可奈美のお兄ちゃんは妹のために最強の剣士に目指す!   作:黒崎一黒

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いよいよ、波瀾篇が始まりました!!そしてこれから先も調査隊やサポートメンバーやオリキャラの出番が増えます。


波瀾篇
第33話:次世代の英雄たち


 タギツヒメとの戦いから、四ヶ月後――――。

 

 

 

 隠世へと逃れるタギツヒメは自ら一部の荒魂を切り離し、空高く打ち上げた。

 

 そんな時に散らばっていく荒魂が流れ星のように関東一帯に注ぐ。この件は鎌倉特別危険廃棄物漏出問題と呼ばれる出来事以後、荒魂の出現が頻繁になった。

 

 それを解決するため、我々刀使は忙しい毎日が送っていた。けど、あそこにはあの人の姿がどこにもいなかった。

 

 四ヶ月続いて、向こうから一切の連絡がない。学長からも機密だから、口にも出せられない。

 

 あの人がいない日常はとても寂しかった……一体どこにいるのだろう、お兄ちゃん。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 輸送ヘリが空に飛ぶ音を聴きながら、次世代の英雄だと呼ばれた衛藤(えとう)可奈美(かなみ)は今の現状を思い出していた。それと、ついでにあの人のことも思い浮かぶ。

 

 「………可奈美?」

 

 「あっ、……うん、大丈夫。少しぼっとしただけ。」

 

 糸見(いとみ)沙耶香(さやか)の声で気が付いた可奈美は、沙耶香と共に東京都湾岸線に出現した荒魂の対処のため、展開している特別祭祀機動隊の応援として現場に急行していたことを改めて思い返し、気を引き締め直していた。

 

 けど、沙耶香から見れば、可奈美の顔は大丈夫じゃなさそう。この数ヶ月、可奈美はずっとこんな状態だった。理由は彼女も知っている。

 

 「(みやこ)は、きっとこんな可奈美を見たくない。」

 

 「え……?」

 

 無口の彼女から出した言葉に可奈美の反応は一瞬に手遅れた。あの名前はとても懐かしいと感じた。

 

 「都は、可奈美が笑ったほうがいいと言ってた。私もそう思う。」

 

 「沙耶香ちゃん……うん、そうだね。お兄ちゃんはきっとこんな私を見たくないもんね。よし…!」

 

 沙耶香に励まされて、可奈美は自分に元気をつける。

 

 「沙耶香ちゃん、この任務が終わったら、手合わせお願いできないかな?」

 

 「………うん、私で良ければ。」

 

 「本当!?ヤッター!」

 

 いつも通りの感じに戻った可奈美は早速沙耶香との立ち合いを求めていた。沙耶香は少し迷いながら軽く頷いた。

 

 この時の可奈美はまだこの四ヶ月の変化が気付かれなかった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 東京都湾岸線沿い――――。

 

 橋の上に巨大なムカデのような荒魂が現れて、その荒魂が向かう先には臨時に結成された五人小隊の刀使と特別祭祀機動隊が待ち構えていた。

 

 「…………」

 

 五人居る刀使の内の一人、綾小路武芸学舎中等部一年の内里(うちざと) (あゆむ)は初めての実戦の空気に気圧されていた。

 

 「一斉射の後、斬り込む!タイミングを合わせろ、訓練通りやればできる!」

 

 その証拠に、自分よりも実戦経験が有るであろう副隊長格の鎌府の刀使の指示を受けていても、御刀を握る手はまだ震え、いつもよりも御刀が重く感じてられていた。

 

 「ハァッ……ハァッ……」

 

 副隊長格の鎌府の刀使の他にも、美濃関の刀使二名、そして長船から上位の実力者が加わってはいるが、自分が上手くやらなければという不安に押し潰されそうになり、吐く息も妙に重かった。

 

 「来ます……抜刀!」

 

 彼女が悩んでいる内に、目標の荒魂が視認できるほどの位置まで近づいてきていた。そのため、事前の作戦通り、機動隊からの支援、もとい援護射撃が実施される。

 

 「写し!!」

 

 副隊長格の鎌府の刀使が刀使の基本戦術である写シを張るように指示され、意識を集中して写シを張る歩。

 

