可奈美のお兄ちゃんは妹のために最強の剣士に目指す! 作:黒崎一黒
「柳瀬さん〜〜こっち、こっち!」
可奈美達と連絡を取った翌日、都はいつも通りに舞衣のご奉仕をしながら彼女のそばにつく。
ますます、執事の仕事を慣れてきた。
そして、美濃関に帰る前日に舞衣は誰かと約束があって、鎌府女学園の料理の調理場へやって来た。話によると、帰る前に美味しいクッキーを作って沙耶香に送りたいと仰った。
それを尊重する都はもちろん、彼女の意のままに従う。
そして、調理場へたどり着く一瞬に一人の女の子がこっちに手を振りながら、舞衣達を歓迎する。
あれ?この子は……。
彼女の顔を見た都は見覚えがある感覚がする。
何処かで会ったような……。
「竹島さん!待たせてごめんなさい」
「いえいえ、気にしないて。私は学園の宿舍に住んでいるから、柳瀬さんより早くここにいるのは当然の話です。それと、雅っていいよ」
「うん、わかった。雅さん」
「ちゃん付け。」
「うん。雅ちゃん」
二人が仲良く笑っている姿を舞衣の後ろから見て、都は尊く感じる。
舞衣は元々友達作るのが得意なので、この短期間で仲良くする友達ができたのは不思議ではない。
しかし、良くも別の学園の娘と仲良くできるとは……流石、舞衣ちゃん。
「………柳瀬さん、さっきからずっと気になったけど……後ろにいるのはあなたの執事さんですか?」
そして、視線に向かわれて、女の子は都の方へ気になる目線を投げる。
けど……最初の目線は少し獲物を見つかるような眼だ。
「うん、彼は私の執事です。」
「初めまして、俺は柳瀬舞衣様の執事をさせていただいております、衛藤 都と申します。以後、お見知り置きを」
舞衣のペースに合わせて、都は丁寧の挨拶を行った。
「“初めか”……うわぁ!本物の執事さんですね!そういうセリフは漫画しか読めなかったよ!柳瀬さんはお嬢様なの!?」
「あはは……まぁ、うん……」
女の子の反応に困らせた舞衣は少し照れてた顔だった。しかし、都はさっきが彼女の口から漏れた「初めか……」を見逃さなかった。
あれはまるで、自分のことを知っている口ぶり。
やっぱり、さっきのは錯覚じゃなかった……。
「凄いね!えっと……どうしよう。私はこんな凄い人と料理を作れるのかな!!?」
そして、彼女は自然と慌てるふりをして、舞衣も慌てて彼女を落ち着くように話す。
「だい、大丈夫だよ!私はそういうの気にしないから。それに、私は今日のことを期待していますよ!雅ちゃんと一緒に沙耶香ちゃんへのクッキーを作るとか……」
「そうですか?ありかど、柳瀬さん」
「ううん、気にしないで」
「それじゃ、早速作ろか!糸見さんへのプレゼント。」
「うん、そうだね。」
女同士が可愛い年下女の子のためにクッキーを作る光景。本来では素晴らしい光景ですが、彼女はただ舞衣と一緒にクッキーを作るのが目的ではない……何か別の……。
「あ、やばっ!小麦粉が足りない!」
「え!?」
そして、いよいよクッキーを作り始めの二人はまず材料をテーブルに用意するところに、意外のことが起きてしまった。
「多分最近逃亡者の件で皆が忙しすぎで補充するのが忘れたのかも………」
「ど、どうしよう……これじゃ、クッキーを作れないかも!」
「舞衣様、落ち着いてください。確か、食材置き場はこの近くにいるはず、そこへ小麦粉を取っていれば問題がないはず」
慌てた舞衣に都はすぐ彼女を落ち着かせる。
「うん!そうだね。ごめんなさい……慌てすぎで」
「いいえ、それじゃ私は取って行きますから、舞衣様はそこでーー」
「駄目。お兄さんの手はまだ傷があるでしょう?私が取りに行く」
「そんな!そんな労働は俺がやれば……」
「………私の言うことをちゃんと聞いて。お兄さんはこの前、私を守ったのだから、今回は私がお兄さんの手を守る……」
優しく傷つけられた左手を握って、舞衣は都に優しく微笑む。
その微笑みは可奈美に負けないくらいに温かい。
そのせいで、都は思わずにドキドキした。
「うわぁ……ラブラブ」
おい、そこ!感想つけるな!恥ずかしいのだろう!
