可奈美のお兄ちゃんは妹のために最強の剣士に目指す! 作:黒崎一黒
「ようやく、来てくれたね。薫」
刀剣類管理局本部にある作戦指揮室に、真庭本部長はある人物を待っていた。その人物は桃色のツインテールの小柄な女の子ーー
けど、彼女の顔からは英雄様らしく凜々とした雰囲気には見えない。むしろ、疲れと不満と怒りが混じった顔。
「そろそろオレに休暇をくれませんか?クソば……本部長、オレはこの四ヶ月で休みなしで各地に飛ばされたぞ!労働基準法はどうした!」
「移動中でちゃんと休んだだろう?」
「移動時間を休暇と呼ぶはおかしいだろう!あと飛行機が満席だからって高速バスに乗せるって……どこかのブラック会社よりひどいわ!」
「そんなことはない。それよりーー」
「それよりだと!?オレを無視すんな!」
初頭から文句を言うばかりの薫に真庭本部長はお構い無しに本題を入る。
「ここ最近、ノロの強奪事件が起きた。犯人は荒魂じゃない、刀使だ。」
「は?」
突然切り出された本題を聞き、今何と言った?という顔を表した薫。刀使がノロを奪うなど、鼻で笑ってしまいそうな冗談くらいだと思ってた。
しかし、真庭本部長は結構真剣な表情であるゆえ、薫も改めて真面目に聞く。
「ここ一週間で四件、ノロの輸送車両が一人の刀使に襲撃され、全てのノロが奪われた。犯人も、その動機も不明だがな」
「おいおい、だったら護衛くらいつけたらどうなんだ?」
薫は呆れてやれやれと手を振る。そんなもの、管理局の不手際ではないかと言わんばかりに、真庭本部長は間髪入れずにそれを返した。
「つけた。二件目以降はこちらが用意した腕利きの刀使を護衛に付かせた。だが、奪われた。」
「相手は一人なんだろ?」
「それでも、だ。相手はそれ以上の手練れらしい」
「……大体、ノロを奪ってどうするんだよ。“旧折神紫派”じゃああるまいし」
旧折神紫派とは、タギツヒメに憑依されていた折神紫とその親衛隊、そしてノロの人体実験を行っていた者達の呼称だ。
タギツヒメが隠世に追いやられ、旧親衛隊は解散されて、一人はまた刀剣類管理局の下で治療中。人体実験を行っていた研究者も更迭されたため、もはや壊滅状態のはずだ。
「まさか、そうだって言いたいのか?」
真庭本部長が否定しないことから、薫は聞き返す。しかし、真庭本部長はゆっくりと首を左右に振った。
「まだ断定はできない。とにかく、この映像を見てくれ。護衛の一人が撮影したものだ」
大型モニターに映像が表示される。そこには、横転したノロの輸送車両と倒れ伏す回収班の面々。そして、襲撃犯と思われる刀使によって護衛の刀使が斬り伏せられている光景が映っている。薫は犯人の外見を確認しようとするが、その姿は黒いフード付きのコートに覆われており、手元と口元くらいしか肌が見えない。
「このように、襲撃犯はフードを被っていて顔は見えない。」
「御刀の銘は?」
「調べたが、未登録だ。」
「剣術の流派は?」
「当てはまるものが多すぎる。」
「つっかえねー」
薫は心底つまらなさそうに頭をグルグルと回す。そこで彼女は突然ある人物を思いついた。
「あ、可奈美に見せればいいだろ? あの剣術オタクなら簡単に流派がわかりそうなもんだ。」
「ああ、近いうちに衛藤にも協力は依頼する。だがこの件は今だに少数の人間しか知らせていない。」
「管理局はまた内部を疑っているのか?」
「……否定はしない」
「…………」
真庭本部長は薄ら笑いを浮かべながらそう言った。刀剣類管理局内部の大まかな敵勢力は四ヶ月前に潰したが、それは完全ではないと理解している。
「それと、本来この件はお前ともう一人に依頼するが、残念ながら彼は別の件でしばらくこっちの手伝いができない。」
「ん?誰だ?」
薫がそう尋ねると、真庭本部長はだめ息を吐いながらその人物の名前を口に出す。
「衛藤 都だ。」
「都……!?」
