可奈美のお兄ちゃんは妹のために最強の剣士に目指す! 作:黒崎一黒
小さい頃から、わたしは親と名乗れる存在がそばにいなかった。
あれはどういう存在なのがわからない、親が持つ他の子供の感覚もわからない。
ただ遠くで見たら、楽しそうに見える。ただそれだけ。
記憶以来、私はずっと五箇伝設置する保育所に暮らしていた。
生活が保証され、福利厚生もばっちりしている。例え金がなくても、管理局も私たちのような御刀の適正がある子供を保護します。
つまり幼いから有望の刀使たちを育ち上げる特別施設。
「は〜〜い!お菓子を食べたい人はこっちに来なさい〜〜」
「は〜い!」
「…………」
けど、そんな施設内でも私はずっと一人だった。
みんなが先生にお菓子を配られる時に、私はいつも部屋の隅で座って何もしなかった。
他人との交流がわからない、表情変化や感情表現もわからない。
そういうぼっちの私が自然に友達がいなかった。私に関心する大人たちも「この子が面倒そう。」という理由で私に近づくこともなかった。
私はずっと一人だった。
ぐぅ〜〜。
「お腹減った……」
空腹のせいで、彼女のお腹は耳も聞こえるほどの音を鳴った。
朝ごはんを食べたばかりなのに、彼女は既にお腹が減りました。まぁ、これも無理もないことだ。何にせ彼女が食べる量は他の子供より少なかったから。
そのため、彼女のお腹はいつも満足できない模様で彼女に「早く何かを食べよう!」と警告する。
「………」
それでも彼女は動じてなかった。先生からお菓子をもらえる甘え方も知らないし、いきなり子供たち集団に入るのも良くない気がする…。
それにいつも昼ごはんまでに我慢してから、別にお腹が減っても大丈夫。
「お前、なんて一人ここにいるんだよ?お菓子をもらいに行かないのか?」
「………あっ。」
そんな時、彼女は誰かに話をかけられた。
その誰かはこの度、かつてお世話された保育園に様子を見に来た(初日はこれが強制されたと言うらしい)鎌府女学院の生徒。
身長では彼女とほぼ同じ、顔はちょっと不良ぽい女の子。
「お腹が減っているだろう?だったら、お菓子をもらいに行けよ。」
「…………」
「どうした?お腹は痛いのか?」
「ううん、どうして……私に話をかけるの?」
「どうしてって……変な質問だな。」
「他の子は私に話をかけることがないのに……」
「虐められたの?お前。まぁ、アタシも似たような経験もあるから、仕方ねぇか。」
彼女がそう言って、お菓子を配っていた教師の方へ行った。どうやらその教師と何を話しているようだ。
そうしたら、彼女は教師からもらったお菓子を持ち帰った。
「ほら、食べな。」
「え……」
先輩から渡されたお菓子に少し間抜けな反応をする彼女。
なんでわざわざ自分のためにお菓子をもらってきたの?と疑問する。
「ちゃんと食べないと、身体は大きくならないのよ。だから食え!」
「………いいの?」
「いいの、いいの。どうせ無料だし。それにお前たち将来も刀使になれるかもしれないから、ババァ……じゃなかった、学長はそのことにうるさいからな。」
まだ少し不安が残っているが、彼女は先輩の好意を受け取る。
「で、お前はいつも一人なの?」
「うん……」
「友達……いなさそう。……ったく、うちの学院はそういうおかしいな連中の集まりかよ」
文句を言う口ぶりで呟きつつ、彼女の隣に座る先輩。どうして彼女はそこまで厄介な世話をするのか、本人もわからない。
「そういえば、お前の名前はなんだ?アタシは七之里呼吹、鎌府女学院中等部一年。好きな呼び方で呼ぶがいい」
「糸見沙耶香……。」
「じゃ、沙耶香で呼んでいいよな?」
「うん。」
お互いの呼び方を決めた二人。
「沙耶香はここで退屈とか感じたことがある?アタシは昔ここで住んだ時に、すごく退屈したんだ!どいつもこいつも、つまらない連中ばかり!」
「わからない……そういうの、考えたことがない。」
何もかも空っぽの彼女は何も持ってない。
それもそうか。彼女は記憶以来、親族がいないからな。そのせいで彼女は他の子より何か欠けたようだ。
「そうか……。今のうちに考えておけよ。自分の人生なんだから、もっと楽しまなくちゃ駄目だぞ!」
「楽しい……?」