「それじゃ、私は行ってくるね。雅ちゃん、お兄さんをよろしく/////」
そう言って、舞衣は都の手を放ち、急ぎにこの場から離れた。
よく見れば、さっきの舞衣の耳ところまでが赤くなって……きっとさっきの感想を聞いて、恥ずかしがっているのだろう。
どうしよう……舞衣ちゃんが可愛すぎで、心臓がバクバクと爆発しそう。
特に最近はずっと舞衣のそばにいる原因で、こんなドキドキ感がどんどん増えた。
多分彼女によく大事されたのからかな?そこで男としては嬉しくて、恥ずかしくて……。
「いつもあんな感じ?普通の主従に見えないのですが……まさか付き合ってる?」
「ご冗談を……俺のような者は舞衣様のような素晴らしい方には似合わない」
これは二回目恋人だと誤解された。本当にそんな関係に見えられるのかな?
そこで、全く自覚がしない都である。なんにせ、彼は舞衣や可奈美にあんな意識がないからだ。
だって、彼女たちは自分に勿体無い最高の女の子だと、ずっとそう認識しているんだ、彼は。
「そう……。それじゃ、“また会えて嬉しいです”。英雄様」
「やっぱり俺のことを知っているんだ。それと、英雄様とは?」
そこで、女の子は被った一面を放ち。彼女は都の隣に行って正体をバラす。
恐らく、舞衣がいないこの時点を狙ったのかもしれない。
「糸見沙耶香の英雄ってこと。覚えている?一年前のこと」
「貴女でしたか……」
すぐ彼女のことを思い返し、都は彼女の顔を再び見る。どうも、何処かで見たような……。
彼女はあの時、自分と対決していた刀使たちの生き残り者。いや、言い方は悪い……。
正確言うと、彼女に隙が突っ込まれて、負けちゃった。その後は彼女の助けによって、あの件は何もなく幕が降りた。
「うん。その日から私はずっと糸見さんの世話をしていた。そして、いつの間にか仲良い友達になった」
「そうでしたか……めでたい話ですね」
そっか……沙耶香は友達ができたんだ。よかったじゃないか。
「これも貴方のお陰だよ。あの件がなければ、私は糸見さんのことを避け続けているのかもしれない……だから、ずっとありがとって伝えたかった」
「そうか……」
彼女の話を聞いて、都の心がポカポカと暖かくなる。
自分の勝手の行いで、ちゃんといいことに導きになったのね……。
「でも、このままじゃ糸見さんが危険に落ちるかもしれません。あなたの助けが必要よ。」
「どういうこと?」
沙耶香が危険?つまりあのババァはまた彼女に何をする気?
「こう見えても、私は特祭隊の副隊長。情報収集方面は鎌府最強だと少し自慢している。……まぁ、あまり意味がないけどね。荒魂討伐にもあまり役に立たないだし」
「これを伝うために、舞衣様を利用したの?」
「ううん。同じ糸見さんを愛する姉キャラ同士だから、仲良くしたいと思ってた。まぁ、あなたと接触したいのはメインだけど」
そう言った彼女は申し訳ない表情をした。
つまり彼女は舞衣ちゃんと仲良くしたい上に、ついでに彼女を利用して、俺と接触か……。
そこで、罪悪感の顔か……。
「今度とも舞衣様と良い関係を築けるなら、許してあげる。それで、沙耶香に関する事情が聞きたい。」
「………うん。やっぱり優しいんだね。だから、あなたは英雄です……あの子の特別になった。」
彼女の顔が緩んで微笑んだが、すぐ正顔で事情を話す。
「それじゃーー私が“勝手”に収集した情報から話そう。糸見沙耶香の任務が失敗したあとは、学長の情緒が不安定になった。それから、さらに伊豆追跡戦の失敗で……元い親衛隊第三席の
「親衛隊第三席?何の関連性がありますか?」
「第三席の皐月さんは元々学長が局長に媚を売るために局長のそばに置いてあった駒である。彼女が局長の貢献により、自分の評価が上がると思ったのでしょう」
そう言い度に彼女の顔が悲しくなってきた。
「皐月さんは元々存在感が低い子で。でもちゃんと可愛いところも持っているいい子だよ!私もあの人がまだ学園にいる時に彼女と楽しく過ごしました。けど、ある日に“ノロ投入実験”をされて、親衛隊として選ばれた」
「ノロ投入実験……?それは……」
名前から聞くと、嫌な予感しかない……。
「これからは極秘密の情報です。この件がバレたら、十条姬和さんと衛藤可奈美さんのような困境に落ちます。覚悟がありますか?」
「お願いします。」
都の決意が満ちた顔を見ると、雅は続きを話す。
「あれはノロを刀使の身体に注入して、実験体を一般の刀使よりさらに強くなる実験。簡単に言うと、荒魂と刀使の融合実験です。けど、成功率が高くない故に……」
つまり……“そういうことね”。
あの野郎ババァが自分の学生を危険の実験に犯して、それを局長たる折神紫に捧げる。全ては自分の評価を上がるため。
ふざけるな!馬鹿野郎!
