だってあの人は探索者でもあったんだから!
――マゼラン
アタシはあの男に来てほしくないわ。
アタシたちの祝福を一方的に奪って最後は全てを太陽のごとき光で無茶苦茶にして呪いだけを押し付けたあの男を。
*古代エーギル語*
――ディピカ
あの人が持ってる狙撃銃は堕天使が奪ったあたしたちサンクタ人の宝物なの。だからいつも返してってお願いしてるけど全然返してくれないの。どうしたら返してくれると思う?
――エクシア
おお、アイツか!飯は旨いし極東や我輩の種族にも理解があって趣味によく付き合ってくれたいい男だったぞ。アイツのとこは種族や鉱石病の有無で差別が無くて心地いい場所だったな。
特にアイツの助手はサッカーを教えるとあっという間に上達して我輩と拮抗する強さだったぞ。アイツらがロドスに来るなら我輩は歓迎するぞ!
――マトイマル
あの男の助手には気をつけてください。もし彼女と本気で戦う場合誰かを庇いながら戦う事は不可能ですので。
――シュヴァルツ
「うぅ……恥ずかしい」
「あんま時間かけたくないから早くしろ」
「で、でも旦那さん本当にやるの?」
「何言ってんだ。当たり前だろ」
「そんなストレートに!?」
時間が限られてるんだから早くしてほしい。渋るクロワッサンの服に手をかける。
「ウ、ウチにも心の準備ってものが――」
俺は心の準備が必要ないのでとっとと脱がす。
「旦那さんのエッチ!変態!!強姦魔!!!婚前の乙女の肌を人目に晒すなんてケダモノや!」
予想通りだが全力で抵抗された。飛んでくる拳を避けこの元凶になった奴に振り返らずに言う。
「ウルセェ……おいエンペラー、帰っていいか?」
「ダメだ、すでに前金は払ったんだ。ちゃんとやってもらうぞ」
毎回やるお馴染みのやり取りだが職員が増えてるので勘弁してほしい。
職員の健康診断と非感染者に対する鉱石病の事前治療。感染者には進行抑制を毎回結構イイ値で頼まれてるからやってるが初めての受ける職員――当たり前だが女性職員――にはかなり抵抗される。俺だってめんどくさいから助手(女性)に任せたいのだがエンペラー直々に俺にご指名がかかっているので職員全員の健康診断をやる羽目になっている。
「毎回暴れる女性職員の攻撃を捌く俺の身にもなってくれよ。しかも少しずつ数が増えてるんだから助手に任せてもいいだろ」
前回は健康診断を終わらすだけで1週間はかかった。内5日は抵抗する女性職員の説得と呼んだ覚えもないトラブルの対処に使われるからたまったものじゃない。更には治療もあるのだからもっと時間がかかる。
「ダメだ」
「ウッソだろオイ。俺もいい年なんだからそろそろ倒れるぞ。見ろよ?お前の会社の従業員の斬撃やアーツ、銃撃を避けて更にはトラブルの対処をして疲労困憊な俺の姿を」
「お前がこの程度で疲労困憊になるなら今頃金持ちで世界は溢れるだろうな」
くそペンギンの戯言を聞き流し、いまだ殴りかかってくるクロワッサンの拳や飛んでくる物を躱しながら今後のスケジュールを考えるが絶対に上手くいかないのが予想できるので溜息しかでない。それにさっきからブチギレそうになっている助手を止めなくてはいけない。
「疲れた……マジで疲れた。エクシアが途中でぐずらなければもっと早く終わったのに」
「先生、お疲れ様です。ココアでもいかがですか?」
「おーありがとうな。悪いな、毎回こんなのに付き合わせちまって」
「いいえ。私は好きでやっていることですからどうかお気になさらないでください。それに少しでも貴方の力になりたいんです」
力になりたいからって数年前にエクシアの腕を苛立ってへし折ったのは覚えてるからな。おかげでエンペラーに散々説教された。
「どうしたんですか?」
「出会った頃と数年前のことを思い出してな。すっかり見違えるほど成長したなって思ってな」
まだレユニオンになる前の時代、あの時は会うもの全てを殺すという威圧を放っていたが何度も言葉を交わすうちに医学の勉強をして力になろうとしてくれるいい子に育ったもんだ。
タルラに譲った後えらく時間の流れを早く感じるようになった。20年以上仲間と駆け抜けたあの時代が今じゃ昨日のように感じる。
「うっ……あの時のことは忘れてください!私だって反省してるんですから」
手で顔を覆いイヤイヤと首を振ってるが忘れないからな?