 一斉射を受ける巨大な荒魂を見て、今からあそこへ飛び込むことになると思い、戦いに集中するためか御刀を再度強く握る。

 

 「良し、斬り込む!」

 

 機動隊の支援による援護射撃が充分効果が出始めたのか、荒魂は身体の上体を高く揚げていた。それを見た副隊長格の鎌府の刀使はそれを好機と判断して、今から斬り込むことを指揮下の刀使達にも指示を出していた。

 

 遂に、あの大きなムカデのような荒魂の身体に飛び掛かるように斬り込むときが来たと思い、ゴクリと唾を飲み込み、必死に覚悟を決めようとする歩。

 

 しかし、次の瞬間、自身が荒魂を斬り込むことはなかった。

 

 突然、空から降りかかるS装備を着用している二名の刀使。一人目は荒魂の角と足を何本か両断していた。荒魂は、その斬られた激痛に苦しむかのように耳鳴りが起こるほどの大声を上げていた。

 

 「沙耶香ちゃん、行くよ!」

 

 「うん!」

 

 S装備を着用している刀使二名は楽々、荒魂の胴体を両断していき、徐々に荒魂の戦闘能力を奪い、遂には美濃関の制服を着たS装備装着の刀使が八幡力で跳躍し、荒魂の頭部と胴体を両断する。

 

 その一撃が致命傷となり東京都湾岸線沿いに現れた荒魂はノロへと還っていった。

 

 「ーーーー。」

 

 息を呑んで、內里 歩はあの荒魂に致命の一撃を与えた美濃関の制服を着ている刀使をじっと見つめて胸が高鳴り始めた。

 

 この時、彼女は憧れる人ができた。そして、これも彼女と英雄ーー衛藤可奈美との初出会いであった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 「応援しに来ました衛藤可奈美です。」

 

 「糸見沙耶香。」

 

 今回の荒魂事件の解決に出動していた刀使達に、S装備を解除し自己紹介する衛藤可奈美と糸見沙耶香。

 

 「衛藤可奈美さん、ご無沙汰しております。それと……お久しぶり、糸見さん。」

 

 副隊長はお二人を迎え、可奈美に挨拶をした後、すぐ沙耶香に優しく微笑む。

 

 「雅……お久しぶり。」

 

 そして、沙耶香も相変わらず無口で四ヶ月ぶりの知り合いに挨拶を行う。

 

 「沙耶香ちゃん、知り合い?」

 

 「うん。学園内で結構お世話されていた高等部の先輩。」

 

 「私は竹島(たけしま) (みやび)と申します。糸見さんの義理お姉さんと自負しております。この度、お二人のご協力を得て、私はとても幸福です!何より、糸見さんは元気そうでお姉さんは嬉しいです。」

 

 「ありがとう。雅」

 

 「あ〜〜糸見さんに感謝された!!!この人生に悔いがありません!」

 

 沙耶香の感謝に、雅はなんだか興奮しているように見える。

 

 「えっと……私は退場したほうがいいのかな?」

 

 それを見た可奈美は苦笑しながら、この場から離れるつもり。

 

 「いいえ、貴女にも伝えたいことがありまーー」

 

 「あっ、あのっ!!お二人は四ヶ月前の英雄さんですよね?」

 

 「……えっ?あぁ、はい。……そうです。」

 

 突然、入ってきた歩の問いかけに可奈美は少し困ったように答える。

 

 「…………」

 

 そして、空気を読んでいた雅は口を黙ったままに見届ける。彼女は恐らく衛藤さんに憧れていると思う。

 

 無理もないか、彼女たちは四ヶ月前に大荒魂を倒した英雄なんですから。

 

 「出向で特別任務部隊に参加しています!!綾小路中等部1年、内里 歩です!」

 

 「あ、歩ちゃんですね?」

 

 「はい!私も、鎌倉の本部に居ます!寮で可奈美さんや糸見さんを何度かお見かけした頃があって、その……本人を直接見られて、私は嬉しいです!」

 

 「そ、そう…?私も歩ちゃんと出会って良かったと思います。」

 

 「本当ですか!?」

 

 「うん!」

 

 「嬉しいです!」

 

 憧れる視線で自分に向かう可奈美は笑顔で頷く。そうしたら、歩も目をバッと開き、凄く嬉しそうな顔。

 

