へずらす。都の左に立つ舞衣の方向へと。
ーーーー!!?
『それ』を先に読んでいた都は思考速度、聴覚、視覚を最大限界を上げ、行動を出す。床を蹴り、一足飛びに舞衣の正面へ移動。
それと同時に結芽も迅移を使って舞衣の方に。御刀の柄を右手で握り締め、左手の親指で鯉口を切る。抜刀の勢いに任せて斬撃へと繋げる――抜刀術だ。
そして、その先はーー舞衣の首。
「……っ!!」
可奈美が舞衣にやったように刀を握る右手を掴んで止めることができるかと思ったが、都が結芽に遅れをとっている以上、もう間に合わない。ならば、とるべき行動は一つ。
“無理矢理にでも止める”。
「へぇ……」
「お、お兄………さん?」
“ただ一瞬の出来事”。都は空手で刀の刀身の鍔元を左手の掌で衝撃し、抜刀する方向とは逆向きの方向にその抜刀による産まれた強い力を押し殺した。
その結果、うまくその軌跡を改変した。けど、都の手の平の皮膚が裂け、血が床に滴り落ちる。
それでも、他の部位よりよかったと都はそう思う。鍔元は刀身の中で最も切れ味が悪い部位だから。
横から掴んだだけならば傷は骨にまでは至らないと授業のときはよく現れる内容。だから、都はそこを選んだのだ。
「すっごいねー、おにーさん!寸止めしようとは思ってたけど、こんなことされたの初めて!」
結芽はそう褒めながら、御刀に付着した都の血脂を布で拭い取り、鞘に納めた。
「お前、さっき何をするつもりだ……」
「おにーさんの強さを確かめるんだ〜。そうしないと、おにーさんは全然手を出せない」
煽るような表情とその好奇心に満ちた目。彼女から悪意そのものが感じないが…多分人を斬るときは絶対に容赦しないタイプだと感じる。
「ふさげんな……!俺が間に合わなかったらどうする!」
「怒らないでよ〜。私はおにーさんのことを信じているからそうしたのです。結果的におねーさんも傷一つもついてないじゃん」
「おまえーー!!」
「お兄さん!手を見せて、早く!」
「舞衣ちゃん!?……うっ!」
舞衣はさっきのことに呆れられたが、すぐ反応して、慌てながら都の左手首を掴んで自分の方へと引き寄せる。ちゃんと患部に触れないようにしている辺り、彼女の優しさが窺える。
都の掌には大きな裂傷が一本の線となって引かれており、そこから鮮血が溢れ出ている。
「酷い怪我……早く医務室に行かないと。でも、その前に何か巻いて……」
舞衣はポケットから白いハンカチを取り出し、掌に巻き付けていく。
「駄目!舞衣ちゃん、ハンカチが汚れてしまいます!」
「静かにしてて」
ぴしゃりと舞衣に言われ、睨まれる。都は萎縮しながらも言われるがまま応急処置を受ける。白かったハンカチは都の血が滲み、赤く変色していく。きつく縛ったおかげで出血は抑えられた。
「俺のせいで汚れられた……」
「そんなのどうでもいい!お兄さんが私の私物を大事にするのを知っていますけど、そんなことよりお兄さんの方がずっと大切だから……!」
舞衣は悲しげな表情で都の手を優しく包み込んでいる。
よほど心配をかけた……昔からずっとそうでした。
「終わったの、おにーさん?」
横で見ていた結芽がニヤニヤしながら此方に声をかけてきた。
「何?わざわざ待っててくれた?」
そうしたら、都は不機嫌の顔で結芽の方へ睨む。
それはそうだ。大切な人を傷つけようとした人間に柔らかい態度ではありえない。
特に、都にとって舞衣と可奈美は最優先対象なんだから。
「うん。今のでわかったよ、おにーさんがあの二人に手加減したのでしょう?」
ニヤニヤしながら、結芽はまるで玩具を見つけた子供みたいに都のことを見つめる。
