可奈美のお兄ちゃんは妹のために最強の剣士に目指す!   作:黒崎一黒

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長江ふたばに関する話は少ないが、スマホゲームの出番も少ない故、設定に関する情報も少ない。それとデートシーンが苦手なので省略させていただきます。

#服部達夫の情報もただのゲーム内のメインストリート一話しか現れないから、知っているのは前話で説明した話しか……。


第六話:胸が騒ぐ雨

 また、あの夢を見た。

 

 あの人がまた生きているときの夢。

 

 「また勝てなかった〜!」

 

 「私から一本を取るのがまだまだ早いと思うよ、都。」

 

 自慢の顔で、ただ六歳の子供を容赦なく叩くのが俺の母、衛藤美奈都。

 

 昔から俺と可奈美はいつも母の剣術指導を受けながら、母に酷く叩かれた。それでも力を抜かれたのか、俺と可奈美は大した怪我をされなかった。

 

 「むぅ〜‼母がずるい!………いじめっ子。」

 

 それでも母に負けばなしの状況じゃ、六歳の俺がどうしても受け入れなかった。

 

 「い、いじめてないよ!ああ〜!!泣いた!」

 

 だから、毎回はわざと泣いて母に心配させる。

 

 「ほら、泣かないで〜。お兄さんでしょう?男でしょう?だから泣かないでよ!!?」

 

 そして、子供を慰めるのが下手クソの母を見て、俺はクスクスと笑った。

 

 母はしっかりした奥さんではなかった。剣術以外は下手くそ、料理もできないし、すべての家事はほとんどお父さんがやってくれた。

 

 つまり彼女が不器用な人だ。彼女が唯一できるのが俺たちに剣術を教えることだけだった。

 

 「あーー!お母さんを笑ったなあ!いい度胸じゃねぇか!」

 

 俺が母を笑うのがバレたら、母はいつも俺のことを優しく抱き上げて、ついでにくすぐりしてくれる。

 

 「あははははは、お母さんくすぐったいよ〜!」

 

 「これはお母さんをバカにしてた罰だ!」

 

 俺たちはいつも笑いながら、こんな普通でも楽しい日々を過ごした。

 

 「都……お母さんが言ってたことは本当だよ。あなたは男、私の息子、そして可奈美のお兄さん。簡単に泣いちゃうのが駄目だよ。」

 

 そして、ある日に遊びが終わり。母は俺に膝枕をしてくれた。とても柔らかくて温かい母の足。

 

 小さいの俺は結構あれが好きなんだ。

 

 「なんて泣いちゃいけないの?」

 

 「だって、あなたは私に代わって可奈美を守るのよ。いつか私はあなたより先に遠いところへ行かなければならない。だから私に代わってあの子を守るのよ。」

 

 「お母さん、私達を捨てるの?」

 

 「違うのよ、都。……できれば、私もずっとあなた達のそばであなたと可奈美の成長を見てみたい。けど、いつか離れなければならないときが来る。」

 

 「嫌だ!私はずっとお母さんと一緒にいたい〜‼」

 

 「我儘だね、都は……」

 

 泣いてた俺の頭を優しく撫でながら、涙を拭いてくれる。そういうお母さんが好き、優しいお母さんが好き。

 

 「都、お母さんと約束して。何かあっても、その誰よりも素直な剣で可奈美を守ってね。あの子は見た目が強いけど、とても弱いの……。だから、何かあってもあの子のそばにいてね。」

 

 そう言って、お母さんは今まで見たこともない顔を見せてくれた。

 

 あれは誰よりも優しい顔だ。

 

 「可奈美()を託せたぞ、(お兄さん)。」

 

 

 

 ◇

 

 

 

 せ………

 

 せん……

 

 ………ばい

 

 ………………先輩!