 彼女は相当に衛藤さんに憧れますね。でも、そろそろ時間を取り戻さないと、現場の人たちにも迷惑をかけられる。

 

 「內里さん、貴女の気持ちは凄くわかります。ですが、そろそろ控えたほうがいいです。撤収の準備は遅れていますよ。」

 

 他の隊員に視線を移すと、彼女たちは既に撤収の準備を完了した。

 

 「……はっ、はい!」

 

 それも気付いた歩は慌てて、雅 副隊長に応じる。

 

 「じゃあ、また後でね。歩ちゃん」

 

 「あっ、……はい!!」

 

 そして、彼女も可奈美に元気よく応じた。何より、可奈美は彼女の憧れる人だから。

 

 そして、雅に促されて歩は急ぎ隊員の方へ戻った。

 

 「それじゃ、一緒に撤収しながらさっきの話題を続けましょう。貴女の兄、糸見さんの英雄ーー衛藤(えとう) (みやこ)の動向について」

 

 「ーーー!!」

 

 「…………っ!」

 

 撤収するための車の居場所ヘ歩く雅は平然に彼女たち二人にとんでもない情報を口に渡す。

 

 それを聞いて、沙耶香と可奈美は目をバッと開き、胸が思わずドキドキした。

 

 あの人のこと……四ヶ月ぶりにやっと彼のことを聞けた。

 

 四ヶ月の間にずっと行方不明のまま。彼女の兄、沙耶香の英雄。

 

 二人の少女は今までもないほど胸が高鳴る。ずっと聞きたかったこと。

 

 「お兄ちゃんの居場所が知っていますか!?」

 

 「雅、教えて」

 

 「………うん。ではーー」

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 美濃関学院ーー学長室。

 

 

 

 「米軍所属艦艇の奪取、都市部への不明機射出、……国民がどれほどの不安を抱き実害を被ったか、またどのように受け止めているのでしょうか?」

 

 テレビで映った現場ライブにて、折神(おりがみ)朱音(あかね)は国会で四ヶ月前の出来事について、舞草の代表証人として出席した。

 

 「折神証人。」

 

 テレビの中で議長の声に応えるかのように、朱音は男性議員の質疑に答えるように毅然と壇上に立っていた。

 

 「一部の特祭隊により20年前の大災厄のような事態は未然に回避することができました。また、管理局の一員として、我々は最良の手段を討てたと認識しております。」

 

 「しかし、特別危険廃棄物の大量漏洩、漏出が起こりました。管理局の責任、及び今後どのような対応をするのかお聞かせ下さい」

 

 男性議員は狙い済ましたかのように、次の質疑を繰り出していた。

 

 「折神証人。」

 

 議長は朱音に男性議員の質疑に答弁するよう朱音を呼んでいた。

 

 「漏出した特別危険廃棄物に関しましては、対策本部と特別任務部隊を設置し、全力で回収に当たっています。これにより、我々刀剣類管理局は、一年以内での収束を見込んでいます。」

 

 「管理局内部で何が行われていたのか、国民は知りたいのです!当事者の前局長折神(おりがみ) (ゆかり)氏からの説明を求めますっ!!」

 

 「前局長は現在療養中であります。したがって、局長は証人喚問を受けられる状況ではありません。」

 

 「はぁ……」

 

 駄目息と共に、現場ライブを見る女性ーー美濃関学院学長羽島(はしま)江麻(えま)はテレビを消した。

 

 このライブは四ヶ月続けて同じ内容でした。国会はずっとこのやり取りで刀剣類管理局を攻め続けていた。本当に、嫌になる。

 

 「朱音様の証人喚問ですか。折神紫様は療養中だと何度言っても、議員の方は「説明を求める」の一点張りですよね。」

 

 そして、同じく学長室にいる柳瀬(やなせ)舞衣(まい)も複雑の表情で感想を述べる。

 

 「今や刀剣類管理局は格好の的。新体制とか舞草とか言っても、世間には同じに見える。ノロを大量に漏出し、土地を穢した、ずさんな組織……」

 

 「……あの日、タギツヒメによって関東一帯に荒魂が流星のようにバラ回れた。いわゆる鎌倉特別危険廃棄物漏出問題。」

 