その名前を聞き、薫は驚いた顔を隠さない。あの決戦から四ヶ月、彼女たちは彼の情報を一切手にれなかった。そのせいで、薫以外の五人は心配で彼の手かがりを探すため、積極的に任務を受け取り各地に飛ばされた。
だが、それは薫が彼のことを関心しないわけではない。彼女はただ四ヶ月間休みなして働かさせられて疲れただけ。
「あいつは無事なのか!?」
「ああ、一ヶ月前では刀剣類管理局の所属になった。そして、お前みたいに各地で刀使を指揮する役割。」
「なぜオレたちに言わなかった!」
「機密だから。」
彼女が淡々と言い、隣のパソコンを操作する。そうしたら、薫の携帯は着信音が鳴いた。
「くれぐれもこのことを他の連中に知らせちゃいけない。最低でもお前が信用できるやつだけにこの情報を。いいな?」
周囲の近くは彼女たち二人にいないと確認した真庭本部長は薫だけか聞こえる声量で彼女に話す。
これはつまり相当に極機密の話だと薫が心得た。そして、ここでの大半の連中は信用できるやつが少ない。
「わかった。受けて立とう。」
「この任務を任せた。それと、彼のことは心配が無用だ。彼も自分の立場もよくわかっているやつだから」
薫はそれだけを聞き頷いた後、退室した。
◇
ジュワアアァァ
心地の良い、油の跳ねる音が厨房の中で鳴り響き。柳瀬家の新たな執事ユメは心の内に歌を歌えながら晩ごはんの準備をする。
「いい音!」
その時、小さい女の子が厨房に入り、鳴り響いた油が跳ねる音に耳が痺れたみたい。
「詩織様。使用中の厨房が危ないですから、身の安全を考慮して、リビングに戻ってください。」
「でも、でも。“都お兄ちゃん”がうちに料理するのが珍しいもん!」
「私はユメです。都お兄ちゃんじゃありませんよ。」
詩織ーー柳瀬詩織の言葉に彼は優しく訂正する。今の彼は都じゃない、ユメという偽身分だ。
「でも、どう見ても都お兄ちゃんだよ。変な仮面をつけても、私にはわかる!」
「よしよし、詩織様。今日は何かを食べたい?お兄ちゃんの秘密を守ったら、いくらでも作ってあげるよ」
「唐揚げを食べたい!」
「わかりました。いっぱい作ってあげるから、美結様と一緒にリビングで待ちましょう。いい子だから」
詩織の頭を優しく撫で撫でしたあと、ユメは彼女をリビングまでに見送る。その途中は三回でも頭を撫でた気がする。
彼女はどうやらこれがお気に入りみたいだ。本当にとても可愛く、愛おしい妹さん。
とはいえ、浮気はだめと彼は心の中で常に反省している。いくら他の妹さんは可愛くても、最愛の妹はただ一人で十分。
それより、彼の身分を見抜いたのはどうやら詩織と美結がいる。なぜでしょう?仮装は舞衣ちゃんさえも見抜かれなかったのに……。
それから、三十分経つところ、玄関から「舞衣お姉ちゃんだ!」という声が鳴り響き。ユメは誰か帰ってくるのがわかってしまった。
「よし、ちょうど料理も大部分完成したし。お迎えとするか」
エプロンを外して、ユメは慌てずにリビングの方へ帰ってきた彼女を迎える。
「舞衣様、お帰りなさいませ。」
「舞衣姉、お帰り。」
「お帰りじゃないでしょう?また制服のままゴロゴロして……」
しかし、彼女ーー柳瀬舞衣はユメよりソファの上にゴロゴロしていた学校の制服姿の美結の方に注目する。よく見たら、美結はソファでだるく携帯を弄っている。
「これが終わったら、着替えるよ。」
「皺になるじゃない?ユメさん、ごめんなさい。少し回避してあげて」
舞衣は美結の制服を脱く前に、一瞬だけユメの方へ見た。そして、彼はただ「わかりました。」と目を逸らした。
「むう〜〜」
「そんな顔しないの。もうすぐお父様が帰ってくるから」
「え!?お父さんが帰ってくるの?」
「はい。旦那様と柊子様が日が沈むまで戻ってくるとおっしゃいました。ですから、今日は皆様の好物を用意しました。」
「おぉ!?やるじゃない!ユメ兄」