 

 「衛藤先輩!」

 

 「…………っ!!」

 

 強い揺れと耳が痛むほどの呼び声が都を夢から醒めさせた。

 

 「良かった、目が覚めた!」

 

 「俺……寝てた?」

 

 「うん、そうだよ。とても疲れそうに見えるから、そのまま寝かせたのですが……流石に放課後は…」

 

 そして目が覚めた先に彼女、長江ふたばという中等部の子が俺の隣にいた。

 

 なんて俺がそんな子と一緒にいるのか…。それはちゃんとした理由がある。

 

 「そうか……悪かった。作戦を作成する最中に……」

 

 「いいえ!先輩がこんなに忙しいのに……わざわざ私のために時間を作って、私の恋を応援していた。そんな先輩に悪気なんて言えませんよ。」

 

 そうだ、都がふたばの恋を応援すると決まった日以来、常に彼女に手を貸すことにした。

 

 色々相談に乗って、服部との単独時間を作る。そのおかけで、もう名前を呼び捨てという関係になれた。

 

 「うん、それじゃ早速その続きだ。」

 

 「無理しないでくださいね。私はただ先輩が助けに来ただけで十分感激です。」

 

 そう言って、ふたばはすごく心配しそうな顔をする。本当にいい後輩だな。

 

 「そうはいかないだろう?それに明日は週末。例え刀使でも休暇も取れる。そんなきたな時間を利用して、もっと先輩と一緒にいる時間を稼ぐぞ!」

 

 「本当にいいの?私のような人が服部先輩とデートなんて……」

 

 すぐそんなことを心配し始めた彼女。自分の外見にあまり自信がないのね。

 

 「大丈夫だ。美炎以下だが、ちゃんとした可愛い女の子だよ!」

 

 「なんて美炎と比べるの!それと彼女以下!?」

 

 自分の親友、元いライバルである美炎に負けることにムカついたふたば。入学した以来、彼女は勝手に美炎のことをライバルとして見た……あ、ちなみに剣術方面です。

 

 もちろん、この話も美炎から聞いた。まさに単方面のライバル関係。

 

 「うん、美炎は美濃関の中でも普通に可愛いから、お前は彼女以下ということ。」

 

 「釈然しない!」

 

 やっぱりからかうのがやめられないな。

 

 ちなみに都がここまで彼女と仲良くなれたのも、ただからかわれ易いから。

 

 「それより、デートの話に戻ろう。まず、服は一大事のことだ。初手で人にいい印象を与えられるのは服装だ。」

 

 「服か……」

 

 「そんな心配ないって言ったろう?美炎以下……」

 

 「そんな話はもういいから。」

 

 また美炎の話になると、ふたばが再び反応する。マジ面白い。

 

 「とりあえず、“長江さん”の外見では問題なさそう。なら、次に行くのはやっぱりデートの場所。……とりあえず服部先輩が好きそうなところを紹介……どうした?」

 

 説明の途中、ふたばはなぜか都の顔をじっと見つめた。

 

 「呼び捨てはしないのね……」

 

 「当たり前だ。」

 

 「でも美炎にはそうしないのね、いつ仲良くなったの?あの子と」

 

 おい、突然どうした?

 

 「正直言って、美炎のことが好き?」

 

 「嫌いではない、可奈美の親友だから。」

 

 「それは言い訳?それとも柳瀬さんのほうが好みなのかしら?」

 

 「…………どっちでもない。それよりさっきの続きだ。」

 

 「関心しないのね……まぁ、いいわ。先輩は私の恋を応援する同時に、先輩にも自分の幸せを掴んでください。」

 

 「なんの話?」

 

 「別に。デートの話を続きましょう。」

 

 そして、なぜか口調が冷たくなったふたば。彼女が伝えたいことが何なのかわからなかった。

 

 それから暫くの時間が経つと、やっとデートのスゲジュールが確定できた。

 

 「これで準備万全……と言いたいことだが、本番は本人次第だ。」

 

 「う、うん……!」

 

 「そんなに不安しなくでもいい、俺が手を貸したから、お前に自信がある!絶対先輩を落とせますよ。」

 

 不安そうなふたばを見て、都がそんな彼女を慰める。

 

 「……ありがとうございます、衛藤先輩。……そうだよね、先輩もデートの誘いも受けてもらったし。なら、先輩の期待に応えなければなりませんわね!」

 

 「その意気だ!長江さん。」

 

 「うん、今日は本当にお世話になりました。私、衛藤先輩から色々助けられました、本当にありがとうございます!」

 

 都にお礼をしたふたばはいつもの元気を取り戻したようで、明るい顔で都に感謝している。

 

 「大げさだ。」

 

 「いいえ!いつか、この恩を先輩にお返します!」

 

 「なら、服部先輩と幸せになってくれ。それは俺の望みだ。」

 

 「……本当にそれでいいんですか?」

 

 「うん、最初も服部先輩に恩返ししたいから、ここまで続けてきた。だから幸せになってほしい。」

 

 「先輩……。ふふ、なんか衛藤先輩はどういう人なのかわかってた気がする。」

 