お前は自分のため、生徒たちの命をどうでもいいと思ってんのか!
あまりの怒りで傷つけられた左手はまた痛くなる。
でも、それはどうでもいい……だってこのくらいの痛みは実験された女の子達の痛みと比べられない。
「………そこで、皐月さんが奇跡的に実験成功されて、親衛隊として選ばれた。ちなみに、親衛隊の全員はその実験体です。許されないですよね?」
彼女から関心の言葉。
ああ……確かに、許されない。
獅童さん、寿々花さん、燕さんは全員その実験者。なぜ実験を受け入れる理由が知らんが……荒魂の力を借りては駄目だと気がしていた。
小さい頃からの教育なんでしょうか……荒魂は悪、人類の敵。だからそんな簡単に受け入れない。
「続けて……舞衣様が戻る前に……全部!」
もう怒って仕方ないか……都はもう執事モードから切れた。そして、顔は怒りと苦しみに混じり合っている。
きっと親衛隊の人と多少の知り合いなんでしょうか……と雅はそう推測していた。
「本題に入ります。皐月さんの失敗により、学長が迫られて……そして、今晩は必ずそれを糸見さんに……投入する。彼女を最強の刀使だと……」
「くだらない……。“竹島さん”」
「はい……」
彼女の名前を初めて呼び。彼女はただ一言で答える。
彼女は知っている。目の前の男はもう顔を見なくても分かる。
彼はすごく激怒している。
実験の真相への悲しみと糸見沙耶香の道具扱いへの怒りは目の前の男に決意を与えた。
「計画があんだろう?聞かせてくれ」
「………後戻りができなくなりますよ。あなたの主人にも迷惑を……」
「なら、俺の代わりに彼女を守ってくれ。情報屋さんなら、“それくらいの情報”が得意だろう?彼女の無罪をお願いします」
「………わかりました。この命をかけても、柳瀬さんを守りいたします。その代わりに糸見さんはよろしくお願いします」
「ああ……任せよう。」
自分の勝手はいつも他人に迷惑をかけたばかり。
そこには自覚があるんだ……今、選択した選択も……舞衣が悲しむのだろう。
悪い、俺はいい男じゃない。お前に幸せを与えられないんだ。だから、わざと距離を取ったんだ。
迷惑者と一緒にいると、ただ不幸になる。だから……俺の我が儘を許してくれ。舞衣ちゃん。
そして、その後は計画を聞き。舞衣が戻った後は何もなかったふりをして、彼女のクッキー作りに手助けした。
情報の操作がうまいのと関係があるのか……竹島さんはまるでさっきの記憶がないように舞衣と楽しくクッキー作りをした。
これは、流石にうまいよな?自分の感情さえもうまくコントロールできるなんて……俺なら、無理かも。
◇
寒く、暗い部屋に二人の人物がいた。一人の少女は寝台に横たわり、視線を天井に向けたまま動かない。もう一人の女性はその傍らに立ち、鋭い眼光で少女を睨む。
「沙耶香」
「はい」
傍らに立つ女性――高津学長は自分の直属の部下であり、生徒でもある少女――沙耶香に諭すように語りかける。
「お前は我が妙法村正を受け継ぎ、そして私が見出だした最強の刀使。親衛隊のような欠陥品とは一線を画する力を持つ、私の最高傑作よ」
「……はい」
沙耶香は目元に逡巡と憂いを乗せた表情で了承の意を示す。
高津学長は近くのテーブルに置かれたケースの中から一つの注射器を取り出す。中は赤黒い液体で満たされており、沙耶香は一目にそれがノロだと理解した。
「これは紫様が直々に鎌府――いや、私が賜った研究の成果。これを受け入れれば、お前は名実ともに何者をも上回る最強の刀使へと生まれ変わる」
「………」
沙耶香は何も声を発さない。胡乱な瞳で高津学長の持つ注射器を見つめている。
「紫様のためだけに動く、私の下僕になることができる。喜ぶといいわ」
「……は、い」
思考が回らない頭で、渇いた口で言葉を紡いだ。
「……? 何だ、これは」
「……あ」
