すいません、寒い親父ギャグ言ってしまって。
その日ルイズはご機嫌だった、彼女を少しでも知る人間が見れば人違いだと思ってしまうほど普段の彼女とは似ても似つかなかった。
何故かというと―――
朝起きるときは今まで聞いた中で最も心地の良い声で優しく声をかけられ、その後完璧な温度の濡れたタオルで顔を拭いた後、一流の執事の如く無駄なく丁寧に服を着させてもらった。
そして昨晩、それらの世話をしてくれている自分の使い魔は他のどんな使い魔も持っていないような特異で便利な能力を持っていると判明した。
ご機嫌にならないわけが無かった。
「ティーセン、私は食堂で朝食を摂って来るわ」
ティーセンとは昨晩ルイズが自分の使い魔であるT-1000につけた名前である。
「了解した、洗濯物を片付けた後に教室で合流でいいか?」
「ええ、そうして頂戴」
そして何も言わずともドアを開けてくれる。
ルイズはこの大変素晴らしい家電……もとい使い魔を手にできたことを始祖ブリミアに感謝せざるを得なかった。
「あらルイズじゃない、昨日はどうしたのあんなに大きな声で叫んじゃって?またあなたの魔法が炸裂したのかと思っちゃったわよ」
そう話しかけて来たのは褐色色の肌と赤髪が特徴のキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。ルイズとは犬猿の中であり、一応ライバルということになっている。
「あら?ごめんなさいね昨日は、起こしちゃったかしら、ん?横にいるサラマンダーはあなたの使い魔かしら?とても可愛らしいわね」
キュルケはぎょっとした、何故なら、普段は自分のことは無視するか何かしらイチャモンをつけてくるだけだったルイズがまともに挨拶するだけでなく、私に昨晩の悲鳴の件について謝り、その上自分の使い魔を褒めてくるという、従来天地がひっくり返っても有り得ない事が起こっているからだ。
「えっ…ええ、そうよ!それにこの子火竜山脈のサラマンダーよ。好事家に見せたら値段なんてつかないわよ〜、誰のとは言わないけど平民の使い魔なんかとは比べものにならないわよね〜」
「あら、それは凄いわね、とっても羨ましいわキュルケ。あっ!そういえば、あなたにはまだ私の使い魔を紹介していなかったわね、ティーセン来てちょうだい」
そうと一人の長身の男が近づいてきた、なかなかイケメンだ。
服以外は普通の男。
それがキュルケの評価だった。
「ターミネーター T-1000型だ、ティーセンと呼んでくれ」
(ターミネーター?T-1000?)
「ええ、キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーよ、キュルケって呼んでね。あら?昨日見た時は変な被り物してて顔が見えなかったけどなかなかイケメンじゃない!今夜あたり私の部屋に来ない?」
勿論好きでもない人をベットに招くつもりはさらさら無かった。
だが自分の使い魔が誘われているのだ、あのルイズが怒らないわけがない。しかし返ってきた返事は予想外のものだった。
「ふふっ…洗濯ものよろしくねティーセン」
鼻で笑われた。
さらに使い魔の方は自身の胸を一瞥すらしなかった。これはキュルケの経験上あり得ない事だった。
(ルイズに対するあの態度、私(の胸)への関心の無さ。もしかしてあの使い魔……………………ロリコン?)
…………………………
ティーセンは学院の洗い場に移動し、主人であるルイズの下着を両手で掴み真顔でガン見していた。
これはキュルケの推測が当たっていた………というわけでは勿論ない。
『この類の衣服の洗い方のデータ無し』
『調べることを推奨』
T-1000型は人間に紛れ込むために作り出された兵器である、おまけにこの機体は元々ジョン・コナー殺害のため1994年に送られた機体だ。
そのため簡単な家事の仕方や人間の生態などはデータがある。しかし、それは洗濯機の使い方だったりエアコンの使い方だったりするもので、このようなテレビすらない文明の、しかも女性物の下着の洗い方などティーセンは知るはずなかった。
今朝は“人間が最も安心感を覚える声”と“爆発物を付けた衣服の着せ方”、“尋問中の人間が気絶した際覚醒状態に持っていくのに最も効率の良い水の温度”のデータを使い何とかしたが主人が人間となった今、ティーセンには情報が必要だった。殺しに関係ないものを。
『物音を察知』
後ろを振り返る。すると壁からチラリと白と黒の服が見え隠れしている。
誰かがこちらを隠し見ているようだった。
『解析結果:ドレスの一部からメイド服と判明、よってメイドと思われる。協力を要請する事を推奨』
………………
…………
……
(あの人誰なんだろう?………まさか下着泥棒!?)
彼女の名前はシエスタ。この魔法学院でメイドとして働いている平民である。洗濯物を洗いにきた際、ティーセンが下着を握りしめている光景を見てしまい、彼女はこの見るからに怪しい男をどうするべきか迷っていた。
(やっぱり誰か連れてきた方がいいのかしら………でも、もし貴族様だったら…)
「少しいいか?」
「きゃあ!!」
突然話しかけられたことにより悲鳴が出てしまい、その拍子に持っていた洗濯物を落としてしまった。
そこでスッとティーセンが洗濯物を受け止める。
「すまなかった」
「へっ?……あ!いいえ、こちらこそありがとうございます」
そしてティーセンから大量の洗濯物を受け取る。
「えっと、失礼かもしれませんが…あの、あなたはどちら様でしょうか?」
「ターミネーターT-1000だ、ティーセンと呼んでくれ。ルイズの使い魔をやっている」
「ああっ!あなたが」
「私を知っているのか?」
「ええ、昨日メイジ様が何処かの平民を使い魔にしたって噂を聞きましたから、あっ!申し遅れました私の名前はシエスタです。よろしくお願いします」
そう言って軽く頭を下げる。
「協力を頼みたい」
「協力ですか?」
「ああ、これらの洗い方を教えてもらいたい」
そう言っていくつかの衣服を見せてくる。
おそらく彼のご主人のものだろう。
「ああ、洗い方がわからなかったんですね!すいません私てっきり…………………」
「てっきりなんだ」
「いや何でもないですよ、なんでも。ははは…は…………。それよりさっそく教えさせてもらいます」
「そうか」
そう言って大きめのタライに水を張っていく。
「えっと、まずこのタイプの洗濯物はですね……………」
ティーセンは乾いたスポンジの如くシエスタに教えられた事を吸収していった。
そして数分後……
「凄いです!もう終わっちゃいましたね!」
「それじゃあ次は私が洗濯するので……………」
——場所を替わって下さい
そう言おうとした時彼にじっと見つめられているのに気がついた。
「……えっと、どうかしました?」
「より多くのデータが欲しい」
「つまり?」
「お前が持っている物も洗わせろ」
「えっ、そんな悪いですよ!」
「頼む」
おそらくこれは彼の厚意だろう。
シエスタはそう思った。
無論ティーセンはただ事実を述べているだけだが。
「ええと、それじゃあこうしましょう。半分は私が洗いますのでもう半分の方をお願いします」
「了解した」
そういうときっちり半分の洗濯物をとる。
そして黙々とさっき教えた事を実践し始めた。
(ちょっと無愛想だけど優しい人……だよね?……)
「これからも情報の提供を頼む」
「あっ…はい、私が教えられる範囲でしたら」
「頼む」
その言葉を最後に一人と一体は黙々と洗濯した。
『記録:シエスタを協力者と認定。重要度を引き上げます」
実はさっさとギーシュと決闘させようと思っていたんですが、シエスタを絡ませずに決闘させるいい方法が浮かばなかったので丸々一話使ってしまいました。