可奈美のお兄ちゃんは妹のために最強の剣士に目指す! 作:黒崎一黒
それでも、生活がどれほど辛くても小説を書きたいという欲望は胸の中から消えません。これからも引き続きこの小説を書きたいと思います。みんなさん、改めてこれからもよろしくお願いします。
夜、東京都世田谷區にてーー
少数人の足音が世田谷区に鳴り響く。ただ少数人しかない刀使部隊は急ぎに任務の指定地点へ移動している。
「今回の任務は俺と姬和と沙耶香が組み立てた小隊。これくらいの面子だとすると、目標も相当の脅威があるのでしょう。二人とも油断しないように」
彼女たちより前へ走る男性は二人に任務の危険性を警告しながら、最近いよいよ使う機会があったスペクトラムファインダーで荒魂の詳細位置を確認する。
「お前こそ、私たちよりも自分の身を心配しろ。お前はいかに強いのを知っているが……対荒魂の経験がまだまだと薫から聞いたぞ」
「うん。無茶は良くない。」
そうしたら黒き長髪の娘、十条姬和は彼のことを心配するよう助言する。続いて二人より年下の糸見沙耶香も同じことを言う。
「それは……なぜばなる?」
「他人の座右の銘をバグるではない!お前に何かあったら、私と沙耶香は可奈美たちに向ける顔がない!」
「心配性だな〜。でも、心配してくれてありがとう。」
「べ、別に心配しているわけじゃ……」
「姬和、顔が赤い。」
「なっ……!き、気のせいだ!」
沙耶香の助攻の上、顔がさらに赤くなった姬和はいつもより狼狽えていた。たぶん本当のことが言われたから照れてるのだろう。
(それにしても……あの日から随分と経ってしまったな。向こう側はまた大きな動きがない……まぁ、こっちも同じですが)
あの放送からもう5日が過ぎ、刀剣類管理局は二つに分かれた。そんな荷重い態勢の下、俺たちは前と変わらず荒魂討伐を行う命令を受け取った。
作戦本部からの伝達によると、しばらくイチキシマヒメの位置がバレることがないから、いつも通り荒魂討伐を続行するとお願いされた。
正直、またタギツヒメ側がこれから何かをしようとするかは心配したけど、朱音様から折神紫は何かしらの策を用意していると言っていたから、信じて任務を出向するわけだ。
それでも心のうちにはまだ僅かな不安が残っている。相手は政府すらも利用する怪物だ、もっと用心しなきゃ。
「都、何をボーとしている?今は任務中だぞ。」
「え……?」
回想から現実に引き出され、いつの間にか姬和は俺と並走し、俺がポーとしているとこを見た。
「…あ、ごめんごめん。ちょっと考え事。」
「……考え事?隠しことだったら早く白状しろ。もうお前に相談なしで無茶しているとこを見たくない」
「……本当に心配性だな、姬和。」
「お前はいつも一人で体がボロボロになるまで無茶しているからだ。それを見て心配する人間も大勢いるから、あまり何事も自分一人で背負うではない!特に防衛省の件のあとは」
そう言い、姬和は今度心配する顔を隠せず俺をじっと見つめる。
防衛省の件以来、みんなが妙に俺のことを気に掛けている。特に討伐任務の時は俺より先に荒魂を討伐してくれる。あれはまるで俺が荒魂と直接戦うことを避けさせるように見える。
たぶんあの防衛省の夜、俺がタギツヒメに殺されかけたことが原因だろう……。
「……ご、ごめん。」
「ふん、本気に謝りたいなら、もう私達に心配させるな。あの子…沙耶香もずっとお前のことを心配しているぞ?あまり口にしないけど、お前のことをずっと見ていたぞ。」
後ろに振り返ると、沙耶香は確かに心配しそうな表情をしていた。
「沙耶香だけではなく、エレンも薫もみんながお前のことを関心している。だからもう防衛省の時みたいに一人でタギツヒメに挑まないてくれ」