 「刀使は所属に関係なくバラバラに編成されて、各地で対応に当たっている。その中にも、厳しい戦いを強いられている刀使も多くにいるのに……世間からこんな扱いを受け続けているのは納得がいかないのね。」

 

 「仕方ないですよ。ノロを漏出されたのは事実ですから」

 

 羽島学長に舞衣も仕方ない顔で同意する。この数ヶ月彼女はこの状況を十分見届けているから。

 

 人を助けに行くのに、叱られた刀使もたくさんいた。それを影響されて、落ち込んでいる刀使も多数にいた。

 

 それを慰めるために、鍛治科の服部(はっとり)先輩も刀使応援会を成立し、彼女たちの文句を聞いてくる。

 

 「……それに、希望があると思います。なぜならーー」

 

 「本学付近で、荒魂の出現が確認されました。刀使は、至急出撃準備をお願いします。繰り返します。本学付近で、荒魂の出現がーー」

 

 そんな時に校内のアナウンスが舞衣の話を橫断し、荒魂の出現に刀使たちの出撃を求められる。

 

 「荒魂!?どうしましょう。私も出撃したほうがいいでしょうか……?」

 

 「そうね……柳瀬さん、一人で大変ですけど……お願いしーー」

 

 その時はさらに、ドアが軽く叩かれた音が響き。二人の刀使と一人の執事姿を仮装した仮面男が入ってきました。

 

 「一人ではありません、舞衣様。」

 

 彼の声に続いて、他の二人……元い、一人だけが自己紹介を行う。

 

 「失礼します。綾小路武芸学舎、高等部二年、木寅(きとら)ミルヤです。」

 

 「4秒で支度しな!荒魂ちゃんをぶっ潰しに行くぜ!」

 

 「七之里(しちのさと)さん、4秒では流石に短い過ぎます。せめて三十秒でお願いします。」

 

 「珍しく、彼のことを同意します。」

 

 そこで、執事服の仮面男はミルヤと呼ぶ少女と一緒に七之里と呼ぶ少女につっこむ。

 

 「ミルヤさんと七之里さん……それと、ユメさん!なんてここに!?」

 

 舞衣の視線が刀使の二人を見回ってた後に、仮面男のところに止まった。

 

 「お二人のついでです。舞衣様、私は貴女の新たな護身用の執事ですから」

 

 「それはいらないと何度もお父さんに言うのに、私はあの人……以外の執事が必要ない!」

 

 なんか表情が悲しくなる舞衣。しかし、仮面の男は彼女に影響されずに答える。

 

 「それでも、そばにいさせてください。舞衣様」

 

 「…………っ!」

 

 「おいおい、なんだ?あれ」

 

 「七之里、少し口を黙ってください。我々が入れる間ではありませんよ。」

 

 「………とにかく、柳瀬さん。出撃はお願いします。」

 

 彼女の事情を知った学長からも言い辛そうな表情で彼女達に荒魂討伐にお願いをする。

 

 「…………はい。」

 

 それを答える舞衣は悲しい顔で刀使たちを連れて現場へ参った。

 

 この場に残された執事と羽島学長は無言で向き合う。

 

 そして、数秒後に彼女から話をかけてきた。

 

 「本当にいいのですか?彼女を騙して、この新たな身分で彼女と向き合うなんて……」

 

 「それは孝則さんとの契約ですから。羽島学長こそ、彼女に何も言わないでください。柳瀬家の事情もわかっていらっしゃるんですよね?」

 

 「それは……わかりますが。ここでの数ヶ月は衛藤さんと柳瀬さんも……」

 

 「これ以上を口に出さなくでもわかります。辛い役割を演じさせて、申し訳ありません。」

 

 「それはいいのですけど、あまり彼女たちを悲しませないでください」

 

 「もちろんです。羽島学長。」

 

 彼から一礼をして、彼はすぐ「中間報告の予定がありますから、お先に失礼いたします。」とこの場から退場した。

 

 「………あまり無理しないでくださいね」

 

 彼が退場した後、羽島学長が誰にも聞こえない音量で心配の口を漏れた。




勘がいい読者さんたちは既に気付いたかもしれませんけど、事情を説明するのはこの後です。そして次回はこの四ヶ月間彼はどこで何かをしているのか、説明します。
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