「唐揚げ!」
「ユメさん、あまり美結たちに甘やかしすぎないでください。彼女たちは一人前になれないですよ!」
妹たちの成長に心配する舞衣は近頃美結と詩織の世話を担当するユメに少し怒る態度。そんな舞衣はちょっと懐かしい気がする。
いや、柳瀬三姉妹の交流にユメは自分と妹もかつてそんな仲良くなった気がする。
そして、この両親がまだいたこの家庭に羨ましかった。
「わかりました。そこは程々にしておきます。」
ちょうどその時、扉が開けられた声が響き。全員の視線は声に引かれてそちらへ向かうと、
「お父様、お母様。お帰りなさい。」
「お帰りなさい。」
「お帰り。」
「旦那様、柊子様。お帰りなさいませ。」
そこに現れるのは柳瀬家の家主とその妻。どうやら、予定通りに帰ったみたいだ。
そして、柳瀬三姉妹とこの場にいるユメはそんな二人を迎える。
けど、柳瀬三姉妹と違って、ユメは“喜んでいなかった”。
「はい、ただいま。」
「舞衣、少し話したいことがある。」
帰った直後、舞衣のお父さんは早速舞衣をお呼びする。そこで舞衣は「え?」という反応。
「旦那様、お先にお食事をどうですか?もう準備が済ませました。」
「話の後は食べます。美結と詩織のことを頼んだぞ。」
「………はい」
自分の依頼主に気がない返事をするユメ。彼はこの日が来るのを待っていました。けど、ほしくなかった。だから、少し焦っていた。
「旦那様、どうか舞衣様のご意思を尊重してください……」
「………部外者たる貴方に言われる筋合いがない」
柳瀬孝則に睨まれて、ユメは彼に黙らせた。
「ユメさん……」
その後、舞衣は孝則さんたちに連れされた。ユメは最後までに舞衣のことを見ていた。
俺のことを最後までに心配してくれたその顔は忘れられない……どんな相手に対しても、舞衣は優しく接する。例え、
「………舞衣様……」
ブツブツと心配そうな口で彼女の名前を呼ぶ。
「………心配しそうなら、見に行ってよ。舞衣姉のことが大好きでしょう?この鈍感兄!」
「うん、都お兄ちゃんはいつも舞衣お姉ちゃんを特別に優しく接したもんね。」
その時、美結と詩織は彼の背中を押した。物理の意味ではない、精神的に。
「いや、それはーー」
彼女たち二人に言われて、顔が熱くなるユメ。
別に彼が舞衣のことをそういう意味の好きじゃない。ただ大切にしただけ、それ以外がない………はず。
四ヶ月ぶり顔が会ってないせいなのか。ユメーーいや、都は最近ますます舞衣や可奈美のことを夢中になった。
彼女たちのことを思うと、会いたいという気持ちが強くなる。
そして、孝則さんとの契約により偽の身分で
その時、薄々気付いた。自分は彼女にどんな気持ちを抱いているのか。
「早く行かないと、舞衣姉に都
「ーーー!?それだけはご勘弁を!」
携帯をわざと持ち出した美結に都は慌てて彼女を止める。
「私はね、舞衣お姉ちゃんのことを大切にしていた都お兄ちゃんのことが好き。いつも仲良くするところを見て、とても好きなの!」
「私も。舞衣姉に幸せをするのは都兄しかい〜〜ないか〜ら!舞衣姉のことをよろしく!」
「お前ら……」
美結と詩織と共に、都を部屋の外までに押し出した。
彼女たちの方に向くと、彼女たちはいい顔をしている。あれは自分を信頼している顔だ。
彼女たちは大好きなお姉ちゃんを都に託した。
「わかった……すぐ解決にならないと思うけど、全力で尽くすよ。」
そう言って、彼は仮面をしっかり固定する。今だにユメという偽身分が必要なんだ。
「舞衣姉のことを頼んだわよ。鈍感兄」
「頑張って、都お兄ちゃん!」
「はい!」
二人を応答し、都は走り出した。目の先は舞衣がいる場所。
◇
「……舞衣、美濃関学院を辞めなさい。新しい学校は父さん達で決めているから、すぐにでも転入できる。」
両親に別室に連れされて来た舞衣は、「えっ?」とつい口に出すほど動揺してしまった。