「はっはっは、そりゃ無理な相談だな。あの時は全部終わるのに1か月はかかったんだからな」
「笑顔なのに目が笑ってないぃぃ」
しばらくその話でいじり、この後用事のある部屋へと向かう。
「で、シエスタはどうだったよ。相変わらず命でも狙われてたか?」
「そんなの日常茶飯事で憶えちゃいないな。それに狙われてるんじゃない。狙わせているんだ」
葉巻を吸っているがどうやって掴んでるんだ?そして俺に吹きかけるな。
「けほっゴホッ。日常茶飯事で忘れるほどか。俺はお前がまだ生きてるのが残念だな」
「お前だって15年前は寝る間も惜しんでファンが来たじゃないか」
「おいやめろ。あの時は色んな要因で死にそうになったんだ。思い出させるのは勘弁してくれ。それにファンじゃねーよ、ヒットマンだ」
思い出すのも嫌なものだ。アビサルと違ってカジミエーシュで悲劇を起こした時は正気を失っていた。そして正気に戻ったら体がボロボロで死にかけていて仲間に心配されていた。
「お前は」
「なんだ?」
「お前は本当に戻る気はないのか?」
「当たり前だろ。アビサルの一件で引退するって決めたからな」
「アビサルか。ウチの社員のアビサルハンターはお前を救世主と崇めているがお前がアビサルで殺したものはそれほどまでに恐ろしいものだったのか?」
健康診断の度に猛アプローチしてくる少女がいると思ったらそういうことか。
「全部話す気はないが……そうだな。あれは存在してはいけないものだ。だからこそ俺はエーギル人が死ぬのも厭わなかった。それだけだ」
過剰な好奇心は身を滅ぼすと言うがまさかそれが現実となりかけて世界が滅びるかもしれないとはあの時は思いもしなかった。40にもなってそんな事も思いつかない程俺がどうしようもない愚か者だったということの証明になった。
「なるほどな。アビサルの伝説は事実だったということか」
浮上した海底都市を吹き飛ばす爆弾はなかったが生物にはアトミック・オリジニウムが効いたのが幸いだった。だがそのせいでエーギル人がたくさん死ぬ要因を作ってしまった。
「そういう事だ。その一件で色々と嫌気がさしてな。暫くしてタルラがレユニオンのガキ共をどこからか連れてきて組織の長の立場が欲しいと言ってきたから丁度いいと思って譲ってそのまま隠居さ」
「鉱石病治療の研究はもうやめたのか?」
「本格的にはやってないな。治療と一緒にデータを取ってる程度だ」
「じゃあまだ諦めてないんだな」
「当たり前だろ?俺は諦めることを諦めたからな」
「ところでさっきから扉の前で立ち聞きしないで入ったらどうだ?」
「……失礼します」
「テキサスか、どうした?」
「ロドスとの契約更新の資料を渡そうと思いましたがお話の最中でしたので終わるまで待ってようと思ってました」
「気にするな。コイツと話すことなんて世間話程度でしかないからな」
「そうですか。……先生も健康診断お疲れ様です」
「ん?ああ、マジで疲れた。頼むからお前からもなんか言って説得してくれよ。特にエクシアは毎度毎度銃を返してくれってうるさいからどうにかしてくれ」
「……それは無理ですよ。私だって初めての時は恥ずかしかったのですから。あとエクシアは先生がなんとかしてください。あれは先生とエクシアの問題ですので」
「わかったわかった。確かにエクシアは俺との問題だな。おいエンペラー。やっぱり助手に任せてもいいだろ。あいつは俺と違って医師免許をちゃんと取得してるんだからよ。それにループス族のコスプレしてるお嬢ちゃんは俺じゃなくて助手に任せたし。な?」
「ソラは事務所との契約があるだけだ。契約がなければお前に全て任せていたぞ」
「勘弁してくれ……」
「あの……先生」
「どうした?」
「頑張ってください」
テキサス、お前もか
「そういう事だ。次回も頼んだぞ」
「ハァ、わかったよ」
「テキサス、ちょっと待て」
「なんですか?」
結果は出てるのでタブレットでテキサスのデータを出す。
「お前血糖値高いから暫く菓子を食うのは禁止だ。あと煙草の吸いすぎだ。禁煙しろ」
「!?」
いくらラップランドが絡んできてストレスが溜まるからって前回より数値が跳ね上がってるのはヤブ医者だとしても見過ごせない。
プロファイル全部書いたらたぶん終わり
助手ちゃん
性別:女性
種族:ループス?
感染者
皆さん青く燃ゆる心はどうでしたか?自分は強襲の5で大苦戦しました。
あと前回の感想で主人公の血で鉱石病の治療ができるのでは?って質問がありましたが不可能です。輸血にしかなりません。