 「え……?」

 

 クスっと笑い、ふたばは小さく微笑んだ。

 

 「だから衛藤先輩のところには可奈美と柳瀬さんがいるんですね?美炎も薄々気付いたから、ずっと三人で衛藤先輩の周りにくるくると回っています。」

 

 「それはどういう意味だ?確かにずっと四人で昼飯だが……くるくる回ることがないと思うよ。」

 

 「あ……先輩はそういうタイプなのね。美炎達が可哀相。」

 

 「なんでだよ!」

 

 「なんでもない。とりあえず明日は頑張るから、いいお知らせを待ってくださいね!」

 

 そういう言葉を残して、ふたばは勝手に鞄を持って図書室から出ていた。

 

 「やれやれ……いいお知らせを待とう。」

 

 残された都はやれやれと頭を振って、同じく鞄を持ち上げて図書室から離れる。

 

 「ん?」

 

 そんなところ、スマホから通信が来た。

 

 『今日は荒魂がまた現れたから、お兄ちゃんは先に帰ってね。』と可奈美からの通信だ。

 

 「荒魂が……」

 

 化物の名を見て、都が久々思い出した。そんな化物を退治するのが彼女たち、刀使としての役目。彼女たちは無力な人間を守るために戦ってくれた正義の味方なのだ。

 

 そして、自分もまたその無力の一人だ。

 

 「………少し勉強してから、帰ろうか。」

 

 鞄を置いて、都が図書室内で勉強し始めた。

 

 少しでも強くなりたいと可奈美を守れる刀になりたいという強い思いが都を支えた。

 

 そして、何より……これもお母さんとの約束を守るため。

 

 妹を守り、それは都が今までやり続けてきたことだ。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 降り注いて止まらぬ雨。まるで空が泣いているように見える。

 

 今週から正式に梅雨の季節に入った。

 

 毎日はほとんど雨の日なので、どうしても楽観できない。

 

 特に五箇伝の刀使たちにとってはそうです。雨のせいで普段外で行う授業もできなくなる。

 

 それところか、こういう時期の荒魂出現は特に頻繁で全国の刀使たちにもっと忙しい毎日を送っていた。

 

 でも刀使だけが影響されたじゃない。雨のせいで、鍛治科も暇で一般授業を受けている。

 

 原因は荒魂の大量発生で材料の運転が普段より遅かったからだ。

 

 でないと、一学期の大半は実技授業があったはず。

 

 「はぁ……」

 

 一般授業が一段終わったところ、都が顔を机の上に乗せてため息を吐く。

 

 「おい、衛藤。どうした?今日はやけに元気ないぞ。」

 

 そうしたら、すぐ彼に関心を持つ数人のクラスメイトがやって来た。

 

 面識がある人達だが、彼が言うには名前を覚えてないらしい。

 

 「今日からはこの様だ。雨が嫌いなのか?」

 

 (別に嫌いなわけじゃ……もっと大事な原因があるんだ。)

 

 彼は顔すらクラスメイトに向いていない。この行為は正直、腹立たしいと思わせることなのだが……安く喧嘩を売ったら、ただ打ち返される一方だとクラスの人たちは入学してからよく知っている。

 

 そしてこのクラスにおいて、都を抑えるのは田中先生しかいない。なぜだが、都はその先生の話だけを素直に聞く。

 

 「もしかして、普通の授業ではつまらないのか?」

 

 「バカ言うな!このクラスのみんなはただ授業を追いつくのが精一杯だぞ!」

 

 「お前の方がバカだろう!あんな成績じゃ卒業できないじゃん!?」

 

 「まだ一年生だから大丈夫!」

 

 「留年したいのか……お前。」

 

 ちなみに、このクラスのみんなは実技以外ではハガな人間だ。

 

 「それより、衛藤はこのクラスで一番成績優秀の男だぞ!つまらないと感じるのは当たり前じゃない!」

 

 「いや、それはお前たちが不器用すぎる……」

 

 都が思わず、クラスメイトたちをツッコんだ。

 

 彼らはあまり不器用だから、見てられない。

 

 「それで、一体何かあったんだ?お前がそこまで落ち込んでる姿は見たことがないぞ。」

 

 「………妹……妹がいないんです。最近はずっと荒魂討伐で会えなくて、舞衣ちゃんにも……」

 

 「あ………だからこうなるんだよね。」

 

 「一斉に合うな。」

 