「……わ、わかったよ。」
「……本当に理解したのか?誤魔化そうな答えは許せないぞ」
「う、うん!わかった、本当にわかっているから!」
姬和から迫ってきた言語の圧力に俺は仕方なく頷く。彼女の性格だと、俺がそうするまでずっと迫ってくるだろう……。
しかし、今の現状では姬和たちと一緒にタギツヒメと戦う可能性はあまりにも非現実的だ。敵もきっとそうさせないだろう……。
なら、やはり俺がタギツヒメをなんとかするしかない。
ビシュンー
「………ん?」
「都、急にどうした?」
「なんて止まるの?」
そんな時、妙な音が起きていて、都が急に足を止まった。
それを見て、二人も止まってその理由を尋ねる。
「さっきスペクトラムファインダーの反応が消えた……」
「え…?」
「荒魂の反応が消えた……?」
都の話しに二人も呆れる反応。
さっきの音はスペクトラムファインダーの反応が消える音だった。画面内の荒魂反応はその一瞬なくなった。
これは討伐されたのか、それとも何かしらの理由で消されたのか……。
「俺たち以外の出動部隊がいないよね?」
「いないと思う。」
「うん。」
念の為、二人に確認する。そうしたら、彼女たちは自分たち以外の部隊がいないと返答した。
これはちょっと変です。他の刀使部隊じゃなければ荒魂は自動消滅するわけがない。
「………二人とも、警戒を上げてそのまま現場に確認するぞ!」
「はい!」
「わかった!」
とりあえず、警戒して現場で確認する。流石にノロの回収に放っておく訳にはいかない。
◇
「はい、ノロの回収を始めてください」
荒魂討伐を先に処置した内里 歩は維新派のノロ回収班に連絡する。
「フフッ、もう一人前の隊長なのね。歩ちゃんは。」
「山崎先輩!来てくれたんだ!」
同じく近衛隊仲間の山崎穂積を見て、歩は嬉しそうな顔で彼女に近づく。
「うん、少し歩ちゃんのことを心配しちゃって。歩ちゃんは初めて部隊を率くでしょう?」
「はい!少し緊張したけど、何とかできました!」
「それは良かったです。」
小さく優しく笑う穂積。彼女は市ヶ谷での作戦を遂行する前に緊張する歩を励ました。その件があって、歩は彼女への好感が結構高かった。
そしてその日以来、彼女のアドバイスがあって、歩は近衛隊での生活も何となく慣れていた。
「それじゃ、用事が済みましたので私は貴女の隊員たちと少し世間話をしますね。その中にはちょうど私の知り合いがいます。」
「なるほど。なら、ごゆっくりしてくださいね!ノロ回収班はもう少し時間がかかりそうです。」
「ふふっ、わかりましたわ。」
礼儀正しく、穂積は隊員の方へ行き、歩を後にした。
「さて……私も次の任務を確認するか。先輩にも、あの人にもっと褒められたい!」
そう言って、歩はスマホを弄り、次の指示があるかどうか確認する。
そんな時ーー。
「綾小路の人……!?」
「……近衛隊か!」
「この人は……」
歩との立場が違い、旧刀剣類管理局の刀使たち三人がこの場にやってきた。
「あ……!貴方は確か……衛藤さんのお兄さんですよね?そして、糸見さんもいる!」
「歩……」
久々に知り合いの顔を見て、歩は嬉しそうな表情をしていた。が、その表情から何かしらの狂気が取り憑いている。
沙耶香もそんな歩にドン引かれて、都の後ろに隠れる。
「もう〜!遅かったじゃないですか!こっちはもう終わっちゃってますよ!」
「ここで何をしている?近衛隊!」
「姬和、少し落ち着け。交渉は俺に任せろ」
最初から敵意満々の姬和が明らかに不正常の歩に尋ね、抜刀前の動作もしたが…すぐ彼に止められた。
「………わかった。」
