ありふれない結界師は比較的優秀   作:灰色パーカー

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結界師の二次創作って少ないんですよね。だから自分で書きました。
私と同じように結界師のクロスオーバーが読みたいという方がいれば幸いです。


1.プロローグ

 (あやかし)

別名、妖怪、怪異、呪い。遥か昔より日本の地で人々を惑わし、襲い、喰らってきた脅威。

 

どれほどの時が経とうとも、たとえ科学がこの星を覆っても、妖の存在が消えることは無い。

 

妖とは人の未練や怨念、怒り、嫉妬、悪意、そう言った負の心から生まれるからである。

 

そんな妖を自らの異能を用いて退治し、人々を守る者たちがいる。

 

彼らの名は“結界師”。

 

開祖の名は「間 時守(はざま ときもり)」。

 

彼は今から400年前にこの世に生を受け、生まれ持った強大な異能を用いて数多の妖と戦い、時に滅し、時に封じ、時に鎮めて人々を守ってきた。

 

 

 

時守が全盛の頃、ある妖に出会った。

 

『彼』と出会ったのは偶然だった。その妖は人を襲わず、人を喰らわず、ただじっと洞窟の奥に潜んでいた。まるで誰との邂逅も避けるように。

 

『彼』は力を持っていた。善も悪もない純粋無垢な巨大な力を。

 

その力はあらゆる妖の能力を強大化させてしまうものだった。

 

力を増した妖はむやみに人を殺すだけでなく、自然をさえも蹂躙してしまうほど狂暴化してしまう。

 

『彼』はそれを望まなかった。所以に他者との接触を断つことで他の妖に影響を与えることを避け、人と自然を守ろうとした。

 

『彼』は優しさを持っていたのだ、妖にあるまじき、人を想い自然を慈しむ心を。

 

それを感じ取った時守は『彼』を封印することで彼の心に応えることにした。

 

 

しかし、『彼』の持っている力はあまりに大きく時守ですら完全には封印することができなかった。

 

『彼』が封印された土地には漏れ出た彼の力を求めて多くの妖がやってくるようになってしまった。

 

半端な形で『彼』を封印してしまった負い目から、そしてやってくる妖から人々を守るため時守は封印した土地を〈御池鳩(おいけばと)〉と名付け、守護していくことを決めた。

 

 

たが、時守も人の子。たとえ鬼を滅し、妖狐を封じ、大蛇を鎮める力を持っていても人の生の限界、寿命を超えることは叶わなかった。

 

死期を悟った時守は、己の異能を『結界術』として整理し纏め上げ弟子に伝授した。自分亡き後〈御池鳩〉を守護させるために。

 

 

 

 

 

=============

 

 

 

 

「もぉ~遠いな、まったく!」

深夜22時、僕は〈御池鳩公園〉の中に現れた妖のもとへと走っていた。

 

結界師としての仕事をはじめてから10年、毎晩ここに来ては妖と戦う日々。

 

最初の頃は妖のあまりの恐ろしさに泣いたり逃げたりしていたけれど、今はもうそんなことは無い。

 

 

ただ現れた妖までの距離の長さにはいつもうんざりする。どうせなら僕の近くに現れてくれれば良いのに・・・

 

まぁそんなことを言ってもどうしようもないし、何よりそんなことを言っている時間は無い。

 

現れた妖がどんな奴であれ野放しにしていれば、そのぶん力を増大させてしまう。

 

 

「もっと速く走りな!北地の奴らに先を越されちまうよぉ~」

 

速く走れと促してくるのは、妖犬の斑尾(まだらお)である。

 

そもそも妖の正確な位置を把握しているのは僕ではなく斑尾なのだ。僕がわかるのはあくまで妖の存在とこの土地に侵入したかどうかだけ。

 

「これでも全力で走ってるよ!というか、先を越されても良いじゃないか。退治できるならさあ」

「まぁこの子ったら!越されて良い訳無いだろう!南雲家が優れているって証明しなきゃ白尾のやつを追っ払えないじゃないか‼」

 