「何のことでしょう?俺は報告通り、あの二人に人質として捕らえられて救援要請を遅らせた」
「それは嘘ですよね〜?おにーさんが本気だったら、あの二人の一人を抑えることができるじゃない?」
「………それはどうだろう、俺はただの一般人だ。刀使なんかに全然及ばない」
「一般人? 私の攻撃を止めてたのにそれはないんじゃない? ホントはすっごく強いんじゃないの?」
「燕さん、いい加減にしてください。さっき、お兄さんを傷つくこと、私はまだ許しません」
都の手当を終えた舞衣は見てられなく、つい自分より年下の結芽を叱った。
「フン〜やるの?でもおねーさんはおにーさんより弱いから多分私の相手にならないと思う」
「…………!」
まるで彼女の言葉に当てられたみたいに、舞衣は悔しそうな表情をしている。
さっきの抜刀は彼女全く見えなかった……けど、都はそれを見て止めらせた。つまり都の実力は彼女より、上回っている。
「そんなことはない。俺はただ初撃を止めるのが得意だけ。長期戦になると舞衣ちゃんところが、普通の刀使を相手に負ける気がします。ですから、あまり舞衣ちゃんのことを舐めないでもらいたい」
「お兄さん……」
「ふーん……わかった。今回はここまでにしておく」
都を興味津々見た後、結芽はすぐつまらなさそうな顔をして後ろに向いて立ち去ろうとする。
そして数歩のところ、足を止めた。
「次はもっと楽しく遊ぼう、二人っきりで」
「……別の遊びならね」
それから、結芽も特に何か言うこともなく、この場から去っていった。
「お兄さん……さっき燕さんが言ってたことなんだけど、私……」
そうしたら、舞衣は何かを思い込んだ表情で都に聞く。多分結芽が彼女の実力を笑うことをすごく気にしているのだろう。
「本気さ……俺は燕さんが言っていたようにそこまで強くはない。迅移とか八幡力とか
そう、速度を拳銃が発砲するみたいな速度に加速する力と腕力などを増幅する力。それと、身体に鎧みたいなものをつけられる力。
それらの力の前では一般人は太刀打ちができない。
今までの相手は俺を油断したから、うまく倒せだ。もし迅移を3段に上がりや他の2つの能力を使えたら、間違えなく一方的にはボコボコされる一方になる。
「これは決して慰めるもんじゃない。俺はお前たち刀使を尊敬しているから、特にお前と可奈美になぁ」
優しく、いつもの都。さっきの衝撃事件で執事モードもバラバラされていた。
「………うん。やっぱりこういうお兄さんが好き……お兄さん、もう執事モードやめよう。私は元のお兄さんが好きだから」
「それは……できません。これは孝則さんからもらった大事の仕事ですから。それに、舞衣ちゃんを大事にする理由も正当化もできるし」
「もう…またそんなことを言って」
都からいつもの言動に少し呆れるけど、舞衣は少し嬉しそうに笑う。彼に大切されるのはすごく嬉しい。
「あ、それより早く医務室に行かないと!」
そして、急に都の怪我を思い出した舞衣は急ぎに都の右腕を引っ張り出す。けど、すぐ都に止められた。
「俺一人で行けるから、舞衣ちゃんはそのまま沙耶香さんのところへ行ってくれ」
「え?でもお兄さんの傷は」
「大丈夫、俺より沙耶香さんを会いに行ってあげて。あの子に尋ねたいこと、気にすることもあったじゃないか?」
「でも……」
「大丈夫。俺は高校生なんだし、一人でも保健室に行ける」
「…なら、気をつけてね。可奈美ちゃん達のことを聞いたあとに、すぐ迎えに行くから!」
「うん。」
それから、都は舞衣と別れ医務室の方へと足を進んだ。
結芽は滅茶苦茶可愛いけど、胎動編においては悪人扱い。彼女が薫たちと戦う前に、彼女がそこまで戦闘に拘る理由が全く知りませんでした。