可奈美のお兄ちゃんは妹のために最強の剣士に目指す!   作:黒崎一黒

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いよいよ、アニメ18話の終盤が迎えました。十話に近いほど長い話になりました。いざと思えば長かった、短かったような話でした。

そして前回について少し内容を修繕しました。

#今回の内容も修繕しました。


第58話:覚醒

 九年前ーー

 

 

 

 

 「む〜〜また負けた!」

 

 家の小さいの庭でほっぺを膨らんで、都はまた母に負けたことで拗ねている。

 

 いくら母の技をコピーしても、母から一本を取れない。毎日はあんなに頑張っているのに……。

 

 「ふふっ、師匠から一本を取れるなんて甘い考えだね。」

 

 「くぬぬ〜」

 

 「にぃ!つぎはかなみのばん!」

 

 さっきまでずっと観戦していた衛藤家の可愛い妹担当の可奈美は兄が負けたのを見て、すぐ木の剣を持ってきた。

 

 この時の可奈美はまた五歳。お母さんの教えの下、彼女は兄のような剣術バカになりました。

 

 「ぐぬぬ……」

 

 都はまた拗ねているが、最後は大人しく妹に母との稽古権を譲れた。

 

 元々交替制で母と稽古すると約束したから。

 

 そしてまた幼い可奈美と交代した都を見て、美奈都は微笑む。いつも幼い妹に優しくする息子は美奈都の誇れだ。

 

 「さぁ、次は可奈美だね?よし、かかってこい!」

 

 「はぁ!」

 

 都が退場した後、美奈都と可奈美は早速手合わせをする。もちろん身長差と体力の差があるから、美奈都も手抜いて可奈美の攻撃を次々と解かす。

 

 もはや子供対大人……いや、実際にそうでした。

 

 「お疲れ、都。」

 

 「お父さん!聞いてよ!またお母さんに負けた!」

 

 お父さんの隣に座って、都は早速自分のパパに文句を言う。

 

 「それは気の毒ね。お母さんは若い時……いや、今も若い。とにかく、とても強いのよ〜‼お父さんも一度も彼女から勝ってなかった。」

 

 「お父さんはお母さんに勝負を?」

 

 「うん。こう見てないでお父さんは学生の時、よくお母さんと手合わせしたの。同じ流派だしな……」

 

 昔話を語って、都のお父さんは都に氷水を渡す。今頃は夏だし、こういう天気には水分の補給は大事。熱中症で死ぬ人もたくさんいるし、そこはちゃんと注意しないと。

 

 「あの頃のお母さんは滅茶苦茶強くて、勝負に拘る私はずっと彼女に何度も挑戦していたが……ずっと負けばなし。……正直悔しかった。」

 

 「お父さんでもお母さんに勝てないの…?」

 

 「うん……恥ずかしいですが、お母さんの前にお父さんはずっと負けたままだ。先にお母さんに恋を落ちたのもこっちの方だし。」

 

 そう言って、お父さんは少し照れくさい顔をする。正直気持ち悪いが、お母さんのことを真剣に愛するお父さんが嫌いではない。

 

 「そんで、お母さんに恋した私は卒業前、彼女に最後の挑戦を挑んだ。が、結局ボコボコされた一方だ。」

 

 「うえぇ……」

 

 お母さんの強さにまたキモく感じた都はそれらしい顔をした。お母さんは何もかも強すぎた。

 

 「でも、その戦いの末に私はあることを悟った。ねぇ、剣の最高の境界って、どうやって辿り着くか知ってる?」

 

 「えっと……えっと……わかんない!」

 

 お父さんから投げつけられた質問に都が悩む顔をしているが、最後は誠実にわからないと答えた。

 

 まぁ、この年頃の子供たちに剣の最高の境界を聞いても、わからせるのも無理の話だ。特に都と可奈美はまだまだ幼い子供だ。

 

 「剣心一如(けんしんいちにょ)。剣は人なり、剣は心なり。人の心と剣は、同じもの。剣は人の心によって動くものである。それを悟れば、己の剣をさらに高く上の段階に行く」

 

 「えっと……えと?」

 