「ああ……アタシも楽しむために刀使になったんだよ。まぁ、ほぼ強制されたけど……それでも今みたいに荒魂と遊ぶのは超楽しい!」
「荒魂と遊べるの?」
「うん!荒魂と戦う遊びなんだよ!おめぇにはまだわからないかもしれんけど、アタシにとって遊びなんだ。」
すごく輝く笑顔でそう語る呼吹。彼女もまた異常刀使の一人であった。
それを理解するやつは誰一人もなく、沙耶香さえも「よく、わからない。」と呟く。
「それより、おめぇも刀使になったら、早く荒魂と戦う理由を見つけろよ。他の刀使のことに興味ないけど、誰も理由があって荒魂と戦うはずだ。」
「よく、わからない……」
「今はわからなくていい。人生はまだまだ
「御刀を振る理由……わかった。呼吹」
呼吹が言っていたことを軽く呟く沙耶香。この頃はまだその意味がわからないけど……それでも彼女のその言葉は多少沙耶香に影響を与えた。
「おう!それより早くそのお菓子を食べな。食べたくなかったら、アタシが代わりに食べてもいいぞ?」
「呼吹も食べたいの?」
「いや、そこは突っ込めよ。」
「……?」
そして呼吹がわざと放った突っ込めるところを真面目に応答する沙耶香。彼女にはそういうの不得意のようじゃ。
それから一年後、沙耶香は御刀に選ばれ、鎌府の刀使になった。そして刀使の教育と高津学長の歪んだ教育によって任務に忠実する人形に変わりました。
だがそれはあくまで刀使の義務を果たす行為。決して彼女の御刀を振る理由ではなかった……。
◇
「っ!!」
森の中に鉄と鉄がぶつかる音が鳴る。
沙耶香は容赦なく、御刀を振り上げて荒魂に斬りかかろうとした。しかし、それに先回りして薫は荒魂を庇う形で沙耶香の斬撃を自分の御刀で防ぐ。
「勝手なことするんじゃねーよ」
二人の動作は決して追いつけないわけじゃないが、都はただこのような展開に反応ができないだけ。いや、もしや薫が荒魂を庇うような行動を理解できなかったかもしれん。
「どうして? 荒魂は討たないと。それが刀使の仕事」
「ああ、そうだな。確かにお前は正しいよ、沙耶香」
沙耶香の言っていることは世間一般どころか、刀使ですら認める共通見解だ。今も昔も、刀使はそのために存在している。
それでも、薫にはそれが完全な答えだとは思えない。何にせ、彼女の価値観は既に普通の刀使と外れたから。
「正しいけど、気に食わん」
「……え?」
「見ろよ、こいつを」
薫は沙耶香と刀を合わせながら、荒魂の方へと沙耶香の目を向けさせる。その荒魂の傍らには、すり寄り、笑顔で話すねねの姿があった。
「ねねはこいつに敵意を感じてない。それが何よりの証だろ」
「荒魂は荒魂、放置していたら人に危害を加えるかもしれない。だから、早く斬らないと」
「そうか、そうかもな」
薫は一歩引いて沙耶香から離れる。そして、自分の御刀をねねに向ける。
「だったら、お前はねねに同じことを言うのか?」
「それは……」
「お前たちは荒魂で、いずれ人に危害を加えるかもしれないから、問答無用で殺されて当然だって。そう言うのか?」
ねねは荒魂であっても、穢れではない。人を害さず、共に生きることのできる存在だ。それを深く知っているのは薫以外の二人である。
だが、考えていなかったんだ……。ねねはその悪の荒魂の一人、つまり滅びすべく存在。なのに、今の自分と沙耶香はそんな存在と仲良く過ごしてきた。付き合いが短いが、あ奴と楽しく過ごした。
ねねは荒魂に類する存在であることに違いはない。だが、同時に悪でもない。ねねと目の前にいる小さな一つの荒魂と一体何が違うというのだ。
「お前にねねを斬れるのか?」
「……」
沙耶香は口ごもり、御刀を持つ手を下ろす。そして、御刀を鞘に納めてゆっくりと首を左右に振った。
「駄目。そんなことできない……絶対に、やりたくない」
哀しげに、噛み締めるように沙耶香は呟く。己の価値観が正しいと思っていて、なおかつ薫の言葉に心から納得してしまったがゆえの反応だろう。
俺も似たようなものだ。これが荒魂と生活する刀使と俺たちのような普通の人間や刀使との大違った価値観である。
「ねえ、薫」
「何だ?」
「私は……間違ってたの?」
「いんや、刀使としては間違えてねーよ」