「まだその話?開祖は二匹でこの土地を守る手助けをしろって言ってたんでしょ?」

「ふん!私の方が奴より鼻が利くし有能なんだよぉ。だいたいあんな軽薄で誰にでも尻尾を振るようなやつを時守様が信用するわけないだろう。白尾のやつはただの時守様の腰巾着であってお情けでこの仕事を任されただけなのさ。」

 

「何度も聞いたよその話は。それより早く行かないと妖が変化(へんげ)しちゃう」

「さっきからそう言ってるじゃないのさ!」

 

 

斑尾とギャーギャー言いながら走っていると目的の妖が見えてきた。両腕が鋭い刃のような形をした人型の、しかし人の体躯をゆうに超えている化け物がそこにあった。

 

「あれか……4~5mくらいかな、大きさは」

「……ン?ダレダキサマ?タダノニンゲンデハナイナ」

 

こちらが近づくと向こうも僕らに気が付いたようだ。

 

「この地を守っている結界師だ。お前を滅しに来た」

「フン!ニンゲンゴトキガオレサマヲメッスルダト?オモシロイ!ココノチカラヲエルマエニ、キサマヲクラッテクレヨウ!」

 

そう言って奴は此方に飛び掛かり両腕の刃で襲い掛かって来る。

 

僕は後方に飛び退きながら敵の攻撃を回避する。一瞬前まで僕が立っていた場所は奴の攻撃で大きく抉れてしまっている。

 

(腕で攻撃してきたってことは近距離戦闘型、飛び掛かってきた時点で腕を伸ばしたりする遠距離攻撃は無い!)

 

敵の動きを分析しつつその推測が正しいかを攻撃を避けながら確認する。

 

奴の攻撃は地面を抉り、木々を切り倒すほど強力ではあるが速さはそれほどでもないため容易に避けられる。

 

「チョロチョロトウゴキマワリヤガッテ‼メザワリナヤロウダ!サッサトシネ‼」

(おまけに短気…これ以上やると公園の中を滅茶苦茶にしそうだな。早く()()を付けよう)

 

僕は自分の分析が当たっている事とこれ以上時間をかけるべきではないと判断し、奴との間合いを測り即座に術を発動する。

 

結界術の発動にはいくつかの手順を踏む必要がある。

 

方囲(ほうい)!」

 

初手の『方囲』で標的を指定し、

 

定礎(じょうそ)!」

 

二手目の『定礎』で位置を指定し、

 

(けつ)!」

 

三手目の『結』で結界を生成する。

 

「ナ、ナンダコレハ⁉コンナモノォ」

 

結界に囲まれるのは初めてなのか、妖は見るからに動揺している。

 

腕を振り回し暴れるがもう遅い。囲んでしまえばこちらのものだ。

 

(めつ)!」

 

そして四手目、『滅』。結界ごと敵を押しつぶし妖を滅却する。

 

「ギャァァァ!」

 

 

奴の断末魔は結界のつぶれるボシュッという音と共に公園の夜空に消えていった。

 

本日一体目の妖退治完了である。

 

「まったくあんな雑魚に手間取ってるんじゃないよぉ」

 

戦闘中、避難していた斑尾が開口一番そんなことを言ってくる。

 

「いや、まだエンジン掛かってないからさ。だいたい全力疾走した後すぐに戦えっていうのは無茶だよ」

「またあんたはそんなこと言って!こんなのいつもの事だろう!まったくやる気があるのか無いのか、わかったもんじゃないよ」

 

斑尾と言い合っていると、

 

「もっとスマートにやんなさいよね、ハジメ」

「ほんと、出来の悪い妖犬と組んでちゃ大変だよなぁハジメン?」

 

 

御池鳩(この地)を守るもう一人の結界師「北地 早紀(きたじ さき)」とその相棒の白尾(はくび)

 