 頭を傾く、都はお父さんの言っていることをさっぱりわからない反応。

 

 「アハハ、理解するにはまだまだ早いかもしれないね。でも剣の道を歩き続いたら、いずれわかる時が来るだろう」

 

 都の頭を優しく撫でるお父さん。彼は自分の息子もいつかあの境地へ辿り着くのを楽しみしている。

 

 何せ、都は彼と美奈都の子供だから、きっといつか悟るだろ。

 

 「ま〜〜け〜〜た〜!!」

 

 遠くて可奈美の負ける声が聞こえた。今日もお母さんにボコボコされたのね。

 

 「………」

 

 「もう行くのか?」

 

 「うん、かなみを慰めた後に私の番だ。そして、日が沈むまでにやるのです!」

 

 そう言って、都は急ぎに可奈美の方へ兄らしく妹を甘やかす。可奈美が誕生した後、都はずっと妹の可奈美を大事していた。

 

 まぁ、時々剣で妹をいじめるのですが………それでも兄妹の仲がとても良くて、見ただけで微笑ましい。

 

 「きっと辿り着くのよ……“ゼロの境界”に」

 

 自分の子供を見守るお父さんはそう呟いて、あの日のことを思い返す。

 

 「守りたいものがあったこそ、人が強くなる。私も剣以外にすべてを失った美奈都を救いたくて、彼女に挑戦してプロポーズをした。」

 

 都に言えなかったのは、自分が実は美奈都から一本を取れたこと。……いや、あの時は運が良かっただけだ。

 

 ただいたずら彼女の心を救いたくて、自らの意識を無にする。そこで何となく彼女に当たることができた。

 

 本当に奇跡のような一時だった。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 剣心一如……昔、お父さんが俺に教えた剣の最高の境界。

 

 あの時の俺はまだその言葉を悟れなかった……ううん、今でもわからなかった。

 

 魂と自我意識がないものは、どうやって心を通じ合うのか……。そもそも、ああいうのはアニメや小説などしか出ないシーンだ。本当に現実で剣と感じ合えるのか?

 

 いいや、今はしばらく現実向きの疑惑を捨てろ。そんなことを拘ると、前に進むことができず、何もできない自分に戻ってしまう。

 

 そういうの嫌いなんだ。もうあの時みたいに剣を怯えて、可奈美たちを救うことに迷うな!

 

 ーーだから感じるんだ、剣を。

 

 もしお父さんが言っていることが本当なら……俺はさらなる高い境界へ行く!

 

 もっと強くならなくちゃ、可奈美たちの力になれるよう俺は何度でも立ち上がる。

 

 ーーもう失うのがごめんだから!応えろ、雪。俺の思いを知れ、俺に答えろ!

 

 

 

 キィィィィ――――。

 

 

 

 自分の思いを剣の方に集中させ、耳障りでよく響く音が脳を反応させた。

 

 「“やっと私の声を応じたのね”」

 

 しかし、その次に聞こえてきた声は聞いたこともない人の声だ。

 

 「…………!?」

 

 その声の方向に向くと、元は何もない、光もない空間は一瞬に真っ白の空間に変化された。

 

 そして白い霧の中から一人の少女の姿が現れた。

 

 銀色の長い髪の少女。彼女の身体に纏っているのは美濃関学院の制服。そして彼女の首辺りは青いマフラーが纏っている。

 

 「あなたは……?」

 

 「雪。あなたの御刀。」

 

 「えっと……はい?」

 

 少女の言葉に都は一瞬反応ができなかった。

 

 俺の刀?どう見ても一人の少女しか見えないのですが……それに刀なら持っているよ?