 クラスメイトが一斉に同じことを言う姿に、少し腹立つ彼。

 

 だが、これも彼らが都のことをちゃんと見ていた証だ。いくら彼が理不尽な男だとしても、クラスのみんなもそんな彼を受け入れた。

 

 「衛藤、今は暇だろう?こっちに来い。」

 

 そして、唐突に田中先生は教室の外から都を呼び出す。

 

 「うん。」

 

 そうしたら、都が文句言わずに田中先生の方へ行った。そんな光景を見て、クラスメイトのみんなは再びこのクラスで、唯一都を抑えるのが田中先生以外にはいなかったと思う。

 

 「悪い、衛藤。少し器材室からこれらを持ち出してもらえませんか?このあと、服部も呼ぶから。」

 

 教室の外に呼び出され、田中先生はすぐチェックリストを彼に渡す。

 

 「わかった……これはなんの作業?」

 

 チェックリストに載っている必要素材を見ながら訊く。

 

 「作業じゃない。これは長船の人から求めていたものだ。お前も知ってたろ?服部のやつのおかけでアタシ達と長船は長期の交流を結ばれた。そして彼女らは技術提供、アタシ達は材料をあいつらに渡す。ちなみに長船の重要人物もここに来た。」

 

 「なるほど……つまりよほど重要のことだよね。」

 

 「そういうこと。頼めるか?」

 

 「羽島学長のためなら、任せてください。」

 

 「そこはせめて美濃関のため、と言ってくれ。……まぁ、とにかくこの件は任せだぞ。」

 

 また色々言いたいが、田中先生はひとまず頼みことを都に託した。

 

 彼ならうまくやれるのだろう。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 「なんだが、今日の美濃関が妙に騒がしいな。」

 

 服部と一緒に任された素材を持ち歩いて、中等部の館を通る。

 

 器材室から高等部への道は必ず中等部に通っていく。なぜなら外は大雨だから、流石に雨の日は外の道を歩けない。

 

 「なんのイベントかな?鍛治科だから、あまり美濃関に起こることが知らないんだ。」

 

 「まぁ、刀使のことだけか関心しないのもわかるけど……でも可愛い子に関わったら、クラスの馬鹿たちはーー」

 

 「お前のクラスもか……」

 

 「以前、可奈美がうちのクラスに来たとき、クラスのみんなが凄く盛り上がっていた。可奈美が凄く大人気で、みんなは可奈美の周りにいて、色んな質問をして来て……」

 

 「衛藤?お前の顔がどんどん険しくなったぞ。」

 

 あのときのことを思い返す度に、都の顔が段々と険しくなった。

 

 「その後、全員を平等に叩いた。」

 

 「お前……どんだけ妹のことを大事にするのよ。」

 

 都の異常さに、服部がドン引いた顔。

 

 彼がシスコンなのは知っていたけど、その妹への愛が恐ろしすぎた。

 

 「そういえば、週末のデートはどうだった?服部先輩」

 

 「………っ!?お前、なんてその話を知っている!」

 

 「………美炎から聞いた。ほら、彼女は長江さんと友人じゃん?」

 

 ふたばに手を貸すことに隠して、都が適当に理由をつける。

 

 「安桜か……言っておくけど、俺はふたばと付き合ってないよ!ただ一緒に遊んでいるだけ。」

 

 「照れ隠し?」

 

 「違うよ!お前は俺をからかうのがそんなに好きなのか?」

 

 「別にからかってないか……」

 

 (どうやら、告白するのがまだまだ先のようだ……。)

 

 ふたばの顔を思い返し、都が内心でとても疲れた気分だ。もしかすると、この恋戦(こいせん)は予想以上に時間を掛かるかも。

 

 「なら、楽しい?」

 

 「うん、楽しかった。まさか俺がお気に入りの店が知るとは……まるで誰か彼女に教え込んたみたい。」

 

 「…………」

 

 (バレてないよね?)