抜刀態勢を解け、姬和は都の指示に大人しく従う。
「ふぅ……。さて、改めて聞きますが、貴女たちは一体ここで何をしている?」
「
「タギツヒメも荒魂。」
「タギツヒメ様は別ですよ!あの方は神ですから!」
「神……」
歩の口からタギツヒメを神だと称えると聞いて、都の顔は一瞬で曇くなった。
タギツヒメは単なる神の名を騙る大荒魂だ。しかも、人を滅ぼすつもりの災厄。彼女の本性を知る都たちは自然とタギツヒメのことをただの化物だと認識している。
「それより、衛藤さんのお兄さんはあの時、ヒメと戦ったんですよね?私は見てたんですよ!とても強くて、私、凄く気になります……!」
「そ、そうか?」
「ええ、衛藤さんとどっちが強いのか!」
「…………」
ただ狂気と不気味しか形容し得ない表情。本来、ここにいるのは単純でワクワクしている、普通に可愛い女の子なんだけど……今、彼女の顔は引かれるほど不気味だ。
これほどの狂気を都の本能が彼にこう伝えた。彼女は危険だと……。
「あらあら?こんな夜に十条姬和さんと会えるなんて幸運ですわ。」
もう一人近衛隊の刀使がどうやら都たちのことを気付いたようで、こっちへと歩いてきた。
「お前はあの時の……!」
彼女の顔を見ると、姬和はすぐ声を上げた。
「知り合い?」
「防衛省で私と戦った刀使。」
「なるほど……」
「あら、私のことを覚えくださって光栄ですわ。そちらにいるのは糸見沙耶香さんと衛藤 都さんですね。この場で要注意対象たちに会えて光栄です。」
彼女はスカートを少しだけ捲り上げて、お嬢様のような気品がある挨拶をする。
「山崎先輩、どうしたんですか?もう友達との話が終わったんですか?」
「ええ、それと“ノロ回収班”がもうすぐ到着するから、そろそろ撤収したほうがいいですよ。歩ちゃん。」
「わかりました。衛藤さんのお兄さん、また今度会うとき、ぜひ私と戦ってくださいね!私も貴方と戦いたいです!」
「十条さんにも覚悟してくださいね。次に会うときはどっちか上なのか、必ず証明して見せますから」
姬和だけに敵意を向く苗字が山崎らしい冥加刀使。彼女はどうやら姬和と何かあったらしい……。
「そうそう。次に会うとき、あなたも覚悟してくださいね、衛藤 都さん。ヒメを脅威する人間はこの近衛隊が排除いたします。」
「…………」
「それじゃ、ご機嫌よ。皆様。」
そう言い残して、二人は撤収の方へ向かった。
どうやら事態はますます悪い方向に進んでいたようだ。
◇
翌日、朝。
鎌府女学院、食堂ーー
「歩ちゃんたちと出会ったの!?」
沙耶香から昨晩の話を聞いて、可奈美は驚く反応をする。
「うん。昨晩、現場で会った。」
「彼女は可奈美と沙耶香の知り合いだよね?俺のことも知っていた。」
昨晩、歩っていう子は俺のことを衛藤さんのお兄さんだと名付けた。それってつまり、彼女は可奈美のことを知っているはず……。
もちろん、単なる防衛省の戦いで俺のことを知る可能性もあるが……俺のことを衛藤さんのお兄さんと名付けた以上、やはり可奈美のことを知っている。
「………うん。ある荒魂討伐の任務で出会って、それから一緒に剣の立ち合いをしました。」
「可奈美のことを凄く憧れているな。」
「…………」
「これで可奈美も一人前の刀使になったのだな〜。」
「…………」
「ふん、自分のことを憧れる後輩か……それはいいことではないか?敵側に回したけど、都の言うとおり立派になったな!可奈美。」
「…………」
都との対話をほぼ無視する可奈美。それどころが、彼女は一回も彼と直視していない。
あの日以来、衛藤兄妹はずっと冷戦のままにいた。そのこと舞衣たちも知っていた。薫もさっき助太刀したけど……可奈美は相変わらず何の返答もしてくれなかった。