 

 「その反応は……私のことを疑っていますね。……でも、それも人として極普通の反応ですので、仕方ありません。」

 

 「え、あ、そのー?」

 

 少女は勝手に納得する顔をして、都はさらに混乱してきた。

 

 「なら改めて説明します。私は江雪左文字、あなたが持っていた御刀です。この姿はより安く対話するためにあなたの心層意識から私への幻想を取り上げ、作り上がった姿です。」

 

 「幻……幻想!?この美少女か?」

 

 「うん、多少自己改修のところがありますが……ご主人の前に自分のいいところを示したい思いも確かにあります。……どうですか?ご主人。」

 

 都の前に少し自己展示のような動作をした少女。正直美少女という形容が現れた時は、既に滅茶苦茶似合っている。

 

 「すごく似合っているけど……」

 

 「そう……」

 

 都の褒め言葉を聞いて、僅かにマフラーで顔を隠そうとしてた少女。よく見れば、彼女の顔が少し赤く見えます。

 

 これは照れる反応だよね。……やっぱり普通の女の子にしか見えないな。

 

 「それより、あなたは本当に俺の御刀なの?」

 

 一旦本題に戻って、俺は江雪左文字を自称する女の子に再び聞く。流石に刀が美少女になるとは現実から離れすぎた。

 

 「うん、間違えなく私は江雪左文字。あっちは本体だけど、こっちは意識の集合体と言ってもいい存在。そして、これはこの空間 (隠世に近い質の世界)だけにおいて起こす奇跡のような現象。」

 

 「この空間……。ねぇ、今更だけど…この空間はなんですか?なんで俺はここにいる?」

 

 それと、なんだかもう何回もここに来た気がする。ここに来た覚えがないはずなのに……。

 

 「その話については、あちらの方に聞いたほうがい解明できますよ。」

 

 「バレたのですか。……流石、神の力を宿っている神聖の刀。」

 

 雪の視線に追うと、そこにはもう一人の女性が白い霧から現れた。

 

 彼女は桜色に近い黒い髪の女性。何か何処かで見たような顔だけど……全然思い出せない。

 

 「ここは愛宕の意識世界。お久しぶりです、衛藤 都さん。それと、初めまして江雪左文字さん。まさかこんな不思議の現象が起こるなんて……史上初の男性刀使の名は伊達ありませんわね。」

 

 「あなたは……俺と初対面じゃないですよね?」

 

 「多少……私のことを覚えてくださったんですね。ですが、貴方の安全のために私のことをあまり気にしないでください」

 

 和服の女性はそう言って、なんか寂しそうな表情が顔に写っている。

 

 「さっきこの子のことを江雪と言ったな?やっぱりこの子は俺の刀なの?それと愛宕の意識の世界ってどういうこと?俺のこともよく知っていますよね?貴女は誰?」

 

 一気に思い浮かんだ質問を彼女に投げる。こういう行為は良くないと思っていたが、分かりたいことがいっぱいある。

 

 それと、この世界に来る前のこともうまく思い出せない。そのことにとても気に食わないのだ。

 

 何か大切なことを忘れた気がする。

 

 「まず、前回……前々回が説明した通りにこの世界は貴方の意識を死者の世界に送らせないように作られた世界です。それと、この会見はもう何回でも起きたもので、私が単方面であなたのことが知っています。なぜなら、貴方がここから出ればここのことを忘れてしまう」

 

 「色々と凄い情報を湧いてきましたけど、まず俺はまだ死んでいないですよね?」

 

 「ええ……かなり危ない場面になったけど。私の力によって命の別状がないのです。」

 

 「そうか……ひとまずありがとうございます。」

 

 「いいえ、私に感謝するのも早いことです。まだ危機が解けません。特に貴方が倒れた後に千鳥と小烏丸と他の四人たちもタギツヒメに倒された。このままじゃ全滅されちゃいます。」

 

 「千鳥と小烏丸………まさか、可奈美と姬和のことか!?」

 

 一瞬二人のことを思い出した都はやっとここに来る前のことを思い出した。

 

 自分がタキリヒメの消滅によって衝動的にタギツヒメに挑んだが、結果はタギツヒメの一振りを浴びられた。

 

 そんで自分が大傷負われたことによって可奈美たちは必ず何かをしようとする。最悪の場合は、俺の仇を討つ為にタギツヒメと戦うのだろ。

 

 それはだめだ!自分が言うのは馬鹿馬鹿しいですが、タギツヒメはもうとんでもなく強くなっている。可奈美たちは危険に遭われるかもしれない。

 

 「ぐっ……!早く俺を可奈美たちのところに返してくれ!俺は一刻早く彼女たちを助ける!」

 

 妹たちのことを心配している都は女性の方に願う。けど、彼女は頭を左右で振って都の願いを断る。

 

 「なんで返してくれないの!可奈美たちは殺されちゃうよ!」

 

 「駄目です。今の貴方じゃ生き返っても全員を救えない。タギツヒメとの実力差もよくわかっているんですよね?」

 

 「それは……」

 

 確かに全力かかっても瞬殺された。だが、このままじゃ可奈美たちは死んちゃう!それは絶対に起こさせたくない!