 

 服部の直感に都の背中が汗をかいた。

 

 「でも、最後別れたときに変な言葉が吹き込んだぞ。俺のために誰にも負けないって……どういう意味だ?」

 

 (ん?長江がそんな言葉を?変だな。デートが終わるときにそんな言葉が出ないはず……。)

 

 「…………」

 

 「衛藤……?」

 

 (それに計画内では、少なくとも「今日は楽しかった、今日のことは絶対忘れません。」と言うはず。何か変だ。)

 

 「ねぇ、聞いた?今日は中等部の子が高等部の先輩たちに挑む立ち合いがあったって」

 

 「本当?」

 

 「うん、本当。このあとの授業に体育館にあるって聞いたよ!」

 

 「たんか面白そう!行こう!」

 

 「うん!」

 

 そして、たまたま通りすがりの中等部の女の子たちの口からある話を聞いた服部と都。

 

 「お前の妹じゃないよな?」

 

 「ないない、彼女が荒魂討伐に行ったから、そんなはずはない。」

 

 「高等部に挑む可能性を否定しないのか……」

 

 「可奈美のことだから、いつか挑むのだろう。」

 

 「高等部の刀使だぞ?中等部より多く鍛えられた人材にどうやって勝つの?」

 

 それでも彼女が勝てると都が心の中にそう信じている。

 

 なぜなら自慢の妹だ。彼女が誰かに負けるのは想像がつかない。

 

 「あれ?あれは安桜?雨の中で何してるんだ……?」

 

 そして、たまたま窓側の服部が窓越して、ある人物を見つけた。

 

 その人物は安桜美炎。彼女が雨の下で走り出そうとしている。

 

 「まさか傘を持ってないわけじゃ……おい、衛藤!?」

 

 「しばらく持ってください!後で戻るから!」

 

 そして、服部の話に寄って美炎の姿を見た都がすぐ持ってるものを服部に託し、そのまま走り出した。

 

 (なんか、心が妙に騒ぐ。)

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 (早く行かないと……!)

 

 雨が降りている途中、美炎が傘を持たずに大雨の下で走り続けた。

 

 彼女は、今ある理由で傘をさす余裕なく、医務室の方向へと走っている。

 

 (早く醫務室に行かないと!)

 

 彼女の心の中、ずっとこの望みを繰り返し、一刻早くもあそこへ到達しなければならない。

 

 例え服がびしょびしょで体を粘りついてても、彼女は早くあそこへ行きたい。

 

 早く“ふたば”を助けないと……!

 

 彼女の心は自分の親友を助けたい気持ちが満ちている。

 

 「うぐっ!?」

 

 そして、ようやく建物の中に入ったとき、彼女がある物体をぶつかった。

 

 (壁にぶつかちゃった?いや……違う。痛くないし、それところが温かい…。)

 

 でも不思議なことに、ぶつかった物体と接触した一瞬温度を感じた。

 

 でも、これも恐らく自分の体が雨のせいで冷たくなったから、そういう錯覚が起こっていたかもしれない。

 

 「あ……!ここで立ち止まる時間がない!早く!」

 

 「美炎!」

 

 彼女が立ち上がり。美炎が再び走り出そうとすると、自分の手が誰かに握られ止められた。

 

 「え……?」

 

 「美炎、どうした?そんな慌てて……らしくないぞ。」

 

 手が握られる方向に見ると、あそこにいるのは地面に座っていた紫髪の男性。

 

 彼が美炎とぶつかり、地面に倒れた。

 

 「都……先輩!」

 

 「うおっ!美炎……っ!?」

 

 相手の身分を一目で確認したあと、美炎がすぐ衛藤都を強く抱いた。

 

 そして、わからないまま抱きしめられた都がとても混乱していた。

 

 美炎の体がとても冷たいけど、柔らかった……。見た目は大したスタイルが持ってないのに、それでも女の子の体が柔らかい。

 

 一言を言うと、美炎のせいで都が凄くドキドキしている。多分、これも都がまだそんなに女性と触れ合う経験がないから。

 

 「都……先輩……助けてください」

 

 都のことを強く抱きしめ、美炎の声が震えている。

 

 「美炎………?」

 

 そして、さっきまで美炎の体で混乱し続けた都も美炎の異常に気づき、やっと普段の彼に戻った。

 

 今、彼を抱きしむのが何かに怯えている女の子。

 

 いつも元気でバカ発言をした美炎は今、まるで別人みたいだ。

 

 「どうしたの?そんなに怯えて……」

 

 「都先輩、ふたばのことを助けてください!」

 

 「え………?」

 

 「ふたばのことを助けて!」

 

 そんなとき、都がやっと胸が騒ぐ原因を見つけた。

 

 今日は嫌な一日になりそうだ。




沙耶香の件以来、二回目事件の展開。シナリオとしては早すぎた展開だが、本編前ではあまり長く書きたくはない。
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