「早紀、白尾。遅かったね」

「おうさ。いつも俺たちが一番に妖を倒してるからな、たまには一番を譲ってあげようていう俺たちからの心遣いさ」

 

「ふん!遅れて来ておいてよく言うよ!時守様への忠義が欠片もないから仕事に遅れたりするのさ!」

「ケツの軽い駄犬には言われたくないね!」

「何さ!」

「なんだよ!」

 

斑尾と白尾の口論がどんどんヒートアップしていく。いつもの事だと放っておきながら荒れた公園の地面や木を修復して回る。

 

「早紀も手伝ってよ」

「嫌よ、私がやったわけじゃないんだから」

「それを言うなら僕だって自分がやったわけじゃないんだけど?」

「あんたの落ち度でしょ?もっと早く滅っしておけば直す必要もないんだから」

「そうだけどさ」

 

早紀にヘルプを求めるもバッサリ断られたため、粛々と修復作業を続行する。

 

「あんた調子が出てないとか言ってたけど、何かあったの?」

 

修復作業は手伝ってくれないものの、隣で話し相手にはなってくれるらしい。

 

「いや、別に何も。ちょっと学校の課題が……」

「どうせゲームし過ぎて体調管理できてないだけでしょ」

「ち、違うよ!!そりゃゲームもしてるけど、本当に出てるんだよ、数学!」

 

「…………」

「絶対信じてないでしょ!!」

 

「………で?何がわからないわけ?」

「え?」

 

「数学の何がわからないわけ?どうせ持ってきてるんでしょ、その課題」

「教えてくれるの?」

 

「ああ、いらないのね」

「教えてくださいお願いします。三角関数がまったくわかりません」

 

「はぁ~しょうがないわね。まず三角関数っていうのは…………」

 

僕は以前から勉強でわからないことがあったら早紀に教えてもらっていた。

 

最初は聞いても自分で考えろといって何も教えてくれなかったけど、早紀が高校に入って暫く経った頃突然教えてくれるようになった。

 

しかも早紀の方から。当時中二だった僕は数学に大きくつまずいていた。

 

けれど、南雲家と北地家は先祖代々犬猿の仲。家が両隣でも、ご近所付き合いは皆無だ。

 

それなのになぜ早紀が知っていたのかは今でも謎だ。

 

ただ早紀はもともとしっかり勉強するタイプで、頭が良かったので申し出を断る理由は無かった。

 

「………だから三角関数の問題を解くときは、まず最初に………」

「……ああ、なるほど。こうすれば良いのか」

 

だから、こうやって妖退治の合間を縫って色々と教えてもらっている。

 

まあ早紀と仲良く(?)していることが両親や祖父に知れたら雷が落ちそうだが……

 

 

 

バレないことを切に願うばかりである。

 

 

 

 

そんなこんなで壊された場所の修復を終わらせ、早紀に三角関数について教わっていると

 

「「‼」」

 

二人同時に妖が公園に侵入したのを感じ取る。

 

「ハジメ!来たよ、そこそこ大きいのが」

「ハニー、仕事だぜ~」

 

侵入した妖の匂いを補足した斑尾と白尾がこちらに飛んでくる。

 

「急ぐよ、白尾!ハジメも速くしなさいよね‼でないと私が先に倒すわよ」

「じゃあお先に、ハジメン~」

 

先に妖にむけて駆け出したのは早紀達だった。

 

「ちょった急ぎなよぉ!もたもたしてたら手柄が全部取られちまうよ!」

「わかってるよ!……はぁ~」

 

斑尾の催促に辟易しながら早紀たちの後を追う。

 

これから夜は更けていく。妖退治の夜はまだ始まったばかりだ。

 

 

=============

 

 

時は現代、、、結界師の血筋は連綿と受け継がれていた。開祖の想いを受け継ぎながら、、、

 

 

これは『結界術』を受け継いだ第二十二代正当継承者(予定)である「南雲ハジメ」が、結界師として(異世界で)戦っていく物語である。

 

 

 




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