ろくでもない素晴らしき世界   作:熱くないヨーグルト

1 / 9
1話

 鉱石病(オリパシー)――それは不治の病であり、最終的には感染者の命を奪い新たな感染源にしてしまう。この世界、テラに蔓延している疾病である。

 源石(オリジニウム)っていう爆弾になったりアーツとかいう魔法じみたエネルギーになったりはては天災を引き起こす原因や源石によって身体が冒された者たち、鉱石病の感染者を非感染者たちが排斥してそのせいでなんやかんやあって街が滅びたり、争いが起きたりする原因でもあるヤバイもの。

 今もどこかで感染者が排斥されたり、逆に非感染者が嬲り殺しにあっているのかもしれない。もしかしたら祭りにでも参加して互いの事など気にすることなく踊っているのかもしれない。

 まあそんな便利だが危なっかしいものが蔓延る世界で俺は

「リーダー、こっちの作業終わりました」

「もう終わったのか、よくやった。あとは俺に任せてお前たちは休んでいてくれ」

 感染者、非感染者関係なく自給自足の生活をしている。

「わかりました。リーダーも若くないんですから程々に休んでくださいね」

「わかってるわかってる。すぐに終わらせて休むからそう心配すんな。あと誰が年寄りだ!?」

 大声を出し若い連中をワッと散らせる。俺と一緒に作業していた奴らも休憩に行かせた。

 俺がテラに来てから20年以上の月日が経った。もうストーリーはほとんど憶えていない。そこまでやりこんでいたわけではないというのもあるがそもそもストーリーや設定云々がよくわからなかった。それに俺はタワーディフェンスのゲームシステムにドハマりしてただけだからしょうがないだろ。

 異世界に転移するんだったらもっとこう、ドスケベパーク的なものがある場所やARIAみたいな優しい世界に行きたかったが今更みたいなものになってしまった。それにもう長い間過ごしたからか血生臭いことに慣れてしまった。まあそのせいでカジミエーシュの騎士連中に今でも命を狙われる原因を作ってしまったのはいい思い出だ。と言っても連中は脳筋の馬鹿ばっかりで相手取りやすいだけまだマシだ。

(ったく、あいつらは心配性だな。お、ジャガイモがいい感じに育ってるな。こっちのトマトと一緒に収穫するか。じゃあ次は)

「リーダー!手紙がきてますよー!」

 考え込んでいると遠くから子供が手紙を手にこっちへやって来た。

 カジミエーシュの他に色んな国や組織と因縁や恨みを持たれているのでしょっちゅう脅迫状めいたものは貰っているが今度はどこからだろう。

 手紙を持ってきた子供に礼を言い、手紙を裏返し送り主の名前を見る。

「Big Bobじゃねぇか、懐かしいな」

 俺があの嬢ちゃんに組織を引き継がせ、クルビアで戦えない、戦いたくない感染者や非感染者達と隠居し始めてから連絡を取っていなかったが一体どうしたんだ。

(『今のレユニオンのやり方についていけなくなって『兄弟たち』と共に離反した。貴方の所に所属させてほしい』か、なるほどな)

「ここに来たい、か。なら返事はもちろんオーケーだ。ウチは来る者拒まずだからな」

「リーダーはその人たちを受け入れるの?」

 子供が不安そうに聞いてくる。人見知りだから仕方ないか。

「安心しろ。Big Bobは見た目は……うん、まあ怖いかもしれないが性根は良い奴なんだ。どうか怖がらないで接してやってくれ」

「うんわかった!」

「よぉし、いい子だ。じゃあこれをあげよう。皆にはナイショだぞ?」

 熟れて赤く輝くイチゴを渡すと目がキラキラと光りだす。うおっまぶしっ。美味そうに食べてる姿を見てると俺も腹が減ってきた。作業も終わったし俺も休憩に行くか。

「よし食い終わったな。俺も昼飯食いに行くか。今日の昼飯はなんだ?」

「メッシさんたちが川で釣った魚だって」

「おぉ魚か。……刺身で食べたいな」

「リーダー前に生で食べてお腹壊したじゃん。ダメだよ皆を心配させちゃ」

「ウグッ、わかってるわかってる。だが日本人としてのサガでな。どうしても生で食べたいんだ」

(すっげぇ食いたい。鮪とかめっちゃ食べたい。てかなんでテラに海がほとんどないんだよ)

