西暦2010年7月28日
秋葉原
「ああ、私だ。たった今潜入に成功した。何ッ?奴らに情報が漏れていただと?・・・情報部隊は何をしていた!クソッ、作戦は進行中だぞ!仲間が何人犠牲になると思ってる!・・・作戦は変更だ。これより、私は単独で動くぞ。・・・私を誰だと思っている。ではな、次に会うときは全てが終わった時だ。」
携帯をポケットにしまうと、この茹だるような暑さに顔をしかめた。何と言う暑さだ。ここ数年で歴代最高気温が何度も塗り替えられているのを見るとこの世界は滅びゆく道へと歩みを進めているのかもしれない。
そんな危機にも関わらずこの街の人間は皆、何も気にせず生活をしている。
呆れたものだ。
「ここだな。」
私は今、とある研究の発表会を傍聴するため、秋葉原のラジオ会館に足を運んでいる。あまり研究発表に興味を持たない私がわざわざこんな暑い中秋葉原まで来たのだ。それほどこの表題は私の興味を引き付けた。
この研究がもし成功したら人類の歴史が書き換わるほどの大発明となるだろう。これは大げさでも何でもない。我々人類は世界をまた一歩危機へと誘おうとしているようだ。
我々人類が到達不可能な領域に一歩踏み出そうとしているその瞬間に立ち会えたと考えると、思わず笑みがこぼれる。手元の資料を見ながら私はその表題を口に出して読んだ。
「タイムトラベル理論か・・・。ドクター中鉢?医者なのか?」
『であるからして、この理論は・・・』
しかし、この内容を見ると昔、未来からやってきたと話題になったジョン・ナントカの理論に似ている。誰だったか・・・ジョン・スミス?
「ドォクタァァァァ!!何なのだこれは!全てジョン・タイターのパクリではないかァ!」
『グッ・・・言いがかりはやめてもらおう。これは私が考案した理論だ。』
そうそうジョン・タイターだ。しかしパクリとは、随分と思い切りがいいなドクター中鉢。何年も前のことだから誰も覚えていないだろうと高を括ったか?残念だったな。世の中そんなに甘くはなかったようだ。指摘をした彼には賞賛を送ろう。よくやった。
私は白衣の彼とドクター中鉢の議論とも呼べない応戦を聴きながら席を立つ。そして、そのままラジオ会館を後にした。その途中、誰かの叫び声を聞いたような気がしたが気のせいだと思い、特に気にもとめなかった。
電気街を歩きながら携帯を手に取る。
新着メール1件
件名は、何?文字化けが酷く読めない。ただの迷惑メールのようだ。
ボタンを押してホーム画面に戻ろうとしたその時だった。
「ウッ・・・な、んだこれは。」
立っていられなくなるほどの急激な目眩が襲う。地面に膝を突き、目眩が治るのを待つ。周りの喧騒もセミの鳴き声も灼熱の太陽の熱さえ感じることができない。まるで世界には私一人になってしまったかのような感覚に陥った。
「な、何だ・・・」
何も聞こえない世界から誰かの声が聞こえた。ふらつく頭を押さえて顔を上げる。
「どうなっているんだ・・・」
そこには先程、タイムトラベル理論の発表会にいた白衣の彼が呆然と立ち尽くしていた。いや、それよりもだ。
「人が、消えた?」
彼と声が重なった。