 

 もう誰を失われたくない!

 

 「………その誰も失われたくない気持ちもよくわかっています。けど、今の貴方は無力なのも事実です。」

 

 「それでも……!」

 

 都がどうしても彼女たちを助けたい顔を見て、女性は少し昔の自分の影が彼と重なっているのを見えた。

 

 彼女も仲間たちを救うため、何度でも危険の戦場に入って何とか踏破したけど……最後の戦いで彼女は自分の無力を知った。

 

 それはどれほど辛い思いなのか、彼女はよく知っている。

 

 だから彼女はこうしてこの少年を導き、彼に自分がかつて歩いた道を歩けさせたくない。

 

 「彼女たちを見殺しなんて耐えられませんのね……でも、これも貴方と彼女の繋ぎがまだまだなのが原因です。」

 

 女性は雪の方へ指差し、より明白にこう言う。

 

 「はっきり言わせていただきます。貴方はまだ彼女の力をうまく発揮できないのはタギツヒメに敗れた敗因です。」

 

 「え……?どういうこと?」

 

 「本来刀使の力……写しの継続さは精神力に決めるものです。精神が強くければ強いほどに刀使の力をもっと発揮するものですが……貴方は違います。精神力がいかにも強力でも、あなたの写しは一瞬しか発揮できません。」

 

 「それは……」

 

 確かにこの弱点がいなくなったら、タキリヒメも私を庇ってタギツヒメに吸収されないはず……。

 

 俺はタギツヒメの前にもう四連敗になった。それは刀使としたの力が足りなかったからなのか……。

 

 俺は自分が五ヶ月前より強くなったと思ったんだけど、実際はまだまだ弱い人間だ。

 

 刀使も最低の階段に留まっている。つまり俺は最弱であることはずっと変わらない。

 

 「けど、それは決してあの子が貴方を認めてないわけではないですよ。」

 

 「え……?それはどういう……」

 

 「あの子は貴方を完全に認めているから、こうして人としたの姿で貴方の前に現れるのよ。そうでしょうか?江雪左文字さん。」

 

 女性の言葉に頷く雪。

 

 てっきり彼女は俺のことを完全に認めてないから、ただ一部の力を貸していると思ってた。

 

 「ご主人は私のご主人。今でもご主人のことを誇っています」

 

 「雪……」

 

 「これこそは御刀と刀使としたの絆です。御刀は主人への忠誠は戦国時代の武士に負けません。」

 

 「とはいえ、御刀との同調率が完全じゃなければ、いくら絆が強いでもその力が発揮できません。それは貴方が刀使の力をうまく発揮できない主因です。」

 

 俺と雪の同調率………。

 

 「でも、それも貴方の身にしか起きないことです。男性の身だったのか……御刀との同調率が女性より低かった。」

 

 なるほど、つまり俺は男だからこういう欠点が生み出されたのか。………まぁ、そりゃ納得する。

 

 元々刀使は女性がやるものなので、俺のような男性はまさにイレギュラーのような存在。

 

 「それを上がるため、都さんは彼女をもっと感じるんのです。自分の御刀のことをもっと知れば両方の同調率も上がります。」

 

 「それって……」

 

 「ご主人がさっき私にしたことです。強い思いを私にぶつかってください。そうすれば私も自分の思いをご主人にお伝えいたします。」

 

 「古来の人々ではこれを一心同体と呼びます。ただ今度は刀と同体しますね。」

 

 つまりこれは剣心一如ということ?俺と雪の同調率を上がるためにそのような境界が必要ってこと?