確かに、刀使としては間違えていたわけではない。恐らく、沙耶香があのまま荒魂を斬り祓っていたとしても誰も彼女を咎めない。むしろ、任務を達成した人物として評価されていたはずだ。
何にせ荒魂と刀使はお互いが長期的に敵同士なので、仲良くすることはほぼ不可能とも言える。
故に荒魂は斬るしか。それが刀使の仕事。
「ただ、刀使だからって何も考えずに斬るのを辞めとけ。よく考えて斬るということだ。」
「……まだ、よくわからない」
沙耶香は哀しげな目を伏せ、再び開く。その目にはもう悲痛の色は灯っていない。
「でも、考える。ゆっくり考えて決める。」
「おう。今はそれで十分だ」
薫は笑顔でそれに応える。そもそも、一朝一夕で完全に理解できる考えではない。理解しようと努力してくれるという姿勢だけで嬉しいのだ。
俺もよく考えろ。新人刀使としてはまだまだ未熟だ。だから、荒魂を斬る前によく考えて動く……。
俺は、何の為に剣を振るのかをもう一度考えたほうがいいかも。
「さて、こいつはどうするか」
「山から出られないようにする?」
「どうだろうな。まあ、まずは本部長に連絡して――」
薫は携帯端末を取り出そうとするが、それを甲高い声が制した。
「ねねーっ!!」
ねねだ。先程とは打って変わって、荒魂を睨み、全身の毛を逆立てている。
「……! まさか!」
薫の嫌な予感は的中した。荒魂の肉体がどんどん膨張し、リスくらいだった外見の印象はもはや感じられない。野生の象ほどの体躯は凶悪な荒魂そのものだ。
「嘘だろ……っ!」
「くっ……!」
「オォォォォォォーーー」
荒魂の振り上げられた右手は薫と沙耶香の頭上に影を作り、やがて二人めがけて降り下ろされる。察知した二人は後方へ跳んで回避する。降り下ろされた右手が地面を割り、土と砂礫が宙に舞った。
「何故、急に……」
「さあな。だが、こうなったらもう四の五の言ってられねー」
薫は写シを体表に貼り、両手で御刀を握って荒魂を突進する構え。
「薫さん。斬るのか?あいつを」
「ああ……お前たちにはまだ荷が重いだよ。お前にも刀使としての履歴がまだまだ若い。お前はあいつを斬れるのか?」
「それは……」
まだそれが迷う都はねねの方に視線を向く。さっきねねがあんなに懐く相手を殺すなんて……今になってはできない。自分でも説明できないが……荒魂に剣を振ることが突然できなくなる。
それは沙耶香も同じ。二人はまだまだ刀使としては若いから、決断など決めるのは難しい。
「よく考えて、信じて、それが駄目だったときは誰よりも先にそいつの牙を受け、剣を向ける。それが益子家の……益子薫のやり方だ。」
「俺が、ケジメをつける。そこで見届けろよ」
跳躍し、上段に御刀を振りかぶる。そのまま己の体重と御刀の重量を乗せ、一気に降り下ろす。
「きえー!!」
敵性荒魂が薫の攻撃によって両断されて、沈黙した。
これが益子 薫……いいや、この四百年益子家代々の刀使たちが伝わったケジメだ。
◇
「隊長、糸見隊員、衛藤隊員どうもお疲れ様でした。」
荒魂を討伐した後、別働隊の刀使とノロの回収班を呼んだ。現在はノロの回収作業に入っている。
そして、桐生副隊長は三人に一礼する。
「後は我々で作業を済ませますので、隊長たちは先に戻ってお休みになられてください」
「お、いいのか? よーし、行くぞ沙耶香、都。」
「……薫、切り替え早い。」
「休めるからな」
「俺が暫くここに残る。……少しここの手伝いをしたい。いいよね?薫さん」
「それはいいけど……あまり無茶するなよ。」
「はい、それはもちろん。」
彼女にそう返事したら、都は二人を見送る。
二人の姿が視線内に消えるまでに見送ったら、都は隣の桐生副隊長に向く。
「それでは俺が周囲の警備をする。ここでの警備を任せた。」
「一人で大丈夫ですか?こっちの隊員一人を分けて……」
「それは必要ない。俺は逃げ足に結構自信があるし、それと……薫さんの話により、荒魂に関することについては一度考え直す必要がある。故に、一人にしたい。」
「………わかりました。くれぐれもお気をつけて」
薫隊長に何の薫陶が受け入れられるのかを知らないが、衛藤隊員にとってはきっと悪いことではないとそう信じる桐生副隊長は彼に周囲の警備を任せた。
◇