そんな可奈美を見て、都は更にどうしようもない気持ちになった。自分と可奈美のことはともかく、彼女を憧れた後輩が冥加刀使になってしまった。ノロの力を使う以上、彼女は親衛隊のような末路しか残されない……。
もちろん、寿々花のようなノロを体内から排除する希望があるが……その前提に彼女たちを倒すしかない。
そう思うと、可奈美がさらに元気ないのも仕方ないことだ。特に刀使同士との戦いは元々刀使本来の役目でもないし、戦い自体も立ち合いでもない。
もしやこの状況もタギツヒメの思い通りなのかもしれない。憎むべき刀使を刀使で排除する……何という気性悪いことだろう。
……ひとまず雰囲気を変えよう。可奈美をこのまま落ち込ませたくないから。
「そ、それより歩っていう子以外にもう一人の冥加刀使に会った。彼女は山崎穂積と言うんだ。」
「誰だ?あいつ」
薫はエレン手製のかんぴょう巻き(朝ごはん後のデザート扱い)を美味しく食べながら、そう聞く。
「御前試合の第一試合で姬和に負けた子。彼女はどうやらその件で姬和のことを恨んでいる。」
「よく覚えていたのね。都くん。」
そうしたら、舞衣は意外そうな顔をする。
だって彼は興味が持たない人の名前を覚えない悪い癖がある。今だにもクラスメイトの名前も誰一人も覚えていない。
「いや……実は、雅から送ってきた情報です。情報を受け取る前に俺はちっとも彼女のことを覚えていないんだ。」
「なるほど……いつもの都くんですね。」
舞衣は苦笑う。都はいつもこれだから、友達が少ない。
幸い、彼のそばには彼のことを大事にする美少女たちがいる。友達のほとんどは刀使なんですが……。
「姬和ちゃんが恨まれたのか……」
「私は大丈夫だ、可奈美。別に恨まれても、私は気にしていないから」
可奈美に余計な心配をさせたくない姬和。彼女は相変わらず人思いだ。
でも姬和が誰かに恨まれることは、やはり心がどうしても受け入れない。彼女はあんなに可愛く優しい女の子なのに……。
「しかし、その理由でベッタん女を恨むのか……けっこう器が小さい人なんだね。」
「そうですネ。例え御前試合で負けてもワタシと薫は別に気にしていません。」
「あれはただお前たちが手抜きしすぎたじゃないか?特に薫は一番やる気がないように見える。」
「………バレたか」
「当たり前だろ!当場でじっくりと鑑賞しているから」
「え……?それだと、薫ちゃんはわざと私に負けたの!?」
当時、薫に勝ち取った舞衣。その反応からすると、彼女は薫が本気ではなかったことを気付けなかったみたいだ。
「まぁ、そうだよ。何にせ、俺たちの仕事は荒魂の討伐だ。こんな余興みたいな試合に興味がない。…それにあの時の俺とエレンは潜伏中だから。」
「そうなのですか…」
薫の理由を聞いて納得しようとする舞衣ですが、彼女はどうやらそれを軽く受け入れない。
刀使での戦いで相手に手抜されたら、それは自分のことを舐めていること。優等生である舞衣は当然不満なんだろう。
「あまり落ち込まないでください。マイマイ。貴女の実力はワタシたちはよーく知っていますから!これからも頼らせてくださいネ!」
「うん……ありがとう。エレンちゃん。」
エレンに慰められる舞衣は気分が少し回復されたみたい。
「あ……それと、ノロも彼女たちに回収された。」
「ノロが回収された……?」
「でも、彼女たちの拠点が東京駅のホテルのはず……」
「そのはずなんですが……どうせ、高津……学長の命令なんでしょう。彼女は政府の応援が得ているから、行動範囲を拡大しても不思議ではない。」
「ノロを社に祀るのも想像つらいですネ……」
「それじゃ……」