 

 俺、できるかな……。

 

 「大丈夫です。ご主人。」

 

 「雪!?」

 

 雪は不安の顔をしていた都の手を握る。そしたらとても柔らかく冷たい感触が伝わってきた。

 

 冷たっ!?これは雪の体温?雪みたい……。

 

 「私は必ずご主人の思いを応えてみせます。貴方の御刀として思い存分にご主人の力になってみせます。今度こそ私をうまく扱ってください。ご主人の思いを応えるのは(御刀)々の存在意味ですから」

 

 「………存在意味…」

 

 荒魂と違って、御刀は人々との共存を望んでいる。……ううん、荒魂も多分そうだ。ねねという特例がある。

 

 ……タキリヒメもきっと本物の共存をわかっていたから、俺を手助けに来て犠牲になった。

 

 彼女が最後で言っている言葉も人という可能性を信じていた。……そうか。タキリヒメの遺言をようやくわかった気がする。本当に気付くのが遅いわね、俺は。

 

 「ご主人?」

 

 都がぼっとしているところを見て、雪は頭を傾く。

 

 「なんでもない。雪、俺たち二人はもっと高く飛ぶわよ。高く、遠くへ飛ぶ!母の御刀千鳥に負けないくらいに」

 

 「………?ご主人の望みなら、どこでもついて行きます」

 

 彼女は淡々と都に応える。流石に自分が望んだ燃える反応が返って来ないのか……。

 

 「雪、改めてよろしく」

 

 「よろしくなのです、ご主人。」

 

 その後、二人は当場で同調し始めた。

 

 最初はただちょうどいい暖かさを感じたけど、段々と共鳴の鳴り音が脳内に響き回していく。

 

 最初はうるさい音だと思っていたけど、不思議なことにいい音に変わった。

 

 これが御刀と同化していく感覚なのか……。

 

 「………どうやら、上手くいたみたいですね。」

 

 都の身体が白い光に包まれていく光景を見て女性は微笑む。

 

 彼は色々と凄い異性だ。最初は彼の強い意志を感じて彼を選んだけど……どうやらそれは間違っていなかった。

 

 彼は驚く才能を持つ、揺るげない信念を持つ、人思い、他人のために自分の安全を危険に晒し出す。そういう人だからこそ“三本”の御刀に認められた。

 

 どこまで成長していくのか、女性も思わずに期待してしまう。

 

 「……頑張れ。あなたならきっとできるはずです。誰でも幸せそうな未来をその刀と一緒に斬り開きましょう。」

 

 そう期待して、女性は彼を元の世界に帰らせた。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 現在に戻るーー

 

 

 

 

 「ーーーーー」

 

 「…………っ!!」

 

 刀と刀がぶつけ合う音がこの空間に響く。タギツヒメは本能的に急ぎに御刀で防御する。

 

 しかし、タギツヒメに襲いかかってきた攻撃は途切れずに彼女をねねから離させる。やがて、彼女は一旦相手と距離を離れる時、胸あたりが確実に斬られた。

 

 「………我は斬られただと!?いや……それはありえない!それより、貴様は……!」

 

 驚かされた反応を隠れできず、タギツヒメはその者が今目の前に立つのを信じられなかった。

 

 これは未来視さえも予知できなかった未来。そいつは生きるはずがない!その人間は確実死んだと確定したはずだ!

 

 「ねね、ゆっくり休め。これからのことは俺に任せろ」

 

 「ねー………」

 

 元の小さい姿に戻ったボロボロのねねが彼に一声で応えた後、気絶した。

 

 本当によく頑張ったな……今夜のMVPはお前だ。

 

 「ありえぬ、貴様は死んだはず!」

 

 「ありえるよ、こうして対話するのが何よりの証拠でしょう?」

 

 「…………!?」

 

 迅移を用いての加速、そして神速の斬撃が彼の腕から繰り出される。

 

 「早い……!?」

 

 「俺はもうさっきの俺と違うのよ!タギツヒメ!」

 

 神速の斬撃を繰り返す都。彼はタギツヒメと激しい戦いを当場で広がる。

 

 その一方、倒れた可奈美たち共々が目の前に起こす奇跡に信じられない反応。

 

 「あ……あれは………」

 