高津学長は沙耶香の左頬を、正確にはそこに貼られた絆創膏に目をつける。これは柳瀬舞衣が彼女にくれたもの。不思議と都がくれたぬいぐるみと同じ感じがする。
そして、高津学長は先日自分がにつけた傷を外気から遮断するために貼られたそれに苛立ちを覚え、乱暴な手つきで剥ぎ取った。
「邪魔だっ」
「いっ……」
勢いよく頬から剥がされたせいで傷口にピリッと痛みが走る。沙耶香にとっては大した痛みではなかったが、物理的な痛みとは別の感覚が彼女の胸に波紋のように広がる。
――舞衣の、絆創膏……
ほぼ初対面の自分に姉のように接してくれた少女。舞衣の穏やかな顔が脳裏に浮かぶ。高津学長に可愛がられ、贔屓にされてきたためか、学院における居場所は少なかった。沙耶香が刀使になり、妙法村正を手にしてからはそれが顕著になっていた。
事情を知らなかったとはいえ、何の打算も偏見もなく優しくしてくれた初めての相手。楽しそうに話してくれたときも、傷を絆創膏の上から優しく撫でてくれたときも、胸の奥が温かくなるのを感じた。
ーーこれは、あの人と彼女と同じ暖かさだ。
無意識の中に衛藤兄妹と柳瀬舞衣に暖かさに与えられた沙耶香は彼女達に影響が受けた。
空だったはずの沙耶香に暖かさをくれた。
「沙耶香、お前は少々勝手になり始めているわ」
「……え」
「あの衛藤 都とかいう男に会って以来、妙に調子が狂ってるのよ。どういうつもり?」
「そ、れは……」
沙耶香の頭にもう一人の顔が浮かぶ。いつも自分に優しくしてくれて、自分のために怒ってくれてた紫髪の青年ーー都の顔だ。
「まあいい。それもこれも、どうでもよくなることなのだから」
「………」
高津学長は有無を言わせず沙耶香の左の首筋に注射針を近づける。体内に差し込んだ針の先からノロを注入するつもりだ。
「………うっ」
よくわからない、声にならない声が口から漏れる。どうにかしたい。今、目の前の人物の言う通り、これを受け入れることを考えると胸がズキッとする。
言葉にできない、嫌なのかどうか表現しづらい。ただ確実なのは、これが入ってくれば自分が自分ではなくなるということ――
「……っ!」
バチンッーー
乾いた音が暗い部屋に響く。直前まで肌に迫っていた注射針は床に転がっている。
「沙耶香……なにを」
「………」
注射器を自分の左手で払い、沙耶香は寝台から降りてすぐ御刀の方に……正確言うと、あのぬいぐるみを手で強く握る。
高津学長が困惑と怒りを含んだ表情で問い詰めてくる。
説明できない。何故こんな行動に走ったのか、納得できるような理由を話すことができない。
直感か、反射か、モヤモヤした感覚が渦巻いている。
混乱の沙耶香はただいたずら誰かに助けを求める……あのぬいぐるみの元の持ち主にーー沙耶香は助けてと心の中に叫んだ。
もちろん、これは意味がない。これはただのぬいぐるみだと沙耶香は知っている……けど、あの人が約束してくれた。
ーー絶対に助けに来るって。
「沙耶香!私を反抗する気かーー」
「それは沙耶香ご自身の意識ですよ。クズ女よ」
二人だけの空間に全く別の声が割って入る。
「だ、誰だっ!?」
出入口に一人の青年が直接に入ってくる。この部屋は元々暗いのせいか、入っている青年の顔はよく見えない。が、一歩ずつ歩み寄ってくるたびに顔の輪郭や髪の色が露わになっていく。
「貴様ッーー!?なんてーー!」
「入り口近くの刀使は全部倒したよ。ただ二人の刀使は俺に対抗できない」
薄暗い部屋の照明の光を目映く反射する紫髪、黒いスーツとネクタイ、その端正な顔に浮かべているのは自信満々の表情だ。
「…………あ…」
会いたかった顔、会いたかった人。
「遅くなりました、沙耶香。約束通りに助けに来た。あなたの英雄はーーここにあり!」
衛藤 都がそこにいた。
ここでオリキャラの竹島 雅を紹介しました。彼女は刀使としては普通だけど、情報収集やコントロール、サポート方面は優れている。そのおかけで彼女は鎌府方面の特祭隊の副隊長として選ばれた。