「沙耶香の思った通り、集まれたノロはタギツヒメに吸収されるのでしょう。祀るより自分の力を増幅させた方がいい。」
「タギツヒメはこれ以上強くなっていくってこと?」
あまり想像したくないが、舞衣ちゃんの言う通り、タギツヒメはさらに強くなるって望んでいるだろう。
その理由はやはりーー
「恐らくミヤミヤを脅威だと認識したのでしょう。」
「今だに彼女と対抗できるのはこいつしかないしな。」
薫とエレンは都の方へ見る。彼はあの夜にタギツヒメの腕を斬り落とした。
今まで誰でもタギツヒメにあれ程のダメージを与えられなかった……特にタキリヒメを吸収したタギツヒメは滅茶苦茶強かった。
そんな彼女を撤退させたのは都だ。
彼は間違えなく刀剣類管理局の切り札だ。
「そのための力の増幅か……なら彼女が都を倒せるほど成長する前に彼女を倒さないと」
「でも今の私達では……」
「何なら、特訓してあげようか?」
そんな時、食堂の入り口に二人の男がそこに立っていた。
あの二人はーー。
「「「お父さん!?」」」
可奈美、姬和、都が同時に驚愕の声を上げた。あそこに立っているのはこの三人の父親である。
その叫び声と共に、薫たちも驚愕の声を上げた。
◇
数日前、刀剣類管理局局長室。
「お久しぶり、紗南と朱音ちゃん。」
「今回の面会を受けていただいてありがとうございます。」
二人の男は朱音たちの対面に座り、熱いお茶を一口にした後、カップを机の上に軽く置く。
彼ら二人は朱音たちの旧識であり、彼女たちと縁深い人物だ。
そんな二人は今日、わざわざ刀剣類管理局に足を運んできた。
「お久しぶりです。“衛藤刀也”さんと“十条一樹”さん。」
「二十年ぶりだね。どんな風がおまえ達をここに連れてきたの?」
真庭本部長が両手を胸の前に組んで、懐かしい顔で二人に訊く。彼ら二人は衛藤兄妹と姬和のご親族。
そして衛藤刀也は鎌府女学院の前身、鎌府高等学校の卒業生であり、学生時代の紫たちとは古馴染関係であった。
因みに十条一樹も十条家分家という繋がりで二人と面識があった。
「どんな風か?それは親心かな?自分の子供が所属する組織がバラバラになっていて、親として見てられないですよ。」
「こっちも同じ理由だ。今の刀剣類管理局はかなりまずい状況に落ちてしまったのですね。」
「申し訳ありません、私たちもこのような事態を予想できなくて……親であるあなたたちに心配をかけさせてしまった。」
「私からも、アンタたちの子供たちに安心できる職場を作れないことに謝る。加えて危険事もたくさんやらせた。すまない。」
朱音は歉意を持って二人の父親に謝る。その隣の真庭本部長も同じ歉意を示す。
これは古い知り合いとしてではなく、彼女たちの長官として彼女たちの親たちに謝罪する。
「それはもういいって、貴女たちを謝らせるため、ここに来るじゃない。」
「私達が関心しているのは子供たちの方です。それと、本来消えるはずの大荒魂タギツヒメがなぜ正々堂々と東京にいることと政府はなぜタギツヒメ側に立つなのか」
「それは……」
「………貴女たちの事情も大概理解しているつもりだ。大変だと思うけど……これから貴女たちはうちの都と可奈美に何をやらせてこの事態を平和に終わらせることについて説明して欲しい。」
「刀剣類管理局はこれからどうする?“折神紫”はこれからどう動く?」
「………姉が潜伏しているのをご存知ですね。」
「それはもちろん。タギツヒメと対抗するならば、折神紫が必要なんだ。」
「そしてうちらの子供が必要ということも知っている。千鳥と小烏丸は唯一タギツヒメに致命傷を与えられる武器だ。うちの息子もその追加の一つなんだろう?」