 「う……そ…………」

 

 「……………」

 

 「み……や……こ……?」

 

 「………生き……てんの……か?」

 

 「……ミヤ……ミヤ……」

 

 あの人は生きていた。死んだはずの傷を負われて、致命量の血が流されているのに、彼は再び立ち上がりタギツヒメに挑んだ。

 

 非常にありえない、常識外れた現象だけど。

 

 「お兄ちゃん……生きて……いる……」

 

 涙が止まらず、可奈美はそのまま泣き出した。大好きな彼が生きていたことに可奈美は良かったと思う。

 

 本当に……本当に……良かった。

 

 その他の皆も思わず涙がボロボロに落ちていて、彼が生きることに歓喜している。

 

 「都くん……くすくす……」

 

 「お前……」

 

 「(無言に泣いている沙耶香)」

 

 「馬鹿野郎、俺たちに心配しやがって」

 

 「ミヤミヤ……!(泣いている)」

 

 そして戦闘はまたまた続く。

 

 「ありえぬ!なんで貴様は我の速度に追いつける!」

 

 タギツヒメは連続迅移で後退する。しかし、都は同じように追い付いて斬る。

 

 「はぁ!せっ!どや!」

 

 「しつこい……!我はタキリヒメと融合しているはず……なんで貴様ごときの人間に……いや、待って!その状態は!?」

 

 迅移を連続使用しているタギツヒメは数十回以上の攻防の途中にあることを気付いた。

 

 “彼の身体に纏う写しは一回でも解除されていない”。

 

 「貴様、刀使の力をうまく扱えるようになったのか!」

 

 「ああ……お前のおかけだな!やっと御刀と一体になった気がするよ!とりゃあぁァァ!」

 

 「ぐっ……!」

 

 都の攻勢はさっきより激しくなる。

 

 そこでタギツヒメは少しだけ苦戦していると気付いて、ムカついている。

 

 やっとタキリヒメを吸収したところ、いよいよ宿敵たる千鳥と小烏丸を簡単に倒せたというのに、現在は死んだはずのあいつに抑えられている……?ふざけるな、我は禍神だぞ!

 

 「金色の目……龍眼を使うのか」

 

 タギツヒメの目が金色になっているところを見て、都はタギツヒメの動きを読みながらそう呟く。

 

 「そうだ。二度我の前に現すんじゃない、邪魔虫!」

 

 「なら、こっちも本気で行くぞ!」

 

 超集中の状態に入り、都は未来視を使ったタギツヒメに立ち向かう。

 

 彼女の動きを先に読むため、都は自らを極限の状態に入り、次々とタギツヒメの攻撃を解かす。

 

 もっと先のことを見る!見なくちゃ!無数の可能性がある未来を見て選択する相手が選択する一瞬に彼女が何かをするかを見破って、最良の対応を最短の速度で実現する!

 

 「バカな……これはありえぬ!」

 

 未来視を使っても自分と互角で戦う都を見て、タギツヒメはさっきから驚きが止まらない。

 

 彼の成長速度がびっくりするほど早い。しかも、タギツヒメが彼の身体から見えたのはーー

 

 「……ッ!」

 

 物凄い突刺攻撃により、タギツヒメが遥かに退かれた。けど都は動きを変え、さらに突いて彼女を迫る。

 

 「あれは……うぐっ!」

 

 床を強く踏んで強力な正面斬撃攻撃でタギツヒメをぶっ飛ばす。

 

 ねねに倒された近衛隊も衛藤 都がタギツヒメを抑えたことに驚く。

 

 彼の剣技はとんでもなく強い。しかも……あの型は。

 

 「あれは、此花さんの技だ……」

 

 近衛隊より先に言ってしまった可奈美。彼女はさっきまでは泣いていたけど、都がタギツヒメと同様速度の迅移を使うと同時に剣技も使うところを見て、いつの間にか泣くのを止まった。

 

 「可奈美、それはどういう……」

 

 涙を拭いて、姬和は可奈美に聞く。

 

 「お兄ちゃんは親衛隊の此花さんの技を自分のものにしたのよ。」

 

 「なに?」

 