「ジー」

「……」

「ジー」

「……わかったわかった。降参、降参だ。生では食わんよ」

 この回答に満足してくれたみたいで上機嫌になってくれた。どの世界でも子供がどうやって不機嫌になったり上機嫌になるかわからん。俺にもそんな時があったのだがもう憶えちゃいない。

(やだねぇ、年は取りたくないもんだ)

 

 

 

 食後に残りの作業をし、明日に備えて準備をしていると懐かしい顔がやって来た。

「久しぶりだな」

「ああ久しぶりだな。相変わらず血生臭いなお前は。で、どういう用件でここに来たんだ?生憎だが俺はもう戦場から身をひいたんだ」

 目の前のサルカズ人とは何度か殺しあったのもあって油断はできない。が俺が戦場から身をひいたと言ったら殺気を引っ込めた。

「俺が戦士にとっての死が来る前にお前との決着をつけたかったが……残念だ。だったらもう用はない。……もしお前が戦士としてまた剣を握るならロドスに来い。俺はそこにいる」

 それ以上何も言わず男は去ろうとした。

「ああ待て」

 気になったことがあって思わず声をかけてしまった。

「なんだ?」

「お前とは殺しあってはいたが結局名前はわからず終いだったんでな。なんて名前なんだ?」

「……エンカクだ。今はエンカクと名乗っている」

「そうか、じゃあなエンカク。達者でな」

「ああ、さらばだ」

 今度こそ男、エンカクは去って行った。エンカクの背中が見えなくなってから地面に大の字に倒れる。

(フゥ、相変わらず恐ろしいやつだわ)

 戦いの中で成長するタイプの戦闘狂で部隊を率いているエンカクを相手取った時に死にかけたのは悪い思い出だ。他に何度も死にかけたことはあったがエンカクとの戦い程悪い思い出は……

(あったな。将軍と殺しあった時だな)

 ウルサスにいる感染者を保護しようと排斥する非感染者たちを張り倒した時偶々そこに将軍がいて戦闘になった。もう20年近く前になるがあの時は運良く天災がきたおかげで命からがら逃げおおせたがもう二度と戦いたくない。と思ったがその数年後にまた殺し合いになるとは思わなかった。

「俺の20年ちょっと戦いに嫌な思い出しかないな」

 思わず苦笑いが漏れてしまう。元居た世界よりもろくでもない思い出ばかり出来てしまうが

「おお、今日は星が綺麗だな」

 この世界の夜空は俺が今までの人生で見てきたどの夜空よりも美しい。

 

 

 

「ぶえっくしょい!!」

「リーダー、風邪ひきますよ」

 ……しまらねぇ。




プロファイル
 基礎情報
【本名】不明
【性別】男
【戦闘経験】二十六年
【出身地】██
【誕生日】8月29日
【種族】██
【身長】183cm
【体重】74kg
【鉱石病感染状況】
メディカルチェックの結果、非感染者に認定
 能力測定
【物理強度】標準
【戦場機動】標準
【生理的耐性】■■■
【戦術立案】標準
【戦闘技術】標準
【アーツ適正】皆無
 個人履歴
この人はかつてレユニオンの前身組織の創設者だったのよ。
で、その組織は虐げられる感染者を保護して鉱石病の治療法の研究をする今のロドスと変わらない思想を持った組織だったんだけど何年か前に今のレユニオンの指導者、タルラに組織の長の立場を譲ってから雲隠れしたんだ。そのせいで今のレユニオン、感染者の過激派組織にあっという間になってしまったの。
まったく、どこに消えたのよ。見つけたら張り倒してやるんだから!
──クロージャ

真面目に書け。
──ケルシー医師
 健康診断
造影検査の結果、臓器の輪郭は明瞭で異常陰影も認められない。
循環器系源石顆粒検査においても、同じく鉱石病の兆候は認められない。
以上の結果から、現時点では鉱石病未感染と判定。

【源石融合率】0%
鉱石病の兆候は見られない。

【血液中源石密度】0.00u/L
何だ?どういうことだ?どうして?!オペレータースカジよりも更に低い数値、源石密度値が皆無なんてどういうことですか!この人物を教えてください!
――医療オペーレーターJ.A.

誤魔化すの大変だったんだからね!今度会ったら何か奢りなさいよ!
――クロージャ

クロージャはあとで私の部屋に来るように。
──ケルシー医師
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。