不確定要素のイレギュラー   作:篤志

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光芒一閃のファントム

2010年8月3日

 

秋葉原 未来ガジェット研究所

岡部倫太郎

 

K・・・橘京一に世界を移動したようだと話をしてから奴は今までこのラボに顔を出していない。あの時、何か考え込んで俺に言ったのは一言。

 

『そうか。こちらでもちょっと調べてみよう。世界がどこまで変わったのか。死んだはずの人間が生きている世界・・・か。調べるうちに私達にとって何かしら都合不都合が出てくるはずだ。』

 

それから奴は時々メールで俺に報告をするようになった。奴の知りうる限りでの世界の変化を。

勿論こちらからも情報は送っている。@ちゃんねるにジョン・タイターが現れたこと。俺や奴が知っているジョン・タイターではないということも。そして、未来ガジェット8号機の電話レンジ(仮)の機能についてもだ。

奴は未だ我がラボメンの一員ではないが、外部協力者として一躍買っている。

それに奴だけなのだ。俺と同じ記憶を持っているのは。

 

「ねえ、岡部。聞いてるの?電話レンジの実験についてなんだけど・・・」

「何だ助手。今はそれどころではない。」

「助手じゃないって言ってるでしょ!全く・・・過去に送れるメールの仮説を説明しようと思ってたのに。」

 

ここ数日で我がラボの状況も色々と変わった。まずはラボメンが増えた事だ。我が神聖なラボに突如として現れた女。ラボメンNo.004牧瀬紅莉栖。我が助手だ。

俺は彼女が刺されているのをこの目で見たが、あれは幻だったのではないかと思わされる。現実に今、彼女は生きているのだ。

そして、今目の前で携帯を持ち俺の携帯へメールを打ち込んでいる女。閃光の指圧師こと桐生萌郁だ。

機関の妨害により秘匿すべき電話レンジの機能をあろうことか第三者に知られてしまった。これもシュタインズゲートの選択と言えるだろう。

 

しかし今日は厄日だ。俺は助手に選ばれし者の知的飲料、所謂ドクペを所望したのに野菜ジュースを買ってくるし、指圧師にDメールの存在を知られてしまった。まゆりの一声で仕方なくラボメンにしてしまったが本当に良かったのか。

 

「ああ、遂に我々も動き出す時が来たようだ。健闘を祈っててくれ。エル・プサイ・コングルゥ・・・」

「あんたそれやってて恥ずかしくないわけ?見てるこっちが鳥肌なんですけど。」

「う、うるさい!それより、状況はどうなっているスーパーハカー。」

 

ダルにはミニブラックホールの研究・開発をしているというフランスの研究機関であるSERNにハッキングをかけてもらっている。そしてジョン・タイターの情報により、IBN5100というレトロPCを使うことで秘匿された情報を掴むことができるらしい。実際に少しだけだがその情報を得ることができた。

まあ、後味の悪い結果となったが。

 

「ハカーじゃなくハッカーだっつの。ま、相手は世界規模の研究機関ですしおすし。そう簡単に腹の中は見せてくれないわけで。」

「それより本当にするの?Dメールの実証実験。」

 

我が助手は世紀の実験に乗り気ではないようだ。これだから助手は助手なのだ。

 

「フッ、何を恐れているクリスティーナ。この俺を誰だと思っているのだ?ん?」

「大学生にもなって厨二病全開のイタい男ね。社会人になってもそのままだと本当に手遅れになるわよ。ま、時すでに遅しか。」

 

こいつよくもまあいけしゃあしゃあと言いおって。まあいい。今日の俺は機嫌がいいからな。寛大な心で助手の戯言も聞き流すとしよう。感謝するのだな。

 

「Dメールの内容だが、とある奴の提案によりロト6の当選番号とする事にした。」

「あんたの考えじゃないって事?」

「橘氏っしょ?僕もたまにメールのやり取りするお。今回の実験のことも知ってるみたいだったし、オカリン教えたん?」

 

そう、俺はKに電話レンジの話をした時からDメールを使った実験をするべきだと提案されていた。奴によれば、

 