 可奈美の言っている言葉に姬和はちょっとわからない顔をする。

 

 でも、可奈美は寿々花と実際に戦ったからわかっていたんだ。此花寿々花が持つ特有の技を……。

 

 相手が迅移を使うタイミングを読む。それが寿々花が現役の刀使の中でも個人戦闘では最強クラスの衛藤可奈美とある程度渡り合うだけの実力を持つ理由だ。

 

 まさか、お兄ちゃんはそれを習得していたなんて……ううん、それだけじゃない。

 

 「それだけではない……結芽ちゃん、沙耶香ちゃん、獅童さんと私とお母さんの剣技もお兄ちゃんの剣に含まれている。」

 

 「それって……」

 

 「おいおい、そんな馬鹿な!?」

 

 可奈美の口からそれを聞いて、みんなは信じられない反応をする。

 

 いくら才能があるとはいえ、多数の流派を持ちながらタギツヒメという未来を見通す化物を抑えるだなんて…普通の人間では到底できない挙動のはずだ。

 

 なのに、彼はそれを成し遂げた。本当に、この(チート)にしてこの兄かよ。

 

 「……これをうまく運用するのは、かなり高難易度の出来事。」

 

 「沙耶香ちゃんの言う通り。あれは恐らく、都くんしかできない絶技だと思う。」

 

 常人を超えた集中力があるなら、ある程度にできるかもしれない。しかし、同時に脳は大きな負担をかかる。

 

 あれほどの集中力を消費したから、きっと精神力も大きく削られるでしょう。

 

 そのリスクを第一時間に理解するのは彼の異能をよく理解している可奈美、舞衣、沙耶香三人しか。

 

 「なるほど、我と戦っているのは貴様一人ではないのか………面白い技だ。」

 

 「…………」

 

 「だが、これを運用するために膨大の計算も必要だったら、貴様もこの状態を長く持たないだろ?人間である以上、貴様たちは限界というものに縛られている。」

 

 戦いの最中にタギツヒメも都の剣が多数の流派が含まれていることを気付き、そして都の弱点も気付いた。

 

 「だから、なに?お前も限界があるじゃないのか?今みたいに俺を殺せなかったのは何よりの証拠よ!」

 

 「チッ…!すぐ貴様を冥府へ送ってやる!」

 

 両方が再び激しい攻防戦を何度も繰り返す。両方の戦意は今までもない高ぶっている。

 

 今のタギツヒメとここまでに戦えるのは恐らく刀使の力を覚醒している都しかいない。

 

 かつて折神 紫はこう言った。彼はもしや刀使だったら全力の燕 結芽と戦えるって、その話はまさに今の体現だ。

 

 そして折神紫もタギツヒメを倒すため、わざと彼という異質を放任した。

 

 二人の鳥と同じ、折神紫がわざと隠した対大荒魂用の切り札であった。

 

 「紫ーーー!!」

 

 そのことをいよいよ察したタギツヒメは怒り起こし、凄まじい速度の連続斬撃を繰り返す。

 

 けど、それも彼に次々と解かされて反撃された。しかも、不思議なことに彼の刀に斬られたら、千鳥と小烏丸のように自分に修復不可能のダメージを与えた。

 

 これはどういうことなのか、タギツヒメはもう考える余裕がなくなった。目の前の人間は確かに折神紫を超えた。

 

 ーーけど、それも戦いが長く延びることで戦況が大きく変わった。

 

 「………ぐっ!」

 

 「やっと……限界のようじゃだな。」

 

 腹の部分が痛みが走る。

 

 急ぎに後ろの方へ回避する都は腹が貫かれた痛みに辛い顔をしている。幸い写しがあるようで無傷であったが……それでも前で受けた傷はまだ残っている。

 

 「お兄ちゃん!」

 

 「都!」

 

 「都くん!」

 

 皆の心配の声が後ろから聞こえてくる。後ろには最も守りたい人たちがいる。

 

 彼女たちを必死に守って、ボロボロになったねねもいる。

 

 ここまで来て、この場から引くわけにはいかない!