「………お見事と言うべきなのでしょうか」
「それより、どこからその情報を手に入れた?」
真庭本部長は目を細く刀也の方に訊く。別に彼を疑うじゃないが、衛藤 都に関する情報は全部封鎖されたはず……。
「どこでもない。ただ自分の息子を信じているだけだ。妹のためなら、なんでもできる可奈美のお兄さんだぜ。」
「………ふぅ、君らしい答えだね。昔と変わってないね、アンタは」
彼の答えを聞いて、一息を吐く真庭本部長は刀也が昔のままに維持していることに懐かしく感じる。彼は昔から美奈都先輩と気が合うから、いつも仲良くように見えた。
まぁ、喧嘩の数は多いけど。彼と一緒にいる美奈都先輩はとても楽しそうに見える。バレンタインの時も……いや、その回想はやめておく。
「それで?これからはどう動く?」
「手先が見つからないなら、私たち二人の方法を試してくれない?」
「方法?」
「ああ……いよいよ私たちの経験を子供たちに教える機会が来るようだ。」
◇
現在に戻る。鎌府女学院食堂。
「「「なんてお父さんがここに!?」」」
三人が一斉に発音する。
「なぜって?あれ程の騒ぎを起こしおいて、父さんはただ家で子供の帰りを待つと思う?」
「私も姬和のことを心配で、わざわざ鎌府に来ました。大変な状況になってしまったわね、姬和。」
「お父さん……」
自分の娘である姬和に優しい目付きで見た彼女の父親。それをちょっと不慣れている姬和は自分の親にどういう顔で返すのが迷う。
こうして親娘として向き合うのはもう“一年ぶり”だから。
「可奈美と都もこの間、かなり苦労をかけたみたいだけど、お互いもちゃんと成長したようでお父さんは感動するよ。」
「お父さん、なんてここに?それと、特訓っていうのはどういう意味?」
さっきお父さんが言った「何なら、特訓してあげようか?」という言葉を気になる可奈美。
「字面的の意味ですよ。お前たちは今のタギツヒメに勝てないと紗南から聞いた。だから、これから私と一樹はお前らを徹底的に鍛え上げようと思っているんだ。」
「鍛えて……本気?」
「ええ……本気です。もちろん私達では写しを貼る君たちに勝てないですが……剣で戦う経験は君たちより多く持っている。お互いが生身なら、多分君たちに負けないと思う。」
「生身……」
「そんなに心配せんでもええよ。一樹はんはともかく、刀也はんなら、生身での試合で美奈都先輩以外に負けらへん。」
「五条学長!?それと羽島学長も……」
学食の入り口に現れた平城学館の学長と美濃関学長の登場に驚く刀使たち。
そこで羽島学長は五条いろは学長に続いて補充説明をする。
「衛藤兄妹は特にご存知なのかもしれませんが……衛藤さんたちのお父さんは美奈都先輩以外の人に負けたことがない。生身とはいえ、紫もそんな彼に勝ったことが一度もない。まぁ、負けたこともないですけど」
「あの紫様も……!?」
「マジかよ……家族揃ってチートかよ、衛藤家の遺伝子はどうなってんだ?」
「oh………」
「都と可奈美が凄いという理由……」
「お前たちの異常の強さは遺伝か……」
「違うよ!姬和ちゃん!?」
「誤解しないで!」
そして羽島学長からそんな事実を聞いて、皆は再び衛藤兄妹のチートのような強さにエグいと認識した。
そしてこの後は本部長からの直接の命令によって、可奈美たちはイチキシマヒメが見つけられる前に可奈美と姬和のお父さんの特訓でさらに戦力を強化することになった。
波瀾編後半編から可奈美と姬和のお父さんを登場させました。胎動編で話したとおり、原作の設定と違い、姬和の父を生きらせた。たぶんアニメ勢のみんなはあまり彼のこと知らなかったのでしょう……今作はできるだけ設定通りに説明します。