『君の話が本当なら、あの日メールを送った瞬間から私達はそれまで行動していた記憶とこの世界との記憶に齟齬が生まれている。もし過去を変えたと仮定するなら、君がもう一度過去を変えるメールを送れば再び私達が記憶していない過去の行動が生まれるはず。それを確かめることができたら、私達はもう確信してもいいだろう。私達だけが過去を変える前、変えた後の記憶を持ち続けるということを。』

 

そして奴はこう締めくくった。

 

『世界が変革するようなメールでなくていい。自身の行動が変わるようなメールを送るんだ。宝くじとかでもいいだろう。ラボの研究資金の足しにもなるだろうしね。健闘を祈るよ。』

 

このメールを送ることは俺達がいるこの世界が本当に変わるのかという事の確認だ。大それた事をしようとしているんじゃない。

俺達はあの日の記憶が本当にあった事だと認識したいだけなのだ。

 

「閃光の指圧師よ、貴様がラボメンとなった最初の任務を与える!過去の俺にその番号を使ってロト6を買わせるような文章のメールを作るのだ!36文字以内で!」

 

指圧師は無言のまま頷き、携帯のボタンを物凄い勢いで打ち始めた。

そして1通のメールが俺の携帯に届く。

その間たったの10秒。さすがと言ったところか。

 

「ダル、ロト6の当選金額はいくらだ?」

「えーと、1週間前っしょ?ちょ、2億だって。」

 

そ、そこまで高くなくてもいいはずだ。

 

「2等は?」

「2300万。」

 

くそッ!ちょうどいい金額はないのか!俺は機関に狙われている身。目立つ行動は避けたいところだ。

 

「ならば、さ、3等は?」

「70万だお。」

「では3等に決定だな。」

「ビビったな岡部。」

 

さて、助手が何か言っているが無視するとして、これで萌郁に考えてもらった文章を過去の俺にメールするだけだ。

 

「よし、送るぞ。」

 

ラボメンが注目する中、俺はメールの送信ボタンを押した。放電現象とともに電話レンジ(仮)のターンテーブルが通常と逆回転し始める。

 

その瞬間、突如として俺に目眩が襲ってきた。まるであの時と同じ感覚だ。膝をつきそうになりながら耐える。感覚としては数分ぐらいだった。

 

0.560024%

0.560015%

 

ふと目眩が治り、周りを見渡す。いつもと変わらないラボ。周りにはいつも通りラボメンが居た。

 

Dメールを送ったが、過去は変わっていない?だが、この感覚は・・・

 

「で、岡部。Dメールの内容は決まってるの?」

 

聞き違いだろうか?クリスティーナは今何と言った?

Dメールの内容を知らない?

 

「待て待て!俺は既にDメールを・・・」

「ハア?あんた、それを今から実験しようと・・・送ったの?てことは、過去が変わったってこと?」

「オカリン、僕覚えてないお。どんなメール送ったん?」

 

あの時と同じだ。俺とラボメン達に記憶の齟齬がある。

 

「俺はお前達と一緒にDメールの実証実験を行った。ロト6の当選番号を過去の俺に送ったんだ。Kの提案でな。」

 

ラボメンはその事を覚えていない。やはり過去を変えると俺だけが変える前の記憶を持ち続けるのか?

 

「K?誰ぞ?またオカリンの脳内設定とか?」

「何を言っている。お前もメールのやり取りをしていると言っていたではないか。」

「いや、知らね。」

 

Kを知らない?そんなことがある訳・・・俺は急いで携帯の電話帳からKの名前を探すが、どこにも見当たらない。

 

「Kの存在が消えた?まゆり!ダル!お前達はK・・・いや、橘京一の名を知っているか?!」

「たちばな・・・さん?まゆしぃは知らないのです。」

「その人がどうかしたの?岡部。」

 

まゆり達の返答に俺は一層不安を覚える。

そんな、そんなことがあってたまるか!たった1通のメールで人1人の存在が消えてなくなるなど、あり得ない!

 

 

 

ヴーヴーヴーヴー

 

 

 

手に持っていた携帯が鳴った・・・。知らない番号だ。だが、この電話に出なければならないと俺は直感でそう思った。

 

「もしもし・・・」

『実験は成功したようだな、鳳凰院。』

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