薫はさっさとその場を退散し、下山を始めた。沙耶香と彼女の頭に乗るねねも、薫の後ろを歩く形で下山している。
「薫、大丈夫だったの?」
「ん? 何がだ?」
「ノロを奪う刀使がいるって……」
「ああ、それか。けどまあ、こんな山奥にあんな少ないノロを奪いに来ないだろ」
犯人の正確な狙いはまだ不明だが、あんな少量を奪うにしてはリスクが高すぎる。放っておいても問題はないだろう。
「それに都もそっちにいるから、多分大丈夫だと思う。あやつも生身で親衛隊と戦った経験もあるしな。」
「でも本部長から、犯人の腕は上達したらしいですよ。」
相変わらず都の心配をしていた沙耶香。この二人は舞草に来る前には既に知り合っていた。
それに彼は沙耶香に異常の関心はともかく、沙耶香自身も彼のことを相当に重視していた。
そんな二人を見て、薫も思わず彼女も可奈美と同じあやつに好意を抱いているのか?と思っていた。
「それでも親衛隊の連中より手強い刀使は可奈美とぺったん女しかおらん。万が一本当に存在していたとしても、他の刀使もいるし、副隊長もきっと態勢がまずくなった時に俺たちに助けを求めると思う。一応彼女も副隊長なんですし。」
「うん……」
「そんな不安の顔をするなって、……俺たちの手で必ずあやつを守ると昨日はそう誓っただろう?ならばそんな時には最速の速度で彼を助けに行ければいいんだ。」
不安の顔にする沙耶香を慰める薫。
彼女は実力方面で自分より強いですが…精神方面ではまだまだなので年上先輩として、彼女をちゃんと支えなければ。
「うん、ありがとう。薫」
「お礼はいいよ。さて、速く旅館に戻って休むーー」
「ねねっ!!」
そんな時、沙耶香の頭の上に休むねねは突然何かを反応しているようで彼女たちがさっき歩く道に全身の毛を逆立てている。
「クソ!次から次へと何なんだ!沙耶香、戻るぞ!」
「うん!」
そしてねねの反応から、薫たちはすぐ嫌な予感がつく。
◇
数分前。
一人で森の中に歩きながら周囲の警戒を怠けないようにする彼。
「考えて、信じて動く……今は可奈美と他の五人を守るように動くだけど。それ以外のことは全く考えてなかった……」
刀使と荒魂は敵同士。しかし、ねねと薫のような特例が存在している。ならば荒魂は必ず滅ぼすべく存在じゃなくなるってこと?
いや、そもそも荒魂は人類によって母と離れ離れになった被害者。タギツヒメもその一つに過ぎない。そういえば、舞草のお祭りの時も刀使の存在理由が聞いた。
荒魂を
ならば彼らを斬った方が彼らのため………いや、それじゃただの考えずに斬るという思考に戻っただけ。
考えば考えるほどわからなくなってきた……薫の言葉は結構奥深いだね……なんか、ちょっと尊敬するよ。
今まで考えてなかったことに悩む彼。
そもそも、元々彼はただの一般人から刀使に変わった者。本来普通に暮らし、平穏に生きられるごく普通の学生なのに、刀使の世界に乗り込んできた彼は荒魂と刀使の終わらない争いに巻き込まれた。
御前試合の時から、今になって多くの刀使たちと絆を結び、どんどん彼女たちの世界を知ることができた。
荒魂を斬る者、荒魂と暮らす者、荒魂を受け入れる者、荒魂によって短い命が延びた者……それら全ては
刀使たちが経歴した世界は思ったよりも複雑で残酷で理不尽な世界。そんな世界にて、自分は一体どの立ち位置に立つのが迷う。
最初、自分はただ可愛い妹を大事にしたいだけなのに……。今になって、もう刀使たちを放ってはおけなくなっちゃう。
「…とりあえず、今手にある仕事をちゃんと成し遂げますか。副隊長に叱られたくなーー!?」
一瞬だが、都は唐突に妙な気配を感じた。
「この気配は何なんだ……」
しかも、この気配はこの前にも感じたことがある。方向はーー。
「まずい……!桐生副隊長たちは危険だ!」
妙な胸騒ぎが起こり。都は速やかに別働隊の皆さんのところに戻る。
これはただの勘だけど。あいつはまた現れた。
ノロ強奪事件の犯人が再びノロを奪うために現れた。
補充説明:ここではとじともOVA前編から得た情報と原作でも言ってなかった沙耶香の過去を二次創作として応用してこういう出会いシーンを作りました。元々とじとも第一部のメインストーリーの内容から、彼女と沙耶香の感情が良かったと見えます。