朝は急に、彼女の父親柳瀬孝則から電話が来た時から、こうなることはある程度は予測はできたが、真正面から言われると動揺するものがある。
「話が違います。高校卒業するまでは私の好きにしていいと言っていたじゃないですか?」
「事情が変わったことぐらい理解できるだろう。任務中に怪我をする刀使も増えてるそうじゃないか、お前も随分と危険なことを潜り込んでいるみたいだな。」
確かに、鎌倉でのノロ漏出事件以降は荒魂事件が頻発し、任務中の刀使が負傷をする事例が増えているのは事実。それで刀使をやめらせた両親も娘の心配もあり、美濃関の学生も結構な数が学校をやめた。大半は刀使をやり続けたい生徒だが……。
そんな流行れの下、舞衣は刀使を辞める気が無かった。
彼女はまた親友である可奈美を追いつきたい、自分がいないと寂しくなる沙耶香を放っておけない。そして……あの人、都くんの手かがりも自分の手で掴みたいから。
それらを無視して、刀使を辞めることなど舞衣はできなかった。
「……確かに、任務中に怪我をする刀使は増えています。……ですけど、この孫六兼元は私を選び、私は刀使になることを選びました。覚悟ならできています。」
「軽々しく覚悟なんて言うもんじゃない!」
「…………!」
舞衣の『覚悟』という言葉に反応してか、それとも『覚悟』という言葉を使うほど必死になって戦う娘に何もしてこれなかったことに不甲斐なさを感じていたのを思い出してなのか、もしくは今の今まで刀使という職業が危険なものであることに気付いていなかった自分を恥じていたのか、孝則は語気を荒げて反論していた。
色々な物を背負い、刀使を辞める気などない舞衣。親として、刀使という危険な職業を辞め、平穏に過ごして欲しい孝則。
彼はもう舞衣を失うのが嫌なんだ。
「今までお前のわがままを聞いていくのはあの男、都くんのおかけなんだ。彼は必ずお前を守ってくれると、そう信じていたのだ……!だが、彼はもうお前の隣にいない。何かあっても、お前の盾にする彼はもう……」
「彼を道具扱いする口調をしないで!お父様は彼のことをそう見ているですか?だから、御前試合の時に彼のことを私の隣に送ってきたのは私の身代わりにするのですか!」
好きな人が道具扱いされることに舞衣は聞き捨てられなかった。彼女は初めてお父さんと口喧嘩をした。
「舞衣、落ち着いて。私とお父さんは彼にそのつもりーー」
「そうだ。私は最初から彼をお前を守る物としか見ていない。彼ほどお前のことを思う人間は私達以外にいなかった。」
「……………!」
孝則の口から出した言葉はなんという冷たいと思う舞衣。いつも優しいお父さんは人を利用する出来事は信じられなかった……特に都は彼女を助けた柳瀬家のヒーロー。
そんな人間に道具扱いするだと酷すぎます。彼はあんなにボロボロの身体で何回でも自分を助けた。周りの悪い口や実際にできた傷を全部受け入れて、自分と可奈美ちゃんと周りの人たちの無事だけを願ったのに……。
「お父様、さっきの話を取り消してください。都くんは道具ではありません……彼は人。私の大切な人なのです。彼のことに関したら、お父様でも許しません。」
「舞衣………」
「…………」
父親を珍しく睨む舞衣。彼女はもう学校にやめさせることで怒ることがなく、好きな人のために怒っていた。
理由は言うまでもなく、都くん……あの自己犠牲しか知らない男。
彼の存在はもう舞衣にとって家族と同様に……いや、それ以上重要なのでしょう。
これも彼が長年彼女のために色々していて、彼女の身の安全しか求めていないその自己奉献の精神のおかけ。彼は愚かな男ですが、舞衣はそんな彼に惚れた。
「舞衣、私はーー」
「失礼いたします。舞衣様、しばらくお風呂で頭を冷やしてください。ご両親にそんな言葉はいけませんから」
孝則は舞衣に何かを伝えようとしたとき、仮面の執事が突然入ってきて、舞衣の手を握って外へと連れ出す。