 

 「ほぉ……写しはまた保つのか。何という強い精神力だ。そこにいる千鳥と小烏丸はただ一撃を受けたあと、あの様になっていたぞ。」

 

 「黙れ!お前は可奈美たちの悪い口を言う資格がない!」

 

 タギツヒメが可奈美たちを舐めた口を聞いて、都は怒りの声を口から放つ。

 

 でも、これも仕方ないことだ。タギツヒメはいよいよ彼が限界になったのを待ってましたから。

 

 「人を守りたいからこそ、人を必要ない我に勝てぬ。」

 

 「勝てるさ。すぐお前に見せてやる……人の強さを!」

 

 刀を突刺の構え。都は全身全霊でこの技にすべてをかける。

 

 「ふん、この一撃で終わらせてやる」

 

 同じくタギツヒメもそろそろ決着をつけるため、二天一流の構えを取る。

 

 「……すぅ……はぁ……」

 

 雪、結芽。力を貸してくれ。今ならこれを完成させるかもしれない。超集中により、さらに一体になった“私たち”ならあの伝説の絶技を再現させるかもしれない。

 

 深呼吸し、都はこの三ヶ月絶えずに鍛え上げた天然理心流最高極致に至る心得を心中に読み返す。

 

 「行くぞ!」

 

 一歩音越え、二歩無間、三歩絶刀。

 

 「天然理心流奥義・無明剣『三段突き』!」

 

 両方が高段階の迅移で同時に姿を消した。そして勝負はこの一瞬で決まった。

 

 「…………ッ!」

 

 「…………」

 

 タギツヒメの左腕が空中から地面に落ちる。彼女の腕は都に突き飛ばされた。

 

 「お兄ちゃんが……」

 

 「タギツヒメの腕を……」

 

 「突き落とした……!」

 

 それを見届けた可奈美たちは驚愕の顔を収まらない。だって彼がタギツヒメに重傷を与えた。

 

 「と……届いた。」

 

 「……これは驚いた。まさか我はここまでやられるとは想定外だ。」

 

 重傷を負われたタギツヒメは失われた腕を抱いている様子。今の彼女はもう前の余裕が見えない。

 

 「認めよ……貴様は我が理想を阻む最大の脅威だ。次に会った時はイチキシマヒメを吸収して、貴様とまた決着をつける」

 

 「逃げる気か!お前はここでーーうぐっ!?」

 

 都はタギツヒメにとどめを刺すと、突然写しが解除され、片膝が地面に崩した。

 

 「ふん、あれほど大脳に大きな負担をかかっていたから、ただ無事じゃ済まないと思わないぞ」

 

 「クソ……!」

 

 「ヒメ!無事か!」

 

 「ヒメを守れ!誰にもヒメに近づけさせるな!」

 

 「「「はい!」」」

 

 そんな時、步たち以外の近衛隊もこの場に来て、タギツヒメを守ろうとした。

 

 「増援か!」

 

 「クソ、またこんな数がいるかよ!」

 

 「タイミングが悪すぎマス」

 

 そんな数を見た薫たちもどうしようもならない顔をしていた。

 

 「この度は我の負けだ。この屈辱は次で返すぞ、衛藤都」

 

 「ぐっ……!」

 

 そう言い残して、タギツヒメは近衛隊の護衛下でさっさとこの場から撤退した。

 

 防衛省での長き戦いもここで幕を降りた。が、タキリヒメを吸収したタギツヒメを討てなかったことに悔やんでいる可奈美たちがいた。




補充説明1:都の御刀は今回の話で人格が覚醒しました。それは原作でもない不思議な現象でした。因みに、前の話で都が街で感じた不思議な声はその御刀が彼を呼ぶ声です。

補充説明2:都の現在の実力は可奈美たちに超えましたが……強さの反面にかなり強力な負担がかかります。一応彼は元一般人だから。

補充説明3:改稿の日に別のゲームで剣心一如という言葉を知ることができて調べたらかっこいいと思って今回の話にある人剣一体の部分を剣心一如に変えました。

最後、覚醒した都の戦闘パターンは漫画版から参考したものです。結芽→沙耶香→獅童→美奈都という順番の剣技でタギツヒメを抑えた可奈美はめちゃ格好よかった。

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