「待っ……!ユメさん、何をーー!?」
「“両方共は頭を冷やしたほうがいい”と判断したのです。さぁ、お風呂のお時間です。もう温かいお湯が用意しました。」
唐突の状況に理解が追えない舞衣。ユメは無理矢理彼女をこの場から連れ出す。不思議のことに彼から手を抜けない。けど、これは別に彼の力が強いわけではない。本能的に舞衣はそうしないのだ。
彼の手の感触が懐かしい……まるであの人みたい。
その後、この短い家庭争いの幕が降りた。
◇
「……私は、間違っていたのだろうか?」
舞衣がユメという偽身分を使う都に連れされた数分後、同じ室内に居た孝則はやっと冷静になって、不意に妻である柊子にポツリと言葉を漏らしていた。
「……何がです?」
「私は、柴田から都くんが執事をやらせて欲しいと聞いた時に、彼なら舞衣を説得することができると思い彼にやらせたのですが、彼は突然偽の身分を求めた。その時の私は何にも考えてなく彼の要求を応じた。なぜなら、彼ならきっと私と同じ舞衣を危険から遠ざけると協力すると信じていた……」
「なのに……私は舞衣の前に彼を利用したと言い出した。いや……それは本意なのかもしれません。私は都くんの自己奉献性を利用して、舞衣の身代わりの盾をした。もしや、その腐った性根がこのような事態を招いたのかも知れない。……私は、結局のところ自分の都合でしか考えられない愚かな父親だ。」
ソファで孝則はそう言って、猛省していた。
彼はいかにも衛藤 都が単純な子供だと知っいた。好きな人のためなら彼はどんな犠牲を払える。そんな単純な彼を利用して、舞衣を納得させ、刀使を辞めることに同意させる。その後、残るのが平穏に過ごしてもらえる生活。これ孝則の望みであった。
だが、彼は衝動的に娘の前に彼を利用したと言い出し、このような父娘が決裂する結末を迎えた。
……このような大惨事になってしまったのは、自らが相手を利用しようとした天罰なのです。娘はもう自分を許すことができない。例え、刀使を辞めさせても意味がなくなる。
「……そうですね、そうかも知れませんね。でも、あの子は単純であるゆえ、貴方をいいお父さんと言ってましたよ。」
「私はそのようなやつじゃない……彼を利用してた彼が最も嫌いな人種だ。」
「………それでも、彼は貴方のことをいいお父さんと呼びます。貴方が心の底から舞衣のことを思ういいお父さんである限り、彼がどれほどひどくされても舞衣を愛していた貴方を嫌いなどをありえないですよ。」
「馬鹿か」
「はい、娘が選んだ世界ただ一人の大馬鹿さんです。だから舞衣は彼を恋にして、そこまでに彼を守ろうとしたのです。」
「彼にひどいことをした。」
彼の良さを知るほど、孝則の心が辛くなる。これほどいい男はこの世界には彼一人しかいない。
舞衣と妹の安全だけを求める男。権力、金、利益など彼が最初から求めてないんだ。
「まだ間に合うチャンスがありますよ。舞衣にあそこへ連れてきたら、どうですか?」
「……あそこ?」
「ほら、あなたが出資を決めた研究所ですよ。」
孝則は柊子にそう言われ、稲妻が走ったかの如く、ある事を思い付く。あの二人に出資をしている研究所の研究を見せれば、もしかすると…………。
「因みに、彼は大丈夫ですから。問題なのは舞衣だけだよ。」
柊子は小さく笑って、彼女は特に都を自分の息子みたいに見ていた。
「……そうだな、それが良いかも知れん。済まんな、いつも迷惑を掛ける。」
「ふふっ、良いですよ。でも、あなたって」
「何だ?」
「都くんに負けないくらいに舞衣のことをとことん甘いんですから」
あの研究所も舞衣のことを思って出資した。結論だけを見ると、彼も都と大層の差がない。
今作では都が柳瀬家と正式関わるのは例の誘拐事件です。あれから都は特に舞衣のママと会って、